国際・中国
中国共産党の五中全会、33人の党籍剥奪を確認
中国共産党の第20期中央委員会第5回全体会議(五中全会)が北京時間10月29日に閉幕しました。新華社が配信したコミュニケ(公報)によると、出席した中央委員と候補委員は合わせて279人。33人の党籍剥奪が確認され、そのうち16人は軍の幹部です。なぜこれほど多くの人が処分されたのか。2012年以降の全19回の全会の公報から、出席者数と処分人数を数えて比べました。
この記事の結論
- 五中全会は2026年10月26〜29日に北京で開かれ、出席は中央委員162人・候補委員117人の計279人。2022年に選ばれた376人の74.2%です。
- 全会は中央規律検査委員会と中央軍事委員会の審査報告を承認し、33人の党籍剥奪と1人の党内職務の解任を確認しました。軍事委員会の報告分は16人です。
- 2012年以降の全19回の公報を数えると、出席が300人を下回ったのは今回が初めて。1回の全会で確認された党籍剥奪も、これまでの最多(2025年の四中全会、14人)の2倍を超えます。
- 名簿と照らすと、33人のうち24人が中央委員、9人が候補委員でした(同名の別人がいないことを前提とした照合です)。
- 全会は「全面的な厳しい党の統治」に関する決定を採択し、第21回党大会を2027年下半期に北京で開くと決めました。

中国共産党の五中全会で何が決まった?
新華社が配信したコミュニケによると、第20期中央委員会第5回全体会議は2026年10月26日から29日まで北京で開かれ、29日に閉幕しました。BBCは、北京市内のホテルで4日間、非公開で開かれたと伝えています。出席者は中央委員162人、候補委員117人で、中央規律検査委員会の委員なども列席しました。
今回の全会の中心は「党の規律」です。全会は、習近平総書記が政治局を代表して行った活動報告を聞き、「全面的な厳しい党の統治(全面従厳治党)を揺るぎなく進めるための若干の重大問題に関する決定」を採択しました。コミュニケには、過去に「党の指導が弱まり、形だけになった」厳しい現実があったと認め、「刃を内側に向け、厳罰で乱れを正す」と書かれています(当サイト訳)。
人事と今後の日程
- 張升民氏を政治局委員に追加しました。張氏は2025年10月の四中全会で中央軍事委員会副主席に加えられた人物です(四中全会の公報)。
- 候補委員10人を中央委員に繰り上げました(党の規約にもとづく「递補」)。
- 第21回党大会を2027年下半期に北京で開くと決めました。党大会は5年に1度、党の最高指導部を選ぶ場です。
- 習近平氏の党建設に関する考えを「習近平党建思想」として位置づけました。
「全会」「中央委員」「候補委員」とは
中国共産党の中央委員会は、5年に1度の党大会で選ばれます。2022年の第20回党大会では中央委員205人と候補委員171人の計376人が選ばれました(新華社の名簿)。中央委員会が全員で集まる会議が「全体会議(全会)」で、5年の任期中に7回前後開かれます。中央委員が欠けると、候補委員が名簿の順に繰り上がります。
33人の党籍剥奪、誰がどこから?中央委員24人・候補委員9人
コミュニケによると、全会は中央規律検査委員会がまとめた18人分と、中央軍事委員会がまとめた16人分の審査報告を承認しました。そのうえで、政治局がすでに決めていた33人の党籍剥奪と、1人(李雲沢氏)の党内職務の解任を確認しています。理由はどちらも「重大な規律違反・法律違反」とだけ書かれていて、具体的な中身は示されていません。
当サイトでは、2022年10月22日に新華社が配信した第20期中央委員(205人)と候補委員(171人)の名簿と、33人の名前を照らし合わせました。
| 審査報告の出どころ | 中央委員 | 候補委員 | 計 |
|---|---|---|---|
| 中央規律検査委員会(党・政府・企業など) | 9 | 8 | 17 |
| 中央軍事委員会(軍) | 15 | 1 | 16 |
| 党籍剥奪の合計 | 24 | 9 | 33 |
新華社配信の五中全会コミュニケと第20期中央委員会の名簿から当サイトで集計。李雲沢氏(候補委員・党内職務の解任)は含まない。名前の一致で照合しており、同じ名前の別人がいないことを前提にしています。
BBCによると、処分された主な人物には、馬興瑞氏(元新疆ウイグル自治区党委書記、元政治局委員)、張又俠氏(元中央軍事委員会副主席、元政治局委員)、劉振立氏(元軍高官)、そして2025年7月から公の場に姿を見せていなかった元外交担当の劉建超氏が含まれます。
「除名」と「党籍剥奪」の違いに注意
日本語の報道では「除名」と書かれることがありますが、公報の言葉は「開除党籍」=党員の資格そのものを奪う処分です。中央委員会のメンバーから外されるだけでなく、党員でもなくなります。一方、李雲沢氏の「党内職務の解任」は党員の資格は残る処分です。
出席者はどこまで減った?第20期の全会を公報で比べる
BBCは「出席が279人で、四中全会の315人、三中全会の364人から減った」と伝えています。当サイトで第20期の5回の全会の公報を並べると、次のようになりました。
| 全会 | 会期 | 出席(委員+候補) | 繰り上げ | 党籍剥奪 | うち軍 |
|---|---|---|---|---|---|
| 一中全会 | 2022年10月23日 | 371人(203+168) | 0人 | 0人 | 0人 |
| 二中全会 | 2023年2月26日〜28日 | 373人(203+170) | 0人 | 0人 | 0人 |
| 三中全会 | 2024年7月15日〜18日 | 364人(199+165) | 3人 | 3人 | 3人 |
| 四中全会 | 2025年10月20日〜23日 | 315人(168+147) | 11人 | 14人 | 9人 |
| 五中全会 | 2026年10月26日〜29日 | 279人(162+117) | 10人 | 33人 | 16人 |
新華社配信の各全会コミュニケから当サイトで集計。「繰り上げ」は候補委員から中央委員への递補、「党籍剥奪」は全会で確認された開除党籍の人数(党内職務の解任などは除く)。棒の長さは2022年に選ばれた376人に対する出席の割合。
2022年の一中全会では371人が出席していましたが、2024年の三中全会から減り始め、四中全会で49人、五中全会でさらに36人減りました。一中全会と比べると92人少ない計算です。
ただし、公報に書かれているのは「出席した人数」だけです。欠席の理由(調査中、病気、すでに処分済みなど)は書かれていないため、欠席者すべてが処分や調査の対象とは限りません。
習近平体制で初の300人割れ、第18期・第19期と比べると
習近平氏が総書記に就いた2012年の第18期一中全会から今回まで、全19回の全会の公報で出席者数と処分人数を数えました。
| 期 | 全会の回数 | 出席が最少の全会 | 党籍剥奪(うち軍) | 党籍剥奪以外の処分 |
|---|---|---|---|---|
| 第18期(2012〜17年) | 7回 | 332人(七中全会) | 32人(5人) | 3人 |
| 第19期(2017〜22年) | 7回 | 348人(六中全会) | 3人(0人) | 2人 |
| 第20期(2022年〜) | 5回 | 279人(五中全会) | 50人(28人) | 1人 |
新華社配信の各全会コミュニケ(第18期の各全会と第19期の一〜三中全会はWikisource収録の公報全文、そのほかは中国政府系サイトの転載)から当サイトで集計。第20期は五中全会まで。
第18期・第19期の全会で、出席が最も少なかったのは2017年の第18期七中全会の332人でした。今回の279人はそれを53人下回り、2012年以降で初めて300人を割り込んでいます。BBCも「習氏の14年の指導で初めて」と伝えています。
処分の数も桁違いです。1回の全会で確認された党籍剥奪は、これまで最も多かった2025年の四中全会でも14人でした。第20期の3回の全会を合わせると50人で、第18期(32人)と第19期(3人)の合計を上回ります。
BBCの「51人」と当サイトの集計
BBCは、全会で処分された人が習氏の1期目に35人、2期目に5人、3期目に過去最多の51人と伝えています。当サイトの集計でも、党籍剥奪と、それ以外の処分(党内での観察処分2年、党内職務の解任)を足すと、第18期35人・第19期5人・第20期51人となり、BBCの数字と一致しました。
軍の幹部が16人、中央軍事委員会は2人に
今回の33人のうち16人は、中央軍事委員会の審査報告による軍の幹部です。名簿と照らすと、16人のうち15人が中央委員でした。第20期の全会で軍事委員会の報告をもとに処分された人は、三中全会3人、四中全会9人、五中全会16人の計28人。第18期は計5人、第19期は0人でした。
BBCによると、7人いた中央軍事委員会のメンバーは、習近平主席と張升民副主席の2人だけになっています。また、馬興瑞氏と張又俠氏、2025年に処分された何衛東氏が外れたことで、24人の政治局は一時21人になり、今回張升民氏が加わって22人になったとしています。
アジア・ソサエティー政策研究所の研究者は、軍の上層部の処分は「別格」だとし、「組織の指導と戦闘への備えに深刻な疑問を投げかける」と書いています(BBC)。
候補委員の繰り上げで見える「飛ばされた人」
候補委員の名簿は「得票の多い順、同じ票数なら姓の画数順」に並んでいます。中央委員に空きが出ると、党の規約にもとづいてこの順番で繰り上がります。第20期でこれまでに繰り上がった人の、名簿での順位を調べました。
- 三中全会(2024年7月):3人。名簿の1・3・4番目
- 四中全会(2025年10月):11人。5・6・7・8・10・12・13・15・18・19・22番目
- 五中全会(2026年10月):10人。23・26・27・29・30・31・34・36・37・38番目
名簿の1〜38番目のうち、繰り上がったのは24人で、14人が飛ばされています。そのうち3人(16・17番目の方永祥氏・方紅衛氏、33番目の朱芝松氏)は、四中全会か五中全会で党籍剥奪が確認された人でした。残る11人がなぜ飛ばされたのかは、公報には書かれていません。
新華社配信の第20期候補委員名簿(171人)と、三〜五中全会のコミュニケから当サイトで集計。
なぜこれほど処分が続く?専門家の見方
中国共産党は、反腐敗を「党の自己革命」と位置づけています。コミュニケも、党の規律を緩めずに不正を「あえてしない・できない・したくない」状態を一体で進めるとしています。BBCによると、中央規律検査委員会は今年1〜9月に党の機関全体で68万人を処分したと発表しました。
一方、海外の専門家の見方は分かれています。BBCによると、カーネギー中国の非常勤研究員チョン・ジャイアン氏は、反腐敗運動は今や「権威を固めて維持するための取り組み」になっており、腐敗の実態よりも、習氏がどれだけ安心できるかによって続き、広がるとの見方を示しました。さらに、権力の集中は将来、習氏が年を重ねたときに「より深刻な権力の空白」につながりうるとも述べています。
BBCは、規律を重視する理由の一つに2027年の党大会があるとするアナリストの見方も紹介しています。アジア・ソサエティー政策研究所のニール・トーマス氏は、現在の中央委員会から多くの幹部が失脚したことで、習氏には「次の世代をより注意深く見極める」理由があると述べています。また、多くのアナリストは習氏が4期目以降も最高指導者を続けると見ているとのことです。
分かっていること・分かっていないこと
処分の理由は公報では「重大な規律違反・法律違反」とだけ書かれ、個々の容疑は公表されていません。出席者の減少がすべて処分や調査によるものかどうかも、公表資料からは分かりません。「権力固め」といった評価は専門家の見方であり、中国共産党自身は、党の規律を正す取り組みと位置づけています。
第20期中央委員会の歩み:2022年の党大会から2027年へ
- 2022年10月第20回党大会・一中全会中央委員205人・候補委員171人を選出。一中全会には371人が出席し、習近平氏を総書記に選出しました(3期目)。
- 2023年2月二中全会国家機関の人事案を承認。出席373人。
- 2024年7月三中全会改革の決定を採択。軍の3人の党籍剥奪を確認し、秦剛氏の中央委員の辞任を受理。出席364人。
- 2025年10月四中全会第15次5か年計画の建議を採択。14人の党籍剥奪を確認し、張升民氏を軍事委員会副主席に。出席315人。
- 2026年10月五中全会党の規律に関する決定を採択。33人の党籍剥奪を確認。出席279人。
- 2027年下半期第21回党大会(予定)次の中央委員会と指導部が選ばれます。
日付は北京時間。各全会のコミュニケから作成。
中国共産党の五中全会についてよくある質問
Q. 五中全会とは何ですか?
A. 中国共産党の中央委員会が開く全体会議のうち、第20期の5回目の会議です。2026年10月26〜29日に北京で開かれ、党の規律に関する決定を採択し、33人の党籍剥奪を確認しました。
Q. 33人は過去最多ですか?
A. 2012年以降の全19回の全会の公報を当サイトで数えた範囲では最多です。それまでの1回あたりの最多は2025年の四中全会の14人でした。BBCも「過去最多」と伝えています。
Q. 出席279人はなぜ少ないのですか?
A. 2022年に選ばれた376人のうち、出席は279人(74.2%)でした。処分された人が多いことが背景にあるとみられますが、公報には欠席の理由が書かれていないため、すべてが処分によるものかは分かりません。
Q. 軍の幹部は何人処分されましたか?
A. 五中全会で中央軍事委員会の審査報告にもとづき16人の党籍剥奪が確認されました。第20期の全会では、三中全会からの合計で28人です。
Q. 次の党大会はいつですか?
A. 五中全会の公報によると、第21回党大会は2027年下半期に北京で開かれます。具体的な日付は10月30日時点で発表されていません。
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出典・参考資料
- 新華社「中国共産党第20期中央委員会第5回全体会議コミュニケ」(2026年10月29日、中国外交部サイトの転載)
- 同 第4回(2025年10月23日)・第3回(2024年7月18日)・第2回(2023年2月28日)・第1回(2022年10月23日)全体会議コミュニケ(中国外交部・中国新聞網・国家インターネット情報弁公室サイトの転載)
- 新華社「第20期中央委員会委員名簿(205人)」「候補委員名簿(171人)」(2022年10月22日)
- 第19期の全体会議コミュニケ:第4回(2019年)・第5回(2020年)・第6回(2021年)・第7回(2022年)、第18期第2回(2013年)。第18期のほかの全会と第19期の第1〜3回はWikisource収録の公報全文
- BBC News「Record number of purges as Xi emphasises 'party discipline' at China political gathering」(2026年10月29日公開・30日更新)
- 中国語・英語の資料は当サイトで翻訳・要約しました。写真はWikimedia Commonsのフリーライセンス画像(リサイズ、アイキャッチは明るさ調整・文字入れ)。


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