くらし|冬の備え
静電気はなぜ冬に起きる?バチッを防ぐ方法と47都市の冬の湿度
ドアノブや車のドアで「バチッ」とくる静電気。いちばんの原因は冬の空気の乾燥です。気象庁の平年値で47都道府県庁所在地の1〜2月の湿度を比べると、乾きやすい地域とそうでない地域がはっきり分かれました。あわせて、ドアノブの触り方・服の組み合わせ・加湿・車の乗り降り・セルフ式ガソリンスタンドでの注意を、公的機関の資料に沿って順番にまとめます。
この記事の結論
- 静電気は季節を問わず起きていますが、湿度が下がると物の電気抵抗が大きくなり、電気が逃げにくくなるため、冬に「バチッ」と感じやすくなります(大阪産業技術研究所)。
- 気象庁の平年値で1〜2月の平均湿度を比べると、最も低いのは東京の51.5%。60%を下回るのは東京・熊谷・前橋・横浜・甲府・千葉・静岡の7都市で、すべて関東と静岡でした。最も高いのは富山・福井の80%です。
- ただし外の空気を暖房で20℃に暖めると、47都市中46都市で湿度40%を下回る計算になります(那覇を除く)。日本海側でも、暖房の効いた部屋は乾きます。
- 対策の基本は①ドアノブの前に壁などへ手のひら全体で触れる ②離れた素材を重ねない ③加湿する ④車はドアの金属部分に触れてから ⑤給油の前は静電気除去シートの5つです。
静電気はなぜ冬に起きる?原因は空気の「乾燥」
静電気は、物と物がこすれたり離れたりしたときに、プラスとマイナスの電気が片方にかたよってたまることで生じます。体にたまった電気が、ドアノブや車の車体のような金属に触れた瞬間に一気に流れるのが、あの「バチッ」です。
大阪産業技術研究所の技術シートは、静電気は「季節を問わず身近にあって、私達はそれに気づいていないだけ」だとしたうえで、湿度が下がると電気がかたよりやすくなる理由を「湿度の低下で電気抵抗が大きくなり、電荷の動きが抑制されてしまうから」と説明しています。同研究所が帯電させた和紙で測ったところ、電気が抜けていく速さは湿度が高いほど速くなりました(大阪産業技術研究所「バチッと感じる静電気。湿度との関係は?」PDF)。
群馬県立産業技術センターも、糸の静電気を相対湿度40%と65%の部屋で比べ、どの糸も65%のほうが静電気が小さかったと報告しています。理由は「発生した静電気が糸の表面や内部に含まれた水を伝わって逃げていった」ためと考えられています(群馬県立産業技術センター「かせ糸に発生する静電気の評価」PDF)。つまり、空気が湿っていれば電気は少しずつ逃げ、乾いていると体にたまり続けるということです。
数千〜数万ボルトでも命に関わらない理由
群馬県立産業技術センターの資料によると、人が感じる静電気の電圧は数千〜数万ボルトですが、放電時の電流は1〜数ミリアンペアとごく小さく、「人命にかかわることはない」とされています。ただし電子機器にとっては誤作動や故障の原因になります(群馬県立産業技術センター「静電気の耐性試験」PDF)。また、火花がガソリンの蒸気に引火するおそれがあることは、後のセルフ式ガソリンスタンドの章で説明します。
47都市の冬の湿度を比べた|乾くのは関東、湿るのは北陸
気象庁の「過去の気象データ検索」にある平年値(1991〜2020年の平均)から、47都道府県庁所在地の気象台などの月平均の相対湿度と蒸気圧を取り出し、1月と2月の平均を出しました(例:東京の平年値(年・月ごとの値))。
1〜2月の湿度が低い6都市
| 都市 | 1月 | 2月 | 1〜2月の平均 | 20℃に暖めたときの湿度 |
|---|---|---|---|---|
| 東京(東京) | 51% | 52% | 51.5% | 20.1% |
| 熊谷(埼玉) | 53% | 52% | 52.5% | 19.0% |
| 前橋(群馬) | 54% | 52% | 53% | 18.2% |
| 横浜(神奈川) | 53% | 54% | 53.5% | 22.2% |
| 甲府(山梨) | 55% | 52% | 53.5% | 18.2% |
| 千葉(千葉) | 53% | 55% | 54% | 22.7% |
1〜2月の湿度が高い6都市
| 都市 | 1月 | 2月 | 1〜2月の平均 | 20℃に暖めたときの湿度 |
|---|---|---|---|---|
| 福井(福井) | 82% | 78% | 80% | 26.7% |
| 富山(富山) | 82% | 78% | 80% | 26.3% |
| 山形(山形) | 81% | 77% | 79% | 21.0% |
| 青森(青森) | 78% | 76% | 77% | 19.2% |
| 長野(長野) | 79% | 74% | 76.5% | 20.1% |
| 鳥取(鳥取) | 76% | 74% | 75% | 26.9% |
気象庁「過去の気象データ検索」平年値(年・月ごとの値)の相対湿度・蒸気圧から当サイトで集計。「1〜2月の平均」は1月と2月の平年値の単純平均。「20℃に暖めたときの湿度」は、1〜2月の平均蒸気圧を20℃の飽和水蒸気圧(Tetensの式で23.4hPa)で割った値で、人の呼気や調理・洗濯物による水蒸気は含みません。観測地点は各県庁所在地の気象台など(埼玉は熊谷、滋賀は彦根)。
そのほかの35都市(1〜2月の平均、低い順):静岡57%・宇都宮60%・大阪60.5%・高知60.5%・和歌山61%・徳島61%・津61%・神戸61.5%・名古屋62%・大分62.5%・福岡62.5%・松山63%・水戸63%・高松63%・岐阜64%・仙台65%・広島65.5%・長崎65.5%・鹿児島65.5%・京都66%・宮崎66.5%・福島66.5%・岡山67.5%・那覇67.5%・佐賀68%・奈良68.5%・札幌68.5%・熊本68.5%・盛岡72%・金沢72%・新潟73%・秋田73%・山口73.5%・彦根74.5%・松江75%。
太平洋側、とくに関東は冬がいちばん乾く
60%を下回った7都市は、東京・熊谷・前橋・横浜・甲府・千葉・静岡と、すべて関東甲信と静岡でした。東京は7月の平年値が76%なのに対し、1月は51%まで下がります。一方、雪や雨の多い日本海側は冬も湿度が高く、富山・福井は80%、山形も79%ありました。
1年で外の湿度がいちばん低い月を調べると、1月か2月に最も乾く都市は19で、関東・東海・四国・九州など太平洋側に集中していました。一方、日本海側や東北・北海道を中心とする21都市は4月が最も乾く月でした。
暖房を入れると、日本海側の部屋も乾く
ただし、静電気が起きる場所の多くは暖房の効いた室内です。空気に含まれる水蒸気の量はそのままで温度だけが上がると、湿度(相対湿度)は下がります。1〜2月の外の空気をそのまま20℃に暖めた場合の湿度を計算すると、東京は20.1%、外の湿度が80%の福井でも26.7%、札幌は14.8%。40%を上回ったのは那覇(58.6%)だけでした。地域ごとに加湿が必要になる時期は「加湿器はいつから必要?47都市の開始日を計算」で詳しく計算しています。
ドアノブの「バチッ」を防ぐ触り方|先に壁、手のひら全体で
「バチッ」が痛いのは、たまった電気が指先の小さな一点から一気に流れるからです。そこで、金属のドアノブに触る前に、別のものに触れて電気を逃がしておく方法がよく紹介されます。

- ドアノブの前に、木の扉や壁に手のひら全体で触れる:数秒ぴたりと当てておきます。
- それからドアノブを握る:指先でつまむのではなく、手のひら全体で一気に握ります。
- 金属の鍵や小銭を持っているなら、先にそれをノブに当てる:放電が起きても、指先ではなく金属の先で起きます。
木や壁紙、コンクリートの壁は金属ほど電気を通さないため、触れても一度に大きな火花にはなりにくく、たまった電気を少しずつ逃がす助けになります。手のひら全体で触れるのは、接する面を広くして、指先の一点に電気が集まらないようにするためです。ただし、すぐ後に服がこすれればまた電気はたまるので、ドアノブの直前に触れるのがコツです。
手の乾燥も関係する
前の章のとおり、静電気は水分を伝わって逃げていきます。手肌が乾いているときにバチッとくる、という人は、ハンドクリームなどで保湿しておくのも一つの方法です。
静電気が起きやすい服の組み合わせ|「帯電列」で離れた素材に注意
素材には、こすれたときにプラスになりやすいものとマイナスになりやすいものがあり、順に並べたものを「帯電列」と呼びます。舞鶴市消費生活センターが広報誌で紹介している衣服の帯電列は次のとおりです。
(+)羊毛 → ナイロン → 絹 → レーヨン → 綿 → アセテート → ポリエステル → アクリル(−)
同センターは「この序列が離れている繊維どうしを摩擦するほうが、近い繊維どうしを摩擦するより帯電圧が高くなり静電気が発生しやすくなります」とし、悪い例に羊毛のコートとアクリルのセーター、良い例にレーヨンのセーターと綿のシャツを挙げています(広報まいづる2016年1月号「衣服の静電気に気を付けて」PDF)。

- ウールのセーター×ポリエステル・アクリルのフリースやインナー:帯電列の両端に近く、静電気が起きやすい組み合わせです。フリースはポリエステル製が多いので、表示ラベルで素材を確かめましょう。
- 綿×綿、綿×レーヨン:帯電列で近い素材どうしなので、起きにくい組み合わせです。
- 脱ぐ・着るの動作:重ね着した服を勢いよく脱ぐと、こすれと引きはがしが同時に起きます。冬の脱衣時に「パチパチ」となるのはこのためです。
ポリエステルは湿度の助けが小さい
群馬県立産業技術センターの試験では、湿度を65%に上げると静電気は小さくなりましたが、ポリエステルは他の糸より効果が小さかったそうです。標準状態での水分率が絹12.0%・アセテート6.5%に対しポリエステルは0.4%と、水分をほとんど含まないためと考えられています(群馬県立産業技術センター)。化学繊維の服は、加湿だけに頼らず組み合わせでも工夫しましょう。なお同センターは、帯電は表面の状態などにも左右され「必ずしも帯電列のとおりになるとは限らない」とも注意しています。
加湿で静電気を防ぐ|部屋の湿度の目安は40〜70%

部屋の湿度の目安として広く使われているのが、建築物衛生法(ビル管理法)の基準です。厚生労働省の資料は、事務所などの居室の相対湿度の基準を「40%以上70%以下」と示しています。下限を40%とした根拠の一つに、インフルエンザウイルスの不活性化と湿度の関係を挙げ、飛沫中のウイルスを3時間で不活性化するには「室温18℃の場合、相対湿度が50%~60%とすることが必要との報告がある」とも紹介しています(厚生労働省「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気について」PDF)。
前の章のとおり、冬の外の空気を20℃に暖めると、多くの都市で20%前後まで下がります。まず40%を下回らないこと、できれば50%前後をめざすとよいでしょう。湿度計を1つ置いておくと、加湿しすぎにも気づけます。
- 加湿器を使う:寝室や、よく静電気が起きる玄関に近い部屋から。
- 洗濯物を部屋に干す・ぬれタオルを掛ける:電気代をかけずに水分を足せます。
- 上げすぎない:70%を超えるような湿度が続くと、窓や壁の結露、カビの原因になります。
観葉植物は「主役」ではない
観葉植物も葉から水分を出しますが、部屋全体の湿度を大きく上げるほどではありません。乾燥がきつい日は、加湿器や部屋干しと組み合わせて考えましょう。
車の乗り降りで静電気を防ぐ|ドアの金属部分を持ったまま降りる
車を降りるときの「バチッ」は、運転中に服とシートがこすれ、さらに体がシートから離れるときに電気がたまるために起きやすくなります。降りてからドアに触れた瞬間に、まとめて放電するわけです。

- シートに座ったまま、ドアの金属部分(ドアの枠など)を手で持つ。
- 金属部分を持ったまま、足を地面につけて立ち上がる:体がシートから離れる瞬間にも、電気が手から車体へ逃げ続けます。
- 立ったら手を離し、ドアを閉める:降りてから改めてドアに触る場合は、先に車体の金属部分に手のひらで触れてからにします。
消防庁がセルフ式ガソリンスタンドの静電気対策を検討した報告書でも、給油の手順の最初に「車から降りドアを閉める」→「車体の金属部分に触れることで静電気除去」を置き、降車の段階を「金属製のドアに触る」と整理しています(消防庁 検討報告書 第4章「セルフスタンドにおける静電気火災に係る検討」PDF)。
セルフ式ガソリンスタンドでは給油の前に静電気除去シート
静電気がいちばん危ないのが給油のときです。東京消防庁は「静電気の火花が原因で、給油口から出てくるガソリン蒸気に引火する事故が発生するおそれがあります」として、給油キャップを開ける前に、静電気除去シートや車の金属部分に触れてから給油を始めるよう呼びかけています(東京消防庁「セルフ式ガソリンスタンドを安全に利用するために」)。
JAFも、ガソリンは−40℃でも気化する爆発性の高い物質だとして、空気が乾燥している季節でなくとも必ず給油機の「静電気除去シート」に触れるよう案内し、シートがない場合はクルマのボディに触れることでも静電気を除去する効果があるとしています(JAF「セルフスタンドでの給油の注意点について」)。
セルフ式の静電気火災は冬に集中していた
消防庁の検討報告書には、セルフスタンドが始まった平成10年から平成17年度までに起きた静電気が原因と考えられる火災18件の月別の表があり、「相対湿度が低く乾燥した時期に多くの事故が発生していることが特徴」とされています。表の件数を月ごとに足し上げると、12〜3月の4か月で11件でした。着火のタイミングは「給油キャップを開けた際」が6件、「給油中(再開時・終了後を含む)」が12件です。
報告書は、車を降りた後にドアの金属部にも給油口の金属のふたにも触れずにキャップを開ける例があったことを指摘しています。消防庁が平成13年に静電気除去を徹底するよう通知し、ほとんどのセルフスタンドがシートを備えて音声で呼びかけるようになってから、「キャップを開けた際の着火」は減りました(消防庁)。
給油中に車内へ戻らない
消防庁の「消防の動き」(2018年12月号)によると、セルフスタンドの給油中の火災事故は平成18〜29年の12年間で計43件(フルサービスは31件)。同誌は「特に冬場は、衣服等により人体に帯電しやすい季節」だとして、静電気除去シート等で静電気を十分除去するよう求めています(消防庁「セルフスタンドにおける安全な給油について」PDF)。給油の途中で車内に戻ると、シートとの摩擦でまた電気がたまります。戻った場合は、もう一度シートに触れてから給油口に近づきましょう。子どもに給油させる危険については「子どもにセルフ給油させるのは違法?」で解説しています。
静電気についてよくある質問
Q. 静電気はなぜ冬に多いのですか?
A. 空気が乾燥して湿度が下がると、物の電気抵抗が大きくなり、体や服にたまった電気が逃げにくくなるためです(大阪産業技術研究所)。気象庁の平年値では、東京の1〜2月の湿度は51.5%と7月(76%)より20ポイント以上低く、暖房で暖めた室内はさらに乾きます。
Q. ドアノブの静電気を防ぐにはどう触ればいいですか?
A. ドアノブに触る前に、木の扉や壁に手のひら全体で数秒触れて電気を少しずつ逃がし、それからノブを手のひら全体で握ります。金属の鍵を持っていれば、先に鍵の先をノブに当てると、指先で放電せずに済みます。
Q. 静電気が起きやすい服の組み合わせは?
A. 帯電列で離れた素材どうしです。舞鶴市消費生活センターは、羊毛のコートとアクリルのセーターを悪い例、レーヨンのセーターと綿のシャツを良い例に挙げています。ウールとポリエステルのフリースの重ね着も、離れた組み合わせになります。
Q. 静電気対策には部屋の湿度を何%にすればいいですか?
A. 建築物衛生法の基準は相対湿度40%以上70%以下です。厚生労働省の資料は、室温18℃で相対湿度50〜60%がウイルスの不活性化に必要との報告も紹介しています。まず40%を下回らないようにし、上げすぎによる結露にも注意しましょう。
Q. セルフ式ガソリンスタンドで静電気除去シートに触らないとどうなりますか?
A. 体にたまった静電気の火花が、給油口から出るガソリンの蒸気に引火するおそれがあります。消防庁の報告書では、セルフスタンドで静電気が原因と考えられる火災が平成10年〜17年度に18件あり、乾燥した時期に多いとされています。給油キャップを開ける前に必ずシートに触れてください。
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出典・参考
- 気象庁「過去の気象データ検索」平年値(年・月ごとの値、1991〜2020年。47都道府県庁所在地の気象台などの相対湿度・蒸気圧を当サイトで集計)
- 大阪産業技術研究所「バチッと感じる静電気。湿度との関係は?」(技術シートNo.10001、2010年4月27日)
- 群馬県立産業技術センター「かせ糸に発生する静電気の評価」(令和6年度)、「静電気の耐性試験」
- 舞鶴市「広報まいづる 2016年1月号」くらしの豆知識「衣服の静電気に気を付けて」(消費生活センター)
- 厚生労働省「冬場における『換気の悪い密閉空間』を改善するための換気について」(令和2年11月27日)
- 消防庁「第4章 セルフスタンドにおける静電気火災に係る検討」、「セルフスタンドにおける安全な給油について」(消防の動き2018年12月号)
- 東京消防庁「セルフ式ガソリンスタンドを安全に利用するために」
- JAF「セルフスタンドでの給油の注意点について」(クルマ何でも質問箱)
- イラスト:すべてChatGPT(OpenAI)の画像生成で作成した説明用のイメージです。


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