千葉の記録的大雨で災害救助法が適用。
適用されると、住民は何を受けられるのか
2026年8月13日から続く記録的な大雨で、千葉県内の19市2町に災害救助法が適用されました。ニュースでよく聞く言葉ですが、実際に適用されると何が変わるのか。13種類の救助と金額の目安、罹災証明書との違いまで整理します。
2026年8月14日 公開|内閣府・千葉県の発表(8月14日時点)にもとづき作成しています。適用市町村は今後さらに追加される可能性があります。
千葉県で何が起きているのか
2026年8月13日、千葉県では線状降水帯が発生し、記録的な大雨となりました。気象庁は同日20時30分、千葉市や市川市など県内14市にレベル5の大雨特別警報を発表。千葉市では12時間降水量348.0ミリと、観測史上1位を更新する雨が降りました。8月ひと月分の3倍にあたる量です。
- 8月13日 日中〜夜 線状降水帯が発生次々と発達した積乱雲が同じ場所を通過し、狭い範囲に短時間で猛烈な雨が降り続きました。
- 8月13日 20時30分 14市にレベル5大雨特別警報これまでに経験したことのないような大雨のときに出される、最大級の警報です。土砂災害の特別警報も出されました。
- 8月13日 千葉県が災害救助法の適用を決定県は同日付で適用を決め、内閣府も第1報を公表。当初は18市が対象でした。
- 8月14日 5時30分 特別警報をレベル4の危険警報などへ切り替え雨のピークは越えましたが、土砂災害や河川の増水への警戒はその後も続いています。
- 8月14日 災害救助法の対象が19市2町に拡大内閣府の第2報で館山市・白子町・長柄町が加わりました。人的被害も広がっています。
報道によると、8月14日朝の時点で県内では死者4人、心肺停止1人、行方不明1人が確認されています。数字や適用市町村は刻々と変わるため、避難や支援の判断は必ずお住まいの自治体と気象庁の最新発表を確認してください。
災害救助法とは?ひとことで言うと「応急期の救助」の法律
災害救助法は1947年(昭和22年)にできた法律で、災害が起きた直後の応急救助を担当します。復旧・復興の段階を支える被災者生活再建支援法や災害弔慰金法とは、役割がはっきり分かれています。
ポイントは、救助の実施主体が市町村から都道府県に移ることです。ふだんの災害では市町村が自前の予算で避難所を開きますが、災害救助法が適用されると都道府県が実施主体となり、費用は都道府県と国が負担します。市町村の費用負担はゼロになります(法第21条ほか)。
| 比べる点 | 適用されない場合 | 適用された場合 |
|---|---|---|
| 救助の実施主体 | 市町村 | 都道府県(市町村へ委任も可) |
| 市町村の費用負担 | あり | なし |
| 国の負担 | 原則なし | 費用の50〜90% |
| 被災者の自己負担 | 自治体の制度による | 原則なし(現物での救助) |
災害救助法は、被災者が申し込んでお金をもらう制度ではなく、行政が避難所や食事、住宅の修理といった「現物」で救助するための法律です。住民の側から見ると「自治体の支援メニューが一気に増え、無料になる」というイメージが近いでしょう。
適用されると受けられる救助13種類と金額の目安
救助の種類は法律と政令で決まっており、2025年(令和7年)6月に「福祉サービスの提供」が追加されて13種類になりました。能登半島地震で、高齢者や障害のある人への支援が避難所で行き届かなかった教訓が反映されたものです。
金額は内閣府が定める「一般基準」の上限です。被災者に請求されるものではなく、自治体が使える費用の目安と考えてください。
| 救助の種類 | おもな内容 | 費用の限度額(一般基準) |
|---|---|---|
| 1. 避難所の設置 | 体育館などの開設・運営、冷暖房やパーティションの設置 | 1人1日あたり360円以内 |
| 2. 応急仮設住宅の供与 | プレハブ仮設の建設、民間賃貸住宅の借り上げ(みなし仮設) | 1戸あたり平均708万9000円以内 |
| 3. 炊き出しなどによる食品の給与 | おにぎり・弁当・パンなどの提供 | 1人1日あたり1390円以内 |
| 4. 飲料水の供給 | 給水車の派遣、ペットボトルの配布 | 実費 |
| 5. 被服・寝具など生活必需品の給与 | 毛布、下着、タオル、炊事道具など | 4人世帯・夏季で4万6200円以内など |
| 6. 医療および助産 | 救護所の設置、医療チームの派遣、出産の介助 | 実費 |
| 7. 被災者の救出 | 行方不明者の捜索、生き埋め者の救出 | 実費 |
| 8. 福祉サービスの提供 | 高齢者・障害者・妊産婦らへの福祉的な支援(2025年追加) | 実費 |
| 9. 住宅の応急修理 | 屋根・外壁・トイレなど、日常生活に必要な部分の修理 | 半壊以上73万9000円以内/準半壊35万8000円以内 |
| 10. 学用品の給与 | 教科書、文房具、通学用品 | 小学生5500円以内/中学生5800円以内 |
| 11. 埋葬 | 棺、骨つぼ、火葬の費用 | 大人23万2200円以内 |
| 12. 遺体の捜索・処理 | 捜索、洗浄、一時保存 | 1体あたり3700円以内など |
| 13. 障害物の除去 | 住居に流れ込んだ土砂・流木・家具などの撤去 | 1世帯あたり14万3900円以内 |
屋根を直せば住み続けられる、というケースで使える制度です。2023年からは被害の拡大を防ぐ緊急の修理(1世帯5万3900円以内)も対象に加わり、ブルーシート張りのような応急処置も認められるようになりました。かつては応急修理を選ぶと仮設住宅に入れませんでしたが、2020年からは修理が終わるまでのあいだ仮設住宅を使えるようになっています。条件は自治体ごとに運用が異なるため、着工前に必ず窓口へ相談してください。
そもそも、どんなときに適用されるのか
適用の基準は災害救助法施行令第1条に4つ定められています。今回の千葉県は第4号による適用です。
| 号 | 基準の考え方 |
|---|---|
| 第1号〜第3号 | 市町村や都道府県の人口に応じて、一定数以上の住宅が全壊した場合 |
| 第4号 | 多数の人が生命または身体に危害を受け、または受けるおそれが生じ、継続的に救助が必要な場合 |
第4号は住宅の全壊数を数えなくても適用できるため、被害の全容がわからない発災直後でも早く適用できるのが特徴です。今回、千葉県が大雨のさなかである8月13日のうちに適用を決められたのは、この号があるからです。
さらに2021年の法改正で、大規模災害の「おそれ」の段階でも国が災害対策本部を設置すれば適用できるようになりました。空振りを恐れず先に動ける仕組みが、少しずつ整えられてきています。
罹災証明書・被災者生活再建支援法との違い
混同されやすい3つの制度を並べると、役割の違いがはっきりします。
| 制度 | タイミング | 受け取るもの | 手続き |
|---|---|---|---|
| 災害救助法 | 発災直後の応急期 | 避難所・食事・住宅の応急修理など、現物の救助 | 原則不要(修理などは申請あり) |
| 罹災証明書 | 落ち着いてから | 被害の程度を証明する書類 | 市区町村へ申請し、調査を受ける |
| 被災者生活再建支援法 | 復旧・復興期 | 支援金(最大300万円) | 罹災証明書を添えて申請 |
罹災証明書の判定も、支援金も、保険金も、出発点は被害の記録です。浸水した高さがわかるように、外観・部屋ごと・家電・床上の水位を、日付がわかる形で撮っておきましょう。掃除を始めてしまうと証拠が消えてしまいます。
いま被災地で気をつけたいこと
大雨のあとは、二次被害のほうが件数としては多くなります。特に今年は猛暑と重なっているため、片づけ作業の熱中症に注意が必要です。
避難生活での注意
車中泊は感染症対策やプライバシーの面で選ばれがちですが、エコノミークラス症候群と車内の高温という別のリスクを抱えます。足を動かす、水分をとる、日陰に停めるといった対策をセットで考えてください。くわしくは車中泊避難はなぜ危険?熱中症・エコノミークラス症候群の対策で解説しています。
片づけ作業での注意
浸水した水には下水や油が混じっています。長袖・長ズボン・厚手のゴム手袋・底の厚い靴を必ず着け、けがをしたらすぐ洗って消毒してください。ボランティアを頼む場合は、地元の社会福祉協議会が設置する災害ボランティアセンターが窓口になります。
次の大雨への備え
線状降水帯は、発生してから避難しても間に合わないことがあります。ゲリラ豪雨はなぜ起こる?前兆サイン4つで紹介した空の変化や、気象庁のキキクル(危険度分布)を、雨が強まる前に見る習慣をつけておくと安全度が上がります。
よくある質問
Q. 災害救助法が適用されたら、お金がもらえるのですか?
A. 直接お金が振り込まれる制度ではありません。避難所や食事、住宅の応急修理といった「現物」で救助が行われます。現金の支援は、被災者生活再建支援法による支援金(最大300万円)や災害弔慰金など、別の制度が担当します。
Q. 自分の住む市が対象になっているか、どこで確認できますか?
A. 内閣府(防災担当)が「災害救助法の適用について」というお知らせを第1報、第2報と順次公表しており、対象市町村の一覧が載っています。県の防災危機管理部のページでも同じ内容が確認できます。
Q. 適用市町村に住んでいれば、全員が救助を受けられますか?
A. 対象は「現に救助を必要とする人」です。市町村単位で適用されますが、被害がなく生活できている世帯まで救助されるわけではありません。逆に、住民票のない旅行者や通勤者でも、その場で救助が必要なら対象になります(現在地救助の原則)。
Q. 住宅の応急修理は、自分で業者に頼んで後から請求できますか?
A. できません。自治体が業者に依頼して修理し、費用を自治体が支払う仕組みです。先に工事を始めてしまうと対象外になるおそれがあるため、着工前に必ず市区町村の窓口へ相談してください。
Q. 救助にかかった費用は、最終的に誰が払うのですか?
A. 都道府県が支出し、その額に応じて国が50〜90%を負担します。負担割合は都道府県の普通税収入額に対する救助費用の比率で決まり、費用が大きいほど国の負担割合が上がる仕組みです。
Q. 「福祉サービスの提供」が救助に加わったのはなぜですか?
A. 2024年1月の能登半島地震で、避難所での高齢者や障害のある人への支援が課題になったためです。2025年6月1日の法改正で13番目の救助として追加され、福祉的な支援も災害救助法の費用でまかなえるようになりました。


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