サマータイムをやめた国のほうが、
いま続けている国より多い
世界の時刻データベースを使って247の国・地域を1つずつ数えたところ、2026年に夏時間を実施するのは70。過去に実施してやめたのは88でした。人口で見ると、夏時間のある国に住む人は世界の16.7%にすぎません。
ヨーロッパでは2026年10月25日(日)に夏時間が終わり、冬時間に戻ります。ドイツやフランスでは毎年この時期に「時間の切り替え」が検索されますが、世界全体を見渡すと、夏時間はもはや当たり前の制度ではありません。
この記事では、世界中のコンピューターが時刻の計算に使っているIANAタイムゾーンデータベース(tzdata 2026c)を使い、247の国・地域それぞれについて「2026年に夏時間を実施するか」「過去に実施したことがあるか」を機械的に判定して集計しました。誰かがまとめた一覧の転載ではなく、時刻データそのものを数えた結果です。
世界247の国・地域のうち、夏時間があるのは70だけ
2026年に一度でも夏時間(標準時より時計を進める期間)を設ける国・地域は70でした。247に対して28.3%、およそ4つに1つです。残りの内訳は、かつて実施していたがやめたところが88、1900年以降に一度も実施した記録がないところが89でした。
実施している70を地域ごとに分けると、偏りがはっきりします。
| 地域 | 実施数 | 主な国・地域 |
|---|---|---|
| ヨーロッパ | 47 | EU各国、英国、スイス、ノルウェー、ウクライナ、ポルトガルなど |
| 南北アメリカ | 10 | 米国、カナダ、メキシコ(一部)、チリ、キューバ、ハイチ、グリーンランドなど |
| アジア | 4 | キプロス、イスラエル、レバノン、パレスチナ |
| アフリカ | 3 | エジプト、モロッコ、西サハラ |
| 大西洋の島々 | 2 | バミューダ、フェロー諸島 |
| 太平洋 | 2 | ニュージーランド、ノーフォーク島 |
| オセアニア・南極 | 2 | オーストラリア(一部の州)、南極の一部基地 |
70のうち47(67.1%)がヨーロッパです。そしてアジアで夏時間があるのは、キプロス・イスラエル・レバノン・パレスチナの4つだけ。日本・中国・韓国・インド・東南アジア諸国を含め、アジアの大半には夏時間がありません。「世界では夏時間が一般的」というイメージは、実態とかなりずれています。
「やめた国」が「続けている国」を上回っている
今回の集計でいちばん意外だったのは、過去に夏時間を実施してやめた国・地域が88あり、現在実施している70を上回っていることです。やめた年を10年ごとに数えると、次のようになります。
| 年代 | その年代を最後に夏時間をやめた国・地域 |
|---|---|
| 1930年代 | 2 |
| 1940年代 | 27 ※戦時中に導入し、終戦後に取りやめた国が集中 |
| 1950年代 | 1 |
| 1960年代 | 0 |
| 1970年代 | 6 |
| 1980年代 | 10 |
| 1990年代 | 12 |
| 2000年代 | 12 |
| 2010年代 | 12 |
| 2020年代 | 6 ※2026年時点で、まだ半ばです |
注目したいのは、1940年代の「戦後の取りやめ」が終わったあとも、撤退が止まっていないことです。2000年以降だけで30の国・地域が夏時間をやめています。近年の例を挙げると、ブラジルが2019年、トルコが2016年、イランが2022年、パラグアイが2024年に切り替えを終えています。
メキシコもこの流れに入ります。2022年に全国規模の夏時間を取りやめ、現在は米国と往来の多い国境地帯の一部だけに残っているため、今回の集計では「一部地域で実施」として実施側に数えています。同じように国内で対応が分かれているのが、米国・カナダ・オーストラリア・チリ・グリーンランド・ウクライナなどです。
人口で見ると、8割以上が夏時間と無縁に暮らしている
国の数ではなく「そこに住む人の数」で見ると、偏りはさらに大きくなります。世界銀行の2024年人口データ(217か国)と突き合わせた結果が次の表です。
| 区分 | 国数 | 人口 | 世界人口比 |
|---|---|---|---|
| 2026年に夏時間を実施 | 61 | 13.5億人 | 16.7% |
| 実施していたがやめた | 79 | 48.4億人 | 59.6% |
| 一度も実施していない | 75 | 19.2億人 | 23.7% |
夏時間のある国に住んでいるのは、世界81.2億人のうち13.5億人(16.7%)です。残る8割以上は、年2回の時計合わせとは無関係に暮らしています。人口の多い中国(14.1億人)とインド(14.5億人)がともに「実施していたがやめた」側にいるためで、この2か国だけで世界人口の3分の1を超えます。
国・地域の数は時刻データベースに登録された247件(ISO 3166ベース。香港・グアムのような地域を個別に数えています)。人口は世界銀行の集計単位(217か国)に合わせているため、国数の内訳が247の集計と一致しません。「一度も実施していない」は1900年以降の記録に基づく判定です。人口の内訳(61+79+75)が217に2件足りないのは、時刻データベース側に対応する国コードがない2件を除いているためです。地域の区分は、各国の代表タイムゾーン名に従って分類しました。
日本も4年だけ夏時間を実施していた
「日本にはサマータイムがない」と思われがちですが、時刻データベースをさかのぼると、日本にも1948年から1951年までの4年間、夏時間が記録されています。アジアの主要国は、実は一度は試して、そしてやめています。
| 国 | 夏時間を実施していた期間 |
|---|---|
| 日本 | 1948〜1951年 |
| 韓国 | 1948〜1951年、1955〜1960年、1987〜1988年 |
| 中国 | 1919年、1940〜1949年、1986〜1991年 |
| インド | 1941〜1945年 |
| ロシア(モスクワ) | 1917〜1919年、1921年、1981〜2010年 |
| ブラジル | 1931〜1933年、1949〜1953年、1963〜1968年、1985〜2019年 |
| トルコ | 1916年ほか断続的に、1985〜2016年 |
| イラン | 1977〜1980年、1991〜2005年、2008〜2022年 |
韓国の1987〜1988年は、ソウルオリンピックの時期と重なります。中国も1986年から6年間、全土で夏時間を実施していました。一度やめた国が再び導入し、また取りやめる——トルコやブラジル、イランの欄を見ると、この制度が各国で何度も揺れ動いてきたことがわかります。
英国には「切り替えをやめた3年間」がある
時刻データをたどっていて目にとまったのが、英国の空白です。英国は1916年から夏時間を実施していますが、1969年から1971年までの3年間だけ、切り替えの記録がありません。
この期間、英国ではBritish Standard Time Act 1968(1968年英国標準時法)が施行されていました。英国政府の法令データベース legislation.gov.uk で条文が公開されています。そして1972年、Summer Time Act 1972が成立し、英国は再び年2回の切り替えに戻りました。時計を進めたまま戻さない方式を実際に数年間試し、もとの制度に戻した記録が、いまもタイムゾーンデータに残っているわけです。
2026年10月25日、日本との時差はこう変わる
ここからは実用面です。ヨーロッパは10月25日(日)に冬時間へ、米国は11月1日(日)に戻ります。日本には夏時間がないため、相手国が切り替わるたびに日本との時差が1時間ずつ変わります。
| 都市 | 10月20日時点 | 10月27日以降 | 11月5日以降 |
|---|---|---|---|
| ロンドン | 8時間 | 9時間 | 9時間 |
| パリ・ベルリン・ローマ・マドリード | 7時間 | 8時間 | 8時間 |
| ニューヨーク | 13時間 | 13時間 | 14時間 |
| ロサンゼルス | 16時間 | 16時間 | 17時間 |
数字は「日本が何時間進んでいるか」です。ヨーロッパとの会議やオンライン予約を10月末をまたいで入れている場合、現地時間が同じでも日本時間は1時間ずれます。ロンドンとの差が8時間から9時間になる、という変化です。
北半球が冬時間へ向かう一方、南半球はこれから夏時間に入ります。2026年はニュージーランドが9月27日、オーストラリア(シドニーなど実施地域)が10月4日に夏時間へ切り替わります。オーストラリアは州によって実施の有無が分かれており、クイーンズランド州や西オーストラリア州には夏時間がありません。同じ国の中で時差が生まれます。
世界の夏時間についてよくある質問
Q. サマータイムは世界で何か国が実施していますか?
A. 2026年時点で、タイムゾーンデータベースに登録された247の国・地域のうち70です。全体の28.3%にあたり、そのうち45はヨーロッパに集中しています。
Q. ヨーロッパの冬時間は2026年はいつからですか?
A. 2026年10月25日(日)です。EUの指令により、EU全域がグリニッジ標準時の午前1時に一斉に切り替わります。英国もEU離脱後、同じ日程を維持しています。米国はこれより1週間遅く、11月1日(日)に戻ります。
Q. EUは夏時間を廃止したのではないですか?
A. 廃止されていません。欧州議会は2019年に廃止案を可決しましたが、加盟国で構成する理事会で合意に至らず、法として成立していないためです。2026年も切り替えが行われます。
Q. 日本にサマータイムがあったことはありますか?
A. あります。タイムゾーンデータベース上、日本では1948年から1951年までの4年間、夏時間が実施されていた記録が残っています。1952年以降は実施されていません。
Q. アジアにサマータイムのある国はありますか?
A. 2026年時点では、キプロス・イスラエル・レバノン・パレスチナの4つだけです。中国は1986〜1991年、韓国は1987〜1988年に実施しましたが、いずれも取りやめています。
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出典
・IANAタイムゾーンデータベース(tzdata 2026c)の zone.tab および各ゾーンの夏時間規則を、当ブログがPythonのzoneinfoで247の国・地域ぶん判定して集計
・人口は世界銀行 World Development Indicators(SP.POP.TOTL、2024年、217か国)
・英国の法令はBritish Standard Time Act 1968およびSummer Time Act 1972(legislation.gov.uk)
・EUの夏時間日程は指令2000/84/EC
※「一度も実施していない」は1900年以降の記録に基づく判定です。人口の内訳(61+79+75)が217に2件足りないのは、時刻データベース側に対応する国コードがない2件を除いているためです。地域の区分は、各国の代表タイムゾーン名に従って分類しました。地域区分はタイムゾーン名の分類に従っています。


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