国際・米中間選挙
教皇レオ14世が米中間選挙に郵便投票
ローマ教皇庁(バチカン)の広報室は現地時間10月30日(金)、教皇レオ14世が米国の中間選挙に郵便で投票したと確認しました(Vatican News)。シカゴ生まれのレオ14世は米国籍を持つ初めての教皇で、米国の選挙に投票した教皇も初めてです(AP・NBC)。バチカンに住む教皇はどうやって投票できたのか。海外に住む米国人の投票制度(UOCAVA)の仕組みと、米選挙支援委員会(EAC)・国防総省の連邦投票支援プログラム(FVAP)の公表データを集計して整理しました。
この記事の結論
- 教皇庁広報室は30日、教皇が「米国市民として、資格があるときは投票の権利を行使してきた」とし、郵便投票の投票用紙を提出したと発表しました。どの候補・政党に投票したかは明らかにされていません。
- シカゴ・サンタイムズによると、教皇は郊外のニューレノックスの住所で有権者登録をしていて、10月3日に郵便投票を請求しました(ウィル郡の郡書記官事務所)。
- 海外の有権者は連邦法「UOCAVA」で不在者投票が保障されています。EACの集計で、前回の中間選挙(2022年)では654,786通の投票用紙が海外・軍の有権者に送られ、返送率は40.9%でした。
- FVAPの推計では、海外に住む投票年齢の米国人のうち2022年に投票したのは3.4%。国内に比べて大幅に低い水準です。
- 投票日は11月3日(火)。イリノイ州では、消印が投票日までなら14日後の11月17日までに届いた票が有効です(FVAP)。
教皇レオ14世の郵便投票、何が発表された?
教皇庁広報室の声明によると、レオ14世は「米国市民として、資格があるときは投票の権利を行使してきた」とし、この長年の習慣に沿ってシカゴで郵便投票の投票用紙を提出したとしています。さらに、ペルーに住んでいた時期も、資格があるときは投票していたことを教皇自身が確認したと説明しました。声明は「教皇は、市民が民主的な手続きに参加する権利と義務を信じている」と結んでいます(Vatican News)。
投票の事実を最初に報じたのは地元紙のシカゴ・サンタイムズです。同紙によると、ウィル郡の郡書記官事務所の幹部が、教皇の本名「ロバート・フランシス・プレボスト」が郵便投票の請求者の名簿にあると認めました。教皇はシカゴ郊外のニューレノックスの住所で有権者登録をしていて、請求日は10月3日でした。
誰に投票したかは公表されていない
教皇庁の声明は、投票したという事実だけを伝えていて、候補者や政党には触れていません。APは、イリノイ州選挙管理委員会の記録にはどの候補を支持したかは記録されていないと伝えています。米国の投票は秘密投票なので、本人が明かさない限り分かりません。
サンタイムズによると、教皇の投票用紙には、引退するディック・ダービン上院議員の後任を選ぶ連邦上院選、州知事選、ウィル郡の判事や郡の役職の選挙などが載っています。APによると、今回イリノイ州全体で問う住民投票の項目はありません。
「初めての教皇」の意味
APは「米国の総選挙に投票した初の教皇」、NBCは「2025年5月に初の米国人教皇になったことで、米国の選挙に投票する初の教皇になる」と伝えています。米国籍を持つ教皇がこれまでいなかったため、米国の選挙に投票できた教皇も初めて、ということです。
請求から投票日まで:教皇の郵便投票の日程
- 2025年5月教皇に選出シカゴ生まれのロバート・プレボスト枢機卿が教皇レオ14世に(BBC)。米国籍を持つ初めての教皇です。
- 9月19日連邦法の「45日前」UOCAVAは、45日前までに請求があった海外・軍の有権者に、投票日の45日前(今回は2026年9月19日)までに投票用紙を送るよう州に求めています(当サイトで日付を計算)。
- 10月3日(土)郵便投票を請求ウィル郡の郡書記官事務所によると、教皇がこの日に請求しました(サンタイムズ)。投票日の31日前です。
- 10月5日イリノイ州の請求期限の一つFVAPによると、帰国の意思がある海外在住者がイリノイ州で通常の投票用紙を受け取るための請求の期限です(それ以降は連邦選挙だけの投票用紙)。
- 10月中旬右肺の手術APによると、請求の約10日後に右肺のがんの手術を受けました。
- 10月29日(木)郡にはまだ届かず郡書記官事務所はNBCに対し、記入済みの投票用紙はまだ受け取っていないと話しました。投票用紙はバチカンからイリノイ州ジョリエットへ戻ります(NBC)。
- 10月30日(金)教皇庁が投票を確認教皇庁広報室が「郵便投票の投票用紙を提出した」と発表しました。どのように返送したかは分かっていません(AP)。
- 11月3日(火)中間選挙の投票日FVAPによると、イリノイ州の海外からの票は、この日までに署名・消印があることが条件です。
- 11月6〜17日南米訪問教皇はウルグアイ・アルゼンチン・ペルーを訪れる予定です(教皇庁広報室)。
- 11月17日(火)イリノイ州の到着期限FVAPによると、投票日から14日後までに届いた票が有効です(当サイトで日付を計算)。
日付は米国・バチカンの現地時間。2026年の日付。Chicago Sun-Times、AP、NBC、BBC、Vatican News、教皇庁広報室、FVAP(イリノイ州のページ)、米国法典52編20302条から作成。
教皇の国籍は米国・ペルー、そしてバチカンの元首
APによると、レオ14世は米国とペルーの国籍を持ち、同時に外国(ローマ教皇庁)の元首でもあります。ペルーでは宣教師の司祭・司教として20年以上暮らしました。バチカン市国は絶対君主制の国で、政治的な選挙はありません(AP)。教皇が「投票」できるのは、国籍を持つ米国とペルーの選挙ということになります。
外国政府で働く米国人が自動的に米国籍を失うわけではありません。ただしAPによると、米国務省はウェブサイトで、外国の元首・政府の長・外相を務める米国人については国籍の扱いを「積極的に確認する」ことがあるとしています。
ここで分かること・分からないこと
分かっているのは「郵便投票の請求」(郡の記録)と「投票用紙を提出した」(教皇庁の発表)までです。投票用紙が郡に届いたかどうか、どのように送ったかは、11月1日時点で公表されていません。投票先は明かされておらず、推測で書くことはしません。
海外に住む米国人はどうやって投票する?UOCAVAの仕組み
海外に住む米国人の投票は、1986年の連邦法「軍人・海外在住市民不在者投票法(UOCAVA)」で保障されています。米国法典52編20302条は、各州に対し、軍関係者と海外在住の有権者が不在者登録をし、連邦の選挙に不在者投票で投票できるようにすることを義務づけています。教皇のように外国政府で働く人も対象から外れません(AP)。
投票の流れは、①住所があった州(教皇ならイリノイ州)の郡に登録と投票用紙を請求、②郡が郵便・メールなどで投票用紙を送付、③記入して返送、の3段階です。連邦法は、45日前までに請求があった場合は投票日の45日前までに投票用紙を送るよう定めています。
イリノイ州では「不在者投票」ではなく「郵便投票」
イリノイ州選挙管理委員会の広報担当者はサンタイムズに、州法にはもう「不在者投票」という区分はなく、登録している有権者なら誰でも郵便で投票できると説明しました。2010年までは理由が必要な不在者投票の扱いでしたが、その条件はなくなったといいます。教皇庁の声明が「mail-in ballot(郵便投票)」と表現しているのはこのためとみられます。教皇がUOCAVAの手続きと州の一般の郵便投票のどちらで請求したかは、報道からは分かりません。
| 区分(イリノイ州) | 投票用紙の請求 | 返送 |
|---|---|---|
| 海外在住(帰国の意思あり) | 10月5日までに到着(以降は連邦選挙のみの用紙) | 11月3日までに署名・消印、11月17日までに到着 |
| 海外在住(帰国の意思が未定) | 10月26日までに到着(連邦選挙のみの用紙) | 同上 |
| 軍関係者とその家族 | 10月26日までに到着 | 同上 |
FVAP「Illinois」の2026年11月3日の総選挙の期限表から作成(2026年11月1日に閲覧)。返送の到着期限(投票日から14日後)は当サイトで日付に換算。
海外・軍からの投票は何通?EACのデータで集計
米選挙支援委員会(EAC)は、選挙のたびに全米の選挙管理区域(2024年は6,461区域)からデータを集める「選挙管理・投票調査(EAVS)」を公開しています。その公開データ(CSV)のUOCAVAの項目を当サイトで足し合わせ、EACの報告書の全国値と一致することを確かめました。
| 選挙 | 送付 | 返送 | 集計 | 返送率(EAC公表) |
|---|---|---|---|---|
| 2018年 中間選挙 |
655,409 | 344,392 | 338,271 | 53.2% |
| 2022年 中間選挙 |
654,786 | 267,403 | 257,657 | 40.9% |
| 2024年 大統領選 |
1,327,324 | 806,743 | 905,343 | 68.4% |
単位は通。送付=選挙事務所が海外・軍の有権者に送った投票用紙、返送=有権者から戻った数、集計=有効票として数えた数。一部の州は返送数を報告していないため、2024年は集計が返送を上回ります。返送率はEACの算出(両方を報告した州のみで計算)。
前回の中間選挙(2022年)では654,786通が送られ、返送は267,403通でした。EACは、2018年の344,392通から約22.4%減ったとしています。大統領選の2024年は送付が1,327,324通と2022年の2.03倍に増え、大統領選の年に比べて中間選挙の年は送付数が少ないことが分かります。
海外在住の民間人と軍関係者の返送率
EAVSは送付・返送を「軍関係者とその家族」と「海外在住の民間人」に分けて集めています。両方を報告した選挙区域だけで当サイトが返送率を計算すると、教皇と同じ海外在住の民間人のほうが返送率は高めでした。2022年に送られた投票用紙の64.2%は民間人あてです。
| 選挙 | 全体 | 海外在住の民間人 | 軍関係者 |
|---|---|---|---|
| 2018年 | 53.3% | 57.8% | 46.1% |
| 2022年 | 40.6% | 42.0% | 37.3% |
| 2024年 | 68.4% | 70.2% | 64.5% |
EAC「EAVS」公開CSV(2018年版v1.1、2022年版v1、2024年版v2)から当サイトで計算。送付数と返送数の両方を報告した選挙区域のみ。EACの公表値(州単位で計算)とはわずかに異なります。
イリノイ州とウィル郡では
2024年の大統領選で、イリノイ州は海外・軍の有権者に26,437通を送り、19,663通が戻りました。教皇が登録しているウィル郡は送付905通、返送617通、集計605通で、返送率は68.2%です(当サイト計算)。前回の中間選挙(2022年)のウィル郡は送付139通、返送102通、集計99通(返送率73.4%)でした。
海外在住の米国人は何人、何%が投票している?
海外に住む米国人の全員名簿は存在しないため、FVAPは各国政府の統計と州の投票記録などを組み合わせて「海外在住市民人口分析(OCPA)」という推計を出しています。中間選挙の年の推計をまとめると次のとおりです。
| 年 | 地域 | 投票用紙の請求 | 投票の記録 | 請求した人のうち投票 |
|---|---|---|---|---|
| 2018年 | 海外全体 | 289,838人 (10.1%) |
135,507人 (4.7%) |
46.8% |
| 2018年 | 欧州 | 137,698人 (13.5%) |
69,623人 (6.8%) |
50.6% |
| 2022年 | 海外全体 | 296,748人 (10.6%) |
94,927人 (3.4%) |
32.0% |
| 2022年 | 欧州 | 128,641人 (13.6%) |
44,834人 (4.7%) |
34.9% |
FVAP「2018 Overseas Citizen Population Analysis」「2022 OCPA Technical Report」の表4から作成。かっこ内は投票年齢の海外在住米国人に対する割合(FVAP推計)。右端の列は当サイトで計算(投票の記録÷請求者)。
2022年の推計では、海外在住の米国人は約4.4百万人(440万人)、そのうち投票年齢は2,794,558人で、投票の記録が確認できたのは3.4%でした。当サイトで計算すると、投票用紙を請求した人のうち実際に投票の記録があったのは2018年の46.8%から2022年は32.0%に下がっています。欧州は請求率が高い地域ですが、同じく50.6%から34.9%に下がりました。
大統領選の2024年について、FVAPは海外在住の米国人を約330万人、投票年齢を約220万人と推計し、そのうち11%が投票したとしています。FVAPは推計方法を見直すことがあり、2022年の報告書も過去の報告書とは数字が一致しないと注記しているため、年ごとの単純な比較には注意が必要です。
日本に住む米国人も多い
FVAPの2024年の議会報告によると、投票年齢の米国人が多い国・地域はカナダ、英国、日本、イスラエル、フランスの順です。日本に住む米国人も、教皇と同じUOCAVAの仕組みで、自分の州に投票用紙を請求して投票します。

米中間選挙は11月3日、今後の注目点
中間選挙の投票日は11月3日(火)です。Vatican Newsによると、下院は全435議席、上院は100議席のうち35議席が改選され、36州で知事選も行われます。BBCによると、多くの州ではすでに期日前投票が始まっています。日本時間で結果がいつ分かるかは、関連記事で州ごとの締め切り時刻をまとめています。
今後の注目点
- 教皇の投票用紙がウィル郡に届いたかどうか(イリノイ州の到着期限は11月17日)
- 教皇庁や教皇自身が、投票について追加の説明をするか
- 11月6〜17日の南米訪問(ペルーは教皇がもう一つの国籍を持つ国)
この記事の立場
この記事は、特定の政党や候補者を支持・批判するものではありません。教皇の投票先は公表されておらず、推測もしていません。発言や事実関係は公式発表と報道の内容を要約して紹介しています。新しい発表があれば追記します。
教皇の郵便投票についてよくある質問
Q. 教皇レオ14世はいつ、どこで投票したの?
A. 教皇庁広報室は2026年10月30日、教皇が郵便投票の投票用紙を提出したと確認しました。教皇はイリノイ州ウィル郡ニューレノックスの住所で有権者登録をしていて、10月3日に郵便投票を請求しています(シカゴ・サンタイムズ)。いつ投函したかは公表されていません。
Q. 教皇は誰に投票したの?
A. 公表されていません。教皇庁の声明は投票した事実だけを伝えていて、APによると選挙管理委員会の記録にも支持した候補は残りません。米国は秘密投票です。
Q. バチカンの元首が米国の選挙に投票していいの?
A. APによると、米国の連邦法は外国政府で働く人も含め、海外に住む米国市民の不在者投票を認めています。教皇は米国とペルーの国籍を持っています。
Q. 海外に住む米国人はどれくらい投票している?
A. EACの集計で、2022年の中間選挙では海外・軍の有権者に654,786通の投票用紙が送られ、返送率は40.9%でした。FVAPの推計では、投票年齢の海外在住米国人のうち2022年に投票したのは3.4%です。
Q. 米中間選挙の投票日はいつ?
A. 2026年11月3日(火)です。イリノイ州では、海外からの票は投票日までに署名・消印があり、11月17日までに届けば有効です(FVAP)。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- Vatican News「Pope Leo XIV votes in US midterm elections via mail-in ballot」(2026年10月30日)
- 米国法典52編20302条(UOCAVA、Cornell LII)
- FVAP「Illinois」(期限表)、「State of the Overseas Voter」、2022 OCPA Technical Report、2018 OCPA、2024 Post-Election Report to Congress
- 米選挙支援委員会(EAC)「EAVS Datasets」(2018・2022・2024年の公開CSV)、報告書(2018年・2022年・2024年)
- Chicago Sun-Times「Pope Leo will vote from the Vatican, by mail, in Illinois midterm election」(2026年10月29日公開・30日更新)
- AP(PBS News掲載)「Leo XIV has become the first pope in history to vote in a U.S. general election」(2026年10月30日)
- NBC News「Pope Leo casts absentee ballot in Illinois to vote in the midterms」(2026年10月30日)
- BBC「Pope Leo XIV casts historic vote in US midterm election」(2026年10月30日)
- 写真:Wikimedia Commonsのフリーライセンス画像(リサイズ)。アイキャッチは2025年5月のメディア向け謁見でのレオ14世(Edgar Beltrán, The Pillar、CC BY-SA 4.0、トリミング・明るさ調整・文字入れ)


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