社会ニュース|伊豆諸島の船
東海汽船の使用停止はいつまで?10月9〜28日の代替ダイヤと違反96点
2026年10月2日、国土交通省関東運輸局は、伊豆諸島航路を運航する東海汽船に対し、大型客船「橘丸」とジェット船「セブンアイランド結」「セブンアイランド友」の3隻を20日間使用停止とする命令を出しました。元日の船内飲酒やアルコール検査の替え玉受検などが理由です。いつまで止まるのか、代わりの船と時刻、島への物資、そして違反点数の中身を、運輸局と東海汽船が公表した資料から整理します。
この記事の結論
- 使用停止は2026年10月9日(金)0時から10月28日(水)までの20日間です。0時から止まるため、代替ダイヤは10月8日(木)夜発の便から始まります。
- 止まるのは橘丸・セブンアイランド結・セブンアイランド友の3隻。東海汽船の旅客船5隻のうち動くのはさるびあ丸とセブンアイランド大漁の2隻だけで、グループのくろしお丸と小笠原海運のおがさわら丸を借りて補います。
- 大島・利島・新島・式根島・神津島へ向かう夜行の大型船は、さるびあ丸(定員1,343人)からくろしお丸(定員200人)に替わります。定員は約15%です。東海汽船は前年10月の実績をもとに「全ての予約客を運べる計画」としていますが、乗り換えや時刻変更が出ます。
- 貨物は前年10月の実績3,948トンに対し、くろしお丸と貨物船で3,967トンを確保する計画です。ただし一部は1〜3日遅れることがあり、毎週水曜は大島〜神津島方面の生鮮品の受付を中止します。
- 処分の理由は、運輸局が付けた違反点数が東京〜大島〜神津島航路で96点、東京〜八丈島航路で92点に達したこと。事業停止を検討する目安は16点で、その6倍です。島の生活への影響を考え、事業停止の代わりに一部の船の使用停止になりました。
東海汽船の使用停止はいつからいつまで?対象の3隻
関東運輸局が10月2日に発表した命令の内容と、同じ日に東海汽船が公表した代替運航の案内をまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 処分を出した機関 | 国土交通省 関東運輸局(海上運送法第17条) |
| 処分日 | 2026年10月2日(金) |
| 停止期間 | 2026年10月9日(金)〜10月28日(水)の20日間。9日0時から停止 |
| 代替ダイヤの開始 | 10月8日(木)夜発の便から |
| 東京〜八丈島航路 | 橘丸 |
| 東京〜大島〜神津島航路 | 橘丸、セブンアイランド結、セブンアイランド友 |
| 熱海〜大島航路 | セブンアイランド結、セブンアイランド友 |
| 運航を続ける自社船 | さるびあ丸、セブンアイランド大漁 |
| 応援の船 | くろしお丸(伊豆諸島開発)、おがさわら丸(小笠原海運)。どちらも客船2等の料金で乗れる |
| 予約済みの人 | 東海汽船から順次、電話またはSMSで出発時刻や便の変更を案内 |
| 変更・取消の手数料 | 2026年8月31日夜発の便から「当面の間」無料。ネット予約は出発前日まで自分で手続きでき、電話予約はお客様センター(03-5472-9999、9時30分〜18時)へ。旅行会社経由は各社の規定による |
橘丸は処分の前から止まっています
橘丸は9月28日にプロペラ装置の不具合が見つかり、すでに旅客を乗せた運航を休んでいます。東海汽船の10月2日17時30分時点の案内では、修理を終えるまで主機関が使えず、造船所への入渠を調整中です。このため、9月30日夜発〜10月8日の便も、さるびあ丸を八丈島航路に回し、大島〜神津島航路の大型船はジェット船で代替するダイヤに変わっています。10月9日からは、その状態に使用停止命令が重なる形です。
代替ダイヤ|航路別に何が変わる?
使用停止期間中の運航を、航路ごとに整理しました。いちばん影響が大きいのは、大島・利島・新島・式根島・神津島の伊豆諸島北部の5島です。夜行の大型船も高速のジェット船も、ふだんより小さな船・少ない便になります。
| 航路 | ふだんの主な船 | 10月9日〜28日 |
|---|---|---|
| 東京〜三宅島・御蔵島・八丈島 | 橘丸 | さるびあ丸が代わりに運航。東京22時30分発。金曜夜発だけ大島に寄るため、八丈島着が11時10分になる |
| 東京〜大島・利島・新島・式根島・神津島(大型船) | さるびあ丸 | くろしお丸が毎日1往復の夜行便。東京23時発→大島5時30分→神津島10時着 |
| 東京〜大島〜神津島(ジェット船) | 結・友・大漁 | セブンアイランド大漁1隻が東京7時40分発で神津島まで。利島・新島・式根島は下り便だけ寄港 |
| 東京〜大島(補完) | — | おがさわら丸が大島に寄港。下りは金曜の東京11時発、上りは水曜着の便(10月7日を除く) |
| 熱海〜大島 | 結・友・大漁 | セブンアイランド大漁が運航を継続。熱海13時55分発→大島14時40分。伊東には寄らない |
代替期間の時刻表(東海汽船の公表資料から)
東海汽船が改善計画書の別添として公表した「旅客代替輸送計画」の時刻です。週末などの繁忙日は一部の船の時刻が変わる場合があると書かれているので、乗る前に必ず公式サイトの運航状況を確認してください。
| 船 | 発着時刻 | 運航日 |
|---|---|---|
| くろしお丸(下り) | 東京23:00→大島5:30/利島7:20/新島8:25/式根島9:00→神津島10:00 | 毎日 |
| くろしお丸(上り) | 神津島10:20→式根島11:10/新島11:40/利島12:50/大島14:30→東京19:50 | 毎日 |
| セブンアイランド大漁 | 東京7:40→大島9:25/利島10:04/新島10:30/式根島10:50→神津島11:20 | 毎日 |
| セブンアイランド大漁 | 神津島11:30→大島12:30→熱海13:25(利島・新島・式根島は通過) | 毎日 |
| セブンアイランド大漁 | 熱海13:55→大島14:40/大島14:55→東京16:40 | 毎日 |
| さるびあ丸(下り) | 東京22:30→三宅島5:00/御蔵島6:00→八丈島8:55 | 金曜夜発を除く |
| さるびあ丸(下り) | 東京22:30→大島4:30/三宅島7:15/御蔵島8:15→八丈島11:10 | 金曜夜発のみ |
| さるびあ丸(上り) | 八丈島9:40→御蔵島12:35/三宅島13:35/大島16:20→東京20:55 | 土曜発を除く |
| さるびあ丸(上り) | 八丈島11:45→御蔵島14:00/三宅島14:55→東京21:20 | 土曜発のみ |
| おがさわら丸(下り) | 東京11:00→大島14:50(その後、父島へ) | 金曜発のみ |
| おがさわら丸(上り) | 父島発→大島11:40/11:50発→東京15:40 | 水曜着のみ(10月7日を除く) |
時間で見ると、東京から神津島までは、ジェット船なら7時40分発で11時20分着の3時間40分、くろしお丸なら23時発で翌10時着の11時間です。ジェット船の上り便は利島・新島・式根島に寄らないので、この3島から東京へ戻る人は、くろしお丸の上り便(式根島11時15分発、新島11時50分発、利島12時55分発)が中心になります。
定員で比べると「北部5島の夜行便」は約15%に
東海汽船の公式サイトに載っている各船の旅客定員を並べると、代替の厳しさがよくわかります。船の定員は航行する区域で変わり、御蔵島までの「沿海区域」より、八丈島まで行く「近海区域」の方が少なく決められています。
| 船 | 区分 | 旅客定員 | 八丈島まで(近海) | 期間中 |
|---|---|---|---|---|
| 橘丸 | 大型客船 | 1,000人 | 596人 | 停止 |
| セブンアイランド結 | ジェット船 | 241人 | — | 停止 |
| セブンアイランド友 | ジェット船 | 254人 | — | 停止 |
| さるびあ丸 | 大型客船 | 1,343人 | 693人 | 運航 |
| セブンアイランド大漁 | ジェット船 | 254人 | — | 運航 |
| くろしお丸(伊豆諸島開発) | 貨客船 | 200人 | 84人 | 応援 |
| おがさわら丸(小笠原海運) | 大型客船 | 882人 | — | 応援 |
伊豆諸島北部の5島に向かう夜行便は、さるびあ丸の沿海区域の定員1,343人に対して、くろしお丸は200人。約15%しかありません。ジェット船の大漁(254人)を足しても、東京から北部5島へ1日に運べるのは454人分で、さるびあ丸1隻の約34%です(金曜はおがさわら丸の大島寄港が加わります)。
一方、八丈島航路は、さるびあ丸が橘丸の代わりに入るため、近海区域の定員はむしろ97人増えます。影響は航路によってはっきり分かれる、ということです。
なお東海汽船は、改善計画書で「前年同月の輸送実績をもとに策定」し、「全てのお客様を輸送可能な代替輸送計画」だと説明しています。10月は夏ほど混む時期ではないため、定員が足りなくなるとは限りません。ただ、予約済みの人には振り替えや乗り換えをお願いする場合がある、としています。
島への物資は届く?貨物の代替輸送
伊豆諸島の生活物資は、旅客を乗せる大型船のコンテナでも運ばれています。改善計画書によると、2025年10月にさるびあ丸で運んだ貨物は約4,000トン。期間中はこれを、くろしお丸と貨物船で分け合います。
計算上は前年同月を19トン(100.5%)上回る輸送力を確保する計画で、東海汽船は「期間全体として輸送できない貨物が生じることはなく、取りこぼしは発生しない想定」としています。東京発は食料品・雑貨・冷凍冷蔵品・郵便・宅配、島発は鮮魚・花・果物などの農水産物を優先して運びます。
島の人・納品業者が気をつけること
・一部の貨物は貨物船に回るため、1〜3日ほど遅れる場合があります。東海汽船は商品の発注を早めにするよう呼びかけています。
・期間中の毎週水曜(10月7日・10月14日・10月21日・10月28日)は、大島・利島・新島・式根島・神津島行きの生鮮品の受付を中止し、前後の日に運びます。
・くろしお丸とさるびあ丸の大島寄港時は受託手荷物を受け付けないため、自分で船内に持ち込む必要があります。
なぜ使用停止命令?違反点数96点・92点の中身
旅客船の会社への行政処分は、国交省海事局の通達「旅客運送船舶運航事業者に対する行政処分等の基準」で、違反ごとに点数を付けて決める仕組みです。関東運輸局は発表資料の別紙で、13項目の違反と航路ごとの点数を公表しました。
| 番号 | 違反の要旨(安全管理規程の条文) | 東京〜八丈島 | 東京〜大島〜神津島 | 熱海〜大島 |
|---|---|---|---|---|
| ① | 経営トップが、大型船内の元日飲酒の慣行を知りながら適切な措置をとらなかった(安全管理規程4条) | 2 | 2 | 2 |
| ② | 安全統括管理者のもとで、全社的にアルコール検査体制が形骸化し、教育もしていなかった(17条) | 4 | 4 | 4 |
| ③ | 運航管理者のもとで、舷門(船体側面の乗降口)を閉めずに出航し、巡視でも確認しないことが常態化(18条) | 4 | 4 | 4 |
| ④ | さるびあ丸の船長が、式根島出港時に舷門が閉まらない事態を神津島に着くまで運航管理者に報告しなかった(31条) | — | 2 | — |
| ⑤ | 大型貨客船で、舷門を閉めないまま発航することが常態化(35条) | 2 | 2 | — |
| ⑥ | 船内巡視で舷門の閉鎖確認を怠ることが常態化(36条) | 2 | 2 | — |
| ⑦ | ジェットフォイルでの替え玉受検、出入港配置での検査未実施など、アルコール検査体制そのものが形骸化(38条) | 4 | 4 | 4 |
| ⑧ | 2026年1月1日、さるびあ丸・橘丸の船長を含む乗組員が旅客運送中に飲酒し、検査をしないまま航海当直に就いた(38条) | 20 | 20 | — |
| ⑨ | アルコール検査をしていないのに結果を「ゼロ」と記録することが常態化(38条・55条) | 20 | 20 | 20 |
| ⑩ | タラップが架かったまま発航前検査を終え、舷門を閉めずに出航することが常態化(40条) | 10 | 10 | — |
| ⑪ | 舷門が開いていると知りながら、発航前検査記録簿に「○」を記入することが常態化(40条・55条) | 20 | 20 | — |
| ⑫ | 舷門を開けたまま運航したインシデント2件(2025年11月7日・12月24日)を運輸局に報告しなかった(48条) | — | 2 | — |
| ⑬ | アルコール検知器の使い方や、舷門を手動で閉める非常用ポンプの操作などの教育をしていなかった(50条) | 4 | 4 | 4 |
| 計 | 違反点数の累計 | 92 | 96 | 38 |
関東運輸局「船舶運航事業者に対する船舶の使用停止命令について」別紙違反事実(2026年10月2日)をもとに筆者が要約。点数は運輸局の公表値です。
処分基準では、累計が16点以上になり、違反の態様から必要と認められれば事業停止命令を出すとされています。今回はすべての航路でこの目安を超え、東京〜大島〜神津島航路は96点(6倍)に達しました。
点数が膨らんだ理由は2つあります。1つは、⑧の元日飲酒、⑨の検査記録の「ゼロ」記載、⑪の発航前検査記録簿の「○」記入が、それぞれ20点と重いこと。この3項目だけで東京〜八丈島航路の点数の約3分の2を占めます。もう1つは加重です。運輸局は、舷門を開けたままの発航や元日の集団飲酒、全社的な検査体制の形骸化を「社会的影響のあるもの」として、替え玉受検に関わる点数を「違反の事実を隠滅したと疑うに足りる」ものとして、それぞれ基準の2倍にしています。表のうち④と⑫以外はすべて2倍の点数です。
元日の船内飲酒・替え玉受検・舷門の中身
東海汽船が10月2日に公表した特別調査委員会の調査報告書(2026年9月16日付)には、それぞれの事案が具体的に書かれています。
- 元日の船内飲酒:橘丸とさるびあ丸では、長年の正月行事として、乗組員が食堂でお神酒を口にしたり、新年会の名目で飲酒したりしていました。2026年1月1日には、橘丸の当時の船長がブリッジでお神酒やビールを飲み、航海当直中の二等機関士は昼食の交代時にビールをコップ1杯飲んで、検査を受けないまま当直に戻ったとされています。運輸局が飲酒量と時刻から推計(ウィドマーク法)したところ、船長を含む複数の乗組員が、呼気1リットルあたり0.15mgを大幅に超える状態で当直に就いていたと考えられる、としています。報告書は、社長を含む一部の役員もこの慣行を一定程度認識していたと指摘しました。
- 替え玉受検:2026年4月25日朝、ジェット船「セブンアイランド結」の二等航海士が、前日の飲酒で検査に引っかかるのを心配し、部下の三等航海士にアルコール検知器へ息を吹き込ませて船長に見せました。数分後に自分で測ると0.10mgが出ましたが、社内の基準(0.15mg)未満だとして誰にも告げず、当直に就いています。翌26日に三等航海士が船長らに報告し、東海汽船は27日に運輸局へ自主報告しました。
- 舷門の開けっぱなし:さるびあ丸は2025年11月6日夜〜7日朝の東京〜大島間で、右舷の舷門を閉め忘れたまま航行しました。12月24日には式根島〜神津島間で、油圧部品の故障で閉まらない舷門を、非常用手動ポンプの操作を正しくできる乗組員がおらず開けたまま航行しています。大型貨客船では、タラップが架かったまま発航前検査を終え、離岸しながら舷門を閉め始めるのが通常の運用だったとされています。なお、舷門の内側には内扉があり、航海中に旅客が開口部に立ち入れない構造です。
東海汽船は2026年6月29日、全船に顔認証型のアルコール検査システムを導入し、検査対象を乗組員全員に広げ、入港時や休憩後にも検査するよう改めました。
なぜ事業停止ではなく「一部の船の使用停止」なのか
点数だけを見れば、事業そのものを止める「事業停止命令」もあり得る水準です。それでも一部の船の使用停止にとどまったのは、処分基準に次のような例外があるためです。
処分基準 6.(3)の考え方(要約)
事業停止命令を出すことで、地域住民の生活交通の確保などに著しい障害が生じるおそれがあり、事業者が改善計画を文書で出して、それに従って改善すれば輸送の安全と利用者の利便が確保されると認められる場合には、事業停止の代わりに警告・安全確保命令・船舶の使用停止命令などにできる。
東京と伊豆諸島を結ぶ定期航路の大部分は東海汽船が担っていて、事業停止になれば島の通院や物資輸送が止まってしまいます。関東運輸局は「事業者から適切な改善計画の提出があり、その実効性が認められた」として、事業停止の代わりに一部船舶の使用停止を選んだと説明しています。東海汽船が9月17日に出した改善計画書には、旅客と貨物の代替輸送計画が別添として付けられており、それが今回の代替ダイヤのもとになっています。
報道によると、この船舶の使用停止命令は、知床遊覧船の沈没事故を受けて導入された仕組みで、実際に適用されるのは今回が初めてです(時事通信・NHK・47NEWS、2026年10月2日)。
繰り返された行政処分|2024年からの経過
今回の処分は突然のものではありません。東海汽船の改善計画書は、2024年の漂流事故以降「事故、不適切事案及び法令違反が相次ぎ」と自ら書いています。主な出来事を時系列で並べます。
- 2024年7月24日ジェット船「セブンアイランド愛」が漂流油圧系統の異常と誤操作が重なり航行不能に。乗客116人を乗せたまま約20時間後に巡視船の曳航で大島・岡田港へ。9月25日に運輸局が警告。
- 2024年12月6日岸壁接触の未報告で警告2023年9月に熱海港でセブンアイランド大漁が岸壁に接触した件を、運輸局などに報告していなかった。
- 2025年4月1日是正命令・安全確保命令2024年6〜9月に船員の長時間労働が判明(全船員82人中73人が上限超え)。訓練をしていないのに航海日誌に「実施」と書いた虚偽記載も。
- 2025年11月7日・12月24日さるびあ丸が舷門を開けたまま航行1回目は気づかないまま東京〜大島間を、2回目は閉められないまま式根島〜神津島間を航行した。
- 2026年1月1日橘丸・さるびあ丸で元日の船内飲酒船長を含む乗組員が旅客運送中に飲酒し、検査をしないまま当直に就いた。
- 2026年4月25日セブンアイランド結で替え玉受検27日に東海汽船が運輸局に自主報告。5月1日の立入検査で、元日飲酒の疑いも指摘された。
- 2026年8月7日特別調査委員会を設置委員長は早稲田大学の小松原明哲教授。弁護士2人が委員。
- 2026年8月28日管理者の解任命令・安全確保命令・是正命令安全統括管理者と運航管理者の解任を命じられた。9月24〜25日に解任し、新たに選任。
- 2026年9月16〜17日調査報告書の受領・改善計画書の提出9月28日には各命令への改善報告書も提出。
- 2026年10月2日3隻の使用停止命令10月9日〜28日の20日間。東海汽船は同日、調査報告書や改善計画書を公表した。
過去5年の事故31件を分類すると
特別調査委員会の報告書には、東海汽船が公表している過去5年(2021〜2025年)の事故31件の一覧が載っています。これを筆者が「機器の不具合」「岸壁などとの接触」「乗客がらみ(船客起因・乗客の負傷)」に分けて数えました。
| 年 | 機器の不具合 | 接触 | 乗客がらみ | 計 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 2 | 0 | 2 | 4 |
| 2022年 | 1 | 0 | 6 | 7 |
| 2023年 | 1 | 2 | 2 | 5 |
| 2024年 | 4 | 0 | 1 | 5 |
| 2025年 | 6 | 1 | 3 | 10 |
| 合計 | 14 | 3 | 14 | 31 |
2025年は1年で10件と、5年間でいちばん多くなっています。船の種類別では、ジェット船が13件、橘丸が11件、さるびあ丸が7件。ジェット船の13件のうち12件は、エンジンや水中翼の不具合、接触といった船側の事象でした。報告書も「ジェットフォイルの不具合に起因する事故がここ数年、目立つ傾向にある」と書いています。
同じ報告書は、各社がウェブサイトで公表している件数をそのまま比べたものなので「安全水準の優劣を示すものではない」と断ったうえで、同規模の旅客船会社と並べた表も載せています。それによると、東海汽船の31件(5隻)は、比較された13社の中でもっとも多い件数でした。
今後の焦点|10月28日のあとはどうなる?
- 使用停止が明けても橘丸がすぐ戻るとは限らない:橘丸はプロペラ装置の修理で入渠を調整中で、旅客運航の再開は「修理および必要な検査が完了次第」知らせるとしています。10月29日以降のダイヤは、改めて東海汽船の発表を確認する必要があります。
- 改善計画が実際に回るか:処分が事業停止より軽くなったのは、改善計画の実効性が認められたからです。計画は社長を中心に進捗を管理し、外部の知見で検証するとしています。報告書は、会社が把握していない安全関連の事案の存在も疑われると指摘しており、その洗い出しも課題です。
- 業績への影響:東海汽船(東証スタンダード、9173)は、業績への影響は「現在精査中」としています。調査報告書によると、2025年12月期の単体売上高は約103億円です。
- 経営責任:報道によると、山﨑潤一社長は10月2日の会見で謝罪し、自身の進退を含めて早急に対応すると述べました。
東海汽船の使用停止についてよくある質問
Q. 東海汽船の使用停止はいつからいつまでですか?
A. 2026年10月9日(金)0時から10月28日(水)までの20日間です。9日0時から止まるため、代替ダイヤは10月8日(木)夜発の便から始まります。
Q. 止まる船と、動く船はどれですか?
A. 止まるのは大型客船の橘丸と、ジェット船のセブンアイランド結・セブンアイランド友の3隻です。さるびあ丸とセブンアイランド大漁は運航を続け、伊豆諸島開発のくろしお丸と小笠原海運のおがさわら丸が応援に入ります。
Q. 予約していた便はどうなりますか?
A. 東海汽船から順次、電話またはショートメッセージ(SMS)で、出発時刻や利用便の変更が案内されます。くろしお丸とおがさわら丸に振り替わる場合は、客船2等の料金です。なお東海汽船は、2026年8月31日夜発の便から当面の間、予約の変更・取消手数料を取らない対応をしています(旅行会社で予約した場合は各社の規定によります)。
Q. 大島や新島・神津島へはどう行けばいいですか?
A. 東京からは、毎日23時発のくろしお丸(大島5時30分着・神津島10時着)か、7時40分発のジェット船セブンアイランド大漁(大島9時25分着・神津島11時20分着)が中心です。金曜はおがさわら丸も大島に寄ります。熱海からは13時55分発の大漁が大島へ向かいます。
Q. 島への荷物や生鮮品は届きますか?
A. くろしお丸と貨物船で前年10月の実績(3,948トン)を上回る3,967トンを運ぶ計画です。ただし一部は1〜3日遅れる場合があり、毎週水曜は大島・利島・新島・式根島・神津島行きの生鮮品の受付が中止になります。
Q. なぜ事業停止にならなかったのですか?
A. 違反点数は最大96点で、事業停止を検討する目安(16点)を大きく超えていました。ただ、処分基準には、事業停止で島の生活交通に著しい障害が出るおそれがあり、改善計画で安全と利便が確保できる場合は、代わりに船舶の使用停止などにできるという例外があります。関東運輸局は改善計画の実効性を認め、一部船舶の使用停止を選びました。
Q. 何が問題だったのですか?
A. 主に、2026年1月1日に橘丸・さるびあ丸で船長を含む乗組員が飲酒して当直に就いたこと、4月25日にセブンアイランド結で部下に代わりにアルコール検査を受けさせた替え玉受検、検査をしていないのに結果を「ゼロ」と記録していたこと、大型船で舷門を閉めないまま出航するのが常態化していたことです。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 関東運輸局:船舶運航事業者に対する船舶の使用停止命令について~海上運送法第17条に基づく行政処分~(発表資料PDF・別紙違反事実、2026年10月2日)/東海汽船株式会社に対する安全確保等の命令を発出しました(2026年8月28日)
- 東海汽船:安全運航の確保と信頼回復に向けた取組みについて(2026年10月2日。調査報告書・改善計画書・旅客/貨物代替輸送計画などを掲載)
- 東海汽船:一般旅客定期航路事業に係る行政処分に関するお知らせ/特別調査委員会 調査報告書(2026年9月16日)/事業停止処分に係る改善計画書/別添3 旅客代替輸送計画
- 東海汽船:船舶の使用停止命令に伴う旅客代替運航ダイヤについて/船舶の使用停止命令に伴う貨物代替輸送について/大型客船 橘丸 機関故障に伴うダイヤ変更について(2026年10月2日17時30分時点)/今後の予約変更・取消手数料の取り扱いについて(2026年8月31日)
- 東海汽船「船を知る」:橘丸/さるびあ丸/ジェット船/くろしお丸(総トン数・旅客定員・コンテナ積載数)
- 時事通信「東海汽船に初の使用停止命令 酒気帯び勤務など―国交省」、NHK「飲酒乗務問題の『東海汽船』に初の船舶使用停止命令 国交省」、47NEWS(共同通信)「東海汽船3隻を使用停止 飲酒勤務で国交省、20日間 知床事故で導入、初適用」、朝日新聞「大型船など3隻を使用停止へ 東海汽船社長『進退含め、早急に対応』」(いずれも2026年10月2日)
時刻・運航日は2026年10月2日に東海汽船が公表した資料にもとづきます。繁忙日などに変わる場合があるため、乗船前に東海汽船の運航状況を確認してください。定員は東海汽船の公式サイトの値で、北部5島向けの「1日の定員」や事故31件の分類は、公表資料をもとに筆者が計算・分類したものです。おがさわら丸の旅客定員(882人)は改善計画書別添3の値です。アイキャッチ背景:Ishuty「Tachibana maru (2014).jpg」(Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0)をトリミング・明るさ調整・文字入れ。


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