15.4兆円の円買い介入で残高は1兆2,075億ドルへ。預金も初めて減った
財務省は2026年9月7日(月)8時50分に「外貨準備等の状況(8月末現在)」を公表しました。7月30日〜8月26日の15兆3,993億円という月次で過去最大の円買い・ドル売り介入が反映された結果、8月末の残高は1兆2,075億ドルとなり、前月末から795億7,500万ドル減少。減少額・減少率(6.2%)とも過去最大を更新しました。本記事では、外貨準備高とは何か、なぜ為替介入で減るのか、公表された内訳から何が読み取れるのか、そして「介入の弾は残っているのか」という疑問に、財務省の一次データを使って答えます。
7月30日の介入でドル円は163円台から157円台へ急落し、その後も8月中に断続的な介入が続きました。8月28日に財務省が公表した介入総額は15兆3,993億円で、2022年秋の9.2兆円、2024年春の9.8兆円、2026年春の11.7兆円をすべて上回っています。「それだけ売ったら、日本のドルはどれくらい減るのか」を確かめられるのが、9月7日朝の統計です。
外貨準備高とは――日本が持つ「外貨の貯金」の中身
外貨準備高とは、政府(外国為替資金特別会計)と日本銀行が保有する外貨建て資産の残高です。為替介入の原資であり、通貨危機の際に輸入代金や対外債務の支払いを保証する「国の外貨の貯金」にあたります。財務省が毎月上旬に前月末の残高をドル建てで公表しており、7月末時点の内訳は次のとおりです。
| 項目 | 残高(7月末) | 中身 |
|---|---|---|
| 証券 | 9,273億ドル | 米国債などの外国債券。全体の72% |
| 預金 | 1,623億ドル | 外国の中央銀行やBIS(国際決済銀行)への預け金がほぼ全部 |
| 金 | 1,095億ドル | 2,720万トロイオンス。時価で評価 |
| SDR | 607億ドル | IMFの特別引出権 |
| IMFリザーブポジション | 114億ドル | IMFへの出資のうち引き出せる分 |
| その他 | 159億ドル | ― |
| 合計 | 1兆2,871億ドル | 約203兆円(1ドル158円換算) |
注目したいのは、すぐに使える「預金」が1,623億ドルしかない点です。残りの7割は米国債などの証券で持っており、介入に使うには売却するか、満期を迎えた償還金を充てる必要があります。この構造が、「為替介入をすると外貨準備高がどう減るか」を読み解く出発点になります。
なぜ為替介入で外貨準備高が減るのか
円買い・ドル売り介入とは、政府が手持ちのドルを市場で売り、円を買い戻す取引です。売ったドルはそのまま外貨準備から出ていくため、介入額の分だけ残高が減ります。流れを図にすると次の3段階です。
過去の介入時のデータを見ると、減るのはほぼ「証券」で、「預金」はほとんど動いていません。2022年9月末は証券が515億ドル減った一方で預金は横ばい、2026年5月末も証券が755億ドル減って預金は1,622億ドル台のままでした。つまり当局は、手元の預金を温存し、米国債の売却や償還金で介入資金をまかなっていると読めます。
残高はドル建ての時価評価なので、①米国債の価格(米金利が上がると評価額が下がる)②金の価格③ユーロなどドル以外の通貨の対ドル相場、でも増減します。介入がなかった6月末も、主に金の値下がりで184億ドル減りました。統計を読むときは「介入で減った分」と「評価で動いた分」を分けて考える必要があります。
8月末の外貨準備高はどこまで減る?公表前の当ブログ試算
介入額15兆3,993億円をドルに直すと、介入期間中のドル円(おおむね155〜160円)で割って約960〜990億ドルになります。ここから評価要因を加減して、8月末の残高を試算しました。
| 要因 | 8月中の変化 | 残高への影響(試算) |
|---|---|---|
| 円買い・ドル売り介入 | 15兆3,993億円の売り | −960〜990億ドル |
| 金の価格 | 1オンス4,047ドル→4,432ドル(+9.5%) | +約100億ドル(2,720万オンス保有) |
| 米10年債利回り | 4.75%→4.75%で横ばい | ほぼ中立(2年債は+0.06%でわずかに評価減) |
| ユーロの対ドル相場 | 1.1485→1.1596ドル(+1.0%) | ユーロ建て資産の分だけ小幅プラス |
| 差し引き | 約850〜950億ドル減 | 残高は1兆1,900億〜2,000億ドル前後、減少率6.6〜7.4% |
減少率の過去最大は2026年5月末の5.6%(771億ドル減)で、その前は2022年9月末の4.2%(540億ドル減)でした。今回はドル換算の介入額が5月より2割以上大きいため、金の値上がりで一部相殺されても、減少額・減少率ともに過去最大を更新する可能性が高いと見ています。逆に、減少額が700億ドル程度にとどまるなら、償還金の充当や評価益が想定より大きかったと解釈できます。
介入のドル換算は日々の実勢レートが公表されていないため幅を持たせています。前提を単純に足し合わせると860〜890億ドル減ですが、償還金の充当や評価要因の不確実性を見込んで850〜950億ドルの幅で示しています。金は7月31日と8月31日の国際価格、米金利は米財務省の日次利回り、ユーロは欧州中央銀行の参照レートを使いました。正式な数字は9月7日8時50分の財務省公表をご確認ください。本記事は公表後に【追記】で答え合わせをします。
【追記・9月8日】公表された実数と試算の答え合わせ
財務省が9月7日8時50分に公表した「外貨準備等の状況(令和8年8月末現在)」によると、8月末の外貨準備高は1兆2,075億2,400万ドル(1,207,524百万ドル)で、7月末より795億7,500万ドル減少しました。減少率は6.18%です。減少額・減少率とも、これまでの最大だった2026年5月末(771億2,000万ドル減、5.58%減)を上回り、統計上の過去最大を更新しました。
公表前の当ブログ試算は「850〜950億ドル減、残高1兆1,900億〜2,000億ドル、減少率6.6〜7.4%」でした。実際の減少額795.8億ドルは試算レンジをやや下回り、残高も試算より多く残りました。外した主因は金の評価益を小さく見積もっていたことです。試算では金の含み益を約100億ドルと置きましたが、実際は145億8,300万ドル増えており、この差45億ドル強がそのまま総額の目減りを圧縮しました。一方、「過去最大の減少額・減少率を更新する」という結論そのものは当たりました。
内訳を見ると「証券と預金で946億ドル減、金が146億ドル戻した」
外貨準備高は項目別に公表されます。7月末と8月末を並べると、何が減って何が増えたのかが一目でわかります。
| 項目 | 7月末 | 8月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 証券(米国債など) | 9,273.3億ドル | 8,395.6億ドル | −877.7億ドル |
| 預金 | 1,622.9億ドル | 1,554.2億ドル | −68.7億ドル |
| 金(重量は27.20百万オンスで不変) | 1,095.2億ドル | 1,241.0億ドル | +145.8億ドル |
| SDR | 607.3億ドル | 611.7億ドル | +4.4億ドル |
| IMFリザーブポジション | 113.8億ドル | 114.2億ドル | +0.4億ドル |
| 外貨準備高 合計 | 1兆2,871億ドル | 1兆2,075億ドル | −795.8億ドル(−6.18%) |
介入で実際に取り崩されたのは証券と預金の合計946億ドルです。介入額15兆3,993億円のドル換算(約960〜990億ドル)とほぼ同じ規模で、そこに利子収入や償還金が加わってこの数字になっていると読めます。総額の減りが795億ドルにとどまったのは、金価格の上昇で1,241億ドルまで膨らんだ金の評価益が、取り崩し分の一部を穴埋めしたためです。金は重量が2,720万トロイオンスのまま変わっていないので、増えた145.8億ドルはすべて価格の上昇によるものです。
本文で見たとおり、これまでの介入では預金はほとんど動かず、減るのは証券だけでした。実際、2026年3月末から7月末までの預金残高は1,617億〜1,623億ドルの範囲でほぼ横ばいです。ところが8月末は1,554億ドルへ68.7億ドル減少し、この5か月で初めてまとまった取り崩しが起きました。記事本文のチェックポイント表では「預金まで減っていれば、償還金や売却で間に合わないほど急いだ証拠」と書きましたが、まさにその形になったことになります。月次15.4兆円という介入のペースが、手元資金の取り崩しを伴うほど速かったと言えます。
金の比率が10.3%まで上昇――「最後は金準備か」の論点
もう一つの変化は、外貨準備に占める金の割合です。7月末は8.5%でしたが、証券が減り金の評価額が上がった結果、8月末は10.3%まで高まりました。金を買い増したわけではなく、ドル建て資産が減ったぶん相対的に比率が上がっただけですが、円買い介入を続けるほど「準備の中身が金に寄っていく」という構図が数字に表れた形です。本文で紹介した「通貨防衛を続ければ最後は金準備に手を付けるのか」という論点は、当面の話ではないにせよ、今回の内訳で少し身近になりました。
なお、公表当日のドル円は大きくは反応せず、9月7日のニューヨーク市場は1ドル154円75銭で引けました。9月1日の160円台から1週間で5円以上の円高が進んでおり、市場の関心はすでに9月11日の米消費者物価指数、15〜16日のFOMC、17〜18日の日銀金融政策決定会合に移っています。次に外貨準備高が注目されるのは、9月以降の介入が反映される10月上旬の公表(9月末分)です。
【追記・10月7日】9月末は291億ドル減――介入ゼロでも2か月連続で減った
財務省が10月7日に公表した「外貨準備等の状況(令和8年9月末現在)」によると、9月末の外貨準備高は1兆1,783億9,600万ドル(1,178,396百万ドル)で、8月末より291億2,800万ドル減少しました(減少率2.41%)。2か月連続の減少です。
ただし9月は円買い介入がありません。財務省の「外国為替平衡操作の実施状況(8月27日〜9月28日)」は介入額0円でした。つまり今回の減少は、ドルを売って円を買ったことによる取り崩しではなく、保有資産の値下がり(評価減)が中心と読めます。
| 項目 | 8月末 | 9月末 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 証券(米国債など) | 8,395.6億ドル | 8,216.9億ドル | −178.7億ドル |
| 預金 | 1,554.2億ドル | 1,552.2億ドル | −2.0億ドル |
| 金(重量は27.20百万オンスで不変) | 1,241.0億ドル | 1,135.9億ドル | −105.1億ドル |
| SDR | 611.7億ドル | 607.8億ドル | −3.9億ドル |
| IMFリザーブポジション | 114.2億ドル | 113.4億ドル | −0.8億ドル |
| 外貨準備高 合計 | 1兆2,075億ドル | 1兆1,784億ドル | −291.3億ドル(−2.41%) |
出典:財務省「外貨準備等の状況」(令和8年8月末・9月末現在)から当ブログ作成
内訳を見ると、8月とは逆の動きが目立ちます。
- 金が105.1億ドル減(−8.5%)。重量は2,720万トロイオンスのまま変わっていないので、全額が金価格の下落によるものです。1オンスあたりに直すと約4,560ドルから約4,180ドルへの下落にあたります。8月に総額の目減りを穴埋めした金の評価益が、9月は逆に減少の3分の1以上を占めました。
- 証券が178.7億ドル減(−2.1%)。米財務省の日次利回りでは、米10年債利回りが8月31日の4.75%から9月30日の5.29%へ0.54ポイント上昇し、2年債も4.34%→4.88%と上がりました。金利が上がると手持ちの債券の値段は下がります。加えてユーロも対ドルで1.1596→1.1355ドル(欧州中央銀行の参照レート)と約2%下がっており、ユーロ建て資産のドル換算額も目減りしました。
- 預金はほぼ横ばい(−2.0億ドル)。8月に68.7億ドル取り崩された預金は、介入がなかった9月はほとんど動きませんでした。
外貨準備高は、介入による取り崩しだけでなく米金利・金価格・ユーロ相場でも増減します。9月末の291億ドル減は介入ゼロの月に起きており、2024年7月(介入5.5兆円でも米金利低下と金高で124億ドル減にとどまった)とちょうど逆のパターンです。外貨準備の増減を見るときは、同時に公表される「外国為替平衡操作の実施状況」で介入の有無を確かめるのが確実です。なお、9月29〜30日の介入の有無は10月末に公表される次の月次分(9月29日〜10月28日)でわかります。
9月末時点で、金の比率は外貨準備全体の9.6%(8月末10.3%)に下がりました。次の公表は11月上旬(10月末分)です。
過去の円買い介入と外貨準備の減少額を比べる
2022年以降の円買い介入と、その月の外貨準備高の変化を並べると、介入額と減少額が必ずしも比例しないことがわかります。
| 月末 | 介入額 | 外貨準備の増減 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2022年9月 | 2兆8,382億円 | −540億ドル(−4.2%) | 24年ぶりの円買い介入。証券が515億ドル減、預金は横ばい |
| 2022年10月 | 6兆3,499億円 | −434億ドル | 10/21・10/24の2回。米金利上昇の評価減も重なり、残高は1兆1,945億ドルに |
| 2024年5月 | 9兆7,885億円 | −474億ドル(−3.7%) | 4/29と5/1の2回。証券が504億ドル減 |
| 2024年7月 | 5兆5,348億円 | −124億ドル(−1.0%) | 7/11・12の介入。米金利低下と金高で大半が相殺 |
| 2026年5月 | 11兆7,349億円 | −771億ドル(−5.6%) | 減少額・減少率とも当時の過去最大。証券が755億ドル減 |
| 2026年8月 | 15兆3,993億円 | −795.8億ドル(−6.18%) | 減少額・減少率とも過去最大。証券が877億ドル減り、預金も68億ドル減った |
2024年7月のように、介入額が5.5兆円あっても残高がほとんど減らなかった月もあります。米金利の低下で保有する米国債の評価額が上がり、金も値上がりしたためです。今回は米10年債利回りが月初と月末でほぼ同じ水準なので、評価益に頼れる部分は主に金の値上がり分に限られます。
「介入の弾」はまだあるのか――残高から読む当局の余力
外貨準備高が減るたびに「弾切れ」が話題になりますが、数字で整理すると見え方が変わります。
- すぐ使える預金は8月末で1,554億ドル。2026年に入ってからの介入は4〜5月と7〜8月の合計で約27兆円、ドル換算で1,700億ドル超に達しており、預金だけでは足りない規模です。これまでは米国債の売却・償還で補い預金は横ばいでしたが、8月は68.7億ドル取り崩されました。
- 証券は8月末で8,396億ドル残っている。理屈のうえでは介入の余力は十分にあります。ただし米国債を大量に売れば米金利の上昇要因になり、米国側との調整が必要になります。大和総研は2026年7月のレポートで「大規模かつ頻繁な介入は米長期金利上昇を招く可能性がある」と指摘しています。
- 2026年は日米協調の枠組みがある。7月31日には米国も円買いに加わり、8月30日のベッセント米財務長官と植田日銀総裁の会談要旨(米財務省)でも「円の大幅な過小評価に対処する日本の断固たる措置を強く支持する」と明記されました。米国債の売却に対する米側の反発という従来の制約は、今年に限っては小さいと言えます。
市場関係者の間でも、介入が続いた結果として外貨準備が細っていく点は関心を集めています。日銀取材が長い「本石町日記」は、通貨防衛で外貨準備が減り続ければ最後は金準備に手を付けることになるのか、という論点を投げかけています。
わが国は、金準備をどうのこうの言う前に、円安ホクホク宰相の下、通貨防衛に追われて外貨準備が減りつつありますね。最後は金準備に手を付けるまでに追い込まれるのでしょうか。 https://t.co/BaTgMiVj0b
— 本石町日記 (@hongokucho) September 5, 2026
もっとも、外貨準備に占めるドルの比率という論点では、ニューヨーク連邦準備銀行のブログを引きながら「ドル保有の基盤は依然として強固」という分析も紹介されています。
NY連銀ブログ、世界の外貨準備におけるドル比率の低下を分析。ドル基軸の揺らぎとみられやすいが、依然としてドル保有の基盤は強固である、と。https://t.co/a8rjMNnhvu
— 本石町日記 (@hongokucho) September 6, 2026
外貨準備高は減少率が7%でも1兆2,000億ドル前後が残り、世界2位の規模は変わりません。むしろ市場が見るのは「残高」より「当局がどこまで本気か」で、月次で過去最大の介入額を出したこと自体がメッセージになっています。一方で、減少が大きいほど「次は米国債の売却が本格化するのでは」という思惑を呼び、米金利や日米関係の話題に飛び火する点には注意が必要です。
9月7日の公表をどう見るか――3つのチェックポイントと結果
外貨準備高の統計そのものは月1回の「過去の数字」で、公表直後にドル円が大きく動くことは多くありません。ただし今回は介入の規模が桁違いなので、次の3点を確認すると相場の読みに役立ちます。
| チェックポイント | 想定される数字 | 読み方 |
|---|---|---|
| 減少額 結果:−795.8億ドル |
850〜950億ドル | 想定内なら材料視されにくい。1,000億ドル超なら「介入の実弾がすべて外貨準備から出た」と受け止められ、介入警戒が強まる |
| 証券と預金のどちらが減ったか 結果:証券−877.7億、預金−68.7億 |
証券が900億ドル前後減、預金は横ばい | 預金まで減っていれば「償還金や売却で間に合わないほど急いだ」証拠。当局の切迫感の目安 |
| 減少率 結果:−6.18%で過去最大 |
6.6〜7.4% | 過去最大更新なら翌朝の新聞見出しになり、160円接近時の介入警戒を下支えする |
結果は上表の「結果」欄のとおりで、減少額は想定をやや下回った一方、預金の取り崩しという当局の切迫感を示す変化が確認されました。ドル円は9月4日の米雇用統計後に156円台で落ち着いたあと、公表日の9月7日は154.75円まで円高が進んでいます。今週は9月11日の米消費者物価指数(CPI)、来週は15〜16日のFOMCと17〜18日の日銀金融政策決定会合が控えており、外貨準備高はその前哨戦にあたります。
- 9月7日(月)8:50財務省「外貨準備等の状況(8月末)」公表。15.4兆円介入の答え合わせ
- 9月8日(火)8:507月の国際収支(速報)。介入月の対外資産の動きも確認できる
- 9月11日(金)21:30米8月CPI。FOMC前最後のインフレ指標
- 9月15〜16日FOMC。利上げか据え置きか、ドットチャートも公表
- 9月17〜18日日銀金融政策決定会合。1.00%→1.25%の利上げがほぼ織り込み済み
- 11月上旬財務省が7〜9月期の介入を日次で公表。7月30日の単日額が確定する
まとめ――外貨準備高は「介入の請求書」を見る統計
①外貨準備高は政府と日銀が持つ外貨資産の残高で、7月末は1兆2,871億ドル。7割が米国債などの証券、すぐ使える預金は1,623億ドルにとどまる。②円買い介入は手持ちのドルを売る取引なので、売った分だけ残高が減る。過去の介入では預金ではなく証券が減っており、米国債の売却・償還で資金を作っている。③9月7日公表の8月末残高は1兆2,075億ドルで、前月比795.8億ドル減・減少率6.18%と、いずれも過去最大を更新した。内訳は証券が877.7億ドル減、預金が68.7億ドル減、金が145.8億ドル増。④取り崩しは証券と預金で946億ドルと介入額のドル換算にほぼ一致し、金の含み益が総額の目減りを圧縮した。⑤5か月ぶりに預金が減ったことが今回いちばんの変化で、介入のペースが手元資金の取り崩しを伴うほど速かったことを示す。⑥残高は1兆2,000億ドル超が残り「弾切れ」ではないが、米国債売却の思惑や日米関係に飛び火する点は要注意。
よくある質問
Q. 外貨準備高の8月末分はいつ発表されますか?
A. 2026年9月7日(月)8時50分に「外貨準備等の状況(令和8年8月末現在)」として公表され、残高は1兆2,075億ドル(前月比795億7,500万ドル減)でした。財務省は毎月、前月末の残高を翌月上旬に公表しており、9月末分は10月上旬に公表される予定です。
Q. 為替介入をすると、なぜ外貨準備高が減るのですか?
A. 円買い・ドル売り介入は政府が保有するドルを市場で売る取引なので、売った分だけ外貨建て資産が減るためです。過去のデータでは、預金はほとんど減らず、米国債などの証券が介入額に見合う分だけ減っています。当局が米国債の売却や償還金で介入資金を用意していると読み取れます。
Q. 8月末の外貨準備高はどのくらい減りましたか?
A. 795億7,500万ドル減って1兆2,075億ドルになりました。減少率は6.18%で、いずれも2026年5月末(771億ドル減、5.58%減)を上回る過去最大です。内訳は証券が877.7億ドル減、預金が68.7億ドル減った一方、金が価格上昇で145.8億ドル増えて総額の目減りを和らげました。公表前の当ブログ試算(850〜950億ドル減)は、金の評価益を小さく見積もったぶんやや過大でした。
Q. 外貨準備高が減ると、もう為替介入はできなくなりますか?
A. いいえ。8月末でも残高は1兆2,075億ドルあり、証券だけで8,396億ドルが残っています。ただし、すぐに使える預金は1,554億ドルに限られ、8月には5か月ぶりにその預金も取り崩されました。大規模な介入を続けるには米国債の売却が必要で、米金利の上昇や米国との調整が制約になります。2026年は日米が協調して円安是正に動いているため、この制約は例年より小さいと考えられます。
Q. 外貨準備高の発表でドル円は動きますか?
A. 月末残高という過去の数字なので、発表直後に大きく動くことは通常ありません。ただし減少額が想定を大きく上回ったり、預金まで減っていたりすると「当局の本気度」として意識され、160円に近づいた場面での介入警戒を強める要因になります。今週は9月11日の米CPI、来週はFOMCと日銀会合が控えており、それらのほうが値動きへの影響は大きいと見られます。
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参考・一次情報
・財務省「外貨準備等の状況(令和8年8月末現在)」(2026年9月7日)mof.go.jp
・財務省「外貨準備等の状況(令和8年7月末現在)」(2026年8月7日)mof.go.jp
・財務省「外国為替平衡操作の実施状況(令和8年7月30日〜令和8年8月26日)」(2026年8月28日)mof.go.jp
・財務省「週間予定(9月7日〜9月11日)」mof.go.jp
・大和総研「円買い・ドル売り為替介入の限界」(中村文香、2026年7月3日)dir.co.jp
・米財務省「READOUT: Secretary Bessent’s Meeting with Bank of Japan Governor Ueda」(2026年8月30日)home.treasury.gov
※過去の外貨準備高は財務省の各月公表値、金価格・米金利・ユーロ相場はそれぞれ市場データ・米財務省・欧州中央銀行の公表値に基づく当ブログの集計です。ドル円の水準は欧州中央銀行の日次参照レート(2026年9月7日時点)によります。
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