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アメリカ中間選挙はなぜ重要?20回中18回与党が負ける理由と日本への影響

2026 9/22
国際 経済・マネー
2026年9月22日
アメリカ連邦議会議事堂。2026年11月3日の中間選挙で下院435議席の全部と上院35議席が選ばれる

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国際・アメリカ政治

中間選挙は大統領を選ばない。それでも「大統領の残り2年」を決める

2026年11月3日、アメリカで中間選挙が行われます。投票用紙に大統領の名前はありません。それなのに、日本のニュースが連日この選挙を取り上げるのはなぜでしょうか。戦後20回の中間選挙のデータ、いまの議席、区割りの引き直し、そして関税や株価との関係を、公開資料をもとに整理しました。

2026年9月22日時点の数字で作成

18/20回戦後の中間選挙で大統領の党が
下院の議席を減らした回数
あと4下院の多数派が入れ替わる
議席差(共和218・民主214)
37/4352024年下院選で
得票差5ポイント以内だった選挙区
12.5%日本からの輸入品の多くにかかる
関税(通常税率との合計)
目次

結論:決まるのは「誰が大統領か」ではなく「大統領が何をできるか」

アメリカの中間選挙は、大統領の4年の任期のちょうど真ん中に行われる連邦議会の選挙です。ことしは11月3日。下院は435議席の全部、上院は100議席のうち35議席が対象で、同じ日に36州の知事と88の州議会も選ばれます。

大統領は選びません。それでも重要なのは、アメリカでは予算も税金の法律も、関税の権限も、もともと議会が持っているからです。議会の多数派がどちらの党になるかで、大統領が残りの2年間に法律と予算を使えるかどうかが決まります。「大統領の通信簿」と呼ばれるゆえんです。

この記事のポイント
・戦後20回の中間選挙のうち18回、大統領の党は下院で議席を減らしている(平均26議席)
・いまの下院は共和218対民主214。上院は共和53対民主系47。どちらも「あと4議席」で多数派が替わる
・ことしは投票の前に選挙区の「地図」が引き直された。ただし本当に競っている選挙区は435のうち37だけ
・関税をかける権限は憲法上、議会のもの。2026年の関税は法律を乗り換えながら続いている

中間選挙とは何か:4年の真ん中で議会を選び直す

アメリカの下院議員の任期は2年、上院議員は6年です。下院は2年ごとに全員が改選され、上院は2年ごとに3分の1ずつ入れ替わります。大統領選挙の年と、その2年後。この「2年後」のほうが中間選挙です。

選ぶもの 対象 任期
下院 435議席の全部 2年(全員改選)
上院 100議席のうち35(通常33+補欠2) 6年(3分の1ずつ)
州知事 50州のうち36州 多くは4年
州議会 88の議会 州による
大統領 選ばない 2029年1月まで

憲法を作った人たちの設計は、大統領に4年を与える代わりに、2年たったら国民がブレーキを踏めるようにしておく、というものでした。そのブレーキが、実際にどれくらい踏まれてきたかを見てみます。

戦後20回のうち18回、大統領の党は下院で負けている

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の「The American Presidency Project」がまとめた表によると、1946年から2022年までの中間選挙20回のうち、18回で大統領の党が下院の議席を減らしました。減った議席は平均で約26です。政党は関係ありません。

年 大統領 下院の増減 上院の増減
1994年 クリントン(民主) −54 −8
2006年 ブッシュ(共和) −30 −6
2010年 オバマ(民主) −63 −6
2014年 オバマ(民主) −13 −9
2018年 トランプ1期目(共和) −41 +2
2022年 バイデン(民主) −9 +1

例外は2回だけです。1998年(クリントン政権、+4)と2002年(ブッシュ政権、+8)。2002年は同時多発テロの翌年で、大統領の支持率が6割を超えていました。

なぜ「ほぼ毎回」負けるのか

理由は2つあります。ひとつは、大統領選挙で勝った側の支持者は満足して2年後は投票に行きにくく、負けた側は不満があるので投票に行くこと。もうひとつは、そもそも投票率が低いことです。大統領選挙の投票率は2024年でおよそ64%でしたが、中間選挙は2022年でおよそ46%、2014年にはおよそ36%でした。来る人が少ない選挙では、「怒っている人」の1票が重くなります。

注意:「ほぼ毎回負ける」は「大きく負ける」ではない
2022年の中間選挙は与党・民主党の大敗が予想されていましたが、結果は下院で9議席の減にとどまりました。法則はあっても、幅は読めません。

いまの議席:下院も上院も「あと4」

下院の記者団向け公式ページ(House Press Gallery)によると、2026年9月22日時点の下院は共和党218、民主党214、無所属1、欠員2です。過半数は218。民主党は差し引き4議席ふやせば多数派が入れ替わります。

上院は共和党53、民主党系47。改選される35議席のうち22が共和党の議席です。50対50になると副大統領が決裁するため、民主党が多数派になるにはこちらも差し引き4議席の増が必要です。

218 対 214下院(共和・民主)
過半数は218
53 対 47上院(共和・民主系)
改選35のうち22が共和
36%大統領の支持率
(不支持60%・9月1日発表)
46% 対 40%中間選挙の投票先
(民主・共和、同)

世論調査(エコノミスト/ユーガブ、8月28〜31日実施・全米の成人1,592人)では、大統領の支持率は36%、不支持は60%。中間選挙の投票先は民主党46%、共和党40%でした。英エコノミスト誌は、下院で民主党が多数派になる確率をおよそ9割と予測しています。上院は拮抗しており、接戦州はアラスカ・メイン・ミシガン・オハイオ・テキサス・アイオワの6州に広がっています。

予測は結果ではありません
「9割」は10回に1回は外れるという意味です。2022年の「大敗」予想が9議席減で終わったように、予測と結果は別のものとして読む必要があります。

多数派が替わると何が変わるのか

アメリカの議会は、日本の国会のように議席の割合で委員長を分け合う慣行がありません。1議席でも多いほうが、下院議長とすべての委員会の委員長を取ります。どの法案を審議するか、しないかを決めるのは多数派です。218対214という数字は、見た目よりずっと重いのです。

権限 どこが握るか 中身
予算・税法 議会 予算も税金の法律も議会が書く。大統領には法案を出す権限がない。2025年10〜11月の政府閉鎖(43日間・過去最長)も舞台は議会だった
調査 下院・上院の委員長 召喚状で政府高官や企業トップを呼び出せる。多数派が替われば、何を調べるかも替わる
弾劾 下院→上院 訴追は下院の過半数。罷免は上院の3分の2(67人)。2018年に共和党が下院で41議席を失った翌年、民主党多数の下院が1回目の弾劾訴追。2021年に2回目。いずれも上院で3分の2に届かず無罪
人事の承認 上院 閣僚・大使・連邦判事・FRBの議長と理事。連邦判事は終身で、トランプ政権1期目の4年間で234人(うち最高裁3人)が承認された
大統領に残るもの 大統領 拒否権・大統領令・外交。議会が拒否権をくつがえすには上下両院の3分の2が必要で、めったに集まらない

つまり、中間選挙で決まるのは「大統領が替わるか」ではありません。「大統領が残りの2年で、法律と予算を使えるか」です。どちらか片方の院でも多数派が替われば「ねじれ議会」になり、大統領の党だけでは法律が通らなくなります。

ことしは投票の前に「地図」が争われた

下院の選挙区は、ふつう10年に1度の国勢調査のあとに引き直します。次は2030年のはずでした。ところが2025年夏、テキサス州が調査を待たずに区割りを引き直し、共和党に有利な選挙区を5つ増やしました。カリフォルニア州は同年11月の住民投票で対抗し、民主党に有利な選挙区を5つ増やす地図を通しました。

  • 2025年夏テキサス州が国勢調査を待たずに引き直し共和党に有利な選挙区が5つ増える見込み。大統領が州に働きかけた結果とされる
  • 2025年11月カリフォルニア州が住民投票で対抗民主党に有利な選挙区を5つ増やす地図(プロポジション50)を可決
  • 〜2026年春ミズーリ・ノースカロライナ・オハイオ・ユタ・フロリダへ拡大バージニア州は住民投票で可決したあと、州の最高裁が無効に
  • 2026年9月ミズーリ州は「どの地図を使うか」が未確定州の最高裁と連邦地裁の判断が食い違い、投票まで2か月を切っても選挙区が決まっていない

NBCニュースの試算(2026年6月4日)では、投票の傾向が前回と変わらなければ、区割りの引き直しだけで共和党は最大16議席、民主党は最大6議席を上積みできます。差し引き共和党に10議席の追い風です。

ただし、有利な選挙区を増やすには、自分の支持者をうすく広く配り直すしかありません。全体に逆風が吹くと、うすくした選挙区がまとめて倒れます。専門家はこれを「ダミーマンダー」と呼びます。選挙分析の専門家は7月の時点で、「区割りの上積みだけでは下院の勝敗は決まらないだろう」と見ています。

本当に競っている選挙区は1割もない
2024年の下院選挙で、得票差が5ポイント以内だった選挙区は435のうち37だけでした(第一生命経済研究所の集計)。残りの約9割は、線を引いた時点でほぼ勝敗が決まっています。その線を引くのは多くの州で州議会と知事。つまり中間選挙は、「次の地図を引く人」を選ぶ選挙でもあります。

日本への影響:関税の権限は、もともと議会にある

日本にとっていちばん分かりやすい接点は関税です。2026年の関税の動きを時間の順に並べると、議会の存在が浮かび上がります。

  • 2月20日連邦最高裁が6対3で判決大統領が緊急事態の法律(IEEPA)を使って世界中に関税をかけたのは権限の外だと判断
  • 2月24日通商法122条に乗り換えて10%の関税この法律の上限は150日。それを超えて続けるには議会の承認が必要
  • 5月7日国際貿易裁判所が122条の関税も違法と判断救済の範囲は限定され、政権は控訴。徴収は続いた
  • 7月24日期限切れと同時刻に通商法301条へ乗り換え日本からの輸入品の多くは通常税率との合計で12.5%に。自動車・鉄鋼などは232条で別枠

なぜ乗り換えが必要なのか。アメリカの憲法では、関税をかける権限はもともと大統領ではなく議会にあるからです(第1条第8節)。大統領は、議会が昔の法律で預けた権限を借りて使っている、という構図です。

正直に言えば、議会が法律でその権限を取り返すには、大統領の拒否権を超える3分の2が必要で、現実には難しいでしょう。それでも多数派が替われば、公聴会が開かれ、関税の根拠が調べられ、予算に条件がつきます。関税の「続けやすさ」が変わるのです。

株価はどうなるのか:過去10回の中間選挙の年

第一生命経済研究所の集計によると、過去10回の中間選挙の年、S&P500は前年末から選挙直前の10月末まで平均−0.1%とほぼ横ばいで、選挙のあとは上昇に転じる傾向がありました。どちらが勝ったかではなく、「どうなるか分からない」という不安が消えるからだと説明されています。

「どちらが勝てば株高」という式はない
10回の平均は11回目の約束ではありません。ことしは中東情勢、ガソリン価格、FRBの利上げなど、選挙のほかにも株を動かす材料がたくさんあります。見るべきなのは勝ち負けより、そのあとの議会で予算と関税がどう動くかです。投資の判断はご自身の責任でお願いします。

そして、アメリカの有権者がいま最も気にしているのも物価です。関税で物価が上がり、物価で選挙が動き、選挙の結果で関税の続けやすさが変わる。日本の家計とは、この輪の中でつながっています。

動画版:記者ずんだもんが取材する「アメリカ中間選挙はなぜ重要なのか」
この記事の内容は、YouTube「ずんだもん取材班」の動画(約22分)でも解説しています。研究者・元議会スタッフ・データアナリスト・エコノミストの4人に取材する形式です。※取材先の人物は公開資料の内容を説明するための架空の設定です。

よくある質問

Q. アメリカの中間選挙とは何ですか?

A. 大統領の4年の任期の真ん中に行われる連邦議会の選挙です。下院435議席の全部と上院100議席のうち約3分の1(2026年は35議席)が対象で、同じ日に36州の知事と88の州議会も選ばれます。2026年は11月3日に行われます。大統領は選びません。

Q. なぜ大統領の党は中間選挙で負けやすいのですか?

A. 戦後20回のうち18回、大統領の党は下院で議席を減らしています。大統領選挙で勝った側の支持者は満足して投票に行きにくく、負けた側は不満から投票に行くこと、そして中間選挙の投票率が大統領選挙より15〜20ポイント低く、不満のある人の1票が重くなることが理由とされています。

Q. 下院の多数派が替わると何が変わりますか?

A. 1議席でも多い党が下院議長とすべての委員会の委員長を取ります。予算・税法の審議、政府高官への召喚状による調査、弾劾の訴追(下院の過半数)が多数派の手に移ります。上院が替われば閣僚・連邦判事・FRB理事の人事承認が変わります。大統領には拒否権・大統領令・外交が残ります。

Q. 中間選挙は日本の関税に関係がありますか?

A. あります。関税をかける権限は憲法上もともと議会のもので、大統領は議会が法律で預けた権限を使っています。2026年は最高裁判決を受けて通商法122条(150日の上限・延長には議会の承認が必要)、7月24日からは301条へと法律を乗り換えながら関税が続いています。議会の多数派が替われば、公聴会や予算の条件を通じて関税の「続けやすさ」が変わります。

Q. 中間選挙の年、アメリカ株はどう動きますか?

A. 過去10回の平均では、前年末から選挙直前の10月末までS&P500はほぼ横ばい(−0.1%)で、選挙後は上昇に転じる傾向がありました。ただし過去の平均であり、今回の値動きを約束するものではありません。「どちらの党が勝てば株高」という単純な式もありません。

参照した資料
・The American Presidency Project(UCSB)「Seats in Congress Gained/Lost by the President’s Party in Mid-Term Elections」
・House Press Gallery「Party Breakdown」(2026年9月22日取得)
・ジェトロ ビジネス短信「トランプ米大統領の純支持率は再び低下しマイナス24ポイントに」(2026年9月2日)/特集「2026年米国中間選挙の動向」
・第一ライフ資産運用経済研究所 前田和馬「米国:中間選挙アップデート(2026年9月)」/「米国:2026年中間選挙の展望」(2025年11月)
・Pew Research Center/US Elections Project(投票率)、Wikipedia「2026 United States elections」「2025–2026 United States redistricting」
※本記事は公開資料にもとづく、しくみの解説です。特定の政党・候補者を支持または批判するものではありません。数字は2026年9月22日時点のものです。

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