くらし解説
「そのまま住み続けられる」は本当か──急増するリースバックのトラブル
2026年8月8日
自宅を売却した後も家賃を払って住み続けられる「リースバック」をめぐるトラブルが急増しています。国民生活センターへの相談は5年で約10倍に増え、契約者の7割以上が70歳以上の高齢者です。「ずっと住み続けられると言われたのに家賃を値上げされた」「解約したら高額な違約金を請求された」──。この記事では、実際の相談事例をもとに、リースバックのトラブルの典型的な手口と、契約前に必ず確認すべきポイント、被害に遭ったときの相談先までをわかりやすく解説します。
239件
2024年度のリースバック相談件数(PIO-NET・過去最多)
約10倍
2019年度(24件)からの5年間の増加率
7割超
契約当事者に占める70歳以上の割合(2024年度)
188
困ったときの消費者ホットライン(いやや!)
リースバックとは?仕組みをわかりやすく解説
リースバックとは、自宅(戸建てやマンション)を不動産業者に売却すると同時に、その業者と賃貸借契約を結び、売却後は家賃を払いながら同じ家に住み続けるという不動産取引です。「まとまった現金が手に入るのに引っ越さなくてよい」という点が魅力として宣伝され、老後資金の確保や住み替え準備の手段として、高齢者を中心に利用が広がっています。
流れを整理すると次の4ステップです。
- 自宅を不動産業者に売却する所有権は業者に移り、売買契約が成立します。
- 売却代金を受け取る一括でまとまった現金が手に入ります。ただし売却価格は市場相場より安くなる傾向があります。
- 同じ家の賃貸借契約を結ぶ売却と同時に、業者を大家とする賃貸借契約を締結します。多くは期限付きの「定期借家契約」です。
- 毎月の家賃を払って住み続ける以後は「持ち家」ではなく「賃貸」です。家賃が払えなくなれば退去しなければなりません。
リースバックの相談件数は5年で約10倍に急増
国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられた住宅のリースバックに関する相談件数(PIO-NET登録分)は、2019年度の24件から2024年度には239件へと、5年間で約10倍に増えました。
| 年度 | 相談件数 | 推移 |
|---|---|---|
| 2019年度 | 24件 | |
| 2020年度 | 56件 | |
| 2021年度 | 85件 | |
| 2022年度 | 129件 | |
| 2023年度 | 234件 | |
| 2024年度 | 239件 |
さらに深刻なのは契約者の年齢層です。2024年度の契約当事者は70歳代が26.8%、80歳代が41.4%、90歳以上が5.9%と、約7割が70歳以上を占めています。自宅という大きな資産を持ち、老後資金に不安を抱える高齢者が、集中的にターゲットになっている構図です。
実際にあったリースバックのトラブル事例4選
国民生活センターが公表した相談事例から、典型的な4つのパターンを紹介します。いずれも実際に寄せられた相談です。
事例1:12時間の長時間勧誘で契約→解約には違約金50万円
事例2:「玄関で10分だけ」が押し込み勧誘に
事例3:家賃6万円が3年後に11万円へ値上げ
事例4:認知症の父が相場よりはるかに安く売却していた
なぜトラブルになるのか?4つの構造的な問題点
国民生活センターは、相談事例から見えるリースバックの問題点を次の4つに整理しています。
| 問題点 | 具体的な内容 |
|---|---|
| ① 長時間・強引な勧誘 | 突然の電話や来訪から長時間勧誘され、望まない契約をさせられる。断っても再勧誘されるケースが多数 |
| ② 契約内容の説明不足 | 解約時の違約金や家賃の値上げ条件など、重要事項を認識できないまま契約している |
| ③ ニーズと契約のミスマッチ | 「住み続けたい」人が、家賃を払えず退去を求められる契約を結ばされている |
| ④ 判断能力が低下した高齢者の被害 | 認知症等の高齢者が不利な契約をさせられ、被害が潜在化しやすい |
そして見落とされがちな重大ポイントがもう1つあります。それはクーリング・オフが使えないことです。
また、リースバックの売却価格は一般に市場相場の6〜8割程度といわれ、通常の仲介売却より安くなる傾向があります。強引な勧誘で熟慮の機会を奪われると、他社との比較や「普通に売ったらいくらか」の検討をしないまま、安値で手放してしまうことになります。
契約前に必ず確認したい5つのチェックポイント
リースバック自体は違法な取引ではなく、住み替えや建て替え資金の確保に役立つケースもあります。問題は「仕組みを理解しないまま契約すること」です。契約前に次の5点を必ず確認しましょう。
- 売却価格は適正か──必ず複数社を比較する近隣の売却相場を調べ、通常の仲介で売った場合の価格と比較しましょう。1社の言い値で即決しないことが鉄則です。
- 賃貸借契約の種類と期間──「定期借家」なら要注意定期借家契約は期間満了で原則終了し、更新は保証されません。「ずっと住める」と言われても、契約書上は2〜3年で退去の可能性がある場合があります。
- 家賃の金額と改定条件──値上げ条項の有無「◯年後に家賃を改定できる」という条項がないか確認し、年金や収入で払い続けられるかを収支シミュレーションしましょう。
- 解約時の違約金・買い戻し条件途中解約の違約金額、将来の買い戻しが可能かどうか、可能な場合の価格条件を書面で確認しましょう。
- 家族・第三者への相談──1人で契約しない契約前に必ず家族や信頼できる人に相談を。国土交通省の「住宅のリースバックに関するガイドブック」も無料で公開されています。
しつこい勧誘への対処法とトラブル時の相談先
勧誘の電話や訪問を受けたときは、あいまいな返事をせず「自宅は売りません」「契約はしません」ときっぱり伝えることが重要です。消費者が断ったにもかかわらず勧誘を続けることや、長時間の勧誘は宅地建物取引業法で禁止されています。「もう勧誘しないでください」と明確に伝えれば、再勧誘自体が法令違反になります。
- 知らない番号の電話には出ない──通話録音機能付き電話機や迷惑電話対策機能の活用も有効です。
- 安易に訪問を許さない──「玄関で10分だけ」は長時間勧誘の入口になりがちです。
- 契約してしまったら1人で抱え込まない──早いほど解決の選択肢が多く残ります。
不安な点があるときや契約後にトラブルになったときは、次の窓口に相談しましょう。
| 相談先 | 内容 |
|---|---|
| 消費者ホットライン「188(いやや!)」 | 最寄りの消費生活センターを案内する全国共通の3桁番号。契約トラブル全般の相談窓口 |
| 都道府県の宅建業免許担当窓口 | 強引な勧誘など宅建業法違反が疑われる業者についての情報提供・指導の申し出 |
| 法テラス・弁護士会 | 違約金請求や契約の取消し・無効を争う場合の法律相談 |
| 地域包括支援センター | 高齢の家族の契約トラブルに気づいたとき。家族やホームヘルパーからの相談も可能 |
リースバックのトラブルに関するよくある質問
Q. リースバックの契約はクーリング・オフできますか?
A. できません。宅地建物取引業法のクーリング・オフは業者が売主となる場合の買主保護の制度で、消費者が業者に自宅を売却するリースバックには適用されません。契約成立後の解除には手付金の放棄・倍返しや違約金が必要になるため、契約前の慎重な検討が何より重要です。
Q. リースバックで売却した家にはずっと住み続けられますか?
A. 保証はありません。賃貸借契約が期限付きの定期借家契約であれば期間満了で終了する可能性があり、家賃が払えなくなれば退去を求められます。「そのまま住み続けられる」という勧誘文句をうのみにせず、契約書の期間・更新条件・家賃改定条項を必ず確認してください。
Q. リースバックの売却価格は相場より安いのですか?
A. 安くなる傾向があります。一般に市場相場の6〜8割程度といわれ、国民生活センターの相談事例でも相場よりかけ離れた安値での売却が問題になっています。通常の仲介売却の査定を複数社から取り、比較したうえで判断することが大切です。
Q. 認知症の親がリースバック契約をしていた場合、取り消せますか?
A. 可能性はあります。契約時に判断能力(意思能力)がなかったと認められれば契約は無効を主張でき、成年後見制度の利用で取り消せる場合もあります。医師の診断記録などが重要になるため、早めに消費生活センター(188)や弁護士に相談してください。
Q. しつこいリースバックの勧誘電話を止める方法はありますか?
A. 「もう勧誘しないでください」と明確に伝えましょう。断った相手への再勧誘や長時間の勧誘は宅地建物取引業法で禁止されており、悪質な場合は都道府県の宅建業免許担当窓口に情報提供できます。通話録音機能付き電話機の導入や、知らない番号に出ないことも有効です。
まとめ:リースバックは「即決しない・比較する・1人で決めない」
リースバックのトラブルの本質は、「自宅に住み続けたい」という切実な思いにつけ込み、売却価格の安さ・家賃値上げ・退去リスク・高額違約金といった不利な条件を十分説明しないまま契約させる点にあります。相談件数が5年で約10倍に増えたいま、狙われているのは自宅を持つ高齢者です。
検討する際は、①複数社の査定比較、②賃貸借契約の種類と家賃条件の確認、③家族への相談、の3つを徹底してください。そして少しでも不安を感じたら、消費者ホットライン「188」へ。契約前の1本の電話が、自宅と老後資金を守ります。
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※相談件数・事例・年齢構成はPIO-NET登録データ(2025年3月31日時点)に基づきます。


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