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特急サロベツ3号がヒグマと衝突し脱線|JR北海道の熊衝突6年の推移
北海道のJR宗谷線で10月30日夜、旭川発稚内行きの特急「サロベツ3号」が線路内のヒグマと衝突し、先頭車両の車輪が脱線しました。乗客32人と乗務員にけがはありませんでしたが、乗客は車内で一夜を明かしました。JR北海道によると、ヒグマとの衝突による脱線は1987年の会社発足後初めてです。JR北海道が公表している熊・鹿との衝突件数を年度ごとに並べ、宗谷線にどれだけ集中しているのかを集計しました。
この記事の要点
- 10月30日(金)22時48分ごろ、宗谷線の天塩中川〜問寒別駅間(旭川駅起点169キロ820メートル付近)で、特急サロベツ3号(キハ261系4両、乗車32人)が線路内の熊を見つけて非常停止の手配をとったものの衝突しました。
- 31日6時20分ごろにハンターと社員が現地で点検し、先頭車両の前側の台車の1軸目が進行方向右側に脱線していることを確認しました(JR北海道)。
- 乗客は31日午前9時半ごろまでにJRが手配したタクシーに乗り換えました(共同)。衝突から約10時間42分にあたります。
- 音威子府〜稚内間は31日に続き11月1日も終日運休で、旭川〜稚内間で代行バスが走ります。運輸安全委員会は鉄道事故調査官2人の派遣を決めました。
- JR北海道の集計では、2025年度の熊の発見・衝突は76件、うち衝突は57件で、どちらも過去最多です。2020〜2025年度の6年間の合計369件のうち、宗谷線が153件(41%)を占めています(当サイト集計)。
特急サロベツ3号の脱線事故の概要
JR北海道が10月31日に出した発表資料「宗谷線 天塩中川~問寒別駅間 列車脱線事故について」と、産経新聞・日本経済新聞が配信した共同通信の記事をもとに、2026年11月1日時点(日本時間)で分かっていることをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生日時 | 2026年10月30日(金)22時48分ごろ(JR北海道の発表) |
| 場所 | 宗谷線 天塩中川(中川町)〜問寒別(幌延町)駅間、旭川駅起点169キロ820メートル付近 |
| 列車 | 旭川20時06分発・稚内行き 特急サロベツ3号(キハ261系4両編成) |
| 乗車人数 | 32人(乗客・乗務員ともにけがなし) |
| 状況 | 線路内に入ってきた熊を認めて非常停止の手配をとったが衝突し、大きな縦揺れを感知。熊を車両の下に巻き込み、先頭車両の前側台車1軸目が進行方向右側に脱線 |
| 運休 | 10月31日・11月1日とも15本(影響人員それぞれ約400人。31日は雨による運休を含む) |
| 調査 | 運輸安全委員会が鉄道事故調査官2人の派遣を決定(共同) |
報道では発生時刻を「30日午後10時50分ごろ」としていますが、JR北海道の発表資料では「22時48分頃」です。この記事ではJR北海道の時刻を使います。
発生から11月1日までの経過
- 30日 20:06旭川駅を出発特急サロベツ3号は旭川発稚内行きの下り列車です。
- 30日 22:48ごろ天塩中川〜問寒別間で熊と衝突旭川を出て約2時間42分後。運転士が線路内の熊に気づいて非常停止の手配をとりましたが、間に合いませんでした。
- 30日 夜乗客を乗せたまま現場に停車熊を車両の下に巻き込んでいる可能性があり、他のヒグマが周りにいる可能性もあったため、乗客32人を乗せたまま停車を続けました(共同)。
- 31日 6:20ごろハンターと社員が到着し点検衝突から約7時間32分後。先頭車両の前側台車1軸目の脱線を確認しました(JR北海道)。
- 31日 9:30ごろ乗客がタクシーに乗り換えJR北海道が手配したタクシーで目的地へ向かいました(共同)。
- 31日運休15本、運輸安全委員会が調査官派遣音威子府〜稚内間は終日運休。ヒグマとの衝突による脱線はJR北海道の発足後初めてとされます。
- 11月1日終日運休が続き、代行バスを運行JR北海道は「現在のところ復旧の見込みはたっておらず」としています。

11月1日の運休と代行バスの時刻
JR北海道の発表(10月31日14時現在のお知らせ)によると、11月1日(日)の運転計画は次のとおりです。
- 特急「宗谷」(上下):札幌〜旭川間のみ運転
- 特急「サロベツ」:全列車運休
- 普通列車:名寄〜音威子府間は一部のみ運転、音威子府〜稚内間は終日運休
| 便 | 主な停車地と時刻 |
|---|---|
| 代行バス1便(下り) | 旭川 9:10発 → 名寄 11:08 → 音威子府 12:12 → 天塩中川 13:04 → 幌延 13:44 → 稚内 14:54着(札幌7:30発の特急宗谷から接続) |
| 代行バス3便(下り) | 旭川 13:35発 → 名寄 15:32 → 音威子府 16:36 → 天塩中川 17:28 → 幌延 18:08 → 稚内 19:20着(札幌12:00発の特急ライラック17号から接続) |
| 代行バス2便(上り) | 稚内 6:36発 → 幌延 7:47 → 天塩中川 8:27 → 音威子府 9:19 → 名寄 10:23 → 旭川 12:21着(旭川13:00発の特急ライラック22号に接続) |
代行バスの注意点
代行バスはJRの乗車券で利用できます。天候や道路の状況でバスや列車が遅れると、上の接続に乗り換えられないことがあるとJR北海道は案内しています。11月2日以降の運転については、11月1日0時台の時点で発表がありません。出かける前にJR北海道の列車運行情報を確認してください。
JR北海道の熊の発見・衝突件数の推移(2020〜2025年度)
JR北海道は2026年5月14日、「鹿・熊による列車運行への影響件数について」を公表しました。線区別の表から、全道の件数と宗谷線の件数を抜き出して並べたのが次の表です。「発見」は、熊を見つけて列車が止まった、熊の死骸を見つけて止まった、熊が列車の前を走ったため徐行した、という事象を指します。
| 年度 | 発見・衝突(全道) | うち衝突 | 衝突による輸送障害 | 宗谷線 | 宗谷線の割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2020年度 | 56件 | 41件 | 12件 | 19件 | 34% |
| 2021年度 | 68件 | 46件 | 13件 | 28件 | 41% |
| 2022年度 | 63件 | 45件 | 16件 | 31件 | 49% |
| 2023年度 | 71件 | 52件 | 9件 | 32件 | 45% |
| 2024年度 | 35件 | 21件 | 6件 | 14件 | 40% |
| 2025年度 | 76件 | 57件 | 17件 | 29件 | 38% |
| 6年合計 | 369件 | 262件 | 73件 | 153件 | 41% |
出典:JR北海道「鹿・熊による列車運行への影響件数について」(2026年5月14日)。宗谷線の割合と6年合計は当サイトの計算。
2025年度は全道で76件と、前年度の35件から2倍以上に増えました。JR北海道は「総件数及び衝突件数の両方で過去最多」としています。発見・衝突のうち実際にぶつかったケースは57件で、約75%にあたります。
宗谷線に集中する熊の事象
線区別に見ると、宗谷線は6年間、発表の表に載っている線区の中で毎年もっとも件数が多くなっています。6年間の合計は153件で、全道の369件の41%にあたります。2番目に多い石北線は6年合計72件で、宗谷線はその2倍を超えます。宗谷線と石北線を管轄する旭川支社のエリアだけで、6年間に225件(全道の61%)が起きています。
「輸送障害」の件数が資料によって違う理由
JR北海道の安全報告書2026にも熊のグラフがあり、2025年度の「熊との衝突・発見」は76件と5月の発表と同じです。一方、「熊による輸送障害」は安全報告書では19件、5月の発表では「輸送障害(衝突)」として17件です。5月の発表は衝突によるものだけを数えているとみられます。輸送障害とは、列車に運休または30分以上の遅れが出たものをいいます。
鹿との衝突は2025年度に3,478件
線路の上で列車とぶつかる動物は、熊よりも鹿(エゾシカ)のほうがはるかに多くなっています。2025年度は全道で3,478件と過去最多で、1日平均約9.5件です。宗谷線は616件で、全道の約18%でした。
| 年度 | 鹿との衝突(全道) | うち宗谷線 | 鹿による輸送障害 |
|---|---|---|---|
| 2020年度 | 2,413件 | 457件 | 99件 |
| 2021年度 | 2,632件 | 462件 | 144件 |
| 2022年度 | 2,881件 | 484件 | 174件 |
| 2023年度 | 3,145件 | 642件 | 155件 |
| 2024年度 | 2,770件 | 591件 | 149件 |
| 2025年度 | 3,478件 | 616件 | 162件 |
出典:JR北海道「鹿・熊による列車運行への影響件数について」(2026年5月14日)、安全報告書2026(輸送障害はグラフの数値を読み取り)。
安全報告書のグラフで10年前と比べると、2015年度の1,961件から2025年度は3,478件へ、約1.8倍になっています。鹿による輸送障害も2015年度の57件から162件に増えました。
JR北海道は、鹿や熊の処理について「直近に熊が出没していた区間では、線路へ降りる際にハンターの手配や、専用の機材を手配するなど運転再開までにお時間を要し」、大幅な遅れや運休が出ることがあると説明しています。今回、夜明けまで点検ができなかったのも、この手順によるものとみられます。
北海道のヒグマ捕獲数とJRの熊の件数
北海道庁の「ヒグマ捕獲数・被害の状況」と許可捕獲数の速報値から、道内のヒグマの捕獲数を年度ごとに並べ、JR北海道の熊の発見・衝突件数と比べました。
| 年度 | 許可捕獲 | 狩猟を含む捕獲数 | JR北海道の熊の発見・衝突 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 791頭 | 822頭 | — |
| 2020年度 | 891頭 | 930頭 | 56件 |
| 2021年度 | 1,011頭 | 1,056頭 | 68件 |
| 2022年度 | 897頭 | 940頭 | 63件 |
| 2023年度 | 1,684頭 | 1,804頭 | 71件 |
| 2024年度 | 981頭 | 1,026頭 | 35件 |
| 2025年度 | 2,115頭(速報値) | 未公表 | 76件 |
許可捕獲は、市町村などの許可による駆除などの捕獲。2025年度は北海道庁の速報値(2026年4月24日更新)で、狩猟を含む確定値は未公表。
2025年度の許可捕獲は速報値で2,115頭と、表の期間でもっとも多くなりました。2023年度に多く、2024年度に減り、2025年度に再び増えるという動きは、JR北海道の熊の件数と同じ形です。ヒグマが人里や線路の近くに出てくる年は、捕獲も列車との遭遇も増える、という関係がうかがえます。ただし、これは2つの数字の動きが似ているというだけで、因果関係を示すものではありません。
2026年度の許可捕獲は、4〜9月の速報値で452頭です。前年度の同じ時期(1,475頭)より少なくなっています。北海道庁は、2024年末の道内のヒグマの数を中央値で12,190頭と推定しています(2026年6月更新)。
脱線は運輸安全委員会の調査対象になる
列車が動物とぶつかっても、それだけでは法令上の「鉄道事故」として運輸安全委員会が調べるとは限りません。今回、調査官が派遣されることになったのは、列車が脱線したからです。条文の流れは次のとおりです。
- 運輸安全委員会設置法 第2条第3項は、調査の対象となる「鉄道事故」を、列車や車両の運転中の事故のうち「国土交通省令で定める重大な事故」としています。
- その省令である運輸安全委員会設置法施行規則 第3条第1号は、鉄道事故等報告規則第3条第1項の第1号から第3号の事故(列車衝突・列車脱線・列車火災)を挙げています。脱線で除かれるのは、作業中の除雪車の脱線だけです。
- 鉄道事故等報告規則 第3条第1項第2号は、「列車脱線事故」を「列車が脱線した事故」と定義しています。
つまり、営業中の列車が脱線すれば、原因が熊との衝突であっても、死傷者がいなくても、運輸安全委員会の調査対象になります。脱線しなければ、熊や鹿との衝突で列車が30分以上遅れても、同じ規則の第3条第3項の「輸送障害」(鉄道運転事故以外のもの)の扱いです。JR北海道で毎年数十件ある熊の衝突のほとんどは、こちらにあたります。
調査が1年以内に終わらないと見込まれるときは、運輸安全委員会は途中経過を公表します(設置法第25条第4項)。
同じ区間で2025年4月にも脱線
天塩中川〜問寒別駅間では、2025年4月8日朝にも、音威子府発稚内行きの普通列車(1両、乗客なし)が脱線しています。運輸安全委員会の経過報告(2026年3月26日)によると、現場近くの盛土が2か所で崩れていました(旭川駅起点167キロ912メートル〜168キロ57メートルなど)。今回の現場(169キロ820メートル付近)とは約1.8キロの距離です。この2025年の事故は、経過報告の時点でまだ調査が続いていました。原因は熊とは関係なく、今回の事故とは別のものです。
宗谷線(名寄〜稚内)の区間データ
宗谷線は旭川から日本最北端の稚内までを結ぶ路線で、特急「宗谷」(札幌〜稚内)と「サロベツ」(旭川〜稚内)が走っています。JR北海道の線区データ(2025年度)では、名寄〜稚内間の距離は183.2キロです。今回の事故現場も、11月1日に終日運休となる音威子府〜稚内間も、この区間に含まれます。
1キロあたり1日に何人が乗ったかを示す「輸送密度」の推移は次のとおりです。
| 年度 | 輸送密度(人/キロ/日) |
|---|---|
| 1975年度 | 1,878人 |
| 1987年度 | 751人 |
| 2016年度 | 362人 |
| 2019年度 | 316人 |
| 2020年度 | 165人 |
| 2023年度 | 252人 |
| 2024年度 | 273人 |
| 2025年度 | 276人 |
出典:JR北海道「線区データ 宗谷線(名寄・稚内間)2025年度」から抜粋。
2025年度は276人で、国鉄時代の1975年度(1,878人)の約15%です。利用者の少ない長い区間を、深い森や原野を抜けて走るため、夜間に動物とぶつかったときの対応にも時間がかかります。
特急サロベツ3号の脱線についてよくある質問
Q. 特急サロベツ3号の事故はいつ、どこで起きましたか?
A. 2026年10月30日(金)22時48分ごろ、JR宗谷線の天塩中川駅(中川町)と問寒別駅(幌延町)の間、旭川駅起点169キロ820メートル付近で起きました。旭川20時06分発の稚内行きでした。
Q. けが人はいましたか?
A. JR北海道によると、乗車していた32人と乗務員にけがはありません。乗客は車内で一夜を過ごし、31日午前9時半ごろまでにJRが手配したタクシーに乗り換えました。
Q. 乗客はなぜ朝まで車内にいたのですか?
A. 熊を車両の下に巻き込んでいる可能性があり、周りに他のヒグマがいるおそれもあったため、乗客を乗せたまま停車を続けたと報じられています。夜明け後の6時20分ごろ、ハンターと社員が到着してから点検しました。
Q. 宗谷線はいつ運転を再開しますか?
A. 11月1日時点(日本時間)で、JR北海道は「現在のところ復旧の見込みはたっておらず」としています。11月1日は音威子府〜稚内間が終日運休で、旭川〜稚内間で代行バスが走ります。
Q. 熊との衝突で脱線したのは初めてですか?
A. JR北海道によると、ヒグマとの衝突による脱線は1987年の会社発足後初めてです。熊との衝突そのものは毎年あり、2025年度は57件と過去最多でした。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- JR北海道:宗谷線 天塩中川~問寒別駅間 列車脱線事故について(2026年10月31日)
- JR北海道:鹿・熊による列車運行への影響件数について(2026年5月14日)、安全報告書2026、線区データ 宗谷線(名寄・稚内間)
- 運輸安全委員会:宗谷線 天塩中川駅~問寒別駅間において発生した鉄道事故の調査について(経過報告、2026年3月26日)
- e-Gov法令検索:運輸安全委員会設置法、運輸安全委員会設置法施行規則、鉄道事故等報告規則
- 北海道庁:ヒグマに関する資料集(捕獲数・被害の状況、推定生息数)、ヒグマの許可捕獲状況(速報値)
- 産経新聞:特急「サロベツ3号」がヒグマと衝突し脱線、乗客一夜明かす(10月31日)、ヒグマと衝突で脱線、87年のJR発足後初(10月31日)
- 日本経済新聞(共同):北海道で特急列車とヒグマ衝突、JR宗谷線が脱線(10月31日)
表の割合・合計・倍率・時間の計算は当サイトによるものです。写真:アイキャッチ=MaedaAkihiko/Wikimedia Commons(CC0)、2024年8月撮影の特急サロベツ(事故車両とは限りません)。アイキャッチはトリミング・文字入れあり。


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