日本の動物園・水族館には、その1か所に行かなければ二度と会えない動物がいます。国内にたった1頭しかいないジュゴン、1頭だけのコモドオオトカゲ、1羽だけのパプアヒクイドリ。どれも次の1頭が来る見込みはほとんどありません。この記事では、2026年時点で「日本でここだけ」になっている動物17種を、会える施設・頭数・その動物ならではのすごさとあわせてまとめました。
ここだけ17種
たった1頭・1羽
4種を独占
ほぼ無い
日本でここだけの動物17種【一覧表】
まず全体像です。「国内飼育数」は各園館の公表値をもとにした2026年時点の数字で、非公開のバックヤード個体を含む場合があります。
| 動物 | 会える場所 | 国内飼育数 |
|---|---|---|
| ジュゴン | 鳥羽水族館(三重) | 1頭 |
| アフリカマナティー | 鳥羽水族館(三重) | 1頭 |
| ラッコ | 鳥羽水族館(三重) | 2頭 |
| アマゾンマナティー | 熱川バナナワニ園(静岡) | 1頭 |
| コモドオオトカゲ | 東山動植物園(愛知) | 1頭 |
| ラーテル | 東山動植物園(愛知) | 1頭 |
| ホライモリ | 碧南海浜水族館(愛知) | 展示は国内唯一 |
| キンシコウ | 熊本市動植物園(熊本) | 1頭 |
| ベアードバク | 金沢動物園(神奈川) | 展示1頭 |
| パプアヒクイドリ | とべ動物園(愛媛) | 1羽 |
| ウンピョウ | よこはま動物園ズーラシア | 国内唯一 |
| ドール | よこはま動物園ズーラシア | 国内唯一 |
| テングザル | よこはま動物園ズーラシア | 国内唯一 |
| セスジキノボリカンガルー | よこはま動物園ズーラシア | 2頭 |
| アイアイ | 上野動物園(東京) | 約10頭 |
| タスマニアデビル | 多摩動物公園(東京) | 2頭(アジア唯一) |
| クオッカ | 埼玉県こども動物自然公園 | 11頭 |
国内にたった1頭しかいない動物
ジュゴン「セレナ」/鳥羽水族館
人魚のモデルといわれるジュゴン。日本で会えるのは三重県・鳥羽水族館のメス「セレナ」ただ1頭です。フィリピンから来館したのが1987年4月15日で、2026年4月に入館39周年を迎えました。飼育日数の世界記録を更新し続けている個体でもあります。
そもそもジュゴンを飼育している水族館は、世界でもわずか3館だけ。沖縄の野生のジュゴンも10頭未満とされ、一度は「地域絶滅か」と報告されましたが、その後の研究で今も琉球列島に生息していることが確認されています。
アフリカマナティー「みらい」/鳥羽水族館
同じ鳥羽水族館には、日本で1頭だけのアフリカマナティー「みらい」もいます。長く展示されていたオス「かなた」は2024年7月に亡くなりました。
マナティーは草食の海獣ですが、アフリカマナティーだけは貝なども食べる雑食性で、これは他の2種には見られない特徴です。エサとして食べた記録のある水生植物は70種類以上。人魚のモデルといわれるジュゴンとアフリカマナティーに同じ場所で会えるのは、世界的にも貴重な機会です。
アマゾンマナティー「じゅんと」/熱川バナナワニ園
静岡県の温泉地・熱川には、日本でただ1頭のアマゾンマナティー「じゅんと」がいます。1969年に来園し、2026年で飼育57年目・推定62歳という世界的な長寿個体です。鳥羽のアフリカマナティーとあわせると、いまの日本では世界に3種いるマナティーの全種を見ることができます。
くわしくはアマゾンマナティーは日本でここだけ|熱川の推定62歳じゅんとの物語で解説しています。
コモドオオトカゲ「タロウ」/東山動植物園
体長3メートル、体重70キロを超える世界最大のトカゲ。日本で会えるのは名古屋の東山動植物園にいるオスの「タロウ」ただ1頭で、2024年7月に来園しました。
かつては「口の中の細菌で獲物を殺す」と説明されてきましたが、2009年の研究でこれは誤りとされ、血液の凝固を妨げる毒を持つことが分かりました。さらに2024年7月には、のこぎり状の歯の先端が鉄でコーティングされていることが判明(Nature Ecology & Evolution)。爬虫類でこの構造が確認されたのは初めてです。メスだけで子を産む単為生殖ができることも2006年に確認されています。
ラーテル「ザビー」/東山動植物園
ギネスブックに「世界一こわいもの知らずの動物」として載ったラーテル(ミツアナグマ)。体長1メートルにも満たないのに、ライオンやアフリカスイギュウにも立ち向かいます。
毒ヘビを食べ、コブラに噛まれても耐えられる毒への耐性を持ち、分厚くゆるい皮膚のおかげで噛みつかれても体をひねって反撃できます。柵をよじ登る脱走の名人としても有名です。そんなラーテルも、日本にいるのは東山動植物園のメス「ザビー」ただ1頭。オスの「フラン」は2025年3月に亡くなりました。
キンシコウ「優優」/熊本市動植物園
金色の毛と真っ青な顔をもつサル、キンシコウ。日本で会えるのは熊本市動植物園のメス「優優(ヨウヨウ)」ただ1頭です。
よく「孫悟空のモデル」と紹介されますが、これは誤解とされています。1980年の雑誌記事で専門家が「そうかもしれない」と語ったのが広まったもので、本人が1985年の記事で勘違いであったと訂正しています。学名の「roxellana」は、鼻が上向きだったと伝わるオスマン帝国スレイマン1世の后ロクセラーナに由来するといわれます。ワシントン条約附属書Iに掲載された絶滅危惧種で、かつては他の動物園でも飼育されていましたが、今は熊本だけです。
ベアードバク「アグア」/金沢動物園
ベアードバクは中米でいちばん大きな陸の動物で、体長180〜250cm、体重は150〜300kgにもなります。鼻が長いのでゾウの仲間に見えますが、実際はウマやサイに近い仲間です。赤ちゃんは縞と水玉の模様で、イノシシのウリ坊のよう。森の中で見つかりにくくするための模様といわれます。
日本で会えるのは横浜市立金沢動物園のオス「アグア」ただ1頭。1995年生まれで、バクの寿命が20〜30年とされるなか、2026年で31歳のご長寿です(横浜市繁殖センターに非公開のオス「ファビオ」がいます)。
なお、悪い夢を食べてくれる「獏(ばく)」は中国生まれの空想上の生き物で、実在のバクとは別物です。もともとは鉄や銅を食べるとされ、日本に伝わる過程で「悪夢を食べる」と解釈されるようになったと考えられています。
パプアヒクイドリ「セロム」/とべ動物園
青い顔にオレンジの首、頭にはヘルメットのような硬いカブト。パプアヒクイドリに日本で会えるのは、愛媛県立とべ動物園のメス「セロム」ただ1羽です。1989年生まれで、2026年時点の推定年齢は37歳。
別名は「ヒトニクダレヒクイドリ」。人肉ではなく「一・肉垂(ひとにくだれ)」で、のどにぶら下がる肉垂が1本しかないことに由来します。近縁のヒクイドリは肉垂が2本あるので「二肉垂」。とべ動物園では、その2種を見比べることもできます。足の指は3本で、内側の指の爪がとても長く、これが最大の武器。ヒクイドリの仲間が「世界一危険な鳥」と呼ばれるのは、この爪と強烈な蹴りのためです。
ホライモリ/碧南海浜水族館
バルカン半島の洞窟にすむ両生類ホライモリ(Proteus anguinus)。真っ暗な地下で暮らすため目は皮膚におおわれて退化し、代謝を極限まで落として何年も餌なしで生きられます。研究では7年ものあいだ、ほとんど同じ場所から動かなかった個体も記録されました。寿命はおよそ100年で、ヨーロッパでは古くから「ドラゴンの子」と信じられてきた生き物です。
日本で会えるのは愛知県の碧南海浜水族館だけ。2005年の愛・地球博のあと、クロアチアから寄贈された個体です。
「日本でここだけ」を4種も抱えるズーラシア
よこはま動物園ズーラシアは、国内唯一の動物を4種も飼育している特異な園です。1日で4種すべてに会えます。
ウンピョウ|現代のサーベルタイガー
上あごの犬歯は4センチを超え、体の大きさに対する犬歯の長さは現生のネコ科で最長。「現代のサーベルタイガー」とも呼ばれます。体重は20キロほどでヒョウよりずっと小型ですが、暮らしの舞台は木の上。後ろ足の足首が回転するため、頭を下に向けたまま幹を駆け下り、枝から後ろ足だけでぶら下がることもできる「木の上の忍者」です。かつては天王寺動物園(2018年まで)や熊本市動植物園(2020年まで)でも飼育されていました。
ドール|口笛で会話するイヌ
「ホーホーホー」と口笛のような声で鳴くイヌ科の動物、ドール(別名アカオオカミ)。京都大学野生動物研究センターの研究では、この鳴き声を聞いた「離れた場所にいる姿の見えない仲間」が立ち止まって耳を傾けたり、鳴き返したりすることが確認されています。遠くの仲間どうしで居場所を知らせ合っていると考えられています。
群れは数頭から10頭ほど、多いときは20〜40頭。集団で狩りをして、シカやイノシシ、スイギュウのような自分より大きな草食動物も仕留めます。野生では数が減り、絶滅危惧IB類(EN)に指定されています。
テングザル|鼻が大きいほどモテる
野生ではボルネオ島にしかすまないテングザル。オスの鼻は10cmを超えることもあり、この鼻は声を大きく響かせる役割があると考えられています。鼻が大きいほどハレムの中にたくさんのメスがいるとも言われます。一方で食事のときには邪魔になり、ときどき片手で鼻を押し上げながら食べ物を口に運びます。
おなかが大きく出ているのは太っているからではありません。ウシのように胃の中で葉を発酵させて分解する仕組みを持ち、かたい葉を消化するために大きなおなかが必要なのです。さらに指には水かきがあり、水中を20mほど泳げる霊長類でも屈指の泳ぎ上手です。
セスジキノボリカンガルー|木の上で暮らすカンガルー
カンガルーといえば草原を跳ねる動物ですが、キノボリカンガルーの仲間は一生のほとんどを木の上ですごします。ズーラシアにはメスの「タニ」とオスの「モアラ」の2頭。
体つきは地上のカンガルーとは逆で、木をつかむ前足がたくましく、後ろ足は小さめ。カンガルーの仲間で後ろ足を左右交互に動かして歩けるのはキノボリカンガルーだけなので、細い枝の上も歩いていけます。木から地面へ降りるときは、高さ18メートルから飛び降りてもケガをしません。世界の動物園にいるのも55頭ほどで、国際的な血統管理が行われています。
首都圏で会えるレア動物
アイアイ/上野動物園
「アイアイ、アイアイ、おさーるさーんだよ」の童謡でおなじみですが、本物に会える場所は日本では上野動物園ただ1か所です。マダガスカル島だけにすむ夜行性の霊長類で、上野動物園はマダガスカル国立チンバザザ動物園などと連携し、これまでに19回の繁殖に成功しています。
最大の特徴は、異様に細長い中指。木の幹をコンコンと叩き、大きな耳でひびきを聞いて中にひそむ幼虫を探し当て、鋭い前歯で穴を開けて中指でかき出します。その前歯はネズミのように一生のび続けるため、かつてはリスの仲間だと考えられていました。さらに2019年、手首に小さな「6本目の指」があることが発見されています(霊長類で余分な指が見つかったのはアイアイが初めて)。
タスマニアデビル/多摩動物公園
世界最大の肉食有袋類。夜の森に響く不気味な叫び声が「悪魔」の名の由来です。いま野生では「うつる癌(デビル顔面腫瘍性疾患)」が噛みつき合いで感染して数が激減しています。アジアで飼育しているのは多摩動物公園の姉妹2頭だけで、2026年で飼育10年目を迎えました。
クオッカ/埼玉県こども動物自然公園
「世界一しあわせな動物」と呼ばれるクオッカ。日本で会えるのは埼玉県こども動物自然公園ただ1か所です。2020年に4頭を迎え、毎年のように繁殖に成功して現在は11頭の大家族に。2025年2月には日本生まれの2世代目も誕生しています。
しあわせそうに見えるのは口もとの形のため。口角が上がった顔立ちのおかげで、いつも笑っているように見えます。見た目はネズミのようですが、れっきとしたカンガルーの仲間で、短い尾に脂肪をためられるため、水や食べ物がない状況でもしばらく生きのびられます。
ラッコ/鳥羽水族館
1994年前後には日本の水族館に120頭以上いたラッコが、いまは鳥羽水族館の2頭だけです。しかも2頭ともメスのため、国内での繁殖はもう不可能。日本のラッコは「ここだけ」であると同時に、いずれ0頭になることが決まっている動物でもあります。
なぜ「ここだけ」になってしまうのか
共通する理由は、次の1頭を連れてこられないことです。ワシントン条約附属書Iに載る種は商業目的の輸入ができず、家畜伝染病予防法や感染症法の輸入規制もあります。国際的な血統管理(ブリーディングローン)で貸し借りするにも、相手園との交渉と多額の輸送・検疫費用が必要です。
そこに施設の高齢化と予算の制約が重なり、1頭が亡くなるとそのまま国内ゼロになる——という流れが繰り返されています。実際、フォッサやキーウィはこの数年で国内ゼロになりました。
その構造は日本の動物園から消えた動物2026|パンダ0頭の裏で起きていることでくわしく解説しています。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本に1頭しかいない動物は何種類いますか?
A. 2026年時点で確認できるだけでも、ジュゴン、アフリカマナティー、アマゾンマナティー、コモドオオトカゲ、ラーテル、キンシコウ、ベアードバク(展示個体)、パプアヒクイドリの8種が「国内に1頭・1羽だけ」です。
Q. 一番効率よくレア動物に会える動物園はどこですか?
A. よこはま動物園ズーラシアです。ウンピョウ・ドール・テングザル・セスジキノボリカンガルーという国内唯一の4種を1日で見られます。水族館なら鳥羽水族館で、ジュゴン・アフリカマナティー・ラッコの3種がそろいます。
Q. ジュゴンとマナティーの違いは何ですか?
A. いちばん分かりやすいのは尾びれの形で、ジュゴンはイルカのような三日月形、マナティーはしゃもじのような丸い形です。ジュゴンは海草だけを食べる海の動物、マナティーは川や湖にも入り、幅広い水草を食べます。
Q. これらの動物は今後増える見込みがありますか?
A. 種によります。クオッカは国内繁殖が続いて11頭まで増え、アイアイも上野動物園で19回の繁殖に成功しています。一方で1頭しかいない種や、同性2頭しか残っていないラッコは、国内での繁殖ができません。
Q. 会いに行くときに気をつけることはありますか?
A. 高齢個体や体調によって展示を休むことがあります。とくに1頭しかいない動物はバックヤードに入ると会えないため、訪問前に園館の公式サイトやSNSで展示状況を確認するのが確実です。
まとめ|「いつでも会える」わけではない
ここで紹介した17種は、いずれもその施設に行かなければ日本では二度と見られない動物です。しかも多くが高齢で、後継個体のあてがありません。パンダ0頭、キーウィ0頭、フォッサ0頭という変化がこの数年で立て続けに起きたことを考えれば、「そのうち行こう」は思っているより危うい判断です。
気になる動物がいたら、開いているうちに会いに行くのがいちばん確実です。
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