11歳の金メダリスト栗原悠輝、報奨金は「0円」の見通し
愛知・名古屋アジア大会のeスポーツ「ぷよぷよ」で、11歳の栗原悠輝選手(ゆうき選手)が金メダルを獲得しました。大会史上最年少のメダリストです。ところが、日本eスポーツ協会は報奨金を出さない見通しと報じられました。実は栗原選手は2月の年間王者決定戦でも、優勝賞金100万円を年齢規定のため受け取れず、記念品になっています。報奨金と賞金、2つの「0円」の理由を一次資料で整理します。
2026年9月26日時点の情報で作成
大会史上最年少
(対象は五輪だけ)
→記念品に置き換え
年齢制限撤廃の施行まで
・報奨金が出ないのは、アジア大会には国やJOCの一律の報奨金制度がないためです。JOCの金500万円はオリンピックが対象で、アジア大会で出すかどうかは各競技団体が決めます。eスポーツを統括する日本eスポーツ協会(JESU)は、現時点で出さない見通しと日刊スポーツが報じました
・2月の賞金100万円が記念品になったのは、セガの大会規定「15歳以下は賞金の代わりに特別賞品」のためです。背景には、JESUのプロライセンスが「15歳以上で義務教育を終えた人」に限られていたことがあります
・JESUは規約を改め、2026年2月26日から年齢制限をなくしました。栗原選手が優勝した2月8日の決勝は、そのわずか18日前でした
・4月に栗原選手は小学生初のプロライセンスを取得しました。2027年シーズンのセガ公式大会の規定からは「15歳以下は特別賞品」の一文が消えています。次の年間王者決定戦(2027年3月予定)で勝てば、賞金を受け取れる可能性があります
栗原悠輝選手とは?11歳のぷよぷよ金メダリスト
栗原悠輝(くりはら・ゆうき)選手は2015年6月18日生まれ、東京都出身の小学5年生です。競技名は「ゆうき」で、東京ヴェルディに所属しています。日刊スポーツによると、小学2年の4月に格闘ゲーム大会「EVO Japan」で3位に入ったのをきっかけに本格的に競技を始め、「ぷよぷよ」ではこれまでに最大19連鎖を記録しています。
| 時期 | 大会・出来事 | 結果 |
|---|---|---|
| 2023年 | 全国都道府県対抗eスポーツ選手権 KAGOSHIMA 小学生の部 | 優勝 |
| 2024年 | 全国都道府県対抗eスポーツ選手権 SAGA 小学生の部 | 優勝 |
| 2025年 | 全国都道府県対抗eスポーツ選手権 SHIGA オープン参加の部(大人と同じ部門) | 優勝 |
| 2026年2月8日 | セガ公式大会「GigaCrysta ぷよぷよグランプリ ファイナル」(年間王者決定戦) | 優勝賞金100万円は記念品に置き換え |
| 2026年4月17日 | JESU公認プロライセンスを取得(きーくん選手と2人で小学生初) | プロ選手に |
| 2026年9月26日 | 愛知・名古屋アジア大会 eスポーツ「ぷよぷよ」決勝(愛知県国際展示場) | 金メダル決勝で韓国のカン・ドンシン選手に10-2 |
アジア大会では、24日のグループステージを3戦全勝のA組1位で通過しました。26日は準々決勝でシンガポール代表に5-0、準決勝でタイ代表に10-1と圧勝し、決勝では第1ゲームを落としたあと第2ゲームで15連鎖を決めて追いつき、10-2で押し切りました。これまでの大会最年少メダリストは、2018年ジャカルタ大会のスケートボード女子ストリートで銅メダルを取った当時12歳のニマス選手(インドネシア)で、栗原選手は約1歳上回る若さで記録を塗り替えました。
なぜ報奨金が出ないのか?アジア大会は競技団体しだい
「オリンピックの金メダルは500万円」という話はよく知られています。しかしこれは日本オリンピック委員会(JOC)がオリンピックのメダリストに出す報奨金で、アジア大会は対象外です。アジア大会で報奨金を出すかどうかは、陸上なら日本陸連、水泳なら日本水連というように、その競技を統括する国内団体がそれぞれ決めます。
eスポーツの国内統括団体は、2018年に活動を始めた一般社団法人日本eスポーツ協会(JESU)です。JESUは2024年6月にJOCへ準加盟し、2025年6月に日本スポーツ協会にも加盟して、eスポーツの中央競技団体という立場を固めてきました。ところが日刊スポーツによると、今大会の報奨金について協会からの説明はなく、関係者の話では現時点で報奨金を授与しない見通しです。所属先の東京ヴェルディも「未定」としています。
| 支給元 | 金メダル | アジア大会での扱い |
|---|---|---|
| JOC(オリンピック) | 500万円 | 対象外(制度はオリンピックだけ) |
| 日本陸上競技連盟 | 100万円 | 支給を公表(リレーは1人50万円) |
| トライアスロンジャパン | 200万円 | 支給を公表(個人種目) |
| 日本eスポーツ協会(JESU) | 0円の見通し | 説明なし。関係者によると授与しない見通し(9月26日時点) |
| 参考:韓国(銀メダルのカン選手の話) | 1人約10万円 | カン・ドンシン選手が日刊スポーツに語った金額 |
アジア大会の報奨金は、競技団体に制度がなければ金メダルでも0円です。9月19日時点で公表を確認できたのは陸上とトライアスロンの2団体だけでした。各国との比較や、アジア大会の報奨金に税金がかかる理由はアジア大会の報奨金はいくら?日本は金100万円・各国比較と税金で詳しく解説しています。
2月の優勝賞金100万円が記念品になった理由
栗原選手が「0円」になったのは、実はこれが2回目です。2026年2月8日、セガサミーグループ本社で開かれた年間王者決定戦「GigaCrysta ぷよぷよグランプリ ファイナル」で、栗原選手は3度の優勝経験があるともくん選手を19-19の大接戦の末に破り、年間王者になりました。この大会の賞金は優勝100万円、準優勝20万円、3位5万円、5位以下1万円でした。
しかし大会の告知には、次の注意書きがありました。
賞金について、15歳以下の年齢の選手が該当した場合、賞金の代わりにセガからの特別賞品を授与する。
12歳以下(小学生)の選手は、プロライセンスの取得権利を付与しない(13歳になった段階で協議)。
当時10歳の栗原選手はこの規定にあてはまり、100万円の代わりに記念品を受け取りました。では、なぜセガはこうした規定を設けていたのでしょうか。
理由1:景品表示法の「10万円の壁」
ゲーム会社が自社の有料ゲームで大会を開き賞金を出すと、その賞金は景品表示法の「景品類」にあたるおそれがあります。景品類には上限があり、JESUの解説によると「取引価額の20倍または10万円の小さい方」が目安です。つまり、何もしなければ100万円の賞金は出せません。
| 大会の主催者 | 有料ゲーム・課金で強くなるゲーム | 無料で課金が強さに影響しないゲーム |
|---|---|---|
| ゲーム会社 | 景品表示法の規制を受ける | 受けない |
| ゲーム会社以外 | 受けない | 受けない |
そこでJESUがつくったのが「公認プロライセンス」です。賞金を「大会に出るという仕事の報酬」と位置づければ景品にはあたらない、という考え方で、ライセンスを持つ選手なら高額賞金を受け取れるようにしました。
理由2:プロライセンスは「15歳以上・義務教育修了」が条件だった
問題は、そのプロライセンスに年齢制限があったことです。JESUはライセンスの対象を「15歳以上かつ義務教育課程を修了している者」に限っていました。13〜15歳の中学生には「ジュニアライセンス」がありましたが、賞金を受け取る権利は放棄する扱いでした。小学生はそもそも対象外です。
「仕事の報酬」という理屈で賞金を出す以上、義務教育中の子どもを「仕事をするプロ」として扱うことに慎重だったわけです。セガの「15歳以下は特別賞品」という規定は、このJESUの制度に合わせたものでした。
JESUは2019年8月に消費者庁へ照会(ノーアクションレター)を出し、9月3日に回答を受けています。それによると、予選の成績などで参加者を絞った大会で、成績に応じて賞金を出す場合は、ライセンスがなくても「仕事の報酬」と認められ、景品表示法の規制を受けないと考えられます。年間ランキング上位だけが出られるグランプリファイナルは、本来この形に近い大会です。それでもセガは、JESUのライセンス制度に沿った自社の運営規定を優先していました。
年表:子どもの賞金「0円」問題は7年前から続いていた
未成年の選手が賞金を受け取れない問題は、今回が初めてではありません。2019年には、優勝賞金500万円の「パズドラ」大会で中学生が優勝し、ジュニアライセンスの規定で賞金が支払われなかったことが大きな議論になりました。
- 2018年2月JESUが活動開始、プロライセンス制度スタート対象は15歳以上。13〜15歳はジュニアライセンス(賞金を受け取る権利は放棄)。
- 2019年9月3日消費者庁がノーアクションレターに回答参加者を絞った大会なら、ライセンスがなくても高額賞金は「仕事の報酬」と整理された。
- 2019年9月14日パズドラ大会で中学生が優勝、賞金500万円は支払われず東京ゲームショウ2019の大会。ジュニアライセンスの規定で、副賞とトロフィーのみに。
- 2024年6月JESUがJOCに準加盟2025年6月には日本スポーツ協会にも加盟し、中央競技団体としての立場を固めた。
- 2026年1月19日JESUがプロライセンス規約を改定年齢制限の撤廃とジュニアライセンスの廃止を決定。施行は2月26日。
- 2026年2月8日栗原選手がぷよぷよ年間王者に、賞金100万円は記念品に改定規約の施行まであと18日だった。
- 2026年2月26日改定規約が施行、年齢制限なしに18歳未満は親権者の事前同意が必要。
- 2026年4月17日栗原選手ときーくん選手が小学生初のプロにセガが自社の運営規定を変え、JESUへ推薦。お金のやり取りは必ず親権者が確認・管理する方針。
- 2026年9月26日アジア大会で金メダル、JESUは報奨金なしの見通し今度は賞金ではなく報奨金の制度がないことが理由。
- 2027年3月(予定)次のぷよぷよグランプリ ファイナル優勝賞金100万円。新しい規定では「15歳以下は特別賞品」の注意書きがなくなった。
JESUが年齢制限をなくした理由
JESUは解説ページで、年少者への賞金には「様々な意見があった」としたうえで、eスポーツは子どもでも活躍できる競技で、実際に主要大会で好成績を残す小学生・中学生が増えてきたことを理由に挙げています。賞金や賞品を若い選手の練習環境づくりに役立て、国際大会での日本の競技力を高める狙いです。JOCや日本スポーツ協会への加盟で、eスポーツが「スポーツ競技」として社会に認められてきたことも後押しになったとしています。
次は賞金をもらえる?2027年の規定を確認
結論から言うと、次のセガ公式大会で勝てば賞金を受け取れる見込みです。セガが公開している「ぷよぷよランキングポイント 2027」の大会規定を2026年のものと比べると、違いははっきりしています。
| 項目 | 2026年シーズン(2月の決勝まで) | 2027年シーズン |
|---|---|---|
| グランプリ ファイナル優勝賞金 | 100万円 | 100万円(2027年3月開催予定) |
| 15歳以下の選手の賞金 | 賞金の代わりに特別賞品 | 注意書きなし |
| 小学生のプロライセンス | 付与しない(13歳から協議) | 未成年は親権者と面談し、同意を得て付与 |
| お金の管理 | ― | 契約や金銭のやり取りは必ず親権者が確認・管理(4月のセガ発表) |
栗原選手はすでにプロライセンスを持っています。2027年3月のファイナルに出場して勝てば、2月には受け取れなかった100万円を、今度は親権者の管理のもとで受け取れる可能性があります。
賞金はゲーム会社などの大会主催者が出すお金で、報奨金は競技団体などがメダルの成果に対して出すお金です。年齢制限の撤廃で解決したのは賞金の問題だけです。アジア大会の報奨金は、JESUが制度をつくるか、東京ヴェルディやスポンサーが独自に出さない限り0円のままです。
本人は会見で、ご褒美に欲しいものを聞かれて「キラキラしたものが好き。宝石が結構好きなので、買いたいなぁって」と答え、青い宝石がいいと話しています。
よくある質問
Q. 栗原悠輝選手は何歳ですか?
A. 2015年6月18日生まれで、金メダルを取った2026年9月26日時点で11歳3か月の小学5年生です。アジア大会の史上最年少メダリストで、それまでの記録は2018年ジャカルタ大会で銅メダルを取った当時12歳のニマス選手(インドネシア)でした。
Q. なぜアジア大会の金メダルなのに報奨金が出ないのですか?
A. JOCの報奨金(金500万円)はオリンピックが対象で、アジア大会には国やJOCの一律の制度がないためです。報奨金は各競技団体の判断で、日本eスポーツ協会は現時点で授与しない見通しと報じられています。
Q. 2月の大会で賞金100万円をもらえなかったのはなぜですか?
A. セガの大会規定で、15歳以下の選手は賞金の代わりに特別賞品を受け取ることになっていたためです。賞金を「プロの仕事の報酬」とするJESUのプロライセンスが15歳以上に限られていたことが背景にあります。
Q. 今は小学生でも賞金をもらえるのですか?
A. JESUは2026年2月26日からプロライセンスの年齢制限をなくしました。18歳未満は親権者の事前同意が必要です。セガも規定を変え、2027年シーズンの大会規定からは「15歳以下は特別賞品」の注意書きが消えています。
Q. 景品表示法で賞金は10万円までと決まっているのですか?
A. ゲーム会社が自社の有料ゲームで開く大会の賞金は「景品類」とみなされるおそれがあり、その場合は取引価額の20倍または10万円の小さい方が上限の目安です。ただしプロライセンス選手への賞金や、予選などで参加者を絞った大会の成績に応じた賞金は「仕事の報酬」とされ、この上限を受けないと考えられています。
・日本eスポーツ協会「プロライセンスについて」(景品表示法の整理・年齢制限撤廃の理由)
・JESU公認プロライセンス規約(PDF)(2026年1月19日改定、2月26日施行)
・セガ「ゆうき選手ときーくん選手が小学生初のプロライセンス取得」(2026年4月17日)
・ぷよぷよキャンプ「GigaCrysta ぷよぷよグランプリ ファイナル 出場選手について」(2026年シーズンの賞金規定)
・ぷよぷよキャンプ「ぷよぷよランキングポイント 2027」(2027年シーズンの賞金規定)
・消費者庁 法令適用事前確認手続照会書(2019年8月5日、JESU)
・日刊スポーツ「日本協会はぷよぷよ金・栗原悠輝に報奨金を出さない見通し」(2026年9月26日)


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