社会・くらし|外来生物
ナガエツルノゲイトウとは?なぜ地球上最悪か・見分け方と見つけたら
繁殖力の強さから「地球上最悪の侵略的植物」と呼ばれる特定外来生物の水草、ナガエツルノゲイトウ。2026年10月1日、大分県が豊後高田市の旧高田城外堀で確認したと発表し、同じ日には岡山県矢掛町の川で地元の高校生が防除作業に参加しました。どんな植物で、なぜそこまで厄介なのか。環境省の市区町村別アンケートを自前で集計した分布、排水機場の処理量の記録、法律の罰則、見つけたときの正しい対応までまとめます。
この記事の結論
- ナガエツルノゲイトウは南米原産のヒユ科の多年草です。水辺に生え、白い球状の花をつけます。2005年の外来生物法の施行時から「特定外来生物」に指定されています。
- 「最悪」と呼ばれる理由は、節が1つあれば数cmの茎の断片からでも再生し、茎がちぎれて水に浮いて流れ、乾燥にも強いからです。日本では種子を作りませんが、断片だけで広がります。
- 環境省の市区町村アンケート(令和7年度公表)を集計すると、確認があるのは26都府県の153市区町村。最多は千葉県の24市町村で、関東の1都4県だけで全体の42%を占めます。報道ベースでは確認された都府県は31にのぼります。
- 被害の例として、千葉県の印旛沼の排水機場では、大雨のたびに流れ着いた群落を10回で計203トン処理し、毎回約300万円の経費がかかったという記録があります。
- 見つけても自分で抜いたり持ち帰ったりせず、写真と場所を自治体に連絡するのが基本です。生きたまま運ぶことは法律で原則禁止されており、ちぎれた断片が新たな生育地を作るおそれもあります。
ナガエツルノゲイトウとは?基本のプロフィール
ナガエツルノゲイトウは、南米原産の水辺の植物です。根を水底に張り、茎を水面の上まで伸ばす「抽水植物」で、水面をマットのように覆いつくすのが特徴です。花が長い柄の先につくことが、よく似たツルノゲイトウと見分けるポイントになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 分類 | ヒユ科の多年草(学名 Alternanthera philoxeroides、英名 Alligatorweed)。別名ミズツルノゲイトウ |
| 原産地 | 南米 |
| 日本での初記録 | 1989年、兵庫県尼崎市で定着が報告された。観賞用(アクアリウムなど)に持ち込まれたものが野外に逃げ出したと考えられている |
| 生える場所 | 河川、水路、ため池、水田、あぜ。乾燥に強く、畑や道路わきにも入り込む。日当たりのよい水辺では大群落になる |
| 大きさ・花 | 茎は長さ0.5〜1m、中が空洞で太さ4mmほど。葉は長さ2.5〜5cm。4〜10月ごろ、直径1〜1.5cmの白い球状の花を1〜4cmの柄の先につける |
| 法律上の扱い | 外来生物法の「特定外来生物」(2005年の法施行時に指定)。栽培・保管・運搬・野外に植えることなどが原則禁止 |
| 人への害 | 人体に害はないとされる(大分合同新聞の報道)。問題は生態系・農業・治水への影響 |
「地球上最悪の侵略的植物」という呼び名は、報道や自治体の説明でよく使われる表現です。農研機構が2021年の全国会議で示した資料でも「史上最悪の侵略的植物」と紹介されています。世界的にも厄介者で、アメリカでは1960年代から天敵の昆虫を導入して防除が行われてきました(国立環境研究所 侵入生物データベース)。
大分・豊後高田で確認|2026年10月に何が起きたのか
大分県内2カ所目、旧高田城の外堀で繁殖
大分県は2026年10月1日、豊後高田市玉津でナガエツルノゲイトウを確認したと発表しました。見つけたのは、長年植物の調査を続けている市議会議員の男性(84)です。テレビ番組でこの植物を知って市内のため池を見て回り、9月19日に水面を覆う群落を確認。24日に県と市へ連絡しました。県自然保護推進室が29日に現地を調べ、30日に専門家に確認してもらっています。
発見者によると、3年前にも同じ場所に生えていて、当時は数メートル四方だったものが、いまは一面に広がっているといいます(読売新聞)。大分県内では2022年7月に大分市大在の江川周辺で確認されて以来2カ所目で、江川では駆除を続けているものの根絶には至っていません。県は「現在は堀の中でのみ繁殖しているようだ。外に出さない対策が重要」として、似た植物を見かけたら抜き取らずに県や市町村へ連絡するよう呼びかけています(大分合同新聞)。
岡山・矢掛町では高校生8人が199キロを除去
同じ10月1日、岡山県矢掛町を流れる大渡川では、県立矢掛高校の2年生8人が県の職員と一緒に防除作業を行いました。川幅の半分以上を覆う群落を、根や茎を残さないよう慎重に抜き取り、約25mの範囲で199キロを除去しています(RSK山陽放送)。単純に割ると1mあたり約8キロ、1人あたり約25キロです。
岡山県では2025年1月に倉敷市真備地区の小田川で初めて確認され、5月には矢掛町の水田でも見つかりました。県病害虫防除所の特殊報によると、このときの発生面積は30アール。その後、小田川に注ぐ大渡川でも確認され、県などが防除を続けていますが、完全には取り除けていません。
- 1989年兵庫県尼崎市で国内初の定着記録観賞用に持ち込まれたものが野外に出たと考えられています。
- 2005年外来生物法の施行とともに特定外来生物に栽培・保管・運搬・放出などが原則禁止になりました。
- 2022年7月大分県で初確認(大分市大在の江川)駆除を続けていますが、再生力が強く根絶には至っていません。
- 2025年1月岡山県で初確認(倉敷市の小田川)5月28日には矢掛町の水田(30アール)でも確定しました。
- 2025年12月群馬県で初確認(館林市の水田のあぜ)農研機構が12月1日に同定。群馬県は「30都府県で確認」と説明しました。
- 2026年9月19日豊後高田市のため池(旧高田城外堀)で発見24日に県・市へ連絡、29日に県が現地調査、30日に専門家が確認しました。
- 2026年10月1日大分県が発表/矢掛町で高校生が防除大分県内2カ所目。矢掛町では約25mで199キロを抜き取りました。
なぜ「地球上最悪」?ナガエツルノゲイトウが厄介な5つの理由
農林水産省・環境省・農研機構の駆除マニュアルは、この植物の特徴を「再生力 大」「拡散力 大」「侵略性 大」とまとめています。具体的な数字で見ると、厄介さがよくわかります。
1. 茎の小さな断片から再生する
国内のナガエツルノゲイトウは花を咲かせても種子を作りません。そのかわり、茎の節から簡単に根を出します。農林水産省のQ&Aは「茎の断片は節があれば大きさによらず再生」すると説明しており、直径約5mm以上の根の断片からも再生します。草刈りで細かくすると、かえって増やしてしまうおそれがあるのはこのためです。
2. ちぎれて水に浮き、流れて広がる
茎はちぎれやすく、中が空洞なので水に浮きます。大雨で増水すると、断片や群落ごと下流へ流され、新しい場所に根づきます。駆除マニュアルは「生育が確認された場合は、その水系の上流又は下流に、未発見の生育地が存在する可能性」があるとして、水系単位で監視するよう求めています。
3. 根が深く、地上を刈っても戻ってくる
直根は50cm以上、条件によっては1m程度の深さに達します。地上部を刈り取っても根から再生するため、根ごと取り除く必要があります。冬に地上部が枯れても地下茎で越冬し、関東では3月中旬〜4月ごろに再び芽を出します。
4. 乾燥に強く、陸にも上がる
水草なのに乾燥に非常に強く、あぜや畑、道路わきにも入り込みます。陸に引き上げて枯れたように見えても、2か月後に再生した例が駆除マニュアルに載っています。確実に枯らす目安は、雨の当たらない場所で薄く広げて2〜3か月以上乾かし、中までカサカサになることです。
5. 光を遮っても、薬をまいても手ごわい
農研機構の試験では、遮光率99.85%のシートで覆っても再生し、100%の遮光が必要でした。遮光による完全駆除には1.5年以上かかるとされます。除草剤が効きにくい点も報道で指摘されており、水田では効果のある成分を組み合わせた体系処理が研究されていますが、河川や水路など薬剤が水に流れ込む場所では使えません。
農業への被害
水田に入り込むと稲に覆いかぶさり、収穫作業を妨げたり、収穫できなくなったりすることがあります(大分県)。岡山県の特殊報によると、確認された都府県のうち14府県では水田への侵入も確認されています。用水路や排水路をふさぎ、取水・排水の障害にもなります。
被害の実例|印旛沼の排水機場に10回で203トン
ナガエツルノゲイトウの被害が早くから深刻化したのが、千葉県の印旛沼周辺です。群落が岸から離れて流れ下り、下流の排水機場(大雨のとき水をくみ出すポンプ施設)のスクリーンに大量に流れ着きます。農研機構が全国会議で示した資料には、印旛沼の排水施設「大和田排水機場」で処理した量の記録が載っています。
| 時期 | 排水の原因 | 処理量 | 排水運転への障害 |
|---|---|---|---|
| 2009年8月 | 低気圧と台風 | 92,409kg | 減量運転 |
| 2013年10月 | 台風 | 7,401kg | 減量運転 |
| 2014年2月 | 低気圧 | 14,470kg | 減量運転 |
| 2014年4月 | 前線 | 180kg | ― |
| 2014年6月 | 梅雨前線 | 11,360kg | ― |
| 2014年10月 | 台風 | 12,820kg | 減量運転 |
| 2015年9月 | 台風と前線 | 16,870kg | 緊急停止 |
| 2016年8月 | 台風と雷雨 | 12,775kg | ― |
| 2017年9月 | 台風 | 7,630kg | ― |
| 2017年10月 | ダブル台風 | 27,200kg | 減量運転 |
| 合計(自前集計) | 10回 | 203,115kg | 6回で減量運転・緊急停止 |
合計すると約203トン。2015年9月には排水ポンプが緊急停止しています。大雨のときに排水機場が止まれば、周辺の農地や住宅地が水につかる危険が高まります。資料は、除去から処分までの一連の処理に毎回約300万円の経費がかかったとしており、10回分を単純に掛け合わせると約3,000万円になります(すべての回で同じ額だったとは限らないため、あくまで目安です)。
駆除にかかる手間も大きい
同じ資料によると、消防用ノズルのジェット水流で根ごと掘り出す方法では、約25㎡の群落を除くのに6人×5時間かかりました。1㎡あたり約1.2人時です。建設機械や作業船を使っても1日に除去できるのは約300㎡で、除去後も残った断片や流れ着いた断片から再び増える「リバウンド」が起きるため、定期的な見回りと再除去が欠かせません。矢掛町で高校生が抜き取った199キロも、こうした地道な作業の積み重ねの一部です。
どこまで広がった?都道府県別の確認状況(環境省調査を集計)
環境省は毎年、全国の市区町村に特定外来生物の侵入状況を尋ねるアンケートを行っています。国立環境研究所が公開している令和7年度の結果(Excel)から、ナガエツルノゲイトウの列を抜き出して都道府県ごとに数えました。「確認」は2024年度に確認された市区町村と、2023年度以前に確認された市区町村の合計です。
| 都道府県 | 地方 | 確認市区町村 | うち2024年度 |
|---|---|---|---|
| 福島県 | 東北 | 1 | 1 |
| 茨城県 | 関東 | 12 | 3 |
| 埼玉県 | 関東 | 12 | 6 |
| 千葉県 | 関東 | 24 | 6 |
| 東京都 | 関東 | 10 | 4 |
| 神奈川県 | 関東 | 7 | 3 |
| 福井県 | 中部 | 0(防除済み1) | ― |
| 山梨県 | 中部 | 1 | 0 |
| 静岡県 | 中部 | 7 | 2 |
| 愛知県 | 中部 | 1 | 0 |
| 滋賀県 | 近畿 | 10 | 2 |
| 京都府 | 近畿 | 1 | 1 |
| 大阪府 | 近畿 | 9 | 1 |
| 兵庫県 | 近畿 | 16 | 11 |
| 島根県 | 中国 | 1 | 1 |
| 岡山県 | 中国 | 1 | 1 |
| 山口県 | 中国 | 2 | 0 |
| 徳島県 | 四国 | 7 | 0 |
| 香川県 | 四国 | 2 | 0 |
| 愛媛県 | 四国 | 2 | 1 |
| 福岡県 | 九州・沖縄 | 5 | 1 |
| 佐賀県 | 九州・沖縄 | 2 | 2 |
| 長崎県 | 九州・沖縄 | 7 | 0 |
| 熊本県 | 九州・沖縄 | 5 | 1 |
| 大分県 | 九州・沖縄 | 1 | 0 |
| 鹿児島県 | 九州・沖縄 | 3 | 0 |
| 沖縄県 | 九州・沖縄 | 4 | 0 |
| 合計 | 26都府県 | 153 | 47 |
出典:環境省 令和7年度「特定外来生物の市区町村別侵入状況の把握のためのアンケート」調査結果(国立環境研究所 侵入生物データベース掲載)を筆者が集計。福井県は敦賀市が「以前確認したがその後防除等を実施し現在は確認していない」と回答(確認数には含めず)。
地方別では関東と近畿が中心
地方別に並べると、関東65、近畿36、九州・沖縄27、四国11、中部9、中国4、東北1(市区町村数)。千葉県(24)と兵庫県(16)が突出しています。千葉県では印旛沼のある佐倉市・印西市・八千代市など24市町が並び、兵庫県は1989年に国内初の定着記録があった県です。
この数字は「少なめ」に出ている
注意したいのは、このアンケートが実態より少なく出ている可能性が高いことです。一覧表に載っている1,741市区町村のうち、令和7年度に回答を提出したのは1,121で、未提出の自治体もあります。また2024年度までの情報なので、2025年5月の岡山県矢掛町、2025年12月の群馬県館林市、そして今回の豊後高田市はまだ反映されていません。大分県の欄は2022年に確認された大分市、岡山県の欄は倉敷市の1市ずつです。
確認された都府県の数は5年で約1.5倍に
| 時点 | 確認された都府県 | 出典 |
|---|---|---|
| 2021年10月 | 21府県 | 農林水産省「全国会議」資料(農研機構、侵入生物DBより) |
| 2023年2月 | 25都府県 | 農林水産省「外来生物の見分け方」ページ |
| 2025年2月 | 30都府県 | 岡山県 病害虫発生予察特殊報(2025年5月) |
| 2025年11月 | 30都府県 | 群馬県の報道提供資料(県内初確認の発表) |
| 2026年10月 | 31都府県 | 読売新聞の報道 |
公的資料に書かれた都府県の数をたどると、2021年10月の21府県から、2026年10月の報道では31都府県まで増えています。2023年12月以降だけでも愛媛県・福島県・岡山県への侵入が確認され(駆除マニュアル)、2025年には群馬県が加わりました。長野県は2026年9月時点で「県内ではこれまでに確認されていない」としつつ、注意を呼びかけています。駆除マニュアルは、寒い地域でも生育できるため日本全国に広がる可能性があると警告しています。
ナガエツルノゲイトウの見分け方|似た植物5種との違い
水田やあぜには、ナガエツルノゲイトウと間違えやすい植物がいくつもあります。駆除マニュアルが挙げる「間違えやすい植物」と見分けのポイントを表にしました。ナガエツルノゲイトウ以外は特定外来生物ではありません。
| 植物 | 区分 | 見分けのポイント |
|---|---|---|
| ナガエツルノゲイトウ | 特定外来生物 | 葉は節から1対(対生)で先がややとがる。茎は中が空洞(ストロー状)で表面はなめらか、節に短い毛。花は1〜4cmの柄の先に白い球状(直径1〜1.5cm) |
| ツルノゲイトウ | 外来種 | 球状の花が葉のわきに直接くっつき、柄がない。花のない時期は見分けが難しい |
| アメリカタカサブロウ | 外来種 | 葉のギザギザ(鋸歯)がはっきりしている。花は球状ではなく平たい |
| タカサブロウ | 在来種 | 葉のギザギザが目立たない。花は球状ではなく平たい |
| スベリヒユ | 在来種 | 葉の先が丸く、葉は互い違いにつく(互生)。花は黄色 |
| シロツメクサ | 外来種 | 葉は3枚の小葉で白い紋がある。球状の花は直径約2cm |
迷ったら「花の柄」と「茎の中」を見る
いちばんわかりやすいのは花です。白い球状の花が長い柄の先についていればナガエツルノゲイトウ、葉のつけ根にくっついていればツルノゲイトウです。花がなくても、茎を折ってみて中が空洞(ストロー状)なら可能性があります。開花期は4〜10月で、農林水産省のQ&Aは、植物が育った夏から秋が調査で見つけやすい時期だとしています。10月はまさに見つけやすい季節です。
確認のために持ち帰らない
見分けに自信がなくても、標本として持ち帰ったり、役所に持ち込んだりするのは避けてください。長野県は「確認のために植物を採取し、持ち込むことはお控えください」と呼びかけています。スマートフォンで花・葉・茎の写真を撮れば、自治体や専門家が判断できます。
法律で何が禁止?外来生物法の規制と罰則
ナガエツルノゲイトウは外来生物法の「特定外来生物」なので、環境省の説明によると次のことが原則として禁止されています。
- 栽培・保管・運搬(法律ではまとめて「飼養等」と呼びます)
- 輸入
- 野外に放つ・植える・まく
- 譲り渡す・販売する
違反した場合の罰則は、行為によって重さが違います。
| 行為(許可なく行った場合) | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 野外に植える・まく | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 販売・配布する目的で栽培・保管・運搬する | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 許可なく輸入する | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 許可のない人に販売・配布する | 3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金 | 1億円以下の罰金 |
| 販売目的以外(観賞用など)で栽培・保管・運搬する | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 | 5千万円以下の罰金 |
出典:環境省「罰則について」。拘禁刑は2025年6月に懲役・禁錮を一本化した刑罰です。
「枯れたもの」は対象外、「生きたまま運ぶ」が問題
規制されるのは生きている個体です。茎や根まで完全に乾燥するか腐った状態なら、規制の対象外になります。逆にいえば、善意で抜き取ったものでも、生きたまま袋に入れて持ち帰ったり、別の場所に捨てたりすれば違反になり得ます。もともとアクアリウムなどの観賞用に持ち込まれたと考えられている植物なので、知らずに水槽や庭の池で育てていないかも確認しておきたいところです。
地域住民やボランティアが小規模に駆除する場合は、いつ・どこで・誰が行うかを広報誌や回覧板などで事前に告知し、断片がこぼれないよう袋に密閉することで、生きたまま焼却施設などに運べるようになります(駆除マニュアル)。自治体が計画的に駆除する場合は、法律に基づく「防除の確認・認定」の手続きをとります。
ナガエツルノゲイトウを見つけたらどうする?4つのステップ
大分県や長野県、矢掛町などの呼びかけと駆除マニュアルをもとに、一般の人が見つけたときの動き方を整理しました。
- 抜かない・刈らない・持ち帰らないちぎれた断片が流れたり、靴や道具について運ばれたりすると、新しい群落のもとになります。矢掛町は農家向けに「刈払い機等の機械除草はしない」と呼びかけています。
- 写真を撮り、場所を記録する花(柄の長さ)・葉のつき方・茎の断面がわかる写真と、地図アプリの位置情報を残します。群落の広さ(何メートル四方か)もメモしておくと役立ちます。
- 都道府県・市町村に連絡する農地なら市町村の農政担当や県の病害虫防除所、河川やため池なら県の自然保護(自然環境)担当や市町村が窓口です。大分県は自然保護推進室(097-506-3022)が情報提供を受け付けています。
- 作業した後は道具や靴を洗う駆除マニュアルは、重機や農機についた断片が運ばれないよう作業後の洗浄を求めています。田んぼでは、まだ発生していない田から先に作業するのも有効です。
農家が自分の田んぼで対策するとき
水田やあぜでは、登録のある除草剤による防除が有効とされます。除草剤が使えない場合は、根を含む断片が残らないよう丁寧に抜き取り、丈夫なビニール袋に密閉して日光に当てて完全に枯らします(矢掛町)。袋の処分方法は市町村に確認してください。給水口にネットをかぶせて断片の流入を防ぐ方法も、マニュアルで紹介されています。
ナガエツルノゲイトウについてよくある質問
Q. ナガエツルノゲイトウとはどんな植物ですか?
A. 南米原産のヒユ科の多年草で、河川や水路、ため池、水田などの水辺に生えます。白い球状の花を長い柄の先につけるのが特徴です。外来生物法で特定外来生物に指定されています。
Q. なぜ「地球上最悪の侵略的植物」と呼ばれるのですか?
A. 節が1つあれば数cmの茎の断片からでも再生し、ちぎれた茎が水に浮いて流れて広がるうえ、乾燥にも強いためです。根は50cm以上の深さまで伸び、地上を刈っても根から再生します。いったん大群落になると駆除が非常に難しくなります。
Q. 見つけたら自分で抜いてもいいですか?
A. 抜かずに写真と場所を記録して、都道府県や市町村に連絡するのが基本です。抜く途中でちぎれた断片から再生するおそれがあり、生きたまま持ち帰ることは外来生物法で原則禁止されています。地域で駆除する場合は、事前告知や袋への密閉など決められた手順があります。
Q. 家で育てると罰則はありますか?
A. 許可なく栽培・保管・運搬すると、観賞用など販売目的でない場合でも、個人は1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。野外に植えた場合は3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金と、さらに重くなります。
Q. ツルノゲイトウとの違いは何ですか?
A. ナガエツルノゲイトウは白い球状の花が1〜4cmの長い柄の先につきますが、ツルノゲイトウは花が葉のわきに直接くっつき、柄がありません。花のない時期は見分けが難しいため、迷ったら自治体に写真を送って判断してもらいましょう。
Q. 人やペットに害はありますか?
A. 人体に害はないとされています。問題は、水路をふさいで排水や取水を妨げたり、水田に入って稲の収穫を妨げたり、在来の水草と競合したりすることです。
Q. 大分県や岡山県ではどこで確認されていますか?
A. 大分県では2022年7月に大分市大在の江川周辺、2026年10月に豊後高田市玉津の旧高田城外堀で確認されました。岡山県では2025年1月に倉敷市の小田川で初めて確認され、その後、矢掛町の水田や大渡川でも見つかっています。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 環境省:何が禁止されているの?/罰則について/特定外来生物の見分け方(同定マニュアル)/地方環境事務所等の連絡先
- e-Gov法令検索:特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律
- 国立環境研究所 侵入生物データベース:ナガエツルノゲイトウ/環境省 令和7年度「特定外来生物の市区町村別侵入状況の把握のためのアンケート」調査結果(xlsx)
- 農林水産省:ナガエツルノゲイトウの駆除対策について/ナガエツルノゲイトウ駆除マニュアル(農林水産省・環境省・農研機構、2025年3月改訂)/ナガエツルノゲイトウに関するQ&A/農業水利施設を介し拡がる侵略的外来水草ナガエツルノゲイトウの防除と対策(農研機構)/水路やため池の通水障害を起こす外来生物の見分け方
- 大分県:特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」について
- 岡山県:令和7年度病害虫発生予察特殊報第1号(ナガエツルノゲイトウ)(2025年5月30日)/矢掛町:生産者のみなさまへ(ナガエツルノゲイトウ)
- 群馬県:特定外来生物ナガエツルノゲイトウの確認について(2025年12月1日)/長野県:ナガエツルノゲイトウについて
- 読売新聞(Yahoo!ニュース):「地球上最悪」の雑草か、豊後高田市内のため池にも(2026年10月1日)
- 大分合同新聞:繁殖力強い「地球上最悪」の水草、豊後高田で確認 県内22年以来2カ所目(2026年10月1日)
- NHK:特定外来生物「ナガエツルノゲイトウ」を高校生が駆除 矢掛町/RSK山陽放送(Yahoo!ニュース):特定外来生物の水草=ナガエツルノゲイトウ 地元の高校生が参加して防除作業(2026年10月1日)
- KSB瀬戸内海放送:ナガエツルノゲイトウの分布拡大阻止へ 地元住民らが専門家から対策学ぶ 岡山・矢掛町(2025年10月27日)/山陽新聞:矢掛で地球上最悪の侵略植物確認 県内2例目
都道府県別の市区町村数は、環境省アンケート結果のExcelからナガエツルノゲイトウの列を筆者が集計したもので、未提出の自治体や2025年度以降の確認は含みません。印旛沼の処理量の合計と経費の総額は、農研機構資料の表と「毎回約300万円」の記載から筆者が計算した目安です。確認された都府県数は資料ごとの記載をそのまま並べたもので、数え方が同じとは限りません。発見時の対応は各自治体の指示に従ってください。アイキャッチ背景:Harry Rose「Alternanthera philoxeroides habit3c」(Wikimedia Commons、CC BY 2.0)をトリミング・明るさ調整・文字入れ。


コメント