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マネーロンダリングとは?手口の3段階と口座を売る罪【2026年】
「マネーロンダリング」と聞くと、汚れたお札を洗うことや、映画に出てくるマフィアの話を思い浮かべるかもしれません。でも、洗うのはお札ではなくお金の「出どころ」です。日本では2025年に1,792件が検挙され、10年前の4倍をこえました。しかも、その通り道にされているのは、ふつうの人の名前の口座です。「口座を貸すだけで5万円」という誘いがなぜ危ないのか、しくみ・日本の数字・手口・銀行の対策・2026年7月に重くなった罰則まで、順番に解説します。
この記事の結論
- マネーロンダリング(資金洗浄)とは、犯罪で得たお金の出どころや本当の持ち主をわからなくして、警察などの追跡をのがれようとすることです。
- やりかたは一般に「入れる(プレースメント)→重ねる(レイヤリング)→もどす(インテグレーション)」の3段階で説明されます。
- 日本のマネロン事犯の検挙は2025年に1,792件(2016年は388件)。もとになった犯罪は詐欺が最多で、詐欺の被害がふくらむほどマネロンもふえています。
- いちばん多い手口は他人の名前の口座や架空の会社の口座を使うことで、警察庁はこれを「主要な犯罪インフラ」と書いています。
- お金をもらって口座・キャッシュカード・ネットバンキングの情報を渡すのは、それだけで犯罪です。2026年7月10日から罰則が「3年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金」に引き上げられました。
(2025年・過去最多)
(2025年・過去最多)
検挙(2025年)
(2026年7月から)
マネーロンダリングとは?洗うのはお札ではなく「出どころ」
警察庁は、マネーロンダリング(Money Laundering:資金洗浄)を「犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為」と説明しています。略して「マネロン」とも呼ばれます。
悪いことで大金を手に入れても、急に使いはじめれば「そのお金、どこから?」と聞かれます。答えられなければ、そこから犯罪がばれてしまいます。だから、使えるお金にするために、お金の履歴をごまかす。これがマネーロンダリングの正体です。
マネーロンダリングについての、よくある3つの誤解
| よくある誤解 | ほんとうは |
|---|---|
| 汚れたお札を洗うこと | お金の「出どころ」や持ち主をごまかすこと |
| マフィアや映画の中の話 | 日本で2025年に1,792件検挙。もとの犯罪は詐欺が最多 |
| ふつうの人には関係ない | ふつうの人の口座が「通り道」として使われる |
名前の由来は?
「アメリカのギャングが、コインランドリー(洗濯屋)の売り上げに犯罪のお金を混ぜたから」という説がよく紹介されます。ただし、はっきりした証拠のある話ではなく、俗説として受け止めておくのが無難です。
マネーロンダリングの手口|入れる・重ねる・もどすの3段階
国連薬物犯罪事務所(UNODC)などは、マネーロンダリングの流れを3つの段階に分けて説明しています。
- ①入れるプレースメント(Placement)だまし取った現金などを、口座やお店の売り上げにまぎれこませ、金融のしくみの中に入れます。
- ②重ねるレイヤリング(Layering)口座から口座へ何回も送ったり、暗号資産や電子マネーに換えたりして、追いかける人を迷わせます。
- ③もどすインテグレーション(Integration)家・会社・高価な品物などを買い、ふつうの財産の顔をして手元にもどってきます。
UNODCは、世界で1年に洗われるお金を世界のGDPの2〜5%、8,000億〜2兆ドルと推計しています。ただし、かくれて行われるため正確な規模はわからない、とも書いています。
なぜ世界が「出口」をふさぐのか
マネーロンダリングを放っておくと、洗われたお金が次の犯罪の資金になり、犯罪組織を強くします。だから各国は、犯罪そのものを取りしまるのと同じくらい、お金の流れをふさぐことに力を入れています。
日本のマネーロンダリングの現状|検挙は10年で4倍超
日本では、組織的犯罪処罰法の「犯罪収益等隠匿」「犯罪収益等収受」などと、麻薬特例法の罪がマネーロンダリング罪にあたります。警察庁の年次報告書によると、検挙事件数は次のように増えています。
| 年 | 検挙事件数 | うち隠匿(10条) |
|---|---|---|
| 2016年 | 388件 | 268件 |
| 2019年 | 537件 | 378件 |
| 2022年 | 726件 | 578件 |
| 2023年 | 909件 | 696件 |
| 2024年 | 1,283件 | 1,037件 |
| 2025年 | 1,792件 | 1,421件 |
2025年は1,792件で過去最多。2016年(388件)の約4.6倍、前年(1,283件)と比べても約4割増えました。
もとになった犯罪は「詐欺」が最多
| もとになった犯罪(2025年) | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 詐欺 | 795件 | 約45% |
| 窃盗 | 544件 | 約31% |
| 電子計算機使用詐欺 | 302件 | 約17% |
| 売春事犯 | 19件 | 約1% |
※割合は、組織的犯罪処罰法に係るマネロン事犯1,777件に占める割合(筆者計算)。
背景にあるのが詐欺被害の急増です。2025年の特殊詐欺の被害額は1,423.1億円(前年の約2倍)、SNS型投資・ロマンス詐欺は1,834.3億円で、合わせて3,000億円をこえました。だまし取ったお金はそのままでは使えないため、どこかで必ず「洗う」必要があります。詐欺がふえるほど、マネーロンダリングもふえるわけです。
「疑わしい取引」の届出は101万件で過去最多
銀行などの事業者は、犯罪に関係していると疑われる取引を国に届け出る義務があります(疑わしい取引の届出)。2025年の通知件数は1,019,405件で、はじめて100万件をこえました(1日あたり約2,800件)。この届出をきっかけに検挙された事件も1,110件ありました。
いちばん多い手口は「他人の名前の口座」
自分の口座に被害金が入れば、すぐに名前でたどられてしまいます。そこで犯罪者は、他人の名前の口座や、不正に作った会社名義の口座に被害金を振り込ませます。警察庁の報告書は、こうした口座がマネーロンダリングの「主要な犯罪インフラ」になっていると指摘しています。
2025年に検挙された事件では、SNS型投資詐欺の被害金を架空の会社の口座に振り込ませ、ほかのお金と混ぜたうえで、ネットバンキングで2つめ→3つめ→4つめの口座へと移してちらばらせた例がありました。まさに「重ねる」の段階です。
| 手口 | 2025年の検挙事例から |
|---|---|
| 他人・架空会社の口座 | 被害金を振り込ませ、2つめ→3つめ→4つめの口座へ移して分散 |
| 名義の書きかえ | 振り込む人の名前を取引先の会社名に変えさせ、ふつうの売り上げに見せかける |
| 暗号資産 | 暗号資産を買い、匿名性の高い海外の交換所へ送る |
| 不動産 | 他人になりすまし、被害金でマンションの手付金を払う |
| 手渡し | 商業ビルのトイレの扉ごしに現金を回収役へ渡す |
銀行はどうやって見つける?
銀行は、お金の動きかたの「くせ」をシステムで監視しています。一般的には、次のような組み合わせが注意の対象になります。
- ふだんほとんど動かない口座に、急に知らない人から何回もお金が入る
- 入ったお金が、すぐ全部引き出されるか、別の口座へ送られる
- 持ち主の年齢や職業と合わない、大きなお金が動く
あやしいと判断されれば、疑わしい取引として届け出られ、口座が止められることもあります。貸しただけの口座でも、名前は貸した本人のままです。
銀行の窓口で「取引の目的」や「職業」を聞かれるのはなぜ?
口座を作るときなどに、名前・住所・生年月日に加えて「何に使う口座ですか」「お仕事は」と聞かれるのは、犯罪収益移転防止法(第4条)で確認が義務づけられているからです。
| 確認する項目 | 内容 |
|---|---|
| 本人特定事項 | 氏名・住居・生年月日(会社なら名称・所在地) |
| 取引の目的 | 何に使う口座・取引か |
| 職業 | 仕事(会社なら事業の内容) |
| 実質的支配者 | 会社の場合、実際に支配している人 |
ATMで現金10万円をこえる振り込みができないのも、この本人確認のルールがあるためです。銀行から「お客さま情報の確認」の書類が届くことがあるのも、マネーロンダリング対策の一つです。
「お客さま情報の確認」をまねた偽メールに注意
確認の書類や通知をよそおったフィッシングメールも出回っています。回答は、メールやSMSのリンクからではなく、銀行の公式アプリや窓口、届いた書類にある正規の方法で行いましょう。
FATF(ファトフ)の審査と日本
マネーロンダリング対策の国際ルールをつくっているのが、1989年に設立されたFATF(金融活動作業部会)です。加盟国はおたがいに審査をし合い、日本は2021年の第4次審査で「重点フォローアップ国」とされました。その後、法律を改正して3度報告し、2024年10月には、法令の整備状況で「一部適合」「不適合」とされた項目がすべて「おおむね適合」に引き上げられました。次の第5次審査は2027年10月ごろから始まり、現地調査は2028年夏ごろの予定です。金融機関の確認が年々ていねいになっているのは、この流れとつながっています。
「口座を貸すだけで5万円」は犯罪|2026年7月から罰則が3年以下に
SNSなどで見かける「使っていない口座を貸すだけで報酬」「キャッシュカードを送るだけ」という誘いは、まさにマネーロンダリングの道具集めです。お金をもらって、口座の通帳・キャッシュカード・ネットバンキングのIDやパスワードなどを人に渡すことは、それだけで犯罪になります(犯罪収益移転防止法)。
| 2026年7月9日まで | 2026年7月10日から | |
|---|---|---|
| 口座などを売る・渡す | 1年以下・100万円以下 | 3年以下・500万円以下 |
| くり返し(業として) | 3年以下・500万円以下 | 5年以下・1,000万円以下 |
| 勧誘・広告で誘う | 1年以下・100万円以下 | 3年以下・500万円以下 |
この罰則は、2026年7月10日に施行された改正で引き上げられました。それまでは「1年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金」でした。2025年に、口座などの譲り渡しで検挙された事件は4,489件(2021年は2,446件)にのぼります。
また、犯罪のお金だと知りながら受け取ったり、隠したりすれば、組織的犯罪処罰法のマネーロンダリング罪そのもの(隠匿は10年以下の拘禁刑・500万円以下の罰金、収受は7年以下・300万円以下)に問われる可能性もあります。
罰則だけではない「5万円のそのあと」
- 口座は持ち主の名前のまま凍結される
- ほかの銀行でも、新しく口座を作るのを断られることがある
- 給料の振込先や公共料金の引き落としなど、生活に支障が出る
ご家族に伝えるなら、この3つ
①口座を貸す・売るのは、それ自体が犯罪 ②キャッシュカードやネットバンキングのログイン情報も同じ。教えるだけでもだめ ③もう渡してしまったら、すぐに銀行と警察(警察相談専用電話#9110など)に相談する。
マネーロンダリングについてよくある質問
Q. マネーロンダリングとは簡単に言うと何ですか?
A. 犯罪で得たお金の出どころや本当の持ち主をわからなくして、ふつうのお金のように使えるようにすることです。日本語では「資金洗浄」と呼ばれます。
Q. マネーロンダリングの3段階とは?
A. 犯罪のお金を口座などに入れる「プレースメント」、口座から口座へ移すなどして追跡をむずかしくする「レイヤリング」、不動産などを買って正当な財産のように見せる「インテグレーション」の3つです。
Q. 日本ではマネーロンダリングはどれくらい起きていますか?
A. 警察庁によると、2025年のマネーロンダリング事犯の検挙事件数は1,792件で過去最多でした。もとになった犯罪は詐欺がいちばん多く、次いで窃盗です。
Q. 口座を貸すだけ、売るだけでも犯罪になりますか?
A. なります。お金をもらって通帳・キャッシュカード・ネットバンキングの情報などを渡すことは犯罪収益移転防止法違反で、2026年7月10日からは3年以下の拘禁刑または500万円以下の罰金(両方のことも)です。
Q. 銀行で口座の利用目的や職業を聞かれるのはなぜですか?
A. 犯罪収益移転防止法で、口座開設などの際に本人確認とあわせて取引の目的や職業を確認することが義務づけられているためです。マネーロンダリング対策の一つです。
Q. 自分の口座を渡してしまったらどうすればいいですか?
A. すぐに口座のある銀行に連絡して利用を止めてもらい、警察にも相談してください。早く動くほど、被害の拡大を防げます。
まとめ|マネロンは「ふつうの人の口座が通り道にされる」話
マネーロンダリングは、お札を洗うことでも、遠い国のマフィアだけの話でもありません。日本では詐欺の被害金を洗う事件がふえていて、その通り道に使われているのが、ふつうの人の名前の口座です。「口座を貸すだけで5万円」は、その口座を集めるための誘いです。口座は自分の名前そのもの。貸さない・渡さない、そして銀行に目的を聞かれたら正直に答える──それが、自分と社会を守るいちばんの対策です。
参考資料
- 警察庁 犯罪収益移転対策室「犯罪収益移転防止に関する年次報告書(令和7年)」
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日)
- e-Gov法令検索「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(第4条・第26条)
- e-Gov法令検索「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(第10条・第11条)
- UNODC「Money-Laundering Overview」
「約4.6倍」「1日あたり約2,800件」は警察庁の数字から筆者が計算しました。法律の条文・罰則は2026年11月1日時点のものです。具体的な事案は、弁護士や警察の相談窓口にご相談ください。


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