ふるさと納税が2026年10月に変わる。ただし変わるのは自治体側のルール
「ふるさと納税が2026年10月から改悪される」という話が広がっています。もとになっているのは総務省が2025年6月24日に出した告示改正(令和7年総務省告示第220号)で、たしかに2026年10月1日以後に始まる指定から適用されます。ただ、実際に告示の条文を読むと、改正されたのは第二条と第五条の2か所だけです。この記事では新旧対照表の条文をそのまま確認しながら、寄付する側に影響があるものと、ないものを分けて整理しました。
2026年9月17日時点。根拠は令和7年総務省告示第220号とその新旧対照表です
第二条と第五条だけ
変わること
義務になる募集費用
(令和6年度指定時)
結論:寄付する人のルールは1つも変わらない
先に結論から書きます。2026年10月の改正で、寄付する側の手続きやお金の計算は何も変わりません。自己負担2,000円の仕組み、控除の上限額の計算方法、ワンストップ特例、確定申告のやり方、控除が反映されるタイミング——どれも今回の告示改正の対象外です。
根拠は告示の附則にはっきり書かれています。附則第2項は、改正後の告示の規定のうち「第二条及び第五条の規定」が令和8年10月1日以後に開始する期間に係る指定について適用される、と定めています。つまり今回いじられたのは第二条(募集の適正な実施に係る基準)と第五条(地場産品の基準)の2本だけです。返礼品の調達費用を寄付額の3割以下に抑える、いわゆる3割ルールの規定はこの2条のどちらでもないため、今回の改正では触られていません。
・自己負担2,000円の仕組み
・控除上限額(住民税所得割額などから計算する仕組み)
・ワンストップ特例制度
・返礼品の調達費用は寄付額の3割以下という基準
・募集に要する費用は寄付額の5割以下という基準(条文はいまも「百分の五十」のままです)
2026年10月から変わるのは、この3つ
では何が変わるのか。総務省が公表した資料と告示の条文を突き合わせると、次の3点にまとまります。いずれも自治体と返礼品の事業者に課される義務で、寄付者が何か手続きをするものではありません。
| 変わること | 根拠の条文 | 誰の義務か | 寄付者への影響 |
|---|---|---|---|
| 募集費用のうち1支払先100万円以上を公表 | 第二条第二号の二(新設) | 自治体 | 手続きの変更なし。どこにいくら払っているかが見えるようになる |
| 地場産品の「付加価値」の証明と公表を義務化 | 第五条第三号 | 製造事業者と自治体 | 基準を満たせない返礼品が消える可能性 |
| ご当地グッズに4つの条件を追加 | 第五条第五号 | 自治体 | 実態のないオリジナルグッズが消える可能性 |
①募集費用「1支払先100万円以上」の公表が義務になる
1つ目は、お金の流れを見えるようにする改正です。第二条に「二の二」という号が新設され、次の義務が加わりました。
総務省が示した公表様式では、支払目的が「調達」「送付」「広報」「決済」「事務」「その他」に区分され、募集に要した金額の総額と寄附受入総額まで並べて公表することになっています。つまり自治体がポータルサイト事業者にいくら手数料を払っているかが、支払先の名前つきで表に出るということです。
背景には金額の膨張があります。総務省の資料によれば、返礼品の調達費用やポータルサイト事業者への手数料など、ふるさと納税の募集に要する費用は5千億円を超える規模になっています。2025年3月31日の参議院総務委員会の決議でも、ポータルサイト運営事業者への手数料の増加を踏まえて「制度の趣旨をゆがめる不適切な運用などがないか調査すること」が求められていました。
②地場産品基準:「相応の付加価値」から「価値の過半」へ
2つ目がいちばん大きい改正です。第五条第三号は、これまで区域内の工程のうち「主要な部分を行うことにより相応の付加価値が生じているもの」と書かれていました。これが改正後は、区域内で製造・加工等を行うことにより「当該返礼品等の価値の過半が生じているもの」に書き換えられ、さらに次の2つの条件(イ・ロ)が新たに加えられました。
- イ……区域内で製造等を行うことにより価値の過半が生じている旨の証明が、総務大臣の定めるところにより、その返礼品の製造等を行う者によってなされていること
- ロ……自治体が寄附金の募集を開始する日までに、その証明の内容が自治体によって公表されること
言い換えると、これまでは自治体が「区域内で付加価値がついています」と説明すれば通った部分が、今後は製造事業者による証明書と、募集開始前の公表という2つの手続きを踏まないと基準を満たさなくなります。総務省は、付加価値割合の算出方法についても価格に基づく算出を原則とする方針を示しています。
なぜここまで厳しくするのか。総務省の資料には、具体的な疑義の例として輸入ワインのケースが挙げられています。
米国産の高級ワインを海外から6万円で輸入し、区域内の倉庫で保管する。この保管で6万円の付加価値がついたと説明して、返礼品として12万円で自治体へ納品する。ところが同じワインは、一般の顧客には8万円で販売されている——という構図です。「区域内で過半の付加価値が生じている」と説明できるように納品価格を引き上げているのではないか、と疑われる事例だと総務省は指摘しています。
これを受けて、付加価値基準による返礼品については、製造事業者の証明書に一般販売価格も併せて記載させ、その内容を公表することになりました。あわせて総務省は、返礼品の調達費用について「合理的な理由なく、一般販売価格より高額で調達することがないようにすること」を別途通知する方針も示しています。
③ご当地グッズは「自治体が自分で配った実績」が要る
3つ目は、キャラクターグッズやオリジナルグッズに関する第五条第五号の改正です。改正前は「形状、名称その他の特徴から当該地方団体の独自の返礼品等であることが明白なもの」であれば足りました。そのため、区域外で作られた製品でも市町村名やロゴが入っていれば広報目的の返礼品として認められ得る状態になっていたと総務省は説明しています。
改正後は、次の4条件をすべて満たすものに限られます。
- イ独自性が明白であること形状、名称その他の特徴から、その自治体の独自の返礼品であることが明白なもの。ここは従来どおりです。
- ロ直近1年に自分で配った実績があること指定対象期間の初日の属する年の前年10月1日から翌年9月30日までの間に、自治体が広報の目的で自ら調達し、配布または販売を行った実績があること。返礼品として提供したものはこの実績に含まれません。
- ハその期間に配る計画があること指定対象期間において、自治体が広報の目的で自ら調達し、配布または販売を行う計画を定めていること。これも返礼品としての提供は除かれます。
- ニ返礼品の数が配布実績を超えないこと指定対象期間に返礼品として提供する数量が、ロの配布または販売を行った数量を超えないこと。この号がいちばん効きます。自分で100個配ったなら、返礼品に出せるのも100個までということです。
ニの条件があるため、返礼品としてだけ大量に用意されていたオリジナルグッズは、そのままでは基準を満たせなくなります。広報のために自治体が実際に配っている数が上限になるからです。
「5割が4割になる」「所得制限が入る」は、この告示には書かれていない
ここは注意してください。2026年10月の改正を紹介する記事の中には、募集費用の上限が5割から4割へ段階的に引き下げられる、高所得者に所得制限が入る、といった説明を見かけます。しかし令和7年総務省告示第220号の新旧対照表を読むかぎり、第二条第二号の募集費用の上限は改正前も改正後も「百分の五十」のままで、引き下げられていません。変わったのは、同じ第二条に「二の二」(100万円以上の支払先の公表)が加わったところだけです。
返礼品は実際どのくらい減るのか
影響の大きさを測るヒントも、総務省の資料の中にあります。返礼品等の確認件数は令和6年度の指定時で約100万件を超えています。今回の改正で、そのうち付加価値基準にぶら下がっている製造・加工品と、広報目的のオリジナルグッズが証明・公表・数量の条件にさらされることになります。
一方で、事務は一部簡素化されます。令和7年の返礼品の事前確認で基準不適合などがなかった自治体(令和6年度で約1,200団体)については、令和8年の指定手続から一部書類の提出を省略し、返礼品の事前確認を行わない扱いになります。そのかわり総務省は一部団体を抽出調査するほか、基準適合性に疑いのある返礼品に関する「通報窓口」を設置するとしています。事前に全部見るのをやめて、事後チェックと通報に切り替えるということです。
つまり、いきなり返礼品が総入れ替えになるわけではありません。ただ「区域外で作った製品にロゴを入れただけのグッズ」と「一般販売価格より不自然に高く納品されている加工品」という、目的がはっきりした2種類が対象になっています。狙われている的は狭く、しかし的中すれば消えます。
2026年9月までに駆け込む必要はあるのか
寄付者の立場でいえば、制度としての駆け込みの必要はありません。自己負担2,000円も控除上限もワンストップ特例も変わらないからです。2026年分の寄付は、これまでどおり2026年12月31日までに行えば2026年分として扱われます。
ただし、狙っている返礼品が「区域外で製造されたオリジナルグッズ」や「地場産品としての説明が微妙な加工品」に当たる場合は、その品が2026年10月以降も残っているとは限りません。急ぐ理由があるとすれば、制度ではなく特定の品目のほうです。気になる返礼品があるなら、その自治体が新しい基準に沿った証明の公表をしているかどうかを、募集ページで確認しておくと確実です。
よくある質問
Q. ふるさと納税は2026年10月から改悪されるのですか?
A. 寄付する側の条件は変わりません。2026年10月1日以後に始まる指定から適用されるのは、総務省告示の第二条と第五条の改正で、いずれも自治体と返礼品事業者に課される義務です。自己負担2,000円、控除上限、ワンストップ特例、3割ルールはそのままです。
Q. 控除の上限額は下がりますか?
A. 下がりません。今回の告示改正に控除の上限額に関する規定は含まれていません。上限額は従来どおり住民税所得割額などから計算します。
Q. 募集費用の5割ルールは4割になるのですか?
A. 令和7年総務省告示第220号の新旧対照表では、第二条第二号の募集費用の上限は改正前・改正後とも「百分の五十」で変わっていません。今回の改正で加わったのは、1つの支払先に100万円以上支払った場合にその支払先・支払額・支払目的を公表する義務です。
Q. 返礼品はなくなってしまうのですか?
A. すべてがなくなるわけではありません。対象になるのは主に2種類で、区域内で価値の過半が生じたことを製造事業者が証明できない加工品と、自治体が広報目的で自ら配布した実績がない(または実績の数量を超える)オリジナルグッズです。
Q. 2026年9月までに駆け込みで寄付したほうがいいですか?
A. 制度面の理由での駆け込みは不要です。ただし狙っている返礼品が新基準で外れる可能性のある品目なら、その品が10月以降も残るとは限りません。急ぐかどうかは制度ではなく品目で判断してください。
・総務省 報道資料「ふるさと納税の指定基準の見直し等」(令和7年6月24日) soumu.go.jp
・改正告示新旧対照表(令和7年総務省告示第220号) 新旧対照表PDF
・総務省 自治税務局市町村税課「ふるさと納税の指定基準の改正等について」(令和7年6月24日) 解説資料PDF
条文の引用は新旧対照表の改正後欄によります。


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