相続した空き家を、今売る・貸す・持ち続ける・解体するの4つで、10年後までの手取りを同じ前提で比べました。売値1,000万円の家では、今売って控除を使うと約960万円、何もせず10年持って売ると約399万円です。貸すほうが得になるのは、この前提では家賃が月7.3万円以上のときでした。前提を変えた場合の見方も書きます。
結論:使う予定がないなら、控除の期限内に売る案が基準
試算の結果を手取りの順に並べました。計算は下に載せています。
| 選択肢 | 10年間の手取り | 今売る案との差 |
|---|---|---|
| 今売る(控除あり) | 約960.4万円 | — |
| 今売る(控除なし) | 約775.5万円 | −184.9万円 |
| 月5万円で貸して10年後に売る | 約773.7万円 | −186.7万円 |
| 何もせず10年持って売る | 約399.3万円 | −561.1万円 |
| 今解体して10年持って売る | 約336.0万円 | −624.4万円 |
これは売値1,000万円で買主がいる家の話です。買い手のいない地域では「今売る」が成り立たないので、下の「この試算が当てはまらない家」も読んでください。思い出の家を残す判断を否定するものでもありません。残すにはこれだけかかる、と知るための計算です。
この記事の立場
この記事は公的資料をもとに制度と計算を整理したものです。特定の業者や売却をすすめるものではありません。金額はすべて前提を置いた試算で、実際の税額や手続きは個別の事情で変わります。判断の前に税務署・法務局・税理士・司法書士などで確認してください。
試算の前提
すべて置いた数字です。税額の仕組みは国税庁と総務省の資料に沿い、管理費や修繕費は想定です。ご自宅の数字に置きかえてください。
| 項目 | 前提 |
|---|---|
| 家 | 1981年5月以前の木造。相続人2人以内。今なら1,000万円で売れる |
| 10年後の売値 | 800万円(建物の価値はなく土地の値段と想定) |
| 固定資産税・都市計画税 | 年約4万円(土地の評価額700万円・200㎡以下、建物100万円) |
| 持つ費用 | 税4万+管理委託6万+火災保険3万+修繕・庭木5万+雑費4万=年22万円 |
| 貸す | 修繕に初めに200万円。空室率10%、管理料5%、経費は年12万円。所得への税金は20%で計算 |
| 解体 | 150万円。その後は税が年約8.3万円、草刈りなどで年5万円 |
| 売るときの税 | 取得費5%、税率20.315%。3年を過ぎた売却は控除なし |
売る|控除の期限が最大の分かれ目
今売れば、手数料39.6万円を引いて手取りは約960.4万円です。相続から3年目の年末を過ぎると控除が使えなくなり、この家では約185万円の税金がかかります。控除の要件は建てた時期や住んでいた人で決まるので、相続した実家を売る手順|登記・査定・税金を期限順に年表で整理で確かめてください。
貸す|家賃の損益分岐は月7.3万円
月5万円で貸すと、10年間の家賃収支は約393万円です。そこから初めの修繕200万円と税金を引き、10年後に売った手取りを足すと約773.7万円になります。
今売る案に追いつく家賃は、月約7.3万円でした。売値1,000万円の家で年87万円の家賃なので、利回りにすると約9%です。地方の古い家でこの家賃が取れるかが判断の目安になります。貸すと空き家の控除は使えなくなる点にも注意してください。
持ち続ける|年22万円の出費と税の差
10年間の費用は220万円です。加えて控除の期限を過ぎるので、売るときに税金が約148万円かかります。10年後の値段が試算より下がれば、差はさらに開きます。管理をやめて荒れると、市区町村から勧告を受けて税金が上がる可能性もあります(固定資産税の計算)。
解体する|先に解体すると税金が上がる
更地にすると見栄えはよくなりますが、住宅用地の軽減がなくなります。この試算では税が年約4万円から約8.3万円になりました。解体してすぐ売るなら別ですが、解体して長く持つのは5つの中で最も手取りが少ない結果でした。売ると決めてから、買主と相談して解体するほうが無駄がありません。
この試算が当てはまらない家
- 買い手がいない家:買取の査定、空き家バンク、隣の家への打診を先に試します。価格が低いと仲介手数料の割合が高くなるので、空き家の買取と仲介の違い|手取りが逆転する価格を金額別に計算で手取りを比べてください。
- 控除が使えない家(1981年6月以降の建築、マンションなど):急いで売る税の利点は小さくなります。今売っても約776万円で、月5万円で貸す案とほぼ同じです。
- 家賃が高く取れる家:都市部や駅の近くでは、貸す案が上回ることがあります。
- 値上がりが見込める土地:10年後の売値が試算より高ければ、持つ案の差は縮みます。
よくある質問
Q. 相続した空き家は売るのと貸すのとどちらが得ですか?
A. 試算では、売値1,000万円の家なら家賃が月約7.3万円以上で貸すほうが上回ります。それより低ければ、今売って控除を使うほうが手取りが多くなります。
Q. 空き家を持ち続けると年間いくらかかりますか?
A. 試算では年22万円です。税4万円、管理委託6万円、火災保険3万円、修繕と庭木5万円、雑費4万円です。自分で管理すれば委託費は減りますが、交通費や手間がかかります。
Q. 空き家は解体したほうがいいですか?
A. すぐ売る予定がなければ、急がないほうが無難です。更地にすると住宅用地の軽減がなくなり、試算では税が年約4万円から約8.3万円に増えました。
Q. 一度貸すと3,000万円控除は使えませんか?
A. 使えません。相続から売却まで、事業・貸付・居住に使っていないことが要件です。
Q. この試算は自分の家にも当てはまりますか?
A. そのままでは当てはまりません。売値、家賃、修繕費は家ごとに違うので、査定と賃料の見積もりを取って数字を置きかえてください。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
- 国税庁 No.3258 取得費が分からないとき
- 国税庁 No.3208 長期譲渡所得の税額の計算
- 総務省「固定資産税の概要・土地に係る負担調整措置」
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」確報集計の案内


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