ハイロックス(HYROX)とは?「1kmラン×8本+8種目」の屋内フィットネスレース。北京大会の騒動でルールブックが書き換わった
2026年9月12日に中国・北京で開かれたHYROXの大会で、女子プロ部門の世界記録保持者が競技中に便失禁を起こしたままレースを続けて優勝し、批判が殺到しました。共同創設者が謝罪し、ルールブックには「血液・嘔吐物・尿・便が汚染リスクになれば大会責任者が競技を止められる」という条項が加わり、本人は9月17日に優勝を自ら返上しています。ニュースで初めて「ハイロックス」という名前を聞いた方に向けて、この競技が何なのか、どんなルールで、日本では次にいつどこで開かれるのかを、公式ルールブックと主催者の発表資料からまとめました。
2026年9月18日時点の情報です。
1. ハイロックスとは何か——「走って、やって、また走る」を8回
HYROX(ハイロックス)は、1kmのランニングと1つのワークアウトステーションを交互に8回くり返す屋内フィットネスレースです。合計で8kmを走り、あいだに8種目をこなします。2017年にドイツ・ハンブルクで、元ホッケー五輪金メダリストのモーリッツ・フュルステ氏とイベント事業家のクリスチャン・テツケ氏が立ち上げ、第1回大会は2018年4月、参加者は650人でした。それが2025/26シーズンには30か国以上で150万人超が走る規模になっています(主催者発表)。
この競技の特徴は、種目も順番も重さも世界中どの大会でも同じという点です。だからハンブルクで出したタイムと大阪で出したタイムをそのまま比べられ、世界共通のランキングと年1回の世界選手権が成り立ちます。マラソンの「サブ4」のように、「ハイロックスを何分で走ったか」がそのまま自分のフィットネスの通信簿になる、という設計です。
| 順番 | ステーション | 量 | 女子オープン | 男子オープン/女子プロ | 男子プロ |
|---|---|---|---|---|---|
| ① | スキーエルゴ | 1,000m | — | — | — |
| ② | スレッドプッシュ(そりを押す) | 50m(25m×2) | 102kg | 152kg | 202kg |
| ③ | スレッドプル(そりを引く) | 50m(25m×2) | 78kg | 103kg | 153kg |
| ④ | バーピーブロードジャンプ | 80m | — | — | — |
| ⑤ | ローイング | 1,000m | — | — | — |
| ⑥ | ファーマーズキャリー(ケトルベル) | 200m | 16kg×2 | 24kg×2 | 32kg×2 |
| ⑦ | サンドバッグランジ | 100m | 10kg | 20kg | 30kg |
| ⑧ | ウォールボール | 100回 | 4kg | 6kg | 9kg |
出典:HYROX公式「The Fitness Race」の重量・距離表(そりの重さは器具込み)。各ステーションの前に必ず1kmのランが入ります。
公式チャンネルが1分弱でレース形式を説明した動画です。会場の雰囲気と8種目の流れがつかめます。
2. なぜ今話題なのか——北京大会で何が起きたか
9月10日から13日にかけて、北京の国家スピードスケート館(2022年冬季五輪の会場)でHYROX北京大会が開かれました。問題が起きたのは12日の女子プロ部門です。オーストラリアのジョアンナ・ヴィエチク選手(女子プロの世界記録保持者)が、④バーピーブロードジャンプの途中で急性の便失禁を起こしましたが、そのままレースを続け、共有のローイングマシンやケトルベルを使い、カーペット敷きのコースを走って1時間1分23秒で1位でゴールしました。
レース後に本人が投稿した「勝ちは勝ち(a win is a win)」という一言が火に油を注ぎ、同じ会場で走った参加者からは「安全な大会を提供してもらうためにお金を払った」「その時点で彼女の競技は終わりにすべきだった」と、本人よりも止めなかった運営への批判が集中しました。
- 9/12北京大会・女子プロ部門ヴィエチク選手が④バーピーブロードジャンプで便失禁。競技を続けて優勝。HYROX中国は「当該エリアとコースを直ちに封鎖・隔離して全面消毒し、器具は会場から撤去、廃棄物は北京市の基準で処分した」と説明。
- 9/14豪ABCなど海外メディアが報道HYROXは「バイオ汚染と医療の手順は整備していたが、エリート競技用と一般参加用のプロトコルの境界が曖昧になる想定外の事態が起きた」と釈明。この「曖昧」という言い方がさらに批判を呼ぶ。
- 9/15共同創設者フュルステ氏が謝罪「HYROXはレース中に直ちに対応しなかったという過ちを犯した。こうした事態を予見するのは私の仕事であり、私はそれをしなかった」と表明し、ルール改定を「直ちに」行うと発表。
- 9/16ルールブックに新条項英メディアが16日、シーズン26/27のシングルス・ルールブック12.3「DID NOT FINISH」に、血液・嘔吐物・尿・便の汚染リスクで大会責任者が競技者を離脱させられる条項が加わったと報道(次章で条文を確認)。日本でもハフポスト・クーリエ・ジャポンなどが報じ、17日にYahoo!ニュースの国際アクセス上位に入る。
- 9/17本人が優勝を返上ヴィエチク選手が中国の人々・競技者・観客・主催者に謝罪する声明を出し、「振り返れば、コースを降りなかった判断を後悔している」「レースから遡って棄権し、獲得したポイントを放棄する」と表明。スポンサーのプーマは彼女のシグネチャー商品をオンラインストアから外している。
3. ルールブックは何が変わったか——「唾を吐いたら2分」はあったのに
今回の騒動で目立ったのが、従来のルールブックには「床に唾や鼻水を吐いたら2分のペナルティまたは失格」という条項はあるのに、便や嘔吐物についての規定がなかったという指摘です。実際にHYROX公式サイトのシングルス・ルールブック(シーズン26/27版)を確認すると、10.4「GENERAL CONDUCT」に唾吐き禁止と2分加算が、巻末のペナルティ一覧21番に「SPITTING OR CLEARING NOSE=2分またはDQ(大会責任者の判断)」があります。
そのうえで、12.3「DID NOT FINISH」に次の段落が加わりました(要約)。
ポイントは、これが「罰則」ではなく「大会責任者が止める権限」として書かれたことです。従来の条文では、汚染が起きても止める根拠が明文化されておらず、現場は「本人が走り続ける意思を示している以上、止められない」と判断してしまいました。今後は止める側に明確な根拠ができ、選手側には「止められたらDNF」という結果が事前に示されたことになります。
| 行為 | 従来のルールブック | 改定後(26/27) |
|---|---|---|
| 床に唾・鼻水を吐く | 2分加算または失格(10.4/一覧21) | 変更なし |
| ゴミのポイ捨て | 1回ごとに2分加算(10.4/一覧22) | 変更なし |
| 血液・嘔吐物・尿・便による汚染 | 明文の規定なし | 新設 大会責任者が離脱させられる。結果はDNF(12.3) |
| 非スポーツマン的行為 | 2分または失格(一覧23) | 変更なし |
4. 日本でのハイロックス——1年で参加者が3倍になった
日本での初開催は2025年8月9日、パシフィコ横浜でした。この横浜大会に約3,800人が参加し、観客は2,244人、43か国の参加者が完走しています(10代から70代まで、70歳の女性がダブルスで完走した話が話題になりました)。2回目の大阪大会(2026年1月30日〜2月1日、インテックス大阪)は8,087人、3回目の千葉大会(2026年8月6〜9日、幕張メッセ)は日本初の4日間開催で約12,000人と、開催のたびに規模が膨らんでいます。
| 大会 | 日程 | 会場 | 参加者 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| HYROX横浜 | 2025年8月9日 | パシフィコ横浜 | 約3,800人 | 日本初開催。観客2,244人・43か国 |
| AirAsia HYROX大阪 | 2026年1月30日〜2月1日 | インテックス大阪 | 8,087人 | 観客6,173人。16〜74歳が参加 |
| AirAsia HYROX千葉 | 2026年8月6〜9日 | 幕張メッセ | 約12,000人(見込み) | 日本初の4日間開催・国内最大 |
| BYD HYROX大阪 | 2027年1月21〜25日 | インテックス大阪 | — | 次回 2026/27シーズンの日本初戦 |
| HYROX名古屋 | 2027年4月16〜18日 | ポートメッセなごや | — | 新都市 名古屋は世界カレンダーでも新規4都市の1つ |
出典:HYROX Japan(Hybrid Fitness Racing HK Limited)のプレスリリース(2025年8月15日・2026年1月21日・2月13日・7月21日)、HYROX公式「Find Your Race」。
HYROX APAC公式による千葉2026のレース振り返り動画です。幕張メッセの会場規模と日本の参加者の様子が分かります。
北京大会には日本の選手も出場しています。HYROX日本代表として活動する中村航選手が男子プロ・35〜39歳の部で2位に入っており、こちらは騒動とは別に、日本勢が世界の舞台で結果を出したニュースとして伝えられました。2027年の世界選手権はアジアで初めて香港で開かれる予定で、シーズン中に部門上位に入れば出場資格が得られます。
5. 出てみたい人が知っておくこと
エントリーは公式サイトの各大会ページから部門を選んで申し込みます。参加資格は16歳以上で、運動歴の条件はありません。初めてなら「オープン」か、2人で分担できる「ダブルス」から入る人が多いです。公式サイトには「週に何回運動しているか」「何kmなら快適に走れるか」「腕立て伏せは何回できるか」の3問で自分のレベルを判定するページもあります。
6. 報道とSNSの反応
日本ではハフポスト日本版とクーリエ・ジャポンの記事がYahoo!ニュースで拡散し、「唾を吐いたら2分ペナルティなのに便はOKなのか」という声が多く見られました。一方で、今回の大会で日本の選手が上位に入ったことも同時に伝えられています。
ハフポスト日本版 @HuffPostJapan便漏れしながらスポーツ競技を続行した豪選手が物議を醸している問題が発生したのは、今世界で人気の屋内フィットネス競技「HYROX」の北京大会
主催者は謝罪し、ルール改正を発表した
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Alex|香りをデジタルで配信する男 @scent_alex中村選手!お疲れ様でした!HYROX北京大会で中村 航選手が男子PRO・35〜39歳部門2位 — Scentdaysスポンサー契約選手
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7. よくある質問
Q. ハイロックスは何をする競技ですか?
A. 1kmのランニングと1つのワークアウトステーションを交互に8回くり返す屋内フィットネスレースです。合計8kmを走り、スキーエルゴ・スレッドプッシュ・スレッドプル・バーピーブロードジャンプ・ローイング・ファーマーズキャリー・サンドバッグランジ・ウォールボールの8種目をこなします。種目も順番も重さも世界共通です。
Q. 北京大会で何が問題になったのですか?
A. 2026年9月12日の女子プロ部門で、世界記録保持者のジョアンナ・ヴィエチク選手が便失禁を起こしたままレースを続け、共有器具を使って優勝したことです。主催者がその場で止めなかったことに批判が集まり、共同創設者が謝罪、ルールブックが改定され、本人は9月17日に優勝を返上しました。
Q. ルールはどう変わりましたか?
A. シーズン26/27のルールブック12.3に、血液・嘔吐物・尿・便が本人や他の競技者への汚染リスクになる場合、大会責任者が医療上の理由でその競技者を離脱させられる条項が加わりました。離脱した場合の結果はDNF(Did Not Finish)として記録されます。唾吐きの2分ペナルティは従来どおりです。
Q. 日本で次に開かれるのはいつですか?
A. 2027年1月21日から25日にインテックス大阪で「BYD HYROX大阪」、2027年4月16日から18日にポートメッセなごやで「HYROX名古屋」が予定されています。日本での開催はこれで5回目・6回目になります。
Q. 初心者でも参加できますか?
A. 16歳以上なら誰でもエントリーできます。重量の軽いオープン部門や、2人で分担するダブルス部門があり、横浜大会では70歳の女性がダブルスで完走しています。ただしスレッドプッシュなど専用器具の種目は事前に試しておく必要があります。
・HYROX公式「The Fitness Race」(種目・重量表): hyrox.com/the-fitness-race/
・HYROX シングルス・ルールブック(シーズン26/27)PDF: maintain.hyrox.com/rulebooks/HYROX_RulebookSingles_EN.pdf
・HYROX Japan「Find Your Race」(日本の開催日程): hyroxjapan.com/find-your-race/
・Hybrid Fitness Racing HK Limited プレスリリース(横浜2025の結果/千葉2026の開催発表): PR TIMES 2025年8月15日/PR TIMES 2026年7月21日
・ABC News(豪)「HYROX Beijing faces backlash…」2026年9月14日/Newsweek「Joanna Wietrzyk Forfeits Hyrox Victory」2026年9月17日


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