くらし|詐欺対策
ニセ警察詐欺とは?手口と被害1,005億円、振り込んだお金の戻り方
「+1」から始まって、末尾が「0110」の番号から着信。出ると「あなたの口座が犯罪に使われています」と言われ、LINEのビデオ通話で警察手帳や、自分の名前が入った逮捕状まで見せられる──。警察庁が「ニセ警察詐欺」と呼ぶこの手口の被害は、2025年に1,005.0億円。特殊詐欺の被害額の7割をこえました。本物の警察が「しない」4つのこと、狙われやすい人、振り込んでしまったお金が戻るしくみ(振り込め詐欺救済法)、被害を小さくする設定まで、警察庁の公表資料をもとに順番に解説します。
この記事の結論
- ニセ警察詐欺は、警察官などをかたり「捜査」「資金調査」の名目でお金をだまし取る手口。2025年は11,014件・1,005.0億円で、特殊詐欺の被害額の70.6%
- 2026年も1〜8月で728.6億円と、前年同期より155.1億円多いペース
- 本物の警察は、①「+」から始まる国際電話番号でかけてこない ②SNSやビデオ通話で取調べをしない ③逮捕状の画像を送らない ④職員の名前をネットで検索させない
- 振り込んだお金は、口座が止まれば振り込め詐欺救済法で、残っていた分を被害額に応じて分配。全額戻るとは限らず、現金の手渡しは対象外
- 電話はいったん切り、自分で調べた番号の警察署か#9110へ。相手に教えられた番号には折り返さない
ニセ警察詐欺とは?特殊詐欺の被害額の7割をしめる手口
ニセ警察詐欺は、警察官などをかたり、捜査(優先調査)の名目で現金などをだまし取る手口です。警察庁は2025年からこの呼び名で注意をよびかけていて、2026年の統計からは独立した手口として集計しています。
(2025年・確定値)
(2025年)
しめる割合(2025年)
(前年同期より+155.1億円)
2025年の特殊詐欺は27,832件・約1,423.1億円で、前の年のほぼ2倍にふえました。警察庁は、そのいちばんの原因がニセ警察詐欺だとしています。2024年の後半ごろから目立ちはじめ、1年で特殊詐欺の主役になりました。
| 期間 | 件数 | 被害額 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|
| 2025年(1年間) | 11,014件 | 1,005.0億円 | ― |
| 2026年1〜6月 | 4,466件 | 507.9億円 | +108.9億円 |
| 2026年1〜8月 | 6,346件 | 728.6億円 | +155.1億円 |
2026年上半期は、件数は前年同期より少し減ったのに、被害額は108.9億円ふえています。1件あたりの被害額が1,163.9万円と大きくなっているためです。
ニセ警察詐欺の手口|電話から振込までの流れ
警察庁や各県警が公表している事例をならべると、多くは次のような順番で進みます。
- ①着信「+」から始まる番号や、実在の警察署の番号国際電話でも末尾を「0110」にした番号が多く使われます。実在の警察署の代表番号を画面に表示させる手口もあります。
- ②自動音声「2時間後にこの電話が使えなくなります」「くわしくは1番を」と押させ、通信会社や総務省を名乗る人につなぎます。
- ③警察官役「あなたの口座が犯罪に使われている」「逮捕した詐欺グループの持ち物からあなたのキャッシュカードが見つかった」などと言い、警察官役に代わります。
- ④ビデオ通話警察手帳・実名入りの逮捕状を見せるLINEなどのビデオ通話に切りかえ、ニセの手帳や、本人の名前が入った逮捕状の画像を送ってきます。ニセの警察ウェブサイトに誘導して、実名入りの逮捕状を見せる例もあります。
- ⑤口止め「誰にも話してはいけない」「長く勾留される可能性がある」と不安にさせ、家族や銀行に相談させないようにします。ホテルに泊まらせて家族と連絡を絶たせた例もあります。
- ⑥送金「資金調査」「資産の保護」で振り込ませる「調べたら返す」と言って、ネットバンキングでの振込、現金の受け渡し、暗号資産の送信、金塊の購入などをさせます。
だまし取る方法は、2026年上半期の数字で見ると次のとおりです。振込のうち、件数でも金額でも半分以上がネットバンキングでした。
| だまし取る方法(2026年上半期) | 件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 振込 | 2,930件 | 256.2億円 |
| └ うちネットバンキング | 1,400件 | 164.4億円 |
| 現金の手渡し | 695件 | 123.6億円 |
| 暗号資産の送信 | 620件 | 110.3億円 |
ビデオ通話は「本物らしさ」を作るための道具
顔を見せる、手帳を見せる、名前入りの書類を見せる──どれも「ここまでするなら本物だろう」と思わせるためです。2025年には、「身の潔白を証明するため」と言って、入浴中も含めてずっとビデオ通話をつなぎっぱなしにさせた例が247件報告されています。
本物の警察が「しない」4つのこと
警察庁は、警察は次のことをしないと明示しています。1つでも当てはまったら、相手はニセモノです。
| 警察が「しない」こと | ニセ警察が言うこと |
|---|---|
| ①「+」から始まる国際電話番号から電話する | 「警察署の○○です」(+1…0110などから) |
| ②SNSで連絡する・ビデオ通話で警察手帳を見せて取調べをする | 「LINEでビデオ通話に切りかえます」 |
| ③逮捕状などの画像をSNSで送る・郵送する | 「これがあなたの逮捕状です」 |
| ④ネットで警察職員の名前を検索させる | 「私の名前を検索してみてください」 |
表示された番号が本物の警察署と同じでも、信じてはいけません。番号はいくらでも偽れるからです。いったん切って、自分で調べた番号の警察署にかけ直すか、警察相談専用電話の#9110に相談しましょう。相手が教えてくる「確認用の番号」に折り返すのは、相手の仲間につながるだけです。
「0110」で終わる番号でも、頭に「+」があれば国際電話
2025年に特殊詐欺に使われた電話番号の約75.5%は国際電話番号でした。末尾の「0110」は、110番を連想させるための飾りです。
狙われるのは高齢者だけではない|被害の最多は30代
「詐欺の被害者は高齢者」というイメージは、ニセ警察詐欺には当てはまりません。警察庁によると、2025年のニセ警察詐欺の被害者は30代がいちばん多くなりました。最初の連絡は、40代以下では9割以上が携帯電話、50代以上では約6割が固定電話です。
| 項目 | 警察庁の集計 |
|---|---|
| 被害者の年代(2025年) | 30代が最多 |
| 最初の連絡(2025年) | 40代以下は携帯電話が9割以上/50代以上は固定電話が約6割 |
| 被害者の年代(2026年上半期) | 70代869件・60代666件・30代664件・50代580件 |
| 最初の連絡の手段(2026年上半期) | 電話が98.2% |
2026年上半期は70代が最多になりましたが、30代も60代とほぼ同じ件数です。2025年の1件あたりの被害額は70代がもっとも大きく、預金が多い世代ほど金額が大きくなる傾向です。「若いから大丈夫」「自分はだまされない」と思っている人ほど、警察を名乗られると冷静さを失いやすいのが、この手口のこわいところです。
振り込んだお金は戻る?振り込め詐欺救済法のしくみ
口座に振り込んでしまった場合は、振り込め詐欺救済法(犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律)で、一部が戻る可能性があります。流れは次のとおりです。
- ①すぐ連絡振込に使った銀行と警察へ連絡を受けた銀行は、犯罪に使われた疑いのある振込先の口座の取引を止めます(3条)。
- ②公告口座の名義人が権利を主張できる期間預金保険機構のウェブサイトで、口座の預金を消す手続きが公告されます。名義人が申し出られる期間は60日以上です(5条)。
- ③申請被害者が分配を申し込む期間申し出がなければ預金は消滅し、被害回復分配金の支払いが公告されます。被害者が申請できる期間は30日以上です(11条)。
- ④分配残っていた額を、被害額に応じて分ける口座に残っていたお金を、申請した人の被害額の割合で分けます(16条)。
| 救済法のポイント | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 口座への振込でだまし取られたお金 |
| 戻る額 | 口座に残っていた額を、被害額の割合で分ける(全額とは限らない) |
| かかる期間 | 公告60日以上+申請30日以上=少なくとも数か月 |
| 対象外 | 現金の手渡し・金塊・暗号資産の送信 |
たとえば、止まった口座に残っていたのが100万円で、申請した人の被害額の合計が700万円なら、30万円の被害者に分配されるのは約4万2,857円です。犯人がすでにお金を引き出していれば、戻るのはごく一部になります。だからこそ、気づいたらすぐに銀行へ連絡して、口座を止めてもらうことが大切です。
現金の手渡し・金塊・暗号資産は、この法律の対象外
救済法が使えるのは、銀行などの口座に振り込んだ場合です。現金を手渡した、金塊を渡した、暗号資産を送ったという場合は、口座への振込ではないため、この分配のしくみは使えません。警察への被害届を出し、犯人の検挙と返還を待つことになります。
警察庁は2026年6月1日から、被害金をすぐに追跡・凍結・回復するための官民の協働の枠組みも動かしはじめています。いずれにしても、早く連絡するほど、止められるお金がふえます。
被害を防ぐ・小さくするためにできること
| 対策 | やり方 |
|---|---|
| 固定電話 | 国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)に申し込むと、国際電話の発着信を無料で休止できる |
| 携帯電話 | 国際電話や知らない番号をブロックできるアプリを入れる(警察庁が推奨アプリを認定) |
| ネットバンキング | ふだん使う額にあわせて振込限度額を下げておく |
| かかってきたら | 切って、自分で調べた番号の警察署か#9110へ |
銀行やコンビニの窓口では、店員や職員の声かけで、2026年上半期だけで9,685件・108.3億円の被害を防いでいます。一方で、ネットバンキングは誰にも止められないまま振込ができてしまいます。ふだん大きな額を送らないなら、振込限度額を低くしておくのが、いちばん手軽な「保険」です。
家族に伝えるなら、この3つ
①警察はビデオ通話で取調べをしないし、逮捕状の画像も送らない ②「誰にも言うな」と言われたら、それが詐欺の合図 ③電話は切って、自分で調べた番号の警察署か#9110へ。
ニセ警察詐欺についてよくある質問
Q. ニセ警察詐欺とは何ですか?
A. 警察官などをかたり、「あなたの口座が犯罪に使われている」などと言って、捜査や資金調査の名目で現金などをだまし取る手口です。警察庁によると2025年は11,014件・1,005.0億円で、特殊詐欺の被害額の70.6%をしめました。
Q. 末尾が0110の電話は本物の警察ですか?
A. 頭に「+」がついていれば国際電話で、本物の警察ではありません。警察は「+」から始まる国際電話番号から電話をすることはない、と警察庁が明示しています。実在の警察署の番号が表示されることもあるので、いったん切って、自分で調べた番号にかけ直してください。
Q. 警察がビデオ通話で警察手帳や逮捕状を見せることはありますか?
A. ありません。警察はSNSで連絡したり、ビデオ通話で警察手帳を見せて取調べをしたりしません。逮捕状などの捜査書類をSNSで送ったり、郵送したりすることもありません。
Q. ニセ警察詐欺で振り込んだお金は戻りますか?
A. 振込先の口座が止められれば、振り込め詐欺救済法で、口座に残っていたお金を被害額に応じて分配してもらえる可能性があります。ただし全額戻るとは限らず、現金の手渡しや暗号資産の送信は対象外です。すぐに銀行と警察に連絡してください。
Q. 振り込め詐欺救済法の手続きにはどのくらい時間がかかりますか?
A. 口座の預金を消す手続きの公告(名義人の申し出期間60日以上)と、分配金の申請期間(30日以上)があるため、分配までには少なくとも数か月かかります。
Q. 不審な電話がかかってきたらどこに相談すればいいですか?
A. 電話を切ってから、最寄りの警察署(番号は自分で調べる)か、警察相談専用電話の#9110に相談してください。お金を渡してしまった場合は110番と、振込に使った銀行にすぐ連絡してください。
まとめ|警察は電話で「お金を調べる」とは言わない
ニセ警察詐欺は、着信番号・手帳・逮捕状・ビデオ通話と、「本物らしさ」を何重にも重ねてきます。でも、本物の警察は国際電話でかけてこないし、ビデオ通話で取調べもしないし、お金を振り込ませて調べることもありません。「警察から電話」と「お金」がセットになったら、いったん切る。それだけで、ほとんどの被害は防げます。もし振り込んでしまっても、すぐに銀行と警察に連絡すれば、戻るお金がふえる可能性があります。
参考資料
- 警察庁「ニセ警察詐欺に注意!」
- 警察庁「ニセ警察官とのビデオ通話」「ニセの警察ウェブサイトに誘導する手口」
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年6月5日)
- 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年7月31日)
- 警察庁「令和8年8月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年10月2日)
- 警察庁「みんなでとめよう!!国際電話詐欺 #みんとめ」
- e-Gov法令検索「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(第3条・第5条・第11条・第16条)
2026年の数字は暫定値です。分配金の例は、法律のしくみ(被害額に応じた按分)にもとづく筆者の試算で、実際の額は口座の残高と申請者の数で変わります。具体的な被害の相談は、警察や金融機関にお問い合わせください。


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