くらし|冬の健康
ヒートショックはいつから?浴槽での溺死が過去最多8,031人に
2026年9月30日に公表された人口動態統計(2025年の確定数)で、浴槽での溺死は8,031人と過去最多になりました。交通事故で亡くなった人(3,348人)の約2.4倍です。入浴中の事故は冬に集中し、溺死は1月が9月の約7倍。月別・年齢別・都道府県別のデータから「ヒートショックはいつから気をつけるべきか」と、今日からできる対策をまとめます。
この記事の結論
- 2025年に浴槽で溺れて亡くなった人は8,031人で、統計に残る年の中で最多。30年前(1995年の3,190人)の約2.5倍で、2016年からは交通事故の死者を上回り続けています。
- 亡くなった人の95%が65歳以上(80歳以上だけで4,940人)、93%が自宅や居住施設の浴槽です。
- 月別では10月から11月に約2倍に増え、1月がピーク。11〜4月の6か月で年間の76%を占めます。「暖房を使い始めるころ」から対策を始めるのが目安です(東京は平年11月8日ごろ)。
- 都道府県別の数字は最大で約9倍の差がありますが(沖縄県を除く)、寒い地域ほど多いわけではありません。入浴中の死亡が「溺死」ではなく病死などとして数えられている例も多く、国の研究では入浴中の急死は年間約19,000人と推計されています。
- 対策の基本は、消費者庁が勧める「脱衣所と浴室を暖める」「湯温41℃以下・10分まで」「急に立ち上がらない」「食後・飲酒後・服薬後は避ける」「家族に一声かける」の5つです。
ヒートショックとは?暖かい部屋から寒い浴室への温度差が引き金
ヒートショックは、急な温度の変化で血圧が大きく上下し、体に負担がかかることを指す言葉です。消費者庁は入浴時の仕組みを次のように説明しています。暖かい部屋から温度の低い脱衣所や浴室に入ると血圧が上がり、その後、温かい湯につかると血圧が下がる。この急激な上がり下がりを抑えるために、脱衣所や浴室を暖めて部屋との温度差をなくすことが大切だとしています。
入浴中に意識を失うと、そのまま湯の中で溺れてしまうことがあります。長寿科学振興財団も「高齢者の溺水のほとんどは入浴中の意識障害にともなう入浴事故に起因」すると説明しています。
「自分は元気だから大丈夫」は禁物
消費者庁は、入浴中の事故は持病がない場合や前兆がない場合でも起こるおそれがあるとしています。特に高齢者は、事故が起きると入院が必要になる割合が非常に高いとされます。本人だけでなく、家族など周りの人も一緒に注意することが大切です。
2025年の浴槽での溺死は8,031人で過去最多|交通事故の2.4倍
厚生労働省の人口動態統計では、浴槽の中で溺れた「浴槽内での溺死及び溺水」と、浴槽に転落して溺れた「浴槽への転落による溺死及び溺水」を集計しています。2026年9月30日に公表された2025年の確定数と、過去の推移を交通事故の死者数と並べました。
| 年 | 浴槽での溺死 | 交通事故 | 交通事故との比 |
|---|---|---|---|
| 1995年 | 3,190人 | 15,147人 | 0.21倍 |
| 2000年 | 3,518人 | 12,857人 | 0.27倍 |
| 2005年 | 3,756人 | 10,028人 | 0.37倍 |
| 2010年 | 4,467人 | 7,222人 | 0.62倍 |
| 2015年 | 5,293人 | 5,646人 | 0.94倍 |
| 2016年 | 5,673人 | 5,280人 | 1.07倍 |
| 2020年 | 5,444人 | 3,718人 | 1.46倍 |
| 2022年 | 6,679人 | 3,541人 | 1.89倍 |
| 2023年 | 6,909人 | 3,573人 | 1.93倍 |
| 2024年 | 7,776人 | 3,511人 | 2.21倍 |
| 2025年 | 8,031人 | 3,348人 | 2.40倍 |
厚生労働省「人口動態統計」上巻 第5.30表(不慮の事故による死因別にみた年次別死亡数)。浴槽での溺死はICD-10のW65(浴槽内での溺死及び溺水)とW66(浴槽への転落による溺死及び溺水)の合計。交通事故はV01-V98。比は筆者が計算。
- 浴槽での溺死は4年連続で増え、2022年の6,679人から2025年の8,031人へ3年で1,352人増えました。
- 交通事故の死者が30年で約5分の1に減ったのに対し、浴槽での溺死は約2.5倍に増えています。表に載る年では2016年に初めて交通事故を上回り、以後ずっと多い状態です。
- 年齢別では80歳以上が4,940人、65〜79歳が2,691人。45〜64歳でも304人が亡くなっています。
ヒートショックはいつから?溺死は11月に倍増し1月がピーク
同じ人口動態統計で、亡くなった月ごとの「不慮の溺死及び溺水」(浴槽以外の海や川での溺死も含む)を見ると、冬への偏りがはっきりわかります。参考として心疾患の死者数も並べました。
| 月 | 不慮の溺死 | 9月との比 | 心疾患(参考) |
|---|---|---|---|
| 1月 | 1,781人 | 6.8倍 | 27,262人 |
| 2月 | 1,496人 | 5.7倍 | 21,607人 |
| 3月 | 1,219人 | 4.6倍 | 20,917人 |
| 4月 | 871人 | 3.3倍 | 17,744人 |
| 5月 | 644人 | 2.4倍 | 16,741人 |
| 6月 | 428人 | 1.6倍 | 15,222人 |
| 7月 | 292人 | 1.1倍 | 15,690人 |
| 8月 | 285人 | 1.1倍 | 15,802人 |
| 9月 | 263人 | 1.0倍 | 14,690人 |
| 10月 | 494人 | 1.9倍 | 15,598人 |
| 11月 | 980人 | 3.7倍 | 18,421人 |
| 12月 | 1,312人 | 5.0倍 | 20,845人 |
厚生労働省「人口動態統計」保管統計表 都道府県編 第3表-00(全国、2025年)の死因簡単分類「不慮の溺死及び溺水」「心疾患(高血圧性を除く)」。9月との比は筆者が計算。
- 溺死が最も少ないのは9月の263人で、1月は1,781人と約6.8倍です。夏は海や川での溺死が含まれるので、浴槽に限ればこの差はさらに大きいと考えられます。
- 10月の494人から11月は980人と約2倍に増えます。11月〜4月の6か月で7,659人、年間の76.1%です。
- 心疾患の死者も1月(27,262人)は9月(14,690人)の約1.86倍。冬は入浴中に限らず、心臓や血管への負担が大きい季節です。
対策を始める目安は「暖房を使い始める日」
溺死が急に増える11月は、多くの地域で暖房を使い始める時期と重なります。居間を暖め始めると、暖房のない脱衣所・浴室との温度差が広がるためです。当サイトが気象庁の平年値から計算した「日平均気温が14℃を下回る日」(エアコンの省エネ基準が想定する暖房期間の始まりと一致)を、ヒートショック対策を始める目安として並べます。
| 都市 | 暖房開始の目安(平年) |
|---|---|
| 札幌 | 10月8日 |
| 仙台 | 10月25日 |
| 新潟 | 10月29日 |
| 東京 | 11月8日 |
| 名古屋 | 11月9日 |
| 大阪 | 11月15日 |
| 広島 | 11月11日 |
| 福岡 | 11月17日 |
| 鹿児島 | 11月29日 |
気象庁の日別平年値(1991〜2020年)で日平均気温が14℃を下回る最初の日。計算方法と47都市の一覧は暖房はいつから?47都市の開始日を参照。
日本気象協会の「ヒートショック予報」(tenki.jp)も、2026年10月から今季の提供を始めています。家の中の冷え込みや温度差の危険度を「油断禁物」「注意」「警戒」の3段階で毎日示しているので、入浴前のチェックに使えます。
都道府県別に見ると?最大9倍の差は「死因の数え方」の違いも
都道府県ごとに人口も高齢化の度合いも違うので、「亡くなった人1,000人のうち、不慮の溺死が何人か」で比べました。あわせて県庁所在地などの1月の平均気温(平年値)も載せています。
| 都道府県 | 不慮の溺死 | 死亡1,000人あたり | 1月の平均気温 |
|---|---|---|---|
| 多い5都府県 | |||
| 神奈川県 | 1,567人 | 15.4人 | 6.2℃ |
| 富山県 | 203人 | 13.9人 | 3.0℃ |
| 滋賀県 | 167人 | 10.8人 | 3.9℃ |
| 福井県 | 110人 | 10.5人 | 3.3℃ |
| 岐阜県 | 267人 | 10.3人 | 4.6℃ |
| 少ない5府県(沖縄を除く) | |||
| 奈良県 | 48人 | 2.7人 | 4.5℃ |
| 山口県 | 48人 | 2.3人 | 4.4℃ |
| 千葉県 | 166人 | 2.2人 | 6.1℃ |
| 香川県 | 23人 | 1.7人 | 5.9℃ |
| 京都府 | 51人 | 1.6人 | 4.9℃ |
| 大都市圏など(参考) | |||
| 東京都 | 690人 | 5.0人 | 5.4℃ |
| 大阪府 | 565人 | 5.2人 | 6.2℃ |
| 愛知県 | 559人 | 6.7人 | 4.8℃ |
| 北海道 | 397人 | 5.3人 | -3.2℃ |
| 沖縄県 | 13人 | 0.9人 | 17.3℃ |
厚生労働省「人口動態統計」保管統計表 都道府県編 第3表(2025年、住所地別)の「不慮の溺死及び溺水」と死亡総数から筆者が計算。全国は6.3人。冬も温暖な沖縄県(0.9人)は比較から除き、参考として最後に掲載。気温は気象庁の平年値(埼玉は熊谷、滋賀は彦根)。
沖縄県を除くと、最も多い神奈川県(15.4人)と最も少ない京都府(1.6人)では約9.4倍の差があります。隣り合う東京都は5.0人で、神奈川の3分の1ほどです。
寒い地域ほど多いわけではない
1月の平均気温が3℃未満の11道県の平均は6.8人、6℃以上の14都府県の平均は6.7人で、ほとんど同じです。気温との相関係数も-0.06で、関係はほぼ見られません(いずれも沖縄県を除く46都道府県)。寒冷地は住宅の断熱や暖房が行き届いている一方、温暖な地域は浴室や脱衣所が冷えやすいといった事情が重なっていると考えられます。「暖かい地域だから大丈夫」とは言えないということです。
入浴中の死亡は統計よりずっと多い可能性
一方で、溺死が少ない県ほど心疾患による死亡の割合が高い傾向(相関係数-0.41)も見られました。入浴中に亡くなった人を「溺死」とするか、心疾患などの病気による死亡とするかは、亡くなった状況や検案した医師の判断で変わります。都道府県の大きな差には、こうした死因の数え方の違いも影響しているとみられます。
実際、消費者庁が紹介している厚生労働科学研究の報告書は、入浴中の急死の実数は、死因が「溺死」と書かれた例の数倍にのぼると推測しています。2012年10月〜2013年3月に東京都・山形県・佐賀県で救急隊が入浴に関連すると判断した心肺停止の件数などから、病死なども含めた全国の入浴中の急死者を年間約19,000人と推計しました。同じころの統計上の浴槽での溺死(2010年4,467人、2014年5,362人)の3〜4倍にあたります。人口動態統計の「浴槽での溺死」は、入浴中の死亡の一部にすぎないと考えたほうがよさそうです。
ヒートショックを防ぐ5つの対策|消費者庁のポイント
消費者庁は、冬の入浴中の事故を防ぐために次の5つを呼びかけています。高齢の本人だけでなく、家族も一緒に入浴習慣を見直すことが大切です。
- 対策 1入浴前に脱衣所や浴室を暖める浴室や脱衣所に暖房があれば使って、入浴前に室温を上げておきます。暖房がない場合は、浴槽にお湯を入れるときにシャワーから給湯すると蒸気で浴室が暖まり、浴槽のふたを外しておくのも効果的です。脱衣所で暖房器具を使うときは、火事ややけどに気をつけましょう。
- 対策 2湯温は41℃以下、つかるのは10分まで長時間の入浴は避け、お湯はあまり熱くしないようにします。給湯器の温度設定を41℃以下にしておくと、毎回気にしなくて済みます。
- 対策 3浴槽から急に立ち上がらないお湯の中では体に水圧がかかっています。急に立ち上がると水圧がなくなって血管が一気に広がり、脳に行く血液が減って一時的に意識を失うことがあります。手すりや浴槽のふちを使って、ゆっくり立ち上がりましょう。
- 対策 4食後すぐ・飲酒後・薬を飲んだ後の入浴は避ける食後は血圧が下がりすぎる「食後低血圧」で失神することがあります。お酒はアルコールが抜けるまで入浴しないこと。体調が悪いときや、精神安定剤・睡眠薬などを飲んだ後も入浴は避けましょう。
- 対策 5入浴前に家族に一声かける「今からお風呂に入るね」と伝えておけば、長く出てこないときに気づいてもらえます。入浴中にこまめに声をかけるのも効果的です。
家の中の温度差を小さくするコツ
- 居間を18℃以上に保つ:国土交通省の調査では、朝の居間が18℃未満の家に住む人は、コレステロールや心電図の異常といった健康指標が悪い傾向が報告されています(詳しくは暖房はいつから?)。家全体を暖めると、浴室との温度差も小さくなります。
- ヒートショック予報を確認する:「警戒」の日は特に脱衣所と浴室を念入りに暖め、湯温と入浴時間を控えめにしましょう。
浴槽でぐったりしている人を見つけたら
消費者庁の資料による手順です。①浴槽の栓を抜き、大声で助けを呼ぶ。②浴槽から出せるなら救出し(出せなければ浴槽のふたに上半身を乗せるなどして沈まないようにする)、すぐに救急車を呼ぶ。③肩をたたきながら声をかけて反応を確かめ、反応がなければ呼吸を確認する。④呼吸がなければ胸骨圧迫を始める。
ヒートショックのよくある質問
Q. ヒートショックはいつから気をつければいいですか?
A. 暖房を使い始める時期からが目安です。人口動態統計(2025年)では、溺死は10月の494人から11月に980人へ約2倍に増え、1月にピークを迎えます。暖房開始の目安は平年で札幌10月8日、東京11月8日、大阪11月15日ごろです。
Q. 入浴中の事故で亡くなる人は年間何人ですか?
A. 2025年の人口動態統計では、浴槽での溺死が8,031人で過去最多でした。交通事故の死者(3,348人)の約2.4倍です。入浴中に病気などで亡くなった人はこの数に含まれず、国の研究では病死なども含めた入浴中の急死を年間約19,000人と推計しています。
Q. ヒートショックが起きやすいのはどんな人ですか?
A. 65歳以上の高齢者が中心で、2025年の浴槽での溺死の95%が65歳以上でした。高血圧や糖尿病、心臓病などの持病がある人、飲酒後に入浴する人、熱いお湯に長くつかる人も注意が必要です。
Q. お風呂の温度は何度がいいですか?
A. 消費者庁は、湯温41℃以下、お湯につかる時間は10分までを目安にするよう呼びかけています。
Q. 暖かい地域ならヒートショックの心配は少ないですか?
A. そうとは言えません。都道府県別に死亡1,000人あたりの溺死数を比べると、1月の平均気温が3℃未満の道県(6.8人)と6℃以上の都府県(6.7人)でほとんど差がありませんでした。浴室や脱衣所が冷えやすい家では、温暖な地域でも温度差が大きくなります。
Q. ヒートショック予報はどこで見られますか?
A. 日本気象協会の天気予報サイト「tenki.jp」で、冬の間「ヒートショック予報」が毎日発表されています。2026年は10月から提供が始まっています。
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出典・参考資料
- 厚生労働省:人口動態調査(e-Stat)(2025年確定数、2026年9月30日公表。上巻 第5.30表・第5.31表、下巻 第9表、保管統計表 都道府県編 第3表)
- 消費者庁:冬季に多発する高齢者の入浴中の事故に御注意ください!/冬季に多発する入浴中の事故に御注意ください!(2018年11月21日、PDF・発見時の対応)
- 厚生労働科学研究「入浴関連事故の実態把握及び予防対策に関する研究」平成24〜25年度総括研究報告書(研究代表者:堀進吾)※消費者庁の上記2018年資料による
- 長寿科学振興財団 健康長寿ネット:入浴事故
- 日本気象協会 tenki.jp:ヒートショック予報
- 気象庁:過去の気象データ検索(平年値)
交通事故との比、月別の比、都道府県別の死亡1,000人あたりの数と相関係数、暖房開始の目安は、公表データをもとに筆者が計算したものです。持病のある方は、入浴の注意点についてかかりつけの医師に相談してください。アイキャッチ写真:TKdows 2026(Wikimedia Commons、CC0)をトリミング・文字入れ。


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