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海鳥の体内からプラスチック894個|世界遺産の島で記録3.2倍
オーストラリアの世界遺産、ロード・ハウ島で、巣立ち直後のアカアシミズナギドリ1羽の体内から894個のプラスチック片が見つかりました。ナショナル ジオグラフィック日本版が10月30日に伝えた研究です。元の論文と補足資料を読み、最多記録の推移、17シーズン・1,890羽の保有率、調査期間の長さで結論がどう変わるかを当ブログで集計しました。
この記事の結論
- 894個は、ロード・ハウ島で2025年に調べた巣立ち直後のアカアシミズナギドリ1羽の体内(前胃と砂のう)から出たプラスチック片の数です。重さは64.21グラムでした。
- それまでの最多は2011年の276個で、894個はその3.2倍。2023年に403個、2024年に407個と記録が続けて塗り替えられました。2026年の調査では最多が644個でしたが、重さは67.4グラムと過去最大でした。
- 論文の表を当ブログで集計すると、プラスチックを持つ鳥の割合は2010〜2021年の平均78.4%に対し、2022〜2026年は76.6%とほとんど変わっていません。変わったのは、1羽が抱える量です。
- 補足資料の回帰分析を数え直すと、3年だけの調査では14通り中2通りで「減っている」という結論が出ます。2021〜2025年の5年でみると、上位10羽の個数は1年に約76個のペースで増えていました。

「プラスチック894個」は何の数字?世界遺産の島の海鳥のひな
今回の研究は、オーストラリアのチャールズ・スタート大学などに所属するジェニファー・レイバース博士らが、学術誌「Earth’s Future」に2026年9月10日付で発表した論文「Abrupt Recent Increases in Plastic Ingestion by Sable Shearwaters」です。誰でも読めるオープンアクセスで公開されています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 島 | ロード・ハウ島(オーストラリア・ニューサウスウェールズ州)。タスマン海の中央、本土の東約650キロ。1982年に世界自然遺産(ロード・ハウ島群) |
| 鳥 | アカアシミズナギドリ(学名 Ardenna carneipes)。論文では英名を Sable Shearwater と表記。島には約2万2,000つがいが繁殖し、この種の世界最大の集団 |
| 調べた鳥 | 巣立ちの時期(4〜5月)のひな。生きた鳥は胃洗浄で吐かせ、浜に打ち上げられた鳥は解剖して前胃と砂のうを調べる |
| 数え方 | 1ミリより大きいプラスチック片を目で見て数え、0.0001グラム単位で重さを量る |
| 調査期間 | 2010〜2026年の17シーズン(論文は「16年」と表記)。延べ1,890羽 |
| 894個の中身 | 2025年の1羽。重さ64.21グラム。論文は「1回の給餌に約30個が混じっていた計算」としています |
出典:Lavers ほか(2026)の「Methods」「Results」と Table 1。延べ羽数は Table 1 の年別の調査数を当ブログで合計。
ロード・ハウ島は、UNESCOの世界遺産として1982年に登録された島々(ロード・ハウ島群)の中心の島です。登録範囲は海域を含めて約14万6,300ヘクタール。海鳥の大きな繁殖地であることと、世界で最も南にあるサンゴ礁があることが評価されています。UNESCOの説明では、環境への影響を抑えるために観光客の数も制限されています。
注意したいのは、894個は「その年にいちばん多かった1羽」の数だという点です。島のすべての鳥がこれほどのプラスチックを抱えているわけではありません。ただ、論文は胃洗浄について「30グラムを超えるような重い個体では、体内のプラスチックの14%しか回収できない」とも書いており、生きた鳥から数えた値は少なめに出ている可能性があります。
アカアシミズナギドリは日本近海にも来る鳥
BirdLife Internationalの種のページによると、アカアシミズナギドリはロード・ハウ島のほか、オーストラリア南西部やニュージーランドの島などで繁殖し、繁殖期が終わると西太平洋を北上して日本・ロシア・韓国の沖合まで移動します。成熟した個体は約14万8,000羽と推定され、減少傾向です。IUCNのレッドリストでは2012年までは「低懸念」でしたが、2016年から「準絶滅危惧(NT)」に引き上げられています。評価の理由としては、オーストラリアで操業する漁業の影響を強く受けてきたことなどが挙げられています。
1羽あたりの最多記録の推移|276個から894個へ
論文に書かれた「1羽あたりの最多記録」を年ごとに並べると次のとおりです。2023年以降、ほぼ毎年のように記録が塗り替えられています。
| 年 | 最多の個数 | その鳥の重さ | 前の記録比 | メモ |
|---|---|---|---|---|
| 2011年 | 276個 | 64.10g | ― | 2023年まで最多記録だった |
| 2023年 | 403個 | 52.53g | 1.46倍 | 急増が始まった年。記録を更新 |
| 2024年 | 407個 | 26.30g | 1.01倍 | 個数で記録を更新(重さは軽い) |
| 2025年 | 894個 | 64.21g | 2.20倍 | 個数の最多記録。2023年の約2.2倍 |
| 2026年 | 644個 | 67.40g | 0.72倍 | 個数は2025年より少ないが、重さは過去最大 |
出典:Lavers ほか(2026)「Results」「Discussion」。前の記録比は当ブログ計算(2026年は直前の最多記録894個に対する比)。
2011年の276個(64.10グラム)と2025年の894個(64.21グラム)を比べると、重さはほとんど同じなのに、個数は3.2倍です。1個あたりの平均を計算すると、2011年は約0.23グラム、2025年は約0.07グラムで、およそ3分の1になっています。より小さな破片をたくさん飲み込んでいたことになりますが、なぜそうなったのかについて論文は分析していません。
報道と論文の細かな違い
ナショナル ジオグラフィック日本版は「記録は毎年更新され、2025年には最多で894個」と伝えていますが、論文では2026年の最多は644個で、個数の記録は更新されていません(重さ67.4グラムは過去最大)。また、276個の鳥は論文の「結果」の章では2011年、「考察」の章では2012年のデータとして書かれています。本記事の表は「結果」の章の記述に合わせました。
プラスチックを持つ鳥の割合は横ばい、増えたのは「量」
論文の Table 1 には、毎年何羽を調べ、そのうち何割の体内からプラスチックが見つかったか(保有率)が載っています。17シーズン分を並べ、当ブログで「持っていた羽数」を推計しました。
| 年 | 調べた羽数 | 保有率 | 持っていた推計 |
|---|---|---|---|
| 2010年 | 14羽 | 76.7% | 約11羽 |
| 2011年 | 42羽 | 71.4% | 約30羽 |
| 2012年 | 43羽 | 93.5% | 約40羽 |
| 2013年 | 52羽 | 80.3% | 約42羽 |
| 2014年 | 84羽 | 66.2% | 約56羽 |
| 2015年 | 79羽 | 76.9% | 約61羽 |
| 2016年 | 87羽 | 89.3% | 約78羽 |
| 2017年 | 178羽 | 81.6% | 約145羽 |
| 2018年 | 178羽 | 71.6% | 約127羽 |
| 2019年 | 179羽 | 73.0% | 約131羽 |
| 2020年 | 2羽 | 100.0% | ― |
| 2021年 | 142羽 | 81.6% | 約116羽 |
| 2022年 | 145羽 | 80.0% | 約116羽 |
| 2023年 | 190羽 | 74.1% | 約141羽 |
| 2024年 | 154羽 | 70.8% | 約109羽 |
| 2025年 | 158羽 | 82.3% | 約130羽 |
| 2026年 | 163羽 | 75.6% | 約123羽 |
出典:Lavers ほか(2026) Table 1(生きた鳥と死んだ鳥の合計)。「持っていた推計」は調べた羽数×保有率を当ブログで計算し四捨五入。2020年は新型コロナの影響で2羽のみ。
保有率は、もっとも高い2012年で93.5%、もっとも低い2014年で66.2%と年ごとの上下はありますが、2010〜2021年の平均は78.4%、急増が始まった2022〜2026年の平均は76.6%(いずれも2020年を除く単純平均)で、ほぼ同じ水準です。2022〜2026年の5シーズンでは、調べた810羽のうち約619羽がプラスチックを持っていた計算になります。
つまり、「何割の鳥が食べているか」という指標だけを見ていると、ここ数年の異変は見えません。論文はこの点を強調し、アカアシミズナギドリでは0.5グラムほどのプラスチックでも体に深刻な傷が生じることが分かってきた以上、割合だけではなく1羽あたりの量を見る必要があると指摘しています。
ほかの海鳥では
論文によると、ノドジロクロミズナギドリでは1979〜2024年に保有率が約57%で一定のまま、1羽あたりの平均個数が3倍以上に増えました。一方、ハシボソミズナギドリは保有率が約90%と高いものの、1羽あたりの量は数十年ほとんど変わっていないとされています。同じ海鳥でも、種によって傾向はかなり違います。
3年だけ調べていたら「減っている」と結論が出た可能性
この論文のもう一つのテーマは、調査期間の長さで結論が変わるということです。研究チームは各年で最も多く飲み込んでいた上位10羽のデータを使い、3年・5年・10年の期間をずらしながら「増えているか、減っているか」を統計的に調べました。補足資料の表(Table S1・S2)の回帰結果を、当ブログで有意水準5%で分類し直すと次のようになります。
| 調査の長さ | 比べた期間の数 | 個数で見た結論 | 重さで見た結論 |
|---|---|---|---|
| 3年 | 14通り | 増加7・変化なし5・減少2 | 増加5・変化なし7・減少2 |
| 5年 | 12通り | 増加6・変化なし4・減少2 | 増加6・変化なし4・減少2 |
| 10年 | 7通り | 増加4・変化なし2・減少1 | 増加4・変化なし3・減少0 |
出典:Lavers ほか(2026) Supporting Information の Table S1(重さ)・Table S2(個数)。期間は2010〜2025年。分類は当ブログ(傾きの p 値が0.05未満なら増加・減少、それ以外は変化なし)。重さの3年・5年の内訳は論文本文の記述と一致しました。
たとえば、2012〜2014年の3年だけを調べていれば、上位10羽の個数は1年に約65個ずつ減っているという結果になります。2016〜2018年の3年でも、1年に約27個の減少と出ます。大学院生の研究のように3年程度で区切っていたら、「プラスチックは減っている」という誤った結論を出していたかもしれない、というのが論文の指摘です。
一方、期間を10年に広げると、2010〜2019年は1年あたり−1.7個で統計的には「変化なし」。それが2016〜2025年では1年に約30個の増加に変わります。直近の5年(2021〜2025年)は1年に約76個、直近の3年(2023〜2025年)は約87個の増加ペースで、増え方そのものが速くなっています。重さでも、2021〜2025年の5年では1年に約7.6グラムずつ増えていました。
論文は、研究資金の多くが3〜5年単位で、長期の観測を続けるための支援が足りないことも問題として挙げています。
なぜプラスチックが急に増えたのか|論文が挙げる理由
論文は、急増の原因をはっきりとは特定していません。そのうえで、考えられる背景として次の点を挙げています。
ひなが軽くなっている=親が餌を見つけにくい
アカアシミズナギドリのひなの体重は1年に平均16.1グラムずつ減っており、多くのひなが10年前より約25%軽くなっているとされています。親鳥が十分な餌を見つけられないとき、海鳥は餌以外のものをひなに与えたり、餌を選ばなくなったりすることが知られており、その結果プラスチックを餌と間違えやすくなっているとみられます。ナショナル ジオグラフィックの記事は、海水温の上昇で餌の魚やイカがより深い場所へ移動していることにも触れています。
ペットボトルのふたとレジンペレットも増加
研究チームは、出どころが分かりやすい2種類としてボトルのふたと、プラスチック製品の原料になる小さな粒「レジンペレット(ナードル)」を数えています。どちらも2024〜2026年に目立って増え、全体に占める割合は2012年の4.0%から、2025年には5.7%を超えました。ペレットは2〜3年おきに急に多く飲み込まれる年があり、論文は工場や輸送中の流出の可能性に触れつつも、理由ははっきりしないとしています。
プラスチックは島ではなく海から来る
子育ての時期、親鳥は1回3〜11日かけて、北はブリスベン付近から南はバス海峡まで、タスマン海の広い範囲で餌を探します。論文は、飲み込まれたプラスチックは島の近くではなく、数百キロ離れた海で拾われたものと考えられるとしています。ナショナル ジオグラフィックの記事も、ロード・ハウ島は離島の廃棄物管理の先進例でありながら、外から流れ込むプラスチックの影響を受けていると伝えています。
すでにある対策
- ペレットの流出防止:業界の取り組み「オペレーション・クリーン・スイープ」に27社が参加したメルボルンでは、3年でごみ受けに集まるペレットが77%減ったと論文は紹介しています。
- ふたが外れないボトル:EUでは2019年の法律で、開けた後もふたがボトルから離れない形が義務づけられました(論文の紹介による)。
- 国際的なプラスチック条約:論文は交渉が行き詰まっていると指摘し、法的拘束力のある条約と、長期観測への安定した資金が急いで必要だと結んでいます。
ロード・ハウ島の海鳥とプラスチックの年表
- 1982年ロード・ハウ島群が世界遺産にUNESCOの自然遺産(基準vii・x)として登録
- 2007年レイバース博士が初めて島を訪問アカアシミズナギドリとプラスチックの研究を始める(ナショジオ報道)
- 2010年毎年の調査を開始4〜5月の巣立ち期に、生きた鳥と浜で見つかった鳥を調べる
- 2011年1羽276個2023年まで最多記録だった
- 2016年IUCNで準絶滅危惧に2012年までの「低懸念」から引き上げ
- 2023年1羽403個12年ぶりに最多記録を更新。急増の始まり
- 2025年1羽894個2011年の3.2倍。重さ64.21グラム
- 2026年4〜5月最多644個・67.4グラム重さは過去最大
- 2026年9月10日論文を公開Earth’s Future 誌にオープンアクセスで掲載
- 2026年10月30日ナショジオ日本版が報道「体内に894個も」と紹介
海鳥とプラスチック894個についてよくある質問
Q. 海鳥の体内から見つかった894個のプラスチックとは?
A. オーストラリアの世界遺産ロード・ハウ島で、2025年に調べた巣立ち直後のアカアシミズナギドリ1羽の前胃と砂のうから見つかった、1ミリより大きいプラスチック片の数です。重さは64.21グラムでした。
Q. 世界遺産の島とはどこですか?
A. オーストラリア東海岸から約650キロ沖、タスマン海に浮かぶロード・ハウ島です。周辺の島々とあわせて1982年に世界自然遺産に登録されています。世界最南のサンゴ礁があることでも知られます。
Q. 島のすべての鳥がプラスチックを食べているのですか?
A. 論文によると、プラスチックが見つかる鳥の割合は例年75〜85%程度です。表から計算すると2010〜2021年の平均が78.4%、2022〜2026年が76.6%で、割合はほぼ変わっていません。増えているのは1羽が抱える量です。
Q. アカアシミズナギドリは日本でも見られますか?
A. BirdLife Internationalによると、繁殖を終えたあと西太平洋を北上し、日本・ロシア・韓国の沖合まで移動します。IUCNのレッドリストでは2016年から準絶滅危惧に分類されています。
Q. なぜ急にプラスチックが増えたのですか?
A. 論文は原因を特定していませんが、ひなの体重が年16.1グラムずつ減っていることから、親鳥が餌を見つけにくくなりプラスチックを餌と間違えやすくなっている可能性を挙げています。ボトルのふたやレジンペレットも2024〜2026年に目立って増えました。
Q. プラスチックを飲み込むと鳥はどうなりますか?
A. 論文によると、アカアシミズナギドリでは0.5グラムほどでも胃や臓器に傷が生じることが分かっています。量が多いと食べ物が入る余地がなくなり、ナショナル ジオグラフィックの記事は餓死する個体も報告されていると伝えています。
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出典・参考資料
- 論文:Lavers J.L., de Jersey A.M., Rivers-Auty J., Bond A.L.(2026)Abrupt Recent Increases in Plastic Ingestion by Sable Shearwaters (Ardenna carneipes). Earth’s Future 14(9), e2026EF008572(CC BY 4.0、補足資料 Table S1・S2 を含む)
- 解析コード:GitHub「AdriftLab_AbruptChange」/Zenodo アーカイブ
- UNESCO世界遺産センター:Lord Howe Island Group
- BirdLife International:Flesh-footed Shearwater Ardenna carneipes(種のファクトシート)
- 報道:ナショナル ジオグラフィック日本版「体内に894個も、海鳥の深刻なプラごみ汚染が急増、世界遺産の島」(2026年10月30日)/写真ギャラリー
数値は2026年11月1日時点で公表されていたものです。最多記録の推移表・保有率の推計・調査期間別の分類表は、上記論文の本文・表・補足資料をもとに当ブログが作成しました。写真:Inas66「Lord Howe Island view to Mount Gower」(CC BY-SA 3.0、リサイズ)、アイキャッチ:Ed Dunens「Flesh-footed Shearwater」(オーストラリア・ポートフェアリー沖、2015年2月撮影、CC BY 2.0、明るさ調整・文字入れ)。いずれもWikimedia Commons。
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