勧告を受けて住宅用地の特例が外れると「固定資産税が6倍」とよく言われます。しかし特例が外れた土地の課税標準は評価額の70%が上限なので、200㎡以下の土地で計算すると4.2倍です。都市計画税を含めると約3.6倍で、長崎市も「3〜4倍」と説明しています。国土交通省の最新調査では、管理不全空家への勧告は378件でした。
固定資産税の計算上の上限
(2025年3月末までの累計)
(2015年の施行以来)
(略式を含む)
結論:増えるのは本当。ただし6倍ではなく、きっかけは勧告
空き家というだけで税金が上がるわけではありません。上がるのは、市区町村から勧告を受けたときや、建物を解体して更地にしたときです。評価額1,000万円・200㎡の土地なら、税は年約3.3万円から約11.9万円になる計算です(固定資産税と都市計画税の合計)。
勧告の前には指導があります。指導を受けたら、改善すれば勧告を避けられる可能性があります。
この記事の立場
この記事は公的資料をもとに制度と計算を整理したものです。特定の業者や売却をすすめるものではありません。金額はすべて前提を置いた試算で、実際の税額や手続きは個別の事情で変わります。判断の前に税務署・法務局・税理士・司法書士などで確認してください。
なぜ「6倍」と言われるのか
住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が200㎡以下の部分で評価額の6分の1、200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで)で3分の1に下がります。この「6分の1」が外れるので6倍と言われます。
ところが、総務省の説明では、住宅用地以外の宅地(商業地等)の課税標準は評価額の70%が上限です。6分の1から70%に上がるのは、0.7÷(1/6)=4.2倍です。100%にはならないので、6倍にはなりません。
土地の広さ別の税額を計算
| 土地 | 区分 | 特例あり | 特例なし | 倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 評価額1,000万円・200㎡ | 固定資産税 | 約2.33万円 | 9.8万円 | 4.2倍 |
| 評価額1,000万円・200㎡ | 都市計画税込み | 約3.33万円 | 約11.9万円 | 約3.6倍 |
| 評価額2,000万円・400㎡ | 固定資産税 | 7.0万円 | 19.6万円 | 2.8倍 |
| 評価額2,000万円・400㎡ | 都市計画税込み | 約10万円 | 約23.8万円 | 約2.4倍 |
広い土地ほど倍率は小さくなります。実際の税額は前年までの課税額(負担水準)や自治体の税率で変わるので、この計算は目安です。正確な額は固定資産税の納税通知書を持って、市区町村の窓口で確認してください。長崎市の市議会資料(2023年2月)は、200㎡・評価額180万円の宅地の例で、解除前4,200円、解除後17,600円(約4.2倍)と試算しています。この記事の計算と同じ結果です。2025年6月の資料では「税額が従来の3〜4倍になる」と説明しています。
勧告までの流れと件数
- 助言・指導管理の状況を見て、市区町村が改善を求めます。この段階では税金は変わりません。
- 勧告それでも改善がないと勧告です。勧告を受けると、翌年度から住宅用地の特例が外れます(1月1日時点の状況で判定)。
- 命令特定空家では、従わないと50万円以下の過料の対象になります。
- 代執行行政が解体などを行い、費用は所有者に請求されます。
| 区分 | 指導 | 勧告 | 代執行 |
|---|---|---|---|
| 管理不全空家等(2023年12月〜) | 3,211件 | 378件 | — |
| 特定空家等(2015年〜) | 42,768件 | 4,153件 | 878件(略式含む) |
管理不全空家は2023年12月の法改正で加わった区分で、放っておくと特定空家になるおそれのある家です。それまでは危険な状態になるまで特例は外れませんでしたが、その手前でも外れるようになりました。同じ期間の指導3,211件に対して、勧告は378件です。全国の空き家900万戸のうち、使う予定のない空き家は約386万戸なので、勧告はまだ一部です。
更地にしても同じことが起きる
住宅用地の特例は、住宅が建っている土地のためのものです。そのため、自分で解体して更地にした場合も特例はなくなります。税金を避けるために古い家を残すケースがあるのはこのためです。一方、売るつもりなら、解体と売却の時期を合わせると、1月1日をまたいで余計に税がかかるのを防げます。自治体によっては解体の補助金があります。
税金が上がる前にできること
指導や通知が届いたら、まず担当窓口に連絡して、何を直せばよいかを確認します。庭木の剪定、屋根や外壁の修繕、郵便物の整理など、指摘された点を直します。持ち続けるか売るかは、空き家を売る・貸す・持つ・解体の10年比較|手取りの試算表で手取りを比べてみてください。
よくある質問
Q. 空き家の固定資産税は本当に6倍になりますか?
A. 6倍にはなりません。特例が外れた土地の課税標準は評価額の70%が上限なので、200㎡以下の土地で計算上4.2倍です。都市計画税を含めると約3.6倍で、長崎市は3〜4倍と説明しています。
Q. 空き家を放置するだけで税金は上がりますか?
A. 放置しただけでは上がりません。上がるのは、市区町村の勧告を受けたときや、解体して更地にしたときです。勧告の前には指導があります。
Q. いつから税金が上がりますか?
A. 固定資産税は毎年1月1日の状況で決まります。勧告を受けた翌年度から特例が外れるのが基本です。年内に勧告を受けるか、翌年に受けるかで1年変わります。
Q. 管理不全空家とは何ですか?
A. 放置すると特定空家になるおそれのある空き家で、2023年12月の改正で加わりました。勧告を受けると、特定空家と同じく住宅用地の特例が外れます。
Q. 解体すると固定資産税は上がりますか?
A. 土地の税は上がります。住宅が建っていないと住宅用地の特例が使えないからです。ただし建物分の税はなくなります。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 国土交通省「令和5年改正空家法に基づく取組が広がる」(2025年12月25日)
- 総務省「固定資産税の概要・土地に係る負担調整措置」
- e-Gov法令検索「地方税法」
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」確報集計の案内
- 長崎市「令和5年2月市議会 総務委員会資料」(住宅用地特例の解除と減免例)


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