カメムシ大量発生2026|注意報の52%がカメムシ、「大雪の前触れ」は本当か
2026年は各地でカメムシの注意報が相次いでいます。農林水産省が公表している全国の病害虫発生予察情報を2007年まで19年分さかのぼって集計したところ、今年は注意報全体に占めるカメムシの割合が過去最高でした。あわせて、よく言われる「カメムシが多い年は大雪になる」という言い伝えを、19年分の発生件数と気象庁の降雪データで検証しています。
2026年9月20日作成(注意報は9月8日現在)
(19年で最高)
(9月8日現在)
(昨年は16県)
(ほぼ無関係)
結論:今年は確かに多い。ただし「大雪の前触れ」は数字で確かめられなかった
農林水産省は、都道府県が発表した病害虫の警報・注意報・特殊報を毎年とりまとめて公表しています。2026年9月8日現在で発表された注意報は152件。このうちカメムシ関連が79件で、全体の52.0%を占めました。2007年以降の19年分を同じ方法で数えた中で、これが最も高い割合です。
家に入ってくるタイプのカメムシに直接関係する「果樹カメムシ類」の注意報に絞ると46件、31の都道府県から出ています。昨年は18件・16県でしたから、件数で2.6倍、県数でほぼ倍という増え方です。
一方で、「カメムシが多い年は大雪になる」という言い伝えのほうは、19年分のデータでは裏づけられませんでした。果樹カメムシ類の注意報件数と、その翌冬の降雪量の相関係数は、新潟で+0.04、金沢で+0.12、富山で+0.13。ほとんど無関係と言っていい水準です。
・2026年のカメムシ注意報が、過去19年と比べてどれくらい多いのか(農水省データの自前集計)
・「カメムシが多い年は大雪」を19年分で検証した結果と、決定的な反例
・なぜ10月になると家に入ってくるのか(越冬のしくみ)
・今年増えた理由として農水省が挙げていること
今年はどれくらい多いのか──19年分を数えた
農林水産省「病害虫発生予察情報発表状況一覧」から、各年に都道府県が発表した注意報を抜き出し、病害虫名に「カメムシ」を含むものを数えました。果樹カメムシ類(チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシなど)、水稲の斑点米カメムシ類、大豆の吸実性カメムシ類が含まれます。
| 年 | 注意報の総数 | カメムシ関連 | うち果樹カメムシ類 | 発表した県数 | カメムシの割合 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2007年 | 137 | 11 | 1 | 1 | 8.0% |
| 2008年 | 107 | 42 | 17 | 14 | 39.3% |
| 2009年 | 119 | 12 | 3 | 3 | 10.1% |
| 2010年 | 135 | 44 | 32 | 24 | 32.6% |
| 2011年 | 99 | 26 | 1 | 1 | 26.3% |
| 2012年 | 108 | 51 | 37 | 35 | 47.2% |
| 2013年 | 114 | 33 | 7 | 6 | 28.9% |
| 2014年 | 168 | 73 | 41 | 31 | 43.5% |
| 2015年 | 111 | 24 | 7 | 6 | 21.6% |
| 2016年 | 129 | 20 | 5 | 5 | 15.5% |
| 2017年 | 131 | 40 | 17 | 17 | 30.5% |
| 2018年 | 128 | 37 | 27 | 18 | 28.9% |
| 2019年 | 130 | 27 | 12 | 10 | 20.8% |
| 2020年 | 193 | 56 | 34 | 27 | 29.0% |
| 2021年 | 124 | 19 | 6 | 6 | 15.3% |
| 2022年 | 123 | 50 | 27 | 25 | 40.7% |
| 2023年 | 124 | 30 | 13 | 13 | 24.2% |
| 2024年 | 221 | 98 | 58 | 38 | 44.3% |
| 2025年 | 181 | 67 | 18 | 16 | 37.0% |
| 2026年※ | 152 | 79 | 46 | 31 | 52.0% |
※2026年は9月8日現在の途中経過です。横にスクロールすると全年が見られます。
果樹カメムシ類の注意報件数で見ると、2026年の46件は2024年の58件に次ぐ多さです。2007年から2025年までの平均は19.1件ですから、その2.4倍にあたります。
カメムシ「2026年は多い年」 果樹に影響も、九州や近畿では注意報https://t.co/9kbnzsCqf0
— 日本経済新聞 電子版(日経電子版) (@nikkei) May 9, 2026
2026年の数字は9月8日現在の途中経過です。過去の年は通年の集計なので、単純に件数を比べると2026年が過小に出ます。それでも割合が19年で最高、件数が2位というのは、今年の多さを示しています。なお都道府県は同じ年に複数回の注意報を出すことがあるため、件数と県数は一致しません。
「カメムシが多い年は大雪」を19年分で検証した
秋にカメムシが大量に出ると、その冬は雪が多い——。この言い伝えは各地にあります。実際に数字で確かめてみました。
方法はシンプルです。ある年の果樹カメムシ類の注意報件数と、その翌年の寒候年(前年8月から当年7月まで)の降雪量を並べ、相関係数を計算します。降雪量は気象庁が公表している各地の年統計値を使いました。
| 地点 | 相関係数 | 解釈 |
|---|---|---|
| 新潟 | +0.04 | ほぼ無関係 |
| 金沢 | +0.12 | ほぼ無関係 |
| 富山 | +0.13 | ほぼ無関係 |
| 青森 | +0.27 | 弱い正の関係だが有意とは言えない |
| 日本海側3地点の平均 | +0.11 | ほぼ無関係 |
相関係数は−1から+1までの値をとり、0に近いほど関係が薄いことを示します。19年分のデータでは、いずれの地点も0.3を下回りました。「カメムシが多いと大雪になる」という関係は、少なくとも全国の注意報件数と主要地点の降雪量の間には見当たりません。
個別の年を見ると、言い伝えと真逆の例が見つかります。
| 年 | 果樹カメムシ類の注意報 | 翌冬の降雪量(新潟) | 結果 |
|---|---|---|---|
| 2011年 | 1件(19年で最少タイ) | 304cm(19年で最多) | カメムシが少ないのに大雪 |
| 2007年 | 1件(同じく最少タイ) | 76cm | 同じ1件でも翌冬は4分の1 |
| 2014年 | 41件(当時3位の多さ) | 121cm | カメムシが多いのに平年並み |
| 2019年 | 12件 | 5cm(19年で最少) | 記録的な暖冬 |
特に印象的なのが2007年と2011年です。どちらも果樹カメムシ類の注意報はわずか1件でしたが、翌冬の新潟の降雪量は76cmと304cm。同じ「カメムシが少ない年」でも、翌冬の雪は4倍の開きがありました。カメムシの数から冬の雪を予想するのは難しい、ということになります。
推測になりますが、カメムシが越冬場所を探して家に入ってくるのは秋の深まりを実感する出来事であり、その年の冬の印象と結びつきやすかったのだと考えられます。また、カメムシが増える要因(夏の高温や餌となる木の実の豊作)と、冬の降雪を左右する要因(上空の寒気や海面水温)は別々に決まるため、両者がたまたま一致した年の記憶が残りやすかった可能性もあります。
なぜ10月になると家に入ってくるのか
家屋に侵入してくる代表格がクサギカメムシです。石川県の病害虫防除室がまとめた資料によると、生活のサイクルはこうなっています。
- 4月越冬場所を出る冬を越した成虫が動き出し、さまざまな植物を吸汁しながら移動します。寄主植物は27科51種以上と幅広いのが特徴です。
- 6-7月産卵のピークメスは5月下旬から間欠的に交尾と産卵を繰り返し、6月中旬から7月上旬がピーク。卵は28個ほどをまとめて葉裏に産みつけます。
- 8月新成虫が羽化するこの世代は生殖休眠に入るため交尾をしません。代わりに、越冬場所の近くへと移動を始めます。
- 10-11月越冬場所を探して家屋に侵入気温の低下とともに、樹皮の隙間、落葉の中、積み重ねた木材、石の割れ目など、物と物の間の狭く暗い場所に潜り込みます。家屋もその候補のひとつです。
つまり10月に窓や洗濯物につくカメムシは、繁殖のためでも餌を探しているのでもなく、冬を越す「物件」を探している個体です。
秋になると家にカメムシが来るのはなぜ? 侵入を防ぐ三つの注意点https://t.co/SCKbuRY2Rc
秋が深まるにつれ、家にカメムシがやってきます。やつらは刺激すると悪臭を放ちます。
なぜでしょうか? 理由と対処法を取材しました。
— 毎日新聞 (@mainichi) November 12, 2025
なぜ1匹ではなく何匹も集まるのかについては、農研機構の研究が答えを出しています。クサギカメムシの越冬集団の形成には、触角を通じて感じる仲間との相互刺激が重要な役割を果たしており、両方の触角を取り除いた成虫は集団をまったく作れませんでした。あわせて、弱い光の下でも暗い場所を選んで定着する強い暗所選好性も確認されています。サッシの隙間や戸袋、物置といった「狭くて暗い場所」に集まるのは、この性質によるものです。
今年増えた理由として挙げられていること
農林水産省の病害虫発生予報第7号(2026年9月9日)は、果樹カメムシ類について次の点を挙げています。
・台風は、強風によりカメムシを山林から強制的に離脱させたり、スギ・ヒノキの球果の脱落や倒木を引き起こして餌不足を招いたりする。その結果、果樹園への飛来時期が早まり、飛来量が増える可能性がある
・本虫は薄暮期から夜間を中心に活動するため、夕方の薬剤散布が効果的
果樹カメムシ類はスギやヒノキの球果を餌に増えるため、球果が豊作だった年の翌年に数が増えやすいことが知られています。そこに台風が重なると、山にいたカメムシが一斉に人里へ下りてくる、という流れです。2026年は9月中旬に台風25号が本州に接近しており、飛来が早まった地域があると考えられます。
入れない、つぶさない
対策の基本は物理的に入れないことです。カメムシは狭い隙間に潜り込むので、網戸のすき間や破れ、サッシの戸袋、換気口などが侵入経路になります。暗所を好む性質から、戸袋や物置、屋外に置いたままの段ボールの隙間も集まりやすい場所です。
室内に入ってしまった個体については、つぶさないのが鉄則です。刺激を受けると強い悪臭を放ち、においは簡単には落ちません。紙やガムテープでそっと包む、ペットボトルなどの容器に落として外に出すといった対応が現実的です。掃除機で吸うと、内部ににおいが残って以後の使用に影響します。
洗濯物については、取り込む前に一度払う、日が傾く前に取り込む、といった基本的な対策が有効です。前の項で触れたとおり、カメムシは薄暮から夜間に活動が活発になります。
<1分で解説>カメムシ対策の注意点は「暖かい環境、白いもの、光」https://t.co/QcoxNmsvP3
秋になると家に入ってくるカメムシ。SNSでも、「カメムシ多すぎて臭い」「朝からカメムシ踏んづけた」といった投稿が見受けられますが、そもそもなぜ家に入ってくるのでしょうか。
— 毎日新聞 (@mainichi) November 17, 2025
よくある質問
Q. 2026年はカメムシが例年より多いのですか?
A. 多いといえます。農林水産省がまとめた注意報のうち、2026年9月8日現在でカメムシ関連は79件、全体の52.0%を占めます。2007年以降の19年で最も高い割合です。家に入るタイプに関係する果樹カメムシ類の注意報に限っても46件・31県で、2007〜2025年の平均19.1件の2.4倍にあたります。
Q. カメムシが多い年は大雪になるというのは本当ですか?
A. 19年分のデータでは確認できませんでした。果樹カメムシ類の注意報件数と翌冬の降雪量の相関係数は、新潟+0.04、金沢+0.12、富山+0.13、青森+0.27で、いずれも関係は薄い水準です。実際、注意報が1件しかなかった2011年の翌冬は新潟で304cmと19年で最も雪が多く、逆に41件と多かった2014年の翌冬は121cmでした。
Q. なぜ10月に家の中へ入ってくるのですか?
A. 越冬場所を探しているためです。8月頃に羽化した新成虫は生殖休眠に入って交尾をせず、気温の低下とともに越冬場所へ移動します。本来は樹皮の隙間や落ち葉の中、積み重ねた木材、石の割れ目などですが、家屋のサッシや戸袋もその候補になります。
Q. なぜ何匹も集まってくるのですか?
A. 農研機構の研究によると、クサギカメムシの越冬集団の形成には触角を通じた仲間との相互刺激が関わっています。両方の触角を除去した個体は集団をまったく作れませんでした。あわせて暗い場所への強い選好性があり、狭くて暗い場所に集まりやすい性質があります。
Q. 部屋に入ったカメムシはどうすればいいですか?
A. つぶさないことが第一です。刺激を受けると強い悪臭を放ちます。紙やガムテープでそっと包んで外に出すか、容器に落として処理してください。掃除機で吸うと内部ににおいが残ります。
Q. 注意報が出ているのは農家向けの情報ではないのですか?
A. もともとは農作物の防除のための情報です。ただし果樹カメムシ類(チャバネアオカメムシ、ツヤアオカメムシ、クサギカメムシ)は、果樹園を加害する種と、秋に越冬のため家屋へ侵入する種が重なります。そのため注意報の多さは、家屋侵入の多さを推し量る目安としても使えます。
・農林水産省「病害虫発生予察情報発表状況一覧」令和8年(2026年9月8日現在)および平成19年〜令和7年の各年版
・農林水産省「令和8年度 病害虫発生予報第7号」令和8年9月9日
・農林水産省「カメムシ類の防除」
・石川県病害虫防除室だより「クサギカメムシ」2018年3月22日
・農研機構「クサギカメムシ越冬集団の形成には触角を介した相互刺激と暗所選好が関与する」
・「カメムシ『2026年は多い年』」日本経済新聞2026年5月9日ほか各社報道
・気象庁「過去の気象データ」新潟・金沢・富山・青森の年統計値(降雪の深さ合計・寒候年)
・アイキャッチ画像:Brown marmorated stink bug/Rhododendrites, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons
※注意報の件数・県数・構成比および降雪量との相関係数は、上記の公表データをもとに当サイトが集計・計算したものです。相関は2007〜2025年の果樹カメムシ類注意報件数と、その翌寒候年の降雪量の組(n=19)で求めました。
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