「ダチョウが走っている」の正体はエミュー。日本の脱走は11年で15件あった
2026年9月23日の朝、滋賀県守山市の大通りで「ダチョウが走っている」と110番通報が相次ぎました。逃げていたのはダチョウではなく、よく似た大型の鳥エミュー。約2時間後に集合住宅の敷地で捕獲され、けが人はありませんでした。実はエミューの脱走は、ここ10年ほどで全国から何度も報じられています。報道で確認できた15件を並べて、なぜ逃げるのか、逃げたあとどうなったのか、見かけたらどうすればいいのかを整理しました。
2026年9月23日時点の情報で作成
捕獲されるまで
国内のエミュー脱走
起きた脱走
死んでしまったエミュー
・守山市のエミューは昨年生まれの幼鳥で体長2メートル弱。移動動物園の関係者の自宅で放し飼いにされていた
・2015年以降、国内のエミュー脱走は報道で確認できただけで15件。15件中10件は動物園や観光施設ではなく、個人宅・農家・農場などからだった
・逃げたエミューが死ぬ例は少なくない。15件中5件で計6羽が、脱走中や捕獲のあとに死んでいる
・エミューは環境省の特定動物リストに名前がなく、実際に個人宅や農場で飼われている。見かけたら近づかず、追いかけず、警察か自治体に連絡を
滋賀・守山市のエミュー脱走で何があったのか
報道各社の情報をまとめると、流れは次のとおりです。
- 6時30分飼い主が外出(この時点では自宅にいた)飼い主の男性によると、エミューは自宅玄関前の通路で放し飼いにしていて、鉄製の門扉はゴムロープで固定していた(中日新聞)。
- 6時40分ごろ「ダチョウが走っている」と110番守山市吉身1丁目の路上(駅前グリーンロード)で、通行人から複数の通報。「ダチョウが守山駅方面に走っていった」という内容もあった。
- その後パトカーで追うも見失う駆けつけた警察官が姿を確認したが、すぐに逃げられた。大通り沿いや住宅街を歩き回る姿が、住民や防犯カメラに記録されている。
- 8時40分ごろ集合住宅の敷地内で捕獲近くの集合住宅(アパート)の敷地で見つかり、飼育していた側の職員が捕獲した(朝日新聞)。けが人はなし。
大通り沿いを歩くエミューの姿と捕獲までの流れは、ABCニュースが映像で伝えています。
目撃から約2時間の逃走劇
エミューが脱走し大通り沿いなどを徘徊
集合住宅の敷地内で確保され施設へ無事帰る
滋賀・守山市 https://t.co/rl4AXVXpHz pic.twitter.com/vmww3fF5eJ— ABCニュース (@abc_hodokyoku) September 23, 2026
逃げたのは昨年ふ化した幼鳥で、体長は2メートル弱。飼い主の男性は「懐いていたから、追いかけてきたのかも」と話し、飼育に関わる移動動物園のスタッフは「何かの拍子で鍵が開いていた。今後は対策する」と説明しています。今後は扉に鎖をかけるとしています。
飼育の状況は、MBSニュースが詳しく報じています。
一時脱走した体長約2mの「エミュー」は去年ふ化した子ども 移動動物園の関係者が自宅の庭でペットとして放し飼い 約2時間後に捕獲 滋賀・守山市 https://t.co/ziIXfgAEB3#MBSニュース #ニュース
— MBSニュース (@mbs_news) September 23, 2026
共同通信などによると、この移動動物園(堀井動物園)では、2010年にカンガルー、2013年にヤマアラシが逃げ出す騒ぎもありました。
通報の段階では「ダチョウ」とされ、捕獲後に「エミュー」と判明しました。その経緯を伝えた投稿は大きく拡散されています。
【通報】「ダチョウが徘徊している」逃げているのは「エミュー」だったhttps://t.co/iLdYJwtnlZ
滋賀県守山市で「ダチョウが徘徊している」と通報があり、約2時間後に捕獲された。移動動物園の経営者宅から脱走したとみられ、捕獲された結果、実際に逃げていたのは「エミュー」だった。 pic.twitter.com/Bfv62zAorS
— ライブドアニュース (@livedoornews) September 23, 2026
エミューはダチョウに次いで背の高い鳥で、遠目にはよく似ています。朝の通勤時間に首の長い2メートル近い鳥が車道を走っていれば、まず「ダチョウ」を思い浮かべるのは自然です。見分け方は後半の表にまとめました。
エミューの脱走は多い?報道された15件を全部並べた
「エミュー 脱走」で検索すると、熊本・茨城・福岡・群馬など各地の地名が候補に出てきます。そこで、2015年以降に新聞・テレビが報じた国内のエミュー脱走を集め、記事の中身で日付・場所・結末を確かめました。確認できたのは次の15件です。
| 時期 | 場所 | 飼っていた所・羽数 | その後 |
|---|---|---|---|
| 2015年11月 | 群馬県安中市 | 飼い主不明の1羽 | 捕獲され、12月に前橋市(赤城)のテーマパークへ |
| 2018年5月 | 岡山県瀬戸内市 | 宿泊施設「岡山いこいの村」のメス1羽 | 3日間捜索も手がかりなし(発見の続報は見つからず) |
| 2018年6月 | 佐賀県神埼市 | 飼い主のもとから逃げた2羽 | 死 メスは捕獲後に死亡。オスは7月8日に捕獲 |
| 2018年7月 | 岐阜県美濃加茂市 | イノシシ対策で飼っていた農家の1羽 | 行方不明(発見の続報は見つからず) |
| 2021年10月 | 熊本県菊池市 | 観光牧場の約20羽 | 死 4日目に捕獲完了。2羽が死亡 |
| 2022年8月 | 広島県福山市 | 個人宅のオス1羽 | 30分以上住宅街を歩き、小屋に戻る(小屋の閉め忘れ) |
| 2023年10月 | 高知県香南市 | 県立のいち動物公園のメス1羽 | 死 約10分後に捕獲されたが死亡 |
| 2024年2月 | 福岡市(油山) | 近くの飼育場の1羽 | 山で目撃が続き、約1週間後に飼い主が「見つかった」と連絡 |
| 2024年4月 | 新潟県上越市 | 民家の1羽 | 死 飼い主が捕獲したが、その後死亡 |
| 2024年5月 | 愛媛県砥部町 | 県立とべ動物園の1羽 | 死 園内で捕獲されたが死亡 |
| 2024年9月 | 秋田県鹿角市 | 民家のペット1羽(体長180センチ) | 翌日、約200メートル離れた路上で保護 |
| 2024年10月 | 福岡市(油山) | 飼育場のメス1羽(2月にも油山周辺で脱走) | 3日後に山頂付近で登山者らが確保 |
| 2025年9月 | 茨城県取手市 | 住宅の1羽 | 約5時間後、近くの林で寝ているところを確保 |
| 2026年9月 | 北海道東神楽町 | 農場の1羽 | 翌日捕獲(旭川空港近くでも目撃) |
| 2026年9月 | 滋賀県守山市 | 移動動物園関係者の自宅の幼鳥1羽 | 約2時間後に捕獲。けが人なし |
Googleニュースで「エミュー 脱走」「エミュー 逃走」「エミュー 捕獲」などを検索し、2015年以降の国内の事例を記事本文で確認しました。報道されなかった脱走や、地方紙だけの小さな記事は漏れている可能性があるため、「少なくとも15件」と考えてください。2026年9月の北海道の件は、目撃された鳥と農場から逃げた個体が同じかどうかは確認されていません(HTB北海道ニュース)。
並べてみると、いくつかの傾向が見えてきます。
- ここ数年で増えている:2015〜2020年は4件だったのに対し、2021年以降は11件。2024年は1年で5件ありました
- 動物園以外からの脱走が多い:15件中10件は個人宅・農家・農場などから。動物園は2件、観光牧場・宿泊施設が2件、飼い主不明が1件です
- 同じ山で2回:福岡市の油山では、2024年2月と10月の2回、逃げたエミューが山の中で見つかっています
エミューはなぜ逃げる?脱走の3つのパターン
15件の報道から、脱走のきっかけは大きく3つに分けられます。
1. 扉・柵の閉め忘れや鍵の不具合
守山市(鍵が開いていた)や福山市(小屋の閉め忘れ)がこのタイプです。個人で飼う場合、毎日の出入りで扉を開け閉めする回数が多く、うっかりが起きやすくなります。
2. 驚いたりパニックになったりして柵を越える
高知ののいち動物公園では、オスに追いかけられたメスが木の柵の隙間を抜け、高さ約80センチの柵を跳び越えました(高知新聞)。愛媛のとべ動物園でも、何かに驚いて柵に体当たりし、隙間から外へ出たと報じられています。岐阜の例でも、飼い主が「フェンスとネットの間の隙間から飛び出したと思う」と話していました。
3. 繁殖期の興奮
熊本の観光牧場で約20羽が一度に逃げた件では、発情期で興奮したエミューが柵に体当たりし、一部が壊れたと報じられています。
エミューは飛べませんが、体高は1.6〜1.9メートル(オーストラリア博物館)あり、脚の力が強く、時速50キロで走れます。低い柵なら跳び越え、弱い柵なら体当たりで壊してしまうことがあります。
逃げたエミューが死んでしまうのはなぜ?
15件のうち5件で、あわせて6羽が死んでいます。そのほとんどが「捕獲されたあと」や「捕まる直前」でした。
エミューはおだやかで臆病な性格とされ、ABEMAの取材では「大きな音でショック死するほどデリケート」と紹介されています。愛媛のとべ動物園の件は「ショックで死ぬ」、高知の件も約10分で捕獲されたのに死んでいます。大型の鳥や草食動物では、追い回されて強いストレスを受けると、そのあと急に弱って死んでしまうことがあるためです。
エミューの足には3本の指と丈夫な爪があります。怖がって暴れれば、人がけがをするおそれがあります。そして鳥の側も、追い回されるほど死ぬリスクが高まります。見かけても近づかない・追いかけないことが、どちらにとっても一番安全です。
エミューを見かけたらどうする?
これまでの脱走で、警察や自治体が呼びかけた内容はほぼ共通しています。
- 近づかない:茨城県警取手署は「危険なので近付かず、見かけたら警察に連絡を」と注意を呼びかけました
- 警察(110番)か市役所に連絡する:新潟県上越市は「目撃したら近寄らず、市に連絡してほしい」と呼びかけました
- 写真や動画を撮るなら、離れた場所から:場所と時刻がわかる情報は捜索の役に立ちます。ただし、撮るために近づいたり、追いかけたりするのはやめましょう
- 車の運転中は特に注意:守山市のエミューは車が走ってくるのを気にせず、路上を歩いていたと報じられています。見かけたら減速を
エミューとダチョウの違い
今回、最初の通報は「ダチョウ」でした。2種類の違いを表にまとめます(ダチョウについてはダチョウの生態の記事でも詳しく解説しています)。
| 項目 | エミュー | ダチョウ |
|---|---|---|
| ふるさと | オーストラリア | アフリカ |
| 背の高さ | 1.6〜1.9メートル(鳥で2番目) | 最大2.7メートル(鳥で最大) |
| 体重 | 40〜60キロ前後 | 150キロを超えることも |
| 足の指 | 3本 | 2本 |
| 走る速さ | 時速50キロ | 時速70キロ前後 |
| 見た目 | 全身が灰色がかった茶色のもじゃもじゃした羽。首や頭にも羽があり、首元は青みがかる | オスは黒い体に白い羽。首と脚には羽がほとんどなく、ピンクや灰色の肌が見える |
| 卵 | 濃い青緑色 | クリーム色で鳥類最大 |
遠くから見分けるなら、首まで羽で覆われて全身が茶色っぽいのがエミュー、首が細くむき出しで体が白黒ならダチョウ、と覚えるとわかりやすいです。
エミューは個人で飼える?許可はいるの?
トラやワニのように人に危害を加えるおそれがある動物は、動物愛護管理法の「特定動物」に指定され、2020年6月からはペットとして飼うこと自体が禁止されています。鳥類では、環境省の特定動物リストに「ひくいどり科全種」と、コンドルやワシ・タカの一部が載っています。
エミューやダチョウの名前は、このリストにありません。環境省の特定動物見直し検討会の資料では、「家畜動物として取り扱われているもの(例:ダチョウ等)」は選定の対象からあらかじめ除くという考え方が示されています。実際、国内では個人の住宅や農家、観光牧場、大学などでエミューが飼われており、今回の15件のうち10件も個人宅・農家・農場などからの脱走でした。
エミューをヒクイドリと同じ「ヒクイドリ科」に分類する学説もあります(オーストラリア博物館など)。国内では実際に許可なしで飼われていますが、飼うことを考えている場合は、念のため都道府県の動物愛護担当に確認してください。また、エミューは寿命が20〜30年と長く、体も大きいため、「許可がいらない」ことと「気軽に飼える」ことは別の話です。
特定動物ではないということは、逃げ出さないための施設の基準も、法律では細かく決められていないということでもあります。個人・農家・農場からの脱走が目立つ背景には、こうした事情もありそうです。
豆知識:オーストラリアの「エミュー戦争」
「エミュー」と一緒によく検索されるのが「エミュー戦争」です。1932年、西オーストラリア州で小麦畑を荒らすエミューを駆除するため、軍が機関銃を持ち出しました。ところが、エミューは散らばって素早く逃げ、思うような成果が出ないまま作戦は打ち切られました。軍隊が鳥に「負けた」珍しい出来事として、今も語り継がれています。
今後の焦点
- 守山市の再発防止策:飼育側は扉に鎖をかけるなどの対策をとるとしています。自治体や警察から指導があったかどうか
- 各地の飼育の広がり:エミューは耕作放棄地の草取りや、肉・卵・オイルの生産などで飼う例が増えています。飼う場所が増えれば、脱走のリスクも増えます
- 新たな脱走の報道:確認でき次第、この記事の一覧に追記します
エミューの脱走についてよくある質問
Q. 守山市で逃げたエミューはどうなりましたか?
A. 2026年9月23日午前6時40分ごろに通報があり、約2時間後の午前8時40分ごろ、近くの集合住宅の敷地で捕獲されました。けが人はなく、エミューも施設に戻ったと報じられています。逃げたのは昨年ふ化した体長2メートル弱の幼鳥でした。
Q. エミューは人を襲いますか?危険ですか?
A. エミューはおだやかで臆病な性格とされますが、体高は2メートル近くあり、足には丈夫な爪があります。驚いて暴れると人がけがをするおそれがあるため、警察は「近付かず、見かけたら警察に連絡を」と呼びかけています。
Q. エミューとダチョウの違いは何ですか?
A. エミューはオーストラリア原産で背の高さは1.6〜1.9メートル、足の指は3本です。ダチョウはアフリカ原産で最大2.7メートル、足の指は2本です。エミューは首まで茶色っぽい羽で覆われ、ダチョウは首や脚に羽がほとんどありません。
Q. エミューの脱走はよくあるのですか?
A. 当ブログが報道を調べたところ、2015年以降だけで少なくとも15件ありました。2024年は1年で5件です。15件中10件は、動物園や観光施設ではなく個人宅・農家・農場などからの脱走でした。
Q. 逃げたエミューが死んでしまうのはなぜですか?
A. エミューは大きな音やストレスに弱く、追い回されたり柵にぶつかったりしたあとに死んでしまうことがあります。確認した15件のうち5件で計6羽が死んでいます。見かけても追いかけないことが、人と鳥の両方を守ることにつながります。
・環境省「特定動物リスト」/環境省「特定動物(危険な動物)の飼養又は保管の許可について」
・環境省「特定動物リストの見直しについて」(平成24年度検討会)
・Australian Museum「Emu」(体高・足の指・卵の色)
・守山市の件:朝日新聞、中日新聞、共同通信、京都新聞、産経新聞、関西テレビ、MBSニュース、FNN、NHK(いずれも2026年9月23日)
・過去の事例:ねとらぼ・産経新聞(2015年群馬)、KSB瀬戸内海放送(2018年岡山)、佐賀新聞(2018年佐賀)、テレ朝NEWS(2018年岐阜)、毎日新聞・読売新聞(2021年熊本)、ライブドアニュース(2022年広島)、高知新聞(2023年高知)、西日本新聞・朝日新聞(2024年福岡)、新潟日報(2024年新潟)、日テレNEWS・TBS NEWS DIG(2024年愛媛)、TBS NEWS DIG・読売新聞(2024年秋田)、読売新聞(2024年10月福岡)、毎日新聞(2025年茨城)、HTB北海道ニュース(2026年北海道)、ABEMA TIMES(2025年)
・アイキャッチ写真:Emu(Mathias Appel/Wikimedia Commons/CC0)を反転・明るさ調整し文字を追加
※脱走件数・死んだ羽数は、報道をもとにした当ブログの集計です。本記事は2026年9月23日時点の情報です。
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