FX・NZドル円
NZドル円はなぜ下落?6週連続安と11月総選挙、過去12回の値動き
NZドルが下げ止まりません。対米ドルでは6週連続の下落で、2025年11月以来の安値をつけました。NZドル円も8月末の94円台から、9月30日に一時87.87円まで下がっています。11月7日にはニュージーランドの総選挙があり、政権交代になれば中央銀行(RBNZ)の目標が変わる可能性もあります。FRBのデータで1990年以降の総選挙12回の前後のNZドルを数え、今回の下落と選挙の関係を調べました。
この記事の結論
- NZドル円は10月2日のNY終値で88.75円。8月末の94.41円から6.0%下がりました。下げの約81%はNZドルそのものの下落(対ドルで5.0%安)で、円高の影響は小さめです。
- 理由は大きく3つです。①米国が利上げしてNZとの金利差が開いた(NZ2.75%に対し米国3.75〜4.00%)、②RBNZが利上げしつつも先行きに慎重、③11月7日の総選挙が接戦で、労働党がRBNZの目標に「雇用の最大化」を戻すと公約していることです。
- 過去12回の総選挙では、選挙前の1か月にNZドルが対ドルで下がったのが9回。一方、選挙後1か月でNZドル円が上がったのは9回(中央値+1.5%)でした。「選挙前に売られ、終わると戻る」形が多い一方、政権交代した5回は3か月後の平均が−3.1%と弱めです(2008年のリーマン・ショックを含む)。
- DMM FXのNZドル円の買いスワップは、9月1日の1日45円から10月5日は33円に減りました(1万通貨)。8月末からの値下がり56,600円は、スワップ約1,715日分(約4.7年分)です。次の山場は10月28日のRBNZと11月7日の投票です。
NZドル円はいくら?8月末から6%安、対ドルは6週連続下落
FRBが公表している正午レートで計算すると、NZドル円の2026年の高値は5月29日の95.41円で、2024年7月以来の高さでした。そこから約4か月で7円近く下がっています。週末の終値(Yahoo Financeの1時間足のNY終値)を並べると、対ドルでは8月最終週から6週続けて下落しています。
| 週末(NY終値) | NZドル/米ドル(前週比) | NZドル/円 |
|---|---|---|
| 8月21日(金) | 0.5982 | 95.02円 |
| 8月28日(金) | 0.5914(−1.1%) | 94.63円 |
| 9月4日(金) | 0.5882(−0.5%) | 91.89円 |
| 9月11日(金) | 0.5816(−1.1%) | 89.30円 |
| 9月18日(金) | 0.5724(−1.6%) | 89.77円 |
| 9月25日(金) | 0.5659(−1.1%) | 88.95円 |
| 10月2日(金) | 0.5623(−0.6%) | 88.75円 |
6週間の下落率は対ドルで6.0%、対円で6.6%です。同じ期間のドル円は158円台後半から157円台へ0.6%ほどの円高にとどまっており、NZドル円の下げの大部分はNZドル安です。10月2日には対ドルで一時0.5588ドルまで下がりました。
NZドル円はなぜ下がる?金利差・RBNZの慎重姿勢・総選挙
理由1:米国が利上げし、NZの金利が米国より低くなった
かつてNZドルは「高金利通貨」の代表でしたが、いまは違います。主な中央銀行の政策金利を並べると、NZは米国・豪州・英国より低く、日本との差も1.5ポイントしかありません。
| 国・地域 | 政策金利 | 直近の動き |
|---|---|---|
| 豪州(RBA) | 4.60% | 9月29日に利上げ |
| 米国(FRB) | 3.75〜4.00% | 9月16日に約3年ぶりの利上げ |
| 英国(BoE) | 3.75% | 9月17日に据え置き |
| ニュージーランド(RBNZ) | 2.75% | 9月2日に2会合連続の利上げ |
| ユーロ圏(ECB) | 2.50%(預金金利) | 9月に利上げ |
| 日本(日銀) | 1.25% | 9月18日に利上げ |
米国では原油高を受けて10月の連続利上げを主張するFRB高官もおり、金利差がさらに開くとの見方からドル買い・NZドル売りが続いています。隣の豪州との差も大きく、豪ドル/NZドルは9月21日に1.2455と2013年3月以来の高さ(FRBの正午レートから計算)になりました。NZドルは豪ドルに対しても13年ぶりの安さです。豪ドル円の動きは豪ドル円はなぜ下落?RBA利上げでも下がる理由とスワップの限界で解説しています。
理由2:RBNZは利上げしたが「急がない」
RBNZは原油高による物価上昇を受けて、7月と9月に続けて利上げしました。4〜6月の消費者物価は前年比4.1%で、目標(1〜3%)を上回っています。ただ、変動の大きい品目を除いたコアの物価は目標の範囲内にとどまり、失業率は10年ぶりの高さです。ブレマン総裁は次の利上げの時期について「決まった道筋はない」と慎重な姿勢を示し、市場は10月28日は据え置きとみています(第一生命経済研究所の9月17日のレポートなど)。
理由3:11月7日の総選挙と「RBNZの目標」
最大野党の労働党は8月23日、政権を取ればRBNZの目標に「持続可能な雇用の最大化」を再び加えると公約しました。この目標は2018年に労働党政権が加え、2023年12月に国民党中心の連立政権が外したものです。雇用も目標になれば、失業率が高いいまは利上げをしにくくなります。ウエストパック銀行(NZ)のエコノミストは、目標が戻れば政策金利のピークが下がりうると分析しています。
FRBの正午レートでは、NZドルは公約前の8月21日(金)に0.5983ドルで、ここが直近の高値になりました。週末の終値で見た6週連続の下落も、この公約の翌週から始まっています。ただし同じ時期には米国の利上げ観測も強まっており、下落のすべてが選挙要因とは言えません。
RBNZの政策金利の推移|5.50%から2.25%へ下げ、2026年7月に利上げ再開
| 時期 | 政策金利(OCR) | 内容 |
|---|---|---|
| 2023年5月〜2024年7月 | 5.50% | 物価高に対応した引き締めのピーク |
| 2024年8月〜2025年11月 | 5.50%→2.25% | 9回の会合で合計3.25ポイントの利下げ |
| 2026年2〜5月 | 2.25% | 据え置き |
| 2026年7月8日 | 2.50% | 利上げ再開(0.25ポイント) |
| 2026年9月2日 | 2.75% | 2会合連続の利上げ |
| 10月28日 | ? | 次回の発表(日本時間10時) |
RBNZは2024年8月から2025年11月までに政策金利を5.50%から2.25%まで下げました。景気の落ち込みに対応したものですが、その後に中東情勢の悪化で原油が上がり、物価が再び加速したため、2026年7月に利上げに転じています。下げた幅(3.25ポイント)に対して、戻したのはまだ0.50ポイントです。
※RBNZ「Past monetary policy decisions」の決定一覧によります。発表は年8回、ニュージーランド時間14時(夏時間の10〜3月は日本時間10時)。
総選挙でNZドルはどう動く?1990年以降の12回を検証
ニュージーランドの総選挙は土曜日に行われ、為替市場の反応は翌週の月曜日に出ます。FRBの正午レートで、選挙前の最後の営業日(金曜日)を基準に、その前後のNZドルの動きを計算しました。プラス(青)はNZドル高、マイナス(赤)はNZドル安です。
| 選挙日・結果 | 選挙前1か月(対ドル) | 選挙前1か月(対円) | 翌営業日(対円) | 1か月後(対円) | 3か月後(対円) |
|---|---|---|---|---|---|
| 1990/10/27政権交代:労働党→国民党 | −1.4% | −8.0% | +0.8% | +1.5% | +1.1% |
| 1993/11/6続投:国民党 | +1.8% | +4.3% | −0.9% | +0.1% | +3.0% |
| 1996/10/12続投:国民党(初のMMP) | −0.2% | +1.0% | +1.0% | +2.2% | +6.6% |
| 1999/11/27政権交代:国民党→労働党 | −0.5% | −3.0% | +0.4% | +1.2% | +1.3% |
| 2002/7/27続投:労働党 | −4.4% | −5.2% | +2.1% | +1.6% | +9.9% |
| 2005/9/17続投:労働党 | +0.1% | +1.7% | −0.5% | +2.6% | +2.1% |
| 2008/11/8政権交代:労働党→国民党 | −2.0% | −3.5% | −0.7% | −12.1% | −17.6% |
| 2011/11/26続投:国民党 | −6.9% | −4.7% | +2.3% | +4.3% | +17.0% |
| 2014/9/20続投:国民党 | −3.4% | +1.9% | +0.0% | −3.9% | +4.9% |
| 2017/9/23政権交代:国民党→労働党 | +1.9% | +4.6% | −1.4% | −4.5% | −3.2% |
| 2020/10/17続投:労働党 | −2.2% | −1.7% | +0.4% | +3.1% | +7.2% |
| 2023/10/14政権交代:労働党→国民党 | −0.4% | +1.0% | +0.5% | +2.4% | +2.7% |
※1か月=21営業日、3か月=63営業日。対円はFRBのNZドル・円の対ドル正午レートを掛け合わせて計算。網かけは政権交代。1996年は初の比例代表併用制(MMP)の選挙で、国民党がNZファースト党と連立して続投しました。
選挙前の1か月は、NZドルが対ドルで下がった回が12回中9回(平均−1.46%)と多く、選挙の不透明感で売られやすい傾向が見えます。反対に、結果が出たあとは翌営業日に8回、1か月後に9回、NZドル円が上がっていました。不確実さが消えると買い戻される形です。
ただし、政権が代わった5回と続投した7回では差があります。続投の7回は3か月後のNZドル円がすべて上昇(平均+7.2%)でしたが、政権交代の5回は平均−3.1%で、対ドルでは5回中4回下がっていました。最も大きく下げた2008年はリーマン・ショック後の金融危機のさなかで、これを除くと交代4回の3か月後は平均+0.5%です。
2017年は「連立交渉の26日間」で下落
2017年9月23日の選挙は、第1党の国民党が過半数に届かず、キャスチングボートを握ったNZファースト党が10月19日に労働党との連立を選んで政権交代になりました。NZドル円は選挙後1か月で4.5%下がっています。今回も世論調査では二大政党が並んでおり、選挙後に連立の組み合わせが決まるまで時間がかかる可能性があります。
11月7日のNZ総選挙はどうなる?日程と世論調査
| 日付(2026年) | できごと | メモ |
|---|---|---|
| 10月1日 | 議会の解散 | 1月21日にラクソン首相が日程を発表済み |
| 10月8日 | 立候補の締め切り(正午) | |
| 10月26日 | 期日前投票の開始 | |
| 11月7日(土) | 投票日 | 投票は現地9〜19時(日本時間5〜15時)。開票速報は当日夜 |
| 11月9日(月) | 選挙後初めての為替市場 | 結果への反応はここから |
| 12月3日まで | 選挙の正式結果の確定 | 在外投票などを含む |
9月23〜27日の1News–Verianの世論調査では、与党・国民党と最大野党・労働党がともに28%で並びました。緑の党が16%と過去最高を記録し、連立与党のACT党は11%、NZファースト党は9%、新興のオポチュニティ党は6%です。1Newsの試算では、この結果のままオポチュニティ党が労働党側につけば、左派勢力が65議席、国民党・ACT党・NZファースト党の右派が59議席になります。ほかの調査でも二大政党の差は1〜3ポイント程度で、どちらが政権を取るか読みにくい接戦です。
※世論調査は1News(2026年9月28日)によります。NZは比例代表併用制のため、議席は政党の得票率でほぼ決まり、単独過半数は難しく連立が前提になります。
NZドル円のスワップはいくら?日銀の利上げで3割減
DMM FXのスワップカレンダーでは、NZドル円の買いスワップは9月前半の1日40〜45円から、日銀が利上げした9月18日のあとは30円前後に下がり、9月30日には28円まで減りました。8月末から10月2日までの値下がりは1万通貨で56,600円で、10月5日のスワップ(33円)で割ると約1,715日、およそ4.7年分にあたります。金利差が1.5ポイントしかないいまは、スワップで値下がりを埋めるのは難しい状況です。
スワップの仕組みと各通貨の金額はDMM FXのスワップはいくら?1日の受取額と付与日数を2か月分集計、高金利通貨を積み立てた場合の結果は積立FXは失敗する?SBIつみたて外貨を10通貨・81通りで検証で検証しています。
NZドル円の今後は?10月28日のRBNZと選挙までの3つのシナリオ
- 反発選挙で早く政権が決まり、RBNZが12月に利上げ過去の選挙では、結果が出たあとに買い戻される回が多くありました。どちらが勝っても連立が早く固まり、物価の高さからRBNZが12月9日に利上げに動けば、NZドルの支えになります。
- もみ合い選挙まで88〜90円台で様子見10月28日のRBNZは据え置きの見方が多く、選挙前に大きな材料は出にくい時期です。9月30日の安値(87円台後半)が下の目安になります。
- 続落接戦で連立交渉が長引き、米国は連続利上げ2017年のように政権の枠組みが決まるまで時間がかかり、RBNZの目標の見直しが現実味を帯びると、利上げ観測が後退しやすくなります。FRBが10月も利上げすれば、金利差の面からも重くなります。
| 日付(日本時間) | イベント | NZドル円への意味 |
|---|---|---|
| 10月下旬 | NZ消費者物価(7〜9月期) | 物価が高ければ12月利上げの観測が強まる |
| 10月28日(水)10:00 | RBNZ 金融政策の発表(MPR) | 据え置きの見方。12月の利上げへの示唆が焦点 |
| 10月29日(木)3:00 | FOMCの結果発表 | 連続利上げならNZドル安の材料 |
| 10月30日(金) | 日銀会合の結果 | 利上げなら円高・スワップ減少 |
| 11月7日(土) | NZ総選挙(反応は9日の月曜から) | 政権の枠組みとRBNZの目標の行方 |
| 12月9日(水)10:00 | RBNZ 金融政策報告 | 選挙後初めての会合。3.00%への利上げがあるか |
FOMCと日銀の見通しは2026年10月のドル円見通し|5年連続円安の10月を53年分で検証で整理しています。
※シナリオは公開情報と過去データにもとづく筆者の整理で、将来の相場を予想・保証するものではありません。RBNZの発表時刻はニュージーランド時間14時(夏時間)を日本時間に換算しています。NZの消費者物価の公表日は統計局(Stats NZ)の予定を確認してください。
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NZドル円についてよくある質問
Q. NZドル円はなぜ下がっているのですか?
A. 8月末からの下落(6.0%)の約81%はNZドルそのものの下落です。米国の利上げでNZとの金利差が開いたこと、RBNZが次の利上げに慎重なこと、11月7日の総選挙が接戦で、政権交代ならRBNZの目標に雇用が加わる可能性があることが重なっています。
Q. NZの総選挙はいつですか?
A. 2026年11月7日(土)です。期日前投票は10月26日に始まります。為替市場が結果に反応するのは、日本時間では11月9日(月)の朝からです。
Q. 総選挙のあとNZドルは上がりますか?
A. 過去12回では、選挙後1か月でNZドル円が上がったのが9回、3か月後は10回でした。ただし政権交代した5回は3か月後の平均が−3.1%と弱く、結果や連立交渉の長さによって分かれます。将来も同じになるとは限りません。
Q. RBNZの政策金利はいくらですか?
A. 2.75%です。2025年11月に2.25%まで下げたあと、2026年7月8日に2.50%、9月2日に2.75%へ利上げしました。次の発表は10月28日(日本時間10時)、その次は12月9日です。
Q. 労働党が言う「RBNZの二つの目標」とは何ですか?
A. 物価の安定に加えて「持続可能な雇用の最大化」もRBNZの目標にすることです。2018年に導入され、2023年12月に国民党中心の政権が外しました。労働党は8月23日に、政権を取れば元に戻すと公約しています。
Q. NZドル円のスワップは1日いくらですか?
A. DMM FXの買い(1万通貨)で、9月1日は45円、10月5日は33円です。9月の合計は1,189円でした。9月18日の日銀の利上げのあとに減っています。
Q. NZドル円の2026年の高値はいくらですか?
A. FRBの正午レートで5月29日の95.41円です。2024年7月以来の高さでした。10月2日のNY終値は88.75円で、高値から約7%下にあります。
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出典・参考資料
- FRB:H.10 Historical Rates for the New Zealand Dollar/Japanese Yen/Australian Dollar(ニューヨーク正午レート、1990年代分を含む。2026年9月25日分まで)
- ニュージーランド準備銀行(RBNZ):The official cash rate (OCR)/Past monetary policy decisions
- 第一生命経済研究所 西濵徹:RBNZは追加利上げを実施したが、NZドル相場は上値の重い展開(2026年9月17日)
- 選挙:1News「Game on as PM Luxon reveals 2026 election date」/1News「Poll: Greens surge to best result ever as National, Labour slide further」(2026年9月28日)
- RBNZの目標:NZ財務省 Information release: Reserve Bank dual mandate/investingLive(2026年8月24日)/MPA「Dual mandate return could trim OCR peak, Westpac economists say」(2026年9月21日)
- みんかぶ:NZドル6週連続下落、総選挙巡る不透明感が重荷 金利差拡大も(2026年10月2日)
- DMM FX:スワップカレンダー(NZドル/円、2026年9月1日〜10月5日)
- 市場データ:Yahoo Finance(NZDJPY=X)、同 NZDUSD=X・JPY=X の1時間足(2026年10月5日取得)
NZドル円・豪ドル/NZドルの値、選挙前後の変化率・回数、スワップの合計と換算日数は、FRB H.10、Yahoo Finance、DMM FXのデータから筆者が計算したものです。英語の資料の日本語は筆者訳です。本記事は2026年10月5日時点の公開情報と市場データにもとづく解説で、特定の通貨や取引を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。アイキャッチ背景:Daderot「Beehive and Parliament House – Wellington – New Zealand」(Wikimedia Commons、CC0)。
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