「国旗損壊罪」が成立──日の丸を燃やすと罪になる時代へ
2026年7月19日公開|2026年7月17日 参議院本会議で可決・成立
2026年7月17日、日本国旗(日の丸)を公然と傷つける行為を処罰する「国旗損壊罪」を新設する法律が、参議院本会議で可決・成立しました。これまで外国の国旗を壊す行為には刑法上の罪があったのに、日本の国旗には罰則がないという「ねじれ」が長年指摘されてきましたが、ついに解消されることになります。この記事では、国旗損壊罪とは何か、いつから施行されるのか、罰則の内容、賛成・反対した政党、表現の自由との関係まで、ニュースの背景を含めてわかりやすく解説します。
国旗損壊罪とは?──新しくできた法律の中身
国旗損壊罪とは、日本の国旗(日章旗・日の丸)を公然と損壊・汚損する行為を処罰する新しい罪です。正式名称は「国旗の損壊等の処罰に関する法律」で、議員立法として国会に提出され、2026年6月30日に衆議院、7月17日に参議院で可決されて成立しました。
処罰の対象となる行為は、条文上おおむね次のように定められています。
「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法により、公然と日本の国旗を損壊し、除去し、または汚損した者」が対象。罰則は2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金です。
ポイントは「公然と」という条件です。人前やインターネットのライブ配信など、不特定多数が見られる状況で国旗を燃やしたり切り裂いたりする行為が想定されており、自宅で古くなった国旗を私的に処分するような行為は対象になりません。また、国会審議では損壊行為のライブ配信は処罰対象になり得る一方、事後的にSNSへ投稿する行為は対象外と整理されています。
なぜ今つくられたのか──「外国の国旗は守られるのに」という不均衡
実は刑法には以前から外国国章損壊罪(刑法92条)という罪があり、外国を侮辱する目的でその国の国旗を損壊すると処罰されます。ところが、日本の国旗を壊しても直接処罰する規定はないという状態が続いてきました。他人の所有物なら器物損壊罪に問えますが、自分で用意した日の丸を公衆の面前で燃やしても罪に問えない──この「不均衡」の解消が、立法の最大の理由とされています。
いつから施行される?
この法律は公布の日から20日を経過した日に施行されます。7月17日に成立したため、公布手続きを経て2026年8月上旬ごろに施行される見込みです。施行日より前の行為が遡って処罰されることはありません(遡及処罰の禁止)。
罰則はどのくらい?──他の罪との比較
似た性質の罪と比べると、位置づけがよくわかります。
| 罪名 | 対象 | 罰則 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 国旗損壊罪(新設) | 日本の国旗 | 2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金 | 公然と、著しく不快・嫌悪を催させる方法での損壊・除去・汚損 |
| 外国国章損壊罪(刑法92条) | 外国の国旗・国章 | 2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金 | 外国を侮辱する目的が必要。その国の政府の請求がないと起訴できない |
| 器物損壊罪(刑法261条) | 他人の所有物全般 | 3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金など | 自分の所有物は対象外 |
新設の国旗損壊罪は、外国国章損壊罪と同じ重さの罰則にそろえられています。器物損壊罪より軽いのは、財産への侵害ではなく「国の象徴に対する侮辱行為」を対象とする罪だからです。
成立までの経緯を振り返る
- 2012年自民党が国旗損壊罪を新設する刑法改正案を初めて国会に提出。しかし審議されないまま廃案に。
- 2021年高市早苗氏らが再び法整備を要請。このときも実現には至らず。
- 2025年10月自民党と日本維新の会が連立政権の合意書に国旗損壊罪の制定を明記。参政党も独自法案を提出。
- 2026年6月30日衆議院本会議で可決。
- 2026年7月17日参議院本会議で可決・成立。約14年越しの立法が実現。
賛成・反対した政党は?
採決では主要政党の賛否がはっきり分かれました。
| 賛否 | 政党 | 主な主張 |
|---|---|---|
| 賛成 | 自民党・日本維新の会・国民民主党・参政党・日本保守党 | 外国国章損壊罪との不均衡の解消。国旗は国の象徴であり、公然たる侮辱行為は保護されるべき表現とは言い難い |
| 反対 | 立憲民主党・公明党・日本共産党・れいわ新選組 | 表現の自由(憲法21条)を侵害するおそれ。処罰対象の線引きが曖昧で、政府への抗議活動の萎縮につながりかねない |
日本弁護士連合会(日弁連)は「表現の自由を侵害するおそれがある」として反対声明を発表。刑事法学者148人も「処罰対象が漠然かつ不明確」と指摘する声明を出しています。「人に著しく不快または嫌悪の情を催させるような方法」という要件がどこまでを含むのか、今後の運用が注目されます。
表現の自由との関係──海外ではどうなっている?
国旗の損壊を罪にすることは、世界的にも意見が分かれるテーマです。
- アメリカ:1989年に連邦最高裁が「国旗を燃やす行為も憲法が保護する表現の自由に含まれる」と判断(テキサス州対ジョンソン事件)。自国国旗の損壊は処罰されません。国会審議でも反対派がこの判例を引用しました。
- ドイツ・フランス・イタリアなど:自国の国旗を公然と損壊する行為に罰則を設けています。
- 中国・韓国:自国国旗の損壊を処罰する規定があります。
つまり「自国の国旗を守る法律」は欧州やアジアでは珍しくない一方、アメリカのように「それも表現の一部」と考える国もある、というのが世界の現状です。日本は今回、ドイツや韓国と同じ「処罰あり」のグループに加わったことになります。
私たちの生活に影響はある?
対象にならない例:古くなった国旗を自宅で処分する/うっかり汚してしまう/運動会の万国旗を片付ける──いずれも「公然と」「著しく不快・嫌悪を催させる方法」に当たらず、処罰対象ではありません。
対象になり得る例:デモや集会、ライブ配信などで、見る人に強い嫌悪感を与えるやり方で日の丸を燃やす・切り裂く・踏みつけるといった行為。
一般の人が普通に生活していて罪に問われる場面はほぼ考えられません。一方で、抗議活動の手段として国旗を使う行為には法的リスクが生じるため、報道機関や法律家が運用を注視していくことになります。
よくある質問
Q国旗損壊罪はいつから施行されますか?
A公布の日から20日を経過した日に施行されます。2026年7月17日に成立したため、2026年8月上旬ごろに施行される見込みです。
Q自分で買った日の丸を燃やしても罪になりますか?
A自分の所有物でも、公然と、人に著しく不快・嫌悪の情を催させる方法で損壊すれば処罰対象になり得ます。逆に自宅で私的に処分する行為は対象外です。
Q罰則はどのくらい重いのですか?
A2年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金です。外国の国旗を対象とする外国国章損壊罪(刑法92条)と同じ重さで、器物損壊罪(3年以下)よりは軽く設定されています。
Qなぜ反対する政党や団体があるのですか?
A国旗の損壊が政府への抗議表現として行われる場合があり、処罰は憲法21条の表現の自由を侵害しかねないという理由です。日弁連や刑事法学者148人も「処罰対象が曖昧」と懸念を示しています。
まとめ──「象徴を守る」と「自由を守る」のバランスはこれから
国旗損壊罪の成立で、日本の国旗を公然と侮辱的に損壊する行為は2026年8月ごろから犯罪になります。外国国章損壊罪との不均衡が解消された一方、表現の自由との緊張関係という宿題も残りました。「どこまでが許される表現で、どこからが犯罪か」──施行後の運用と最初の適用事例が、この法律の実像を決めていくことになりそうです。当ブログでは今後も、国会で成立した法律や政治の動きをわかりやすく解説していきます。


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