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問責決議案とは?可決されたらどうなる?過去10件の結末と簗農相
就任前に「地元2市町の道路予算を大幅にカットした」と話したとする音声が報じられた簗和生農林水産大臣に対し、参議院の野党6党が問責決議案の提出を検討しています。問責決議とは何か、可決されたら大臣は辞めなければならないのか。参議院の議案データから、2001年以降に出された問責決議案57件の結果と、可決された10件のその後を調べました。
この記事の結論
- 問責決議は、参議院が大臣などの責任を問う決議です。衆議院の内閣不信任決議(憲法69条)と違って法的な拘束力はなく、可決されても辞任や解散の義務はありません。
- 参議院の議案データで確認できる2001年(第153回国会)以降、問責決議案は57件出され、可決10件・否決25件・採決されず22件でした。可決はすべて、与党が参院で過半数を持たない「ねじれ国会」(2007〜2013年)の時期です。
- 可決された閣僚6人は、だれも可決直後には辞めていません。ただし全員が35〜49日後の内閣改造で交代しました。首相4人のうち3人は、その後に辞任や衆院解散に至っています。
- 今の参議院は、自民党(101)と日本維新の会(19)の与党が合わせて120議席で、過半数(124)に届きません。野党などがまとまれば可決は可能で、可決されれば閣僚としては14年ぶりになります。
問責決議案とは?内閣不信任決議との違い
問責決議は、参議院が首相や大臣などに対して「その責任を問う」という意思を示す決議です。法律や憲法に定めがある手続きではなく、参議院議員が決議案を出し、本会議で多数決をとります。
| 項目 | 問責決議(参議院) | 内閣不信任決議(衆議院) |
|---|---|---|
| どこで決める | 参議院(本会議) | 衆議院(本会議) |
| 対象 | 首相・閣僚・副大臣・委員長など個人 | 内閣全体 |
| 法的な根拠 | なし(参議院の意思を示す決議) | 日本国憲法69条 |
| 可決されたら | 辞任の義務はない | 10日以内に衆議院を解散しないと内閣総辞職 |
| 実際の影響 | 野党が対象の大臣の出る審議に応じないなど、国会運営が止まりやすい | 解散・総選挙か総辞職に直結 |
日本国憲法69条「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」をもとに作成。
つまり問責決議は、可決されても大臣が辞める必要はありません。それでも重いとされるのは、可決後に野党がその大臣が出る審議に応じないといった対応をとることが多く、法案の審議が進まなくなるためです。2012年に問責された2閣僚の例では、野党の自民党が2人の辞任や交代がない限り一部を除いて審議に応じない方針をとり、最終的に内閣改造で交代しました。
問責決議案はこれまで何件?2001年以降57件を集計
参議院の議案情報で、第153回国会(2001年)から第222回国会(2026年10月召集)までの決議案一覧をすべて確認し、件名に「問責決議案」を含むものを抜き出しました。
| 時期 | 可決 | 否決 | 採決されず |
|---|---|---|---|
| 2001〜2007年与党が参院で過半数 | 0件 | 10件 | 9件 |
| 2007〜2013年ねじれ国会(与党が参院で過半数割れ) | 10件 | 0件 | 9件 |
| 2013年〜与党が参院で過半数 | 0件 | 15件 | 4件 |
参議院「議案情報」第153〜222回国会の決議案一覧と各議案の明細(議決日・議決結果)から筆者が集計。2007年7月と2013年7月の参院選を境に時期を分けました。委員長・副大臣への問責決議案も含みます。
結果は、参院の勢力図でほぼ決まっていました。与党が過半数を持っていた時期は、採決された問責決議案がすべて否決です。反対にねじれ国会の時期は、採決された10件がすべて可決でした。対象別では、閣僚35件、首相17件、委員長3件、副大臣2件です。
なお、データの範囲より前の1998年10月16日には、額賀福志郎防衛庁長官への問責決議が参議院で初めて可決されています。額賀氏は可決から35日後の同年11月20日に長官を辞任しています。
問責決議が可決されたらどうなる?過去10件の結末
可決された10件について、その後どうなったかをまとめました。
| 対象 | 可決日 | その後 | 可決から |
|---|---|---|---|
| 福田康夫 首相 | 2008年6月11日 | 辞意を表明(9月1日)し、内閣総辞職 | 82日後 |
| 麻生太郎 首相 | 2009年7月14日 | 衆議院を解散(7月21日)。総選挙で敗れ政権交代 | 7日後 |
| 仙谷由人 官房長官 | 2010年11月26日 | 内閣改造で交代(2011年1月14日) | 49日後 |
| 馬淵澄夫 国土交通相 | 2010年11月27日 | 内閣改造で交代(2011年1月14日) | 48日後 |
| 一川保夫 防衛相 | 2011年12月9日 | 内閣改造で交代(2012年1月13日) | 35日後 |
| 山岡賢次 国家公安委員長 | 2011年12月9日 | 内閣改造で交代(2012年1月13日) | 35日後 |
| 前田武志 国土交通相 | 2012年4月20日 | 内閣改造で交代(2012年6月4日) | 45日後 |
| 田中直紀 防衛相 | 2012年4月20日 | 内閣改造で交代(2012年6月4日) | 45日後 |
| 野田佳彦 首相 | 2012年8月29日 | 衆議院を解散(11月16日)。総選挙で敗れ政権交代 | 79日後 |
| 安倍晋三 首相 | 2013年6月26日 | 国会の最終日。直後の参院選で与党が勝ち、続投 | ― |
可決日は参議院の議案情報から。その後の日付は、内閣改造・辞意表明・衆院解散の日(報道などで確認)。日数は筆者の計算です。
閣僚は「すぐには辞めないが、次の改造で外れる」
閣僚6人はいずれも、可決の直後に辞任していません。2012年には当時の岡田克也副総理が、問責決議を理由に閣僚が辞任した例はないとして、辞任は不要との考えを示していました。ところが6人とも、35〜49日後の内閣改造で交代しています。審議が止まる状態を長く続けられず、改造の形で交代させた、というのが実際の流れでした。
首相は4人中3人が退陣・解散へ
首相への問責は4回可決されました。福田康夫首相は可決から82日後に辞意を表明し、麻生太郎首相は7日後に衆議院を解散、野田佳彦首相も79日後に解散しました。麻生・野田両氏は総選挙で敗れて政権を失っています。一方、2013年の安倍晋三首相への問責は国会最終日の可決で、直後の参院選で与党が勝ってねじれが解消し、そのまま続投しました。
簗農相への問責決議案は可決される?参院の勢力図
簗和生農林水産大臣は、就任前に地元2市町の道路予算を「大幅にカットをしました」と話したとする音声が9月30日に報じられ、野党から辞任を求められています。報道によると、参議院の野党6党が問責決議案の提出を検討し、自民党の鈴木宗男参院議員からも苦言が出ました。高市早苗首相は続投させる考えを示しています(2026年10月9日時点)。簗氏をめぐるこれまでの問題は簗和生農水相の問題とは?で整理しています。
参議院の会派別の議員数は次のとおりです。
| 会派 | 議員数 | 立場 |
|---|---|---|
| 自由民主党・無所属の会 | 101人 | 与党 |
| 日本維新の会 | 19人 | 与党 |
| 立憲民主・無所属 | 39人 | 与党以外 |
| 国民民主党・新緑風会 | 25人 | 与党以外 |
| 公明党 | 21人 | 与党以外 |
| 参政党 | 15人 | 与党以外 |
| 日本共産党 | 7人 | 与党以外 |
| いのちの党 | 5人 | 与党以外 |
| 日本保守党 | 2人 | 与党以外 |
| 沖縄の風 | 2人 | 与党以外 |
| チームみらい・無所属の会 | 2人 | 与党以外 |
| 社会民主党 | 2人 | 与党以外 |
| 各派に属しない議員 | 7人 | 与党以外 |
参議院「会派別所属議員数一覧」(令和8年10月9日現在、欠員1)から作成。与党は自由民主党と、閣内協力に移った日本維新の会としました。
与党の120人は過半数の124人に4人足りません。与党以外の127人がそろって賛成すれば、問責決議案は可決されます。ただし、与党以外にも主張の違う党や無所属の議員が含まれ、欠席や棄権があれば必要な数も変わるため、実際に可決されるかは各党の対応しだいです。
可決されれば、閣僚への問責は2012年4月の前田・田中両氏以来14年ぶり、問責決議の可決そのものも2013年6月以来13年ぶりになります。過去の例を当てはめれば、すぐに辞任する義務はなくても、野党が審議に応じないことで国会運営が難しくなり、内閣改造などの節目で交代を迫られる展開が考えられます。
問責決議案のよくある質問
Q. 問責決議案とは何ですか?
A. 参議院が首相や大臣などの責任を問うために出す決議案です。本会議で多数決をとり、可決されると「参議院として責任を問う」という意思を示したことになります。法律や憲法に定めのある手続きではありません。
Q. 問責決議が可決されたら大臣は辞任しなければいけませんか?
A. 辞任の義務はありません。衆議院の内閣不信任決議(憲法69条)と違い、法的な拘束力がないためです。ただし過去に可決された閣僚6人は、可決から35〜49日後の内閣改造ですべて交代しています。
Q. 問責決議は過去に何回可決されましたか?
A. 参議院の議案情報で確認できる2001年以降では、57件のうち10件が可決されました(否決25件、採決されず22件)。可決はすべて2008〜2013年のねじれ国会の時期です。これより前の1998年にも、額賀福志郎防衛庁長官への問責決議が可決されています。
Q. 内閣不信任決議との違いは何ですか?
A. 内閣不信任決議は衆議院が内閣全体に対して行い、可決されると10日以内に衆議院を解散するか、内閣が総辞職しなければなりません(憲法69条)。問責決議は参議院が個人に対して行うもので、可決されても法的な義務は生じません。
Q. 簗農相への問責決議案は可決されますか?
A. 参議院の与党(自民党と日本維新の会)は2026年10月9日現在で120人と、過半数の124人に4人足りません。与党以外の議員がまとまれば可決は可能ですが、各党の対応や欠席の有無で結果は変わります。
Q. 問責決議が可決されたのは何年ぶりになりますか?
A. 直近の可決は2013年6月の安倍晋三首相への問責決議で、閣僚に限れば2012年4月の前田武志国土交通相・田中直紀防衛相が最後です。簗農相への問責が可決されれば、閣僚としては14年ぶりになります。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 参議院:議案情報(第222回国会)(第153〜222回国会の決議案一覧と各議案の明細を集計)
- 参議院:会派別所属議員数一覧(令和8年10月9日現在)
- 参議院:防衛庁長官額賀福志郎君問責決議(1998年10月16日)、内閣総理大臣麻生太郎君問責決議(2009年7月14日)
- e-Gov法令検索:日本国憲法(69条)
- Wikipedia(英語版):Fukushiro Nukaga(防衛庁長官の在任期間 1998年7月30日〜11月20日)
- J-CAST ニュース:野田第2次改造内閣発足(2012年6月4日)
- 簗農相への問責決議案の検討は、日本経済新聞・毎日新聞・時事通信・TBS NEWS DIGなどの報道(2026年10月9日)による
内容は2026年10月10日時点の情報にもとづきます。問責決議案の件数・時期別の集計、日数の計算は筆者によるものです。参議院の議案情報で第152回国会以前の一覧は確認できなかったため、集計は2001年以降としています。アイキャッチ画像は自作です。


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