- FOMC 9月15〜16日
- 日銀 9月17〜18日
- 米利上げ観測 9割弱
米労働省が9月11日に発表した8月の消費者物価指数(CPI)で、コア指数の前月比が市場予想を上回る伸びとなりました。これを受けて市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)が9月15〜16日のFOMCで利上げに踏み切るとの予想が9割近くまで高まっています。実現すれば2023年7月以来、実に3年1か月半ぶりの利上げです。
そしてその翌日、9月17〜18日には日本銀行の金融政策決定会合が開かれます。こちらも利上げ観測が出ており、日米の中央銀行が同じ週に、そろって利上げするという異例の展開が現実味を帯びてきました。
この記事では、FRBと日銀の政策金利変更の全履歴を自分で集計し、「同時利上げ」が為替にとって何を意味するのかを数字で整理します。結論を先に言えば、両方が0.25%ずつ上げると、日米の金利差は2.75%のまま1ミリも動きません。
まず事実確認:9月に何が決まるのか
今週の日程を整理します。FOMCの開催日はFRB公式サイトの2026年カレンダー、日銀の開催日は日本銀行の「金融政策決定会合の運営」ページで確認できる一次情報です。
| 会合 | 開催日 | 現在の政策金利 | 市場の見方 |
|---|---|---|---|
| FOMC(米国) | 9月15日(火)〜16日(水) | 3.50〜3.75% | 利上げ予想が9割弱 |
| 日銀 金融政策決定会合 | 9月17日(木)〜18日(金) | 1.00%程度 | 1.25%への利上げ観測 |
9月のFOMCは「SEP(経済見通しサマリー)」が公表される回にあたります。いわゆるドットチャート、つまり参加者一人ひとりが考える将来の金利水準が示される回で、単なる金利の上げ下げ以上に情報量が多い会合です。日銀の結果発表は18日(金)で、同日午後には総裁の定例記者会見が予定されています。
利上げ観測の引き金になった米8月CPI
きっかけは9月11日に発表された8月の消費者物価指数です。米労働統計局(BLS)の公表データを自分で取得して計算すると、数字はこうなります。
| 指標 | 前月比 | 前年同月比 | 市場予想(前月比) |
|---|---|---|---|
| コアCPI(食品・エネルギー除く) | +0.29% | +2.45% | +0.2% |
| 総合CPI | +0.32% | +3.40% | — |
注目したいのは、コアの前年比は2.45%と、実は落ち着いて見える点です。にもかかわらず市場が利上げに傾いたのは、前月比という「足元の勢い」が予想を上回ったからです。年率に直すと0.29%の12か月分は約3.5%。この勢いが続けば2%目標には戻らない、という計算が効いています。
市場の反応は金利に出ています。米2年国債利回りは8月26日の4.19%から9月10日には4.56%へ、わずか2週間で0.37ポイント上昇しました。政策金利の上限3.75%を0.8ポイントも上回る水準で、これは1回の利上げでは説明がつきません。
市場の受け止めは、予測市場の織り込み確率にも表れています。
Polymarket Japan @polymarketjapan・2026年9月11日【速報】米CPIの結果を受けて、9月FOMCでの利上げ確率が81%に上昇/結果は概ね予想通り。瞬間的にドル円は買われたものの、その後下落。FOMCで0.25%利上げを8割超織り込んでいる。Xで元の投稿を見る
集計①:米利上げは「3年1か月半ぶり」という重み
FRBの政策金利(FF金利の誘導目標上限)の変更履歴を、セントルイス連銀のデータベースから全期間ダウンロードして変更点だけを抜き出しました。直近の動きはこうなっています。
| 日付 | 変更 | 方向 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 2023年7月27日 | 5.25%→5.50% | 利上げ | これが最後の利上げ |
| 2024年9月19日 | 5.50%→5.00% | 利下げ | 利下げ局面の開始 |
| 2024年11月8日 | 5.00%→4.75% | 利下げ | — |
| 2024年12月19日 | 4.75%→4.50% | 利下げ | いったん打ち止め |
| 2025年9月18日 | 4.50%→4.25% | 利下げ | 2度目の利下げ局面 |
| 2025年10月30日 | 4.25%→4.00% | 利下げ | — |
| 2025年12月11日 | 4.00%→3.75% | 利下げ | 直近の利下げ |
| 2026年9月16日(予想) | 3.75%→4.00% | 利上げ | 1,147日ぶりの利上げ |
2023年7月27日から2026年9月16日までは1,147日あります。ここで利上げがあれば、3年1か月半ぶりの方向転換ということになります。
金利市場の反応は、長期金利にもはっきり出ています。
集計②:日米が同じ方向を向くのは2024年3月以来はじめて
ここからがこの記事の本題です。日銀が2024年3月にマイナス金利を解除してから今日まで、日米の中央銀行はどう動いてきたのか。日本銀行の「金融市場調節方針の変更について」の公表文を1本ずつ確認し、FRBの変更履歴と並べてみました。
| 日付 | 日銀 | FRB |
|---|---|---|
| 2024年3月19日 | マイナス金利解除(0〜0.1%) | 据え置き |
| 2024年7月31日 | 0.25%へ利上げ | 据え置き |
| 2024年9〜12月 | 据え置き | 3回の利下げ(5.5%→4.5%) |
| 2025年1月24日 | 0.5%へ利上げ | 据え置き |
| 2025年9〜12月 | 据え置き | 3回の利下げ(4.5%→3.75%) |
| 2025年12月19日 | 0.75%へ利上げ | (12月11日に利下げ) |
| 2026年6月16日 | 1.0%へ利上げ | 据え置き |
| 2026年9月(予想) | 1.25%へ利上げ | 4.0%へ利上げ |
数えてみるとこうなる
2024年3月以降、日銀は5回すべて利上げ、FRBは6回すべて利下げ。合計11回の政策変更で、両者の方向が一致したことは一度もありません。とくに2025年12月は、11日にFRBが利下げし、その8日後の19日に日銀が利上げするという、真逆の動きが同じ月に起きています。今回が実現すれば、2年半ぶりに日米が同じ方向を向くことになります。
集計③:金利差2.75%は「動かない」
為替を考えるうえで最も重要なのがここです。日米の政策金利差を時系列で並べます。
| 時点 | 米(上限) | 日本 | 金利差 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月(解除直後) | 5.50% | 0.10% | 5.40ポイント |
| 2025年1月 | 4.50% | 0.50% | 4.00ポイント |
| 2026年6月 | 3.75% | 1.00% | 2.75ポイント |
| 現在(9月13日) | 3.75% | 1.00% | 2.75ポイント |
| 同時利上げ後(予想) | 4.00% | 1.25% | 2.75ポイント |
金利差は2年半で5.40ポイントから2.75ポイントへ、ほぼ半分になりました。そして今週両方が0.25%ずつ上げても、金利差は2.75ポイントのまま変わりません。「日米とも利上げ」という一見大きなニュースは、金利差という物差しで見るとゼロなのです。
ではドル円は動かないのか。答えは「すでに動いている」です。
| 日付 | ドル円 | 8月末からの変化 |
|---|---|---|
| 2026年8月31日 | 159円73銭 | — |
| 2026年9月3日 | 156円01銭 | 3円72銭の円高 |
| 2026年9月9日 | 153円27銭 | 6円46銭の円高 |
| 2026年9月11日 | 154円04銭 | 5円69銭の円高 |
2週間弱で5円を超える円高です。金利差の水準が変わらないのに為替が動いた——ここに為替相場の本質があります。市場が反応しているのは金利差の「水準」ではなく「これからどちらに向かうか」という期待です。米国が利下げを続けるという前提が崩れ、日銀が利上げペースを上げるという見方が強まった。差の絶対値ではなく、差が縮む速さの見通しが変わったから円高が進んだわけです。
過去の答え合わせ:1998年と2025年はそっくりだった
「利下げしたばかりなのに、すぐ利上げに転じる」というのは珍しい動きです。過去にどれくらいあったのか、FRBの誘導目標データから「最後の利下げ→次の利上げ」の間隔をすべて計算しました。1990年以降は6回です。
| 最後の利下げ | 次の利上げ | 間隔 | 背景 |
|---|---|---|---|
| 1992年9月4日 | 1994年2月4日 | 17.0か月 | 景気回復の確認後 |
| 1996年1月31日 | 1997年3月25日 | 13.8か月 | — |
| 1998年11月17日 | 1999年6月30日 | 7.4か月 | 予防的利下げの巻き戻し |
| 2003年6月25日 | 2004年6月30日 | 12.2か月 | — |
| 2008年10月29日 | 2015年12月16日 | 85.5か月 | 金融危機後のゼロ金利 |
| 2020年3月16日 | 2022年3月17日 | 24.0か月 | コロナ後のインフレ |
| 2025年12月11日 | 2026年9月16日(予想) | 9.2か月 | 今回 |
今回の9.2か月(279日)は、1990年以降で2番目に速い方向転換にあたります。最短は1998年から1999年にかけてのケースでした。
1998年の3回と2025年の3回
この1998〜1999年のケースが、今回と驚くほど似ています。並べてみます。
| 項目 | 1998〜1999年 | 2025〜2026年 |
|---|---|---|
| 利下げの回数 | 3回 | 3回 |
| 利下げ幅の合計 | 0.75%(5.50→4.75) | 0.75%(4.50→3.75) |
| 利下げの期間 | 9月〜11月 | 9月〜12月 |
| 利下げの性格 | 予防的(金融不安への保険) | 予防的(景気減速への保険) |
| その後 | 翌年6月から3回利上げし完全に巻き戻し | 今週、巻き戻しが始まるか |
1998年の3回の利下げは、翌1999年に6月30日・8月24日・11月16日の3回の利上げで、きれいに元の5.50%まで戻されました。「保険として下げた分は、必要なくなったら返す」という中央銀行の行動様式が、そのまま現れた事例です。
ではその年、ドル円はどうなったか
ここが今回いちばん重要な参考データです。FRBが利上げを再開した1999年、ドル円は次のように動きました。
米国が3回も利上げした半年間で、ドル円は18円60銭、率にして15.4%の円高が進みました。しかも当時の日銀はゼロ金利政策の真っ最中で、日米の金利差は開く一方だったのに円高になったのです。
ここから読み取れること
金利差が開いても円高になることがあり、金利差が変わらなくても為替は大きく動きます。1999年に円高を進めたのは、金利差ではなく日本経済の回復期待と資本の流れでした。「利上げ=その国の通貨が買われる」という単純な図式は、現実には何度も裏切られています。
今週の3つのシナリオとドル円の読み方
ここまでの数字を踏まえて、今週の会合で起こりうる展開を整理します。
| シナリオ | 金利差 | ドル円への影響 |
|---|---|---|
| 両方が利上げ (本命) |
2.75pt (変化なし) |
すでに織り込み済み。焦点はFOMCのドットチャートが「今後も続く」と示すか、日銀総裁が次回への含みを持たせるか。文言次第で上下どちらにも振れる |
| 米だけ利上げ、 日銀は据え置き |
3.00pt (拡大) |
金利差が広がり円安方向。ただし日銀の据え置きが「次回利上げの地ならし」と読まれれば円安は限定的 |
| 米は据え置き、 日銀は利上げ |
2.50pt (縮小) |
最も円高が進みやすい組み合わせ。利上げ織り込みが9割弱まで進んでいるだけに、見送りの反動は大きい |
いずれのシナリオでも、値動きの主役は「決定そのもの」ではなく「次に何をするかの示唆」になります。9月のFOMCはドットチャートが出る回ですから、2026年末・2027年の金利見通しが上方修正されるかどうかが最大の見どころです。日銀側は、18日午後の総裁会見で「1.25%の次」に言及があるかに注目が集まります。
日米同時利上げに関するよくある質問
Q. 日米が同じ週に利上げするのは初めてですか?
A. 少なくとも日銀が2024年3月にマイナス金利を解除して以降、日米の政策金利が同じ方向に動いたことは一度もありません。それ以前は日本が長くゼロ金利・マイナス金利だったため、そもそも日銀が利上げする機会自体がほとんどありませんでした。「同じ週に、そろって利上げ」はきわめて珍しい組み合わせです。
Q. 両方が利上げすると円高と円安、どちらですか?
A. 0.25%ずつの利上げなら金利差は2.75ポイントのまま変わらないため、金利差だけを見れば中立です。実際には「この先どちらの利上げが続くか」という期待で動きます。すでに8月末から9月11日にかけて5円69銭の円高が進んでおり、相当部分は織り込まれていると考えられます。
Q. 米国の利上げは3年ぶりとのことですが、正確には?
A. FRBの最後の利上げは2023年7月27日(5.25%→5.50%)です。2026年9月16日に利上げがあれば1,147日ぶり、つまり3年1か月半ぶりの利上げとなります。
Q. なぜ利下げしたばかりなのに利上げするのですか?
A. 2025年9月から12月の3回の利下げは、景気減速に備えた「予防的」な性格が強いものでした。物価の上昇が収まらないことが確認されれば、保険として下げた分を戻すのが自然な判断になります。1998年にも同じ構図があり、3回の予防的利下げは翌1999年に3回の利上げで完全に巻き戻されました。
Q. 会合の結果はいつわかりますか?
A. FOMCの結果は日本時間9月17日(木)未明に発表され、直後にパウエル議長の記者会見があります。日銀は9月18日(金)の昼ごろに結果が公表され、午後に総裁の定例記者会見が行われます。ドル円が最も動きやすいのはこの2つの会見の時間帯です。
まとめ
- 米8月CPIのコアが前月比+0.29%と予想を上回り、9月FOMC(15〜16日)での利上げ観測が9割弱に高まった。実現すれば2023年7月以来1,147日ぶり
- 日銀の会合は17〜18日。1.0%から1.25%への利上げ観測があり、日米が同じ週にそろって利上げする可能性がある
- 2024年3月以降の政策変更11回はすべて日米で方向が逆。今回実現すれば2年半ぶりに方向が一致する
- 両方が0.25%ずつ上げても金利差は2.75ポイントのまま変わらない。それでもドル円は8月末から5円69銭の円高が進んでいる
- 1998年の3回の予防的利下げは翌年3回の利上げで巻き戻され、その半年でドル円は18円60銭の円高になった。利上げが円安に直結するとは限らない
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