感染症・海外渡航
米国のはしか、1991年以来の多さに
米疾病対策センター(CDC)によると、米国で2026年に確認されたはしか(麻しん)の患者は10月29日時点で4,852人です。2025年1年間の2,289人の約2.1倍で、CDCが公表している年別の数字と並べると、4,852人を上回ったのは1991年(9,643人)が最後でした。CDCの公開データを自分で集計し直し、年別の推移、どの州・どの年齢で増えているか、日本の状況と、米国など海外へ出かける前に確認しておきたいことを整理しました。
この記事の要点
- CDCの集計(10月29日正午時点、10月30日更新)で、2026年の米国のはしか確定患者は4,852人。47の州などで発生しています。
- CDCの年別データでは、2026年より多かった最後の年は1991年。1985年以降で数えると5番目の多さです。排除を宣言した2000年から2024年までの25年分の合計(4,485人)も、すでに上回りました。
- 2026年は20歳以上が41%と、2025年(29%)から大きく増えました。患者の96%はワクチン未接種か接種歴不明で、入院は11%(511人)です。
- 州別ではペンシルベニア州(1,411人)、サウスカロライナ州、ユタ州の3州で全体の約54%。7月下旬から再び増え、8月下旬〜10月上旬は毎週約200人前後の報告が続きました。
- 日本の報告は2026年第42週(10月21日現在)までに577人で、同じ資料のグラフに示された2025年の265人の2倍強です。厚生労働省は渡航前に母子手帳などで接種歴を確かめるよう呼びかけています。
(10月29日時点)
接種歴不明
米国のはしか患者数の年別推移(1985〜2026年)
CDCの「Measles Cases and Outbreaks」のページが読み込んでいる年別データ(1985年以降)を取り出し、2026年の4,852人と比べました。CDCは2025〜2026年の数字を「暫定値で、今後変わる可能性がある」としています。
| 年 | 確定患者数 | 2026年との比較 |
|---|---|---|
| 1986年 | 6,255人 | 2026年より多い |
| 1989年 | 17,914人 | 2026年より多い(1989〜91年に大流行) |
| 1990年 | 27,808人 | 1985年以降で最多 |
| 1991年 | 9,643人 | 2026年より多かった最後の年 |
| 1992年 | 2,126人 | 2026年の半分以下 |
| 2000年 | 85人 | 排除を宣言した年 |
| 2014年 | 667人 | 2000年代以降で当時最多 |
| 2019年 | 1,274人 | 排除後の最多を更新(当時) |
| 2024年 | 285人 | 2026年の約17分の1 |
| 2025年 | 2,289人 | 排除宣言後で初めて2,000人超 |
| 2026年 | 4,852人 | 10月29日時点。1991年以来の多さ |
1985年以降で2026年より多かったのは1986年、1989年、1990年、1991年の4つの年だけで、2026年は5番目です。1992年は2,126人で、すでに2倍以上になりました。
2000年以降の推移をグラフで見る
出典:CDC「Measles Cases and Outbreaks」の年別データ(2026年は10月29日時点)。2014年(667人)や2019年(1,274人)の山と比べても、2025〜2026年の伸びが突出しています。
2000年から2024年までの25年間の合計は4,485人でした。2026年はこの10か月だけで、その25年分を上回っています。2024年(285人)と比べると約17倍です。
2026年は1月と8月以降の「二つの山」
CDCは、発疹(ほっしん)が出た週ごとの患者数も公表しています。2026年分(1月4日の週から)を足すと、ちょうど4,852人になりました。最も多かったのは1月11〜17日の週の296人です。
| 期間(発疹の出た週) | 患者数 | 割合・特徴 |
|---|---|---|
| 1月4日〜4月4日 | 1,744人 | 約36%。2025年から続く流行が年明けに急増 |
| 4月5日〜7月25日 | 634人 | 約13%。週30〜50人前後に落ち着く |
| 7月26日〜10月29日 | 2,474人 | 約51%。8月下旬〜10月上旬は毎週196〜238人 |
出典:CDCの週別データ(発疹の出た週)。CDCは2025年12月28日〜2026年1月3日の週を2025年に数えるため、ここでは1月4日の週から集計しました。直近の週は報告が遅れて入るため、10月下旬の数字は今後増える見込みです。
春から夏にかけていったん落ち着いたあと、7月下旬から再び増え、2026年の患者の半分あまりは7月26日以降に発疹が出た人です。CDCは、はしかに季節性はないものの、春休みや夏、休暇シーズンなど人の移動が多い時期や、サマーキャンプのように未接種の人が近くで過ごす場面で広がりやすいと説明しています。
州別:ペンシルベニア州が1,411人で最多
CDCの州別データ(米国居住者の4,834人分)を多い順に並べました。外国からの旅行者などの18人は州別には入っていません。
| 順位 | 州 | 2026年 | 2025年 |
|---|---|---|---|
| 1位 | ペンシルベニア州 | 1,411人 | 16人 |
| 2位 | サウスカロライナ州 | 670人 | 333人 |
| 3位 | ユタ州 | 535人 | 189人 |
| 4位 | ウィスコンシン州 | 323人 | 36人 |
| 5位 | ケンタッキー州 | 200人 | 13人 |
| 6位 | オハイオ州 | 195人 | 40人 |
| 7位 | テキサス州 | 192人 | 803人 |
| 8位 | バージニア州 | 179人 | 6人 |
| 9位 | ニューヨーク州(ニューヨーク市を除く) | 168人 | 26人 |
| 10位 | フロリダ州 | 148人 | 8人 |
出典:CDCの州別データ(10月29日時点)。ニューヨーク市はCDCが州と別に集計しています(2026年は7人)。
上位3州(ペンシルベニア、サウスカロライナ、ユタ)で2,616人、全体の約54%を占めます。2025年に最も多かったテキサス州(803人)は2026年は192人に減る一方、ペンシルベニア州は2025年の16人から1,411人に急増しました。はしかは、ワクチンを受けていない人がまとまって暮らす地域に入ると一気に広がるため、年によって中心となる州が大きく入れ替わります。州ごとの最新の状況は各州の保健当局が発表しており、CDCも州の発表のほうが新しい場合があるとしています。
集団発生(関連する3人以上)は2026年に新たに43件。確定患者の96%(4,666人)が集団発生に関連し、そのうち1,384人は2025年に始まった集団発生の続きです。
年齢別・接種歴別:大人の患者が約3倍に
| 区分 | 2026年(10月29日時点) | 2025年(1年間) | 2026年の入院の割合 |
|---|---|---|---|
| 5歳未満 | 812人(17%) | 584人(26%) | 16%(130人) |
| 5〜19歳 | 2,010人(41%) | 1,018人(44%) | 5%(92人) |
| 20歳以上 | 1,996人(41%) | 674人(29%) | 14%(288人) |
| 年齢不明 | 34人(1%) | 13人(1%) | 3%(1人) |
| 全体 | 4,852人 | 2,289人 | 11%(511人) |
出典:CDC「Measles Cases and Outbreaks」の年齢・入院の表(10月29日時点)。
目立つのは大人の増え方です。20歳以上の患者は2025年の674人から1,996人へ約3.0倍になり、割合も29%から41%に上がりました。入院した割合は、5歳未満(16%)に次いで20歳以上(14%)が高く、大人がかかると重くなりやすいことが数字にも出ています。
接種歴では、2026年の患者の96%がワクチン未接種か接種歴不明でした(2025年は93%)。1回接種は2%、2回接種は2%です。CDCは、2回接種で97%、1回接種で93%の予防効果があるとしています。
死亡者の数字について
CDCのページの表では、2026年の死亡は「3人」と表示され、「今後変わる可能性がある」と注記されています。一方、同じページが読み込むデータファイルには「2026年に5人の死亡を確認」と書かれており、2026年11月1日時点(日本時間)で表示とデータが食い違っています。CDCは州の疫学者の団体と、はしかによる死亡の定義をそろえる作業を進めているとしています。2025年の死亡は3人です。
なぜ増えているのか:接種率の低下と「排除」の見直し
米国は2000年に、はしかの「排除」(国内での流行の連鎖がない状態)を宣言しました。CDCは最近の増加の背景として、幼稚園児のMMRワクチン(はしか・おたふくかぜ・風しん)の接種率が目標の95%を下回っていることと、世界的にはしかが増え、海外で感染した未接種の人が帰国する機会が増えていることを挙げています。接種率は2019〜20年度の95.2%から2025〜26年度は92.4%に下がり、CDCは約28万人の幼稚園児が無防備な状態だとしています(CDC)。
排除の状態を見直す動きも進んでいます。米州の保健機関であるPAHO(汎米保健機構)は、同じ遺伝子型・系統のウイルスが12か月以上途切れずに広がった場合を「流行の再定着」と定義しています。米国は2025年1月20日に始まった流行から1年間が審査の対象で、PAHOの委員会が2026年11月の定例会合でメキシコとともに審査すると発表しています(PAHO、3月2日)。当初は4月13日に予定されていましたが、米国側の全ゲノム解析などを踏まえて11月に移されました(PAHO、1月16日)。
隣のカナダは、2025年11月に「12か月以上途切れずに広がった」と判断されて排除の状態を失い、これに伴って米州全体も「はしかの流行が定着していない地域」ではなくなりました(PAHO)。米国の判断は、2026年11月1日時点(日本時間)でまだ出ていません。
ご注意
米国の「排除」の扱いは11月の審査で決まります。結果が出る前に「米国は排除国でなくなった」と断定する情報には注意してください。この記事も結果が出たら追記します。
日本の麻しん報告数は2026年に577人
国立健康危機管理研究機構(JIHS、旧国立感染症研究所の機能を引き継いだ機関)の速報によると、日本の麻しんの報告は2026年第42週(10月21日現在)までに577人です。同じ資料のグラフでは、2025年は265人、2024年は45人、2019年は744人となっています(JIHS 速報グラフ)。
| 項目(2026年第1〜42週) | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 推定感染地域:国内 | 422人 | 73% |
| 推定感染地域:国外 | 47人 | 8% |
| 国内または国外・不明 | 108人 | 19% |
| 接種歴:2回 | 195人 | 34% |
| 接種歴:1回 | 80人 | 14% |
| 接種歴:なし | 83人 | 14% |
| 接種歴:不明 | 219人 | 38% |
出典:JIHS「麻疹 発生動向調査 速報グラフ 2026年第42週」(10月21日現在、診断週にもとづく暫定値)。割合は編集部計算。
日本では7割強が国内での感染と推定されています。国外と推定された人の感染地はインドネシア(16人)、ニュージーランド(7人)などで、米国は1人でした。
日本の患者は「2回接種」が34%と、米国(2%)よりずっと多いのが目に付きます。日本の577人のうち217人は「修飾麻しん」として届け出られており、届け出の区分や検査の範囲が違うため単純には比べられません。厚生労働省は、1回の接種では抗体が十分にできない人がいること、2回接種で発症や重症化を防ぐ効果が高まることを説明しており、厚生労働省は流行の中心である10〜40代に定期接種の記録の確認と2回接種の検討を呼びかけています(厚労省リーフレット)。
米国など海外へ出かける前に確認すること
はしかは空気感染し、厚生労働省によると「手洗いやマスクだけでは、麻しんを予防することはできません」。最も有効な予防法はワクチンで、1回の接種で95%程度の人が免疫を得られ、2回受けることでより確実になるとしています(厚生労働省)。渡航前に確認したいことを、厚労省とCDCの案内からまとめました。
- 母子手帳などで接種歴を確認する:何回受けたかを記録で確かめます(厚労省「出国前」リーフレット)。記録が見つからない場合は、医療機関に相談してください。
- 定期接種を受けていない人は接種を検討する:厚労省は、定期接種を受けていない人に接種の検討を呼びかけています。CDCは、2回目までを出発の少なくとも2週間前に終えるよう勧めています。
- 乳幼児・妊娠中の人は事前に医師に相談:厚労省は、妊娠中に感染すると早産や流産のリスクがあるとして妊娠前の接種の検討を勧め、乳幼児のいる家庭には家族の接種歴の確認を呼びかけています。乳児の早めの接種の扱いは国によって異なるため、かかりつけ医に相談しましょう。
- 帰国後もしばらく体調に注意する:厚労省は帰国後2週間程度、CDCは3週間、高熱や発しん、せき、目の充血などに注意するよう案内しています。
- 疑わしい症状が出たら、受診前に電話:厚労省は、受診の前に医療機関へ電話し、なるべく公共交通機関を使わないよう求めています。渡航先と接種歴を伝えましょう。
旅行先の流行状況は、厚生労働省検疫所の「FORTH」や外務省の海外安全ホームページでも確認できます。この記事は一般的な情報です。接種するかどうかや時期、抗体検査が必要かどうかは、かかりつけ医や渡航外来に相談してください。
米国のはしかをめぐる年表
- 2000年米国が排除を宣言年間85人。国内での流行の連鎖がなくなった状態。
- 2019年排除後の最多(当時)年間1,274人。2025年まではこれが排除後の最多でした。
- 2025年1月20日米国で流行が始まるPAHOが米国の審査の起点とする日。2025年は1年間で2,289人。
- 2025年11月カナダが排除の状態を失う米州全体も「流行が定着していない地域」でなくなる(PAHO)。
- 2026年1月11〜17日週別の最多296人2025年から続く流行が年明けに急増。
- 2026年3月2日PAHOが審査を11月に変更当初予定の4月13日から定例会合へ。
- 2026年7月下旬〜再び増加8月下旬〜10月上旬は毎週約200人前後。
- 2026年10月29日4,852人に1991年以来の多さ。47の州などで発生。
- 2026年11月PAHOの定例会合米国とメキシコの排除の状態を審査(日程はPAHOが「11月」と発表)。
出典:CDCの年別・週別データ、PAHOの発表。
米国のはしかについてよくある質問
Q. 米国のはしかは2026年に何人?
A. CDCによると、10月29日時点で4,852人です(10月30日更新)。うち18人は米国を訪れた外国からの旅行者などで、47の州などで発生しています。数字は暫定値で、毎週木曜正午時点の集計が更新されます。
Q. 何年以来の多さ?
A. CDCの年別データでは、2026年より多かった最後の年は1991年(9,643人)で、35年ぶりの多さです。1985年以降で数えると、1986年・1989年・1990年・1991年に次ぐ5番目です。
Q. 米国に旅行しても大丈夫?
A. この記事で確認した厚生労働省とCDCの案内は、出発前に接種歴を確認し、必要なら接種を検討することが中心です。州によって状況が大きく違うため、行き先の州の保健当局の発表も確認すると安心です。
Q. ワクチンを2回受けていればかからない?
A. CDCによると2回接種の予防効果は97%で、完全ではありません。日本でも2回接種の記録がある人の報告があります。厚生労働省は、2回接種によって発症を防ぐだけでなく、かかっても重症化のリスクを下げられると説明しています。気になる場合はかかりつけ医に相談してください。
Q. 帰国後に熱が出たらどうすればいい?
A. 厚生労働省は、はしかを疑う症状がある場合は外出を控え、受診前に医療機関に電話し、なるべく公共交通機関を使わないよう求めています。渡航先とワクチンの接種歴を伝えましょう。
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出典・参考資料
- CDC「Measles Cases and Outbreaks」(2026年10月30日更新、10月29日正午時点の確定患者。年別・週別・州別・年齢別のデータを編集部で集計)
- CDC「Plan for Travel」(2026年4月29日)
- PAHO「Measles elimination status in the United States and Mexico」(2026年1月16日)、「Update on the review of measles elimination status」(2026年3月2日)
- 国立健康危機管理研究機構「麻疹 発生動向調査」・速報グラフ 2026年第42週(PDF)
- 厚生労働省「麻しん(はしか)」、リーフレット「海外へ渡航される方へ(出国前)」(2026年8月)、「麻しん(はしか)感染拡大しています」(2026年4月)
- 厚生労働省検疫所 FORTH「麻しんの国内外での報告増加に伴う注意喚起」
- アイキャッチ:MMRワクチン(プリオリクス)の写真(Dctrzl/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0、明るさ調整・文字入れ)


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