2026年9月18日決定(適用は9月24日)|日本銀行 金融政策決定会合
日銀が政策金利を0.25%引き上げ、1.0%程度から1.25%程度にしました。無担保コールレートが1.25%を超えるのは1995年以来、約31年ぶりです。ところが発表直後のドル円は156円台から157円台へ円安に動きました。「利上げなのに円安」の理由は、賛成7・反対2という採決の中身にあります。
日本銀行は2026年9月18日の金融政策決定会合で、政策金利である無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.25%程度に引き上げると決めました。6月16日に1.0%へ上げてからわずか3か月、2024年3月に始まった利上げ局面では最短の間隔です。
この記事では、日銀が公表した「金融市場調節方針の変更について」の原文を読んだうえで、①何が決まったのか、②「31年ぶり」とはどの水準なのか、③反対2票の中身、④利上げなのに円安が進んだ理由、⑤預金と住宅ローンへの影響、を数字で整理します。
この記事の結論
- 政策金利は1.0%程度→1.25%程度。採決は賛成7・反対2(浅田委員・佐藤委員が反対)。新しい金利の適用は9月24日からです。
- 日銀の統計で無担保コールレートの月平均が1.25%以上だったのは1995年6月(1.28%)が最後。約31年ぶりの水準です。
- 利上げの間隔は94日。前回までの4回(134〜329日)より明らかに速く、日銀は「調整を加速した」と読めます。
- 8月の消費者物価(生鮮食品を除く)は前年比1.7%で、2%を下回ったままの利上げ。日銀は「企業物価の高い伸び」と「2026年度後半に2%をはっきり上回る見通し」を根拠にしています。
- ドル円は発表前の156.2円台から午後に157.7円台へ。利上げ自体は織り込み済みで、反対2票が「次の利上げは遠い」と受け止められました。
- 米国は9月16日に3.75〜4.00%へ利上げしたばかり。日米金利差は3.00%→2.75%に戻り、6〜9月と同じ水準です。
1. 日銀は何を決めたのか
公表文「金融市場調節方針の変更について」の要点は次のとおりです。政策金利の変更に加えて、当座預金の付利や貸出制度の金利も同じ幅で動きます。
- 政策金利無担保コールレートを「1.25%程度」に従来の「1.0%程度」から0.25%の引き上げ。公表は18日11時54分でした。
- 付利日銀当座預金の付利は1.25%、基準貸付利率は1.5%銀行が日銀に預けるお金につく金利(補完当座預金制度の適用利率)が1.25%に。日銀が銀行に貸すときの基準貸付利率は1.25%から1.5%になります。
- 適用日9月24日(水)から19日から23日まで5連休(土日・敬老の日・国民の休日・秋分の日)のため、翌営業日が24日になります。6月の利上げは翌日から適用でしたので、今回は発表から適用まで6日空きます。
- その他気候変動対応オペの貸付金利を変動金利に変更こちらは全員一致。貸付総額に上限も設けます。東日本大震災の被災地金融機関支援オペは2027年5月の貸付をもって対象から外れます。
公表文は物価について「消費者物価の基調的な上昇率は2%に近づいている」と書き、リスクとして中東情勢・AI関連需要の拡大・為替相場の変動の3つを挙げました。そのうえで「基調的な物価上昇率が2%を超えて上振れていくリスクがある」と明記しています。上振れを未然に抑える利上げ、という位置づけです。
2. 「31年ぶり」はどの水準なのか
報道では「1995年以来31年ぶりの高水準」と伝えられています。日銀が公開している無担保コールレートの月平均(時系列統計データ検索サイト)で確かめると、次のようになります。
| 年月 | 月平均(%) | メモ |
|---|---|---|
| 1995年4月 | 1.525 | 公定歩合が1.75%→1.0%に下がった月 |
| 1995年5月 | 1.31 | |
| 1995年6月 | 1.28 | 1.25%以上だった最後の月 |
| 1995年7月 | 0.95 | 誘導目標が公定歩合を下回る運営に |
| 1995年9月 | 0.57 | 公定歩合0.5%へ。ここから「ゼロ金利」の時代へ |
| 2026年9月24日〜 | 1.25程度 | 今回の誘導目標 |
つまり「31年ぶり」は、1995年6月以来という意味です。1995年は阪神・淡路大震災と1ドル79円台の超円高があった年で、日銀はその年に公定歩合を2回下げて0.5%にしました。そこから31年かけて、ようやく1995年前半の水準に戻ったことになります。
利上げの間隔は最短の94日
2024年3月のマイナス金利解除から数えて、今回は6回目の政策変更です。決定日の間隔を並べると、今回だけ極端に短いことがわかります。
| 決定日 | 誘導目標 | 採決 | 前回からの間隔 |
|---|---|---|---|
| 2024年3月19日 | −0.1%→0〜0.1% | 賛成7・反対2 | (マイナス金利解除) |
| 2024年7月31日 | 0.25% | 賛成7・反対2 | 134日 |
| 2025年1月24日 | 0.5% | 賛成8・反対1 | 177日 |
| 2025年12月19日 | 0.75% | 全員一致 | 329日 |
| 2026年6月16日 | 1.0% | 賛成7・反対1(総裁欠席) | 179日 |
| 2026年9月18日 | 1.25% | 賛成7・反対2 | 94日 |
これまでは「おおむね半年に1回」でしたが、今回は3か月。公表文にも「引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していく」とあり、ペースを上げる意思が文面にも採決の間隔にも出ています。
3. 反対2票の中身——委員会は3つの方向に割れている
今回の採決でいちばん注目されたのは反対票です。公表文の注記に、反対理由が本人の言葉で書かれています。
| 委員 | 投票 | 理由・立場 |
|---|---|---|
| 浅田委員 | 反対(据え置き) | 足もとの消費者物価(除く生鮮食品)の上昇率が2%を下回るなか、経済の状況も必ずしも強いとはいえない。6月会合でも唯一の反対票でした。 |
| 佐藤委員 | 反対(据え置き) | 経済・物価情勢が、これまでと比べて大きく加速している状態にあるわけではなく、このタイミングでの利上げは適切ではない。6月会合の出席者名簿にはなく、今回が初めての利上げ採決です。 |
| 高田委員・田村委員 | 賛成 | 利上げには賛成。ただし別紙の物価見通しには「消費者物価は既に概ね目標に達している」として反対。つまり「もっと早く上げるべきだった」側の異論です。 |
| 植田総裁・氷見野副総裁・内田副総裁・小枝委員・増委員 | 賛成 | 執行部と2委員が中心の賛成。植田総裁は6月会合を欠席していたため、総裁自身が加わった利上げ採決は2025年12月以来です。 |
ポイントは、反対が「慎重派」だけではないことです。据え置きを求めた2人と、「物価はもう目標に達している」と見る2人が同じ委員会にいます。執行部が示した1.25%は、その両側のちょうど真ん中に落とした答えでした。市場が「次の利上げは遠い」と読んだのは、据え置き派が1人から2人に増えたからです。
4. なぜ利上げなのに円安が進んだのか
教科書どおりなら、利上げは通貨高の要因です。ところが18日のドル円は発表を境に円安に動きました。1時間ごとの推移を見ると、動いた時間帯がはっきりします。
| 時刻 | ドル円 | 出来事 |
|---|---|---|
| 9:00 | 156.17 | 会合2日目が開始 |
| 10:00 | 156.22 | |
| 11:00 | 156.64 | 結果待ちでじり高 |
| 12:00 | 157.04 | 11時54分に利上げ公表→157円台へ |
| 14:00 | 157.19 | |
| 15:00 | 156.86 | 総裁会見(15時30分〜)を前にいったん戻す |
| 17:00 | 157.76 | 会見後、再び円安方向へ |
発表前の156.2円台から夕方には157.7円台まで、約1.5円の円安です。理由は3つに整理できます。
- 理由1利上げ自体は事前に織り込まれていた9月上旬から「1.25%が軸」と報じられ、ドル円は9月8日の153円台をつけたあと会合前に156円台まで戻していました。決まった瞬間に買う材料はもう残っていなかったわけです。
- 理由2反対2票で「次」が遠のいた為替を動かすのは今回の0.25%ではなく、次の利上げの時期です。据え置き派が2人に増えたことで、10月・12月の連続利上げの確度が下がったと受け止められました。
- 理由3日米金利差は「元に戻った」だけ米FRBは2日前の9月16日に3.75〜4.00%へ利上げしています。日銀が同じ0.25%を上げても、金利差は6〜9月と同じ2.75%に戻るだけで、円を買う新しい理由にはなりません。
| 時点 | 米国 | 日本 | 金利差 |
|---|---|---|---|
| 2026年6月17日〜9月16日 | 3.75% | 1.00% | 2.75% |
| 9月17日〜9月23日 | 4.00% | 1.00% | 3.00% |
| 9月24日〜(今回の適用後) | 4.00% | 1.25% | 2.75% |
株式市場の反応も「引き締めで下落」ではありませんでした。日経平均は18日、前日比882円70銭高の6万5,018円95銭(+1.4%)で終え、取引時間中には6万5,436円まで上げています。円安が輸出株を押し上げた形で、利上げが景気を冷やすという受け止めにはなっていません。
5. 物価は1.7%——2%未満での利上げはなぜ可能なのか
浅田委員の反対理由にあるとおり、消費者物価は2%を下回っています。同じ18日の朝に総務省が公表した8月の全国消費者物価指数は次のとおりでした。
| 指数 | 前年同月比 | 7月からの変化 |
|---|---|---|
| 総合 | +1.9% | 横ばい(7月も1.9%) |
| 生鮮食品を除く総合(コアCPI) | +1.7% | 7月の1.8%から0.1ポイント縮小 |
| 生鮮食品及びエネルギーを除く総合 | +1.9% | 横ばい(7月も1.9%) |
コアCPIは2025年10〜11月の3.0%から、2026年1月に1.9%、4〜5月には1.4%まで下がり、8月は1.7%です。政府のエネルギー負担緩和策が指数を押し下げているためで、日銀もこの点は公表文で認めています。それでも利上げに踏み切った根拠は、次の3点です。
日銀が「今」上げた3つの根拠(公表文より)
- 企業物価が高い伸び——原油高・円安・AI関連需要で国内企業物価は前年比で高い伸びが続き、「価格上昇圧力は消費者段階にも波及し始めている」。
- 先行きは2%を「はっきり上回る」——原油高の転嫁、半導体価格の上昇、最近の円安が耐久財の価格に効き、2026年度後半以降はコアCPIが2%をはっきり上回る見通し。
- 実質金利はまだ低い——政策金利を1.25%にしても「緩和的な金融環境は維持される」。つまり引き締めではなく、緩和の度合いを弱める調整という位置づけ。
言い換えると、足もとの1.7%ではなく、半年先の「2%超え」に先回りした利上げです。6月の公表文と比べると、リスク要因に「AI関連需要の拡大」と「為替相場の変動」が新たに並び、「実質金利は短中期ゾーンを中心にマイナス」だった表現が「なお低い水準」に変わりました。実質金利がプラス圏に入りつつあるという認識の変化が読み取れます。
6. 預金と住宅ローンはいつ・どれだけ変わるか
政策金利が上がると、銀行の預金金利と変動型住宅ローンの基準になる短期プライムレートが動きます。過去2回の利上げでメガバンクがどう動いたかを並べると、タイミングの目安がつかめます。
| 日銀の決定 | 普通預金の改定 | 決定から改定まで |
|---|---|---|
| 2025年12月19日(0.75%へ) | 2026年2月2日から0.2%→0.3% | 45日 |
| 2026年6月16日(1.0%へ) | 2026年8月3日から0.3%→0.4% | 48日 |
| 2026年9月18日(1.25%へ) | 各行の発表待ち | 同じペースなら11月上旬 |
- 預金普通預金は「決定の約1か月半後に0.1%刻み」が過去2回のパターン1,000万円を普通預金に置いた場合、0.1%の上乗せは年1万円(税引前)です。定期預金やネット銀行は先に動く傾向があるので、預け先の比較は早めが有利です。
- 住宅ローン変動金利は短期プライムレート経由で、半年後の返済額に反映6月の利上げ後、三菱UFJ銀行とみずほ銀行は短期プライムレートを0.25%上げて2.375%にし、三菱UFJと三井住友は8月に変動型の店頭金利を0.25%引き上げました。今回も同じ幅なら、多くの銀行で2027年1月または4月の適用金利見直しから反映されます。「5年ルール」「125%ルール」がある商品では毎月の返済額はすぐには変わりませんが、利息の割合が増えて元本が減りにくくなる点に注意してください。
- 長期金利固定金利の目安になる10年国債利回りは会合前日で2.993%財務省の国債金利情報では、9月17日の10年債利回りは2.993%、30年債は4.047%でした。固定型は長期金利に連動するため、こちらは政策金利より先に動いています。
7. 総裁会見と、次の会合までの日程
植田総裁は18日15時30分からの記者会見で、2%目標の安定的な実現のために「引き続き政策金利を引き上げる」と述べ、物価の上振れリスク次第では連続利上げや利上げ幅の拡大も排除しないと説明したと報じられています。中東情勢が不透明でも利上げはあり得るという姿勢も示しました。市場の受け止めは「言葉は強いが、反対2票がブレーキ」というものです。
- 10月1日「主な意見」の公表(8時50分)今回の会合で各委員がどんな意見を述べたかの要旨。反対2人と「もう目標に達している」派の主張が具体的に読めます。
- 10月29日・30日次回の金融政策決定会合(展望レポート回)2026〜2028年度の物価見通しが更新されます。「2026年度後半に2%をはっきり上回る」という今回の見立てが、数字でどう出るかが焦点です。
- 11月5日9月会合の議事要旨10月会合の後に出るため、実質的には振り返り資料になります。
- 12月17日・18日年内最後の会合米FOMCは12月8日・9日。今年も日米が同じ月に並びます。
この記事について。本記事は日本銀行・総務省の公表資料と報道にもとづく事実の整理であり、特定の金融商品や取引を推奨するものではありません。為替・金利の見通しには常に不確実性があります。投資や借入の判断はご自身の責任でお願いします。
8. よくある質問
Q. 日銀は今回いくら利上げしたのですか?
A. 0.25%です。無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標が1.0%程度から1.25%程度になりました。決定は2026年9月18日、適用は5連休明けの9月24日からです。
Q. 「31年ぶり」とはいつ以来ですか?
A. 日銀の統計で無担保コールレートの月平均が1.25%以上だったのは1995年6月(1.28%)が最後です。同年7月には0.95%まで下がり、9月に公定歩合が0.5%になって以降、この水準には戻っていませんでした。
Q. 採決はどうなりましたか?
A. 賛成7・反対2です。浅田委員は「消費者物価が2%を下回り、経済も必ずしも強くない」、佐藤委員は「経済・物価が大きく加速している状態ではない」として据え置きを主張しました。6月会合の反対は1票でしたので、反対が1人増えました。
Q. 利上げしたのに、なぜ円安になったのですか?
A. 利上げ自体は事前に織り込まれていたこと、反対が2票に増えて次の利上げの確度が下がったと受け止められたこと、米国も2日前に利上げしていて日米金利差が2.75%に戻っただけだったこと、の3つです。ドル円は発表前の156.2円台から夕方には157.7円台になりました。
Q. 物価が2%未満なのに利上げできるのですか?
A. 8月のコアCPIは前年比1.7%でしたが、日銀は企業物価の高い伸びと、2026年度後半にコアCPIが2%をはっきり上回るという見通しを根拠にしています。上振れしてから追いかけるより、先回りして緩和の度合いを弱める判断です。
Q. 普通預金の金利はいつ上がりますか?
A. 過去2回は決定から45〜48日後にメガバンクが0.1%ずつ引き上げました(2026年2月2日に0.3%、8月3日に0.4%)。同じペースなら11月上旬が目安ですが、各行の正式発表を確認してください。
Q. 変動金利の住宅ローンはすぐ上がりますか?
A. 変動金利は短期プライムレートに連動し、多くの銀行は年2回(4月・10月など)に適用金利を見直します。今回分は2027年1月または4月からの反映が一般的です。返済額に5年ルールがある商品では月々の支払いはすぐ変わりませんが、利息の割合が増えます。
Q. 次の利上げはいつですか?
A. 決まっていません。次回会合は10月29日・30日で、展望レポートの公表があります。植田総裁は連続利上げを排除しないと述べる一方、反対が2票あったため、市場は年内の追加利上げには慎重な見方をしています。
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