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AIで脆弱性の発見が急増、なぜ「混乱期」?CVE件数10年の推移
PHPの重大な脆弱性のうち1件がAIを使って見つかったことを受け、米ホワイトハウスで元サイバーセキュリティー担当だった専門家がAFPに「かなり混乱した時期の始まり」と語りました。脆弱性は本当に増えているのか。米国の脆弱性データベース(NVD)と、悪用が確認された脆弱性の一覧(CISA KEV)を自分で集計して確かめました。
この記事の結論
- AFPの取材に、非営利団体Cyber Threat Alliance(CTA)のマイケル・ダニエル代表が、AIが高速・大規模に脆弱性を見つける時代は「かなり混乱した時期の始まり」だと述べました。きっかけは10月21日に修正版が出たPHPの重大な脆弱性2件です。
- NVDの公開件数(取り下げを除く)は2016年6,449件→2025年48,151件と約7.5倍。2026年は10月25日までに86,430件で、すでに2025年1年分を上回りました(年換算で約10.6万件)。
- 一方、CISAの「悪用が確認された脆弱性」カタログへの追加は年186〜555件で、件数の急増には連動していません。2026年は10月23日版までに272件です。
- ダニエル氏は「悪用されるのは5〜6%程度」としつつ、悪用までの時間が数時間〜数日に縮んだと指摘。個人やサイト運営者にできる一番の対策は、自動更新を有効にして、修正版をすぐ当てられる状態にしておくことです。

AIで脆弱性の発見が加速:AFPが伝えた専門家の見方
AFPは2026年10月25日、世界中のウェブサイトで使われるプログラミング言語PHPに重大な脆弱性が2件見つかり、企業や政府機関が今週、修正の適用に追われたと伝えました。そのうち1件は米OpenAIの高性能なAIモデルを使って発見されたもので、AFPは「AIのサイバーセキュリティー分野での能力を示す、これまでで最も注目を集めた事例の一つ」としています。
AFPが話を聞いたのは、サイバー脅威の情報を共有する非営利団体Cyber Threat Alliance(CTA)のマイケル・ダニエル代表です。オバマ政権でホワイトハウスのサイバーセキュリティー・コーディネーターを務めた人物で、主な発言は次のとおりです。
| テーマ | ダニエル氏の発言(要旨) | この記事で確かめたこと |
|---|---|---|
| 今の状況 | 高度なAIモデルの能力を考えると「かなり混乱した時期の始まり」。AIが高速・大規模に脆弱性を見つければ、膨大な数が見つかる | NVDのCVE公開件数の推移(下の表) |
| なぜ起きる | 古いソフトを使い続けてきた「技術的負債」のツケを払う時が来た。元NSA幹部のロブ・ジョイス氏は「大規模な森林火災」に例えている | AIが古いコードの欠陥を見つけた公表事例(Google、OpenAI) |
| 危険度 | 実際に悪用されてきたのは5〜6%程度で、上昇の兆候はない。ただし悪用までの時間は数時間〜数日に短縮 | CISAの悪用確認カタログの追加件数 |
| 対策 | ソフトを常に最新に保ち、修正版が出たらすぐ当てられる態勢に。小さな組織ほど重要 | 個人・サイト運営者向けの具体策(後半) |
| AIの限界 | 誤検知などのノイズが非常に多く、AIが見つけたとされるものの中には実在しないものもある | FIRSTも「確認・調整・修正の人手」が制約と分析 |
発言はAFPBB Newsの日本語記事(10月25日13時11分配信、18時01分更新)による要旨です。
きっかけはPHPの重大な脆弱性2件:公式発表で分かること
PHPの開発チームは日本時間10月21日夜、認証なしで外部からプログラムを動かされる(リモートコード実行)おそれがある脆弱性2件(CVE-2026-109618/CVE-2026-109619)を直したPHP 8.5.12/8.4.27/8.3.36/8.2.35を公開し、すべての利用者にすぐ更新するよう求めました。
AIで見つけたのは誰か:OpenAIの発表
OpenAIは10月21日の公式ブログで、セキュリティ企業CalifがOpenAIの取り組み「Patch the Planet」の一環として、AIモデル「GPT-5.6 Sol」を使って重大な欠陥を特定したと説明しました。同時に、Wizも独自に両方の脆弱性を発見し、報告したとしています。つまり、AIだけが見つけたわけではなく、人の研究者による発見も並行していました。
GitHubで公開されたPHPのセキュリティ勧告(GHSA-w8hw-w9fx-j79w/GHSA-6wmf-4rv5-p3rp)を見ると、2件とも報告者(Reporter)として4つのアカウントが並んでいます。複数の報告がほぼ同じ欠陥に集まっていたことがうかがえます。
OpenAI自身も「攻撃に使われうる」と認めている
OpenAIは同じブログで「私たちの知る限り、フロンティアAIは攻撃者より先にこれらの脆弱性を発見しました」とする一方、同じ能力が攻撃ツールの迅速な開発にも役立つ可能性があると書いています。さらに「今後数か月で、同様の発見が急増すると見込んでいます」としており、これがダニエル氏の言う「混乱期」の中身とみられます。
PHPの脆弱性そのものの詳しい内容や、サイト運営者が確認すべきバージョンは、当サイトのPHPの重大な脆弱性php2shellの解説にまとめています。
脆弱性は本当に増えている?CVE公開件数を2016〜2026年で集計
脆弱性にはCVEという世界共通の番号が付きます。米国立標準技術研究所(NIST)が運営する脆弱性データベースNVDのAPIを使い、NVDに公開された日(published)ごとの件数を2016年1月1日から2026年10月25日まで数えました。番号の取り下げ(Rejected)になったものは除いています。
| 年 | CVE公開件数(NVD) | 前年比 | 悪用確認カタログへの追加(CISA KEV) |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 6,449件 | ― | ―(カタログ開始前) |
| 2017年 | 14,642件 | +127.0% | ―(カタログ開始前) |
| 2018年 | 16,510件 | +12.8% | ―(カタログ開始前) |
| 2019年 | 17,305件 | +4.8% | ―(カタログ開始前) |
| 2020年 | 18,322件 | +5.9% | ―(カタログ開始前) |
| 2021年 | 20,149件 | +10.0% | 311件(11月開始) |
| 2022年 | 25,073件 | +24.4% | 555件 |
| 2023年 | 28,816件 | +14.9% | 187件 |
| 2024年 | 39,953件 | +38.6% | 186件 |
| 2025年 | 48,151件 | +20.5% | 245件 |
| 2026年(〜10/25) | 86,430件 | 年換算 約105,862件 | 272件(〜10/23) |
NVD API 2.0で公開日を四半期ごとに区切って件数(totalResults)を取得し合計(2026年10月25日取得、取り下げ除く)。取り下げを含めると2025年は49,972件、2026年は88,669件。CISA KEVはカタログ(2026年10月23日版、全1,756件)の追加日で集計。
10年で約7.5倍、2026年は10か月で前年超え
2016年に6,449件だったCVEの公開件数は、2025年には48,151件と約7.5倍になりました。2026年は10月25日までの298日間で86,430件に達し、このペースが続けば年間では約105,862件になる計算です。
脆弱性の予測を出している国際団体FIRST(セキュリティ対応チームの国際フォーラム)は、2月に2026年を「中央値で約5万9,000件」と予測していましたが、6月の更新で約6万6,000件に上方修正しました。理由としてAIによる自律的な脆弱性探索の広がりを挙げ、Mozilla(Firefoxの開発元)では第1四半期の公表件数が164%増えた例を紹介しています。
ところがNVDの実数は、10月25日の時点でその6万6,000件をすでに超えています。特に7〜9月の3か月だけで36,961件と、前年同期(11,725件)の約3.2倍に跳ね上がりました。予測を作る専門家の想定をも上回るペースで、件数が増えていることになります。
件数の増加=AIのせい、とは言い切れない
FIRSTは同じ分析で、GitHubのセキュリティ勧告の担当体制の拡大や、番号を割り当てる組織の追加など数え方・登録体制の変化でも件数が膨らんでいると指摘しています。オープンソースのプロジェクトや世界のソフトウェアそのものが増えていることも理由です。AIは大きな要因の一つですが、表の伸びがすべてAIによるものではありません。
悪用される脆弱性は増えている?CISAの「悪用確認カタログ」で見る
米国のサイバーセキュリティ・インフラセキュリティ庁(CISA)は、実際に攻撃に使われたことが確認された脆弱性だけを集めたカタログ(KEV)を公開しています。2026年10月23日版の登録は1,756件で、年ごとの追加件数は2022年の555件を除くと年186〜311件(2021年は11月の開始から2か月分)にとどまります。
2026年に追加された272件のうち、番号が「CVE-2026-」で始まる今年の脆弱性は185件。残り87件は2025年以前の番号で、うち10件は2008〜2012年の番号でした。十数年前の欠陥が今になって攻撃に使われていることも分かります。登録全体のうち361件は、ランサムウェア(身代金要求型ウイルス)の攻撃で使われたことが分かっています。
番号の年で比べると、悪用が確認されたのは1%前後以下
番号の年ごとに、KEVに載った件数をNVDの公開件数で割ると、2021年は1.1%、2023年は0.6%、2025年は0.4%でした(KEVへの追加は数年遅れることがあるため、最近の年ほど低めに出ます)。CISAのカタログは「確認された」ものに限るため、ダニエル氏の言う5〜6%より小さい数字になりますが、見つかる数が増えても、悪用が確認される数は同じようには増えていない点は一致しています。
FIRSTも6月の分析で、KEVに載ったものや悪用の予測確率(EPSS)が10%を超えるものに絞ると、本当に急いで直すべき件数は「まったく横ばい」だとしています。混乱の中心は件数そのものよりも、見つかった大量の脆弱性を確認・選別し、修正を配る人手が追いつかないことにあるといえます。
ただし「悪用までの時間」は縮んでいる
ダニエル氏によると、以前は実証コード(PoC)が出るまでに1〜2か月、攻撃ツールに組み込まれるまでにさらに1〜2か月かかっていたものが、今では数時間から数日に短くなっています。悪用される割合が変わらなくても、修正を当てるまでの猶予は大きく減っているということです。
PHPの2件(CVE-2026-109618/109619)は、CISA KEVの10月23日版には載っていません。
AIが脆弱性を見つけた主な公表事例【2024〜2026年】
AIによる脆弱性の発見は、今回が初めてではありません。開発元が公式ブログで公表した主な事例を並べると次のとおりです。
- 2024年10月GoogleのAIエージェント「Big Sleep」がSQLiteの欠陥を発見Google Project Zeroが、広く使われるデータベースSQLiteで悪用可能なメモリの欠陥を見つけたと公表。正式リリース前に直されたため利用者への影響はなく、「AIエージェントが未知の悪用可能な欠陥を実在のソフトで見つけた初の公開事例」としています。
- 2024年11月20日OSS-FuzzでAIが26件、OpenSSLの欠陥もGoogleは、AIで作ったテスト(ファズターゲット)でオープンソースの脆弱性26件を報告したと公表。暗号ライブラリOpenSSLの欠陥(CVE-2024-9143)は約20年前から存在していた可能性が高いとしています。
- 2025年7月15日悪用されかけた欠陥をAIが先回りして発見Googleは、脅威情報をもとにBig SleepがSQLiteの重大な欠陥(CVE-2025-6965)を見つけ、悪用を未然に防いだと発表。「AIエージェントが悪用を直接阻止した初めての例」と説明しています。
- 2026年6月15日FIRSTが2026年の予測を約6万6,000件に上方修正自律型のAI探索ツールの広がりを理由に挙げ、2月の予測から大きく引き上げました。
- 2026年10月21日PHPの重大な脆弱性2件の修正版が公開OpenAIは、CalifがGPT-5.6 Solを使って重大な欠陥を特定したと発表。Wizも独自に2件を発見していました。
- 2026年10月25日AFPが専門家の「混乱期の始まり」発言を配信CTAのダニエル代表が、技術的負債のツケを払う時が来たと指摘しました。
出典:Google Project Zero(2024年10月)、Google Security Blog(2024年11月20日)、Google公式ブログ(2025年7月15日)、FIRST(2026年6月15日)、PHP公式・OpenAI(2026年10月21日)、AFP(2026年10月25日)。
「混乱期」に個人とサイト運営者がすべきこと
脆弱性が大量に見つかる時代の基本は、ダニエル氏の言うとおり「修正版が出たらすぐ当てる」ことに尽きます。見つかる数が増えるほど、一つひとつを自分で判断するのは難しくなるため、仕組みで自動的に更新される状態を作っておくのが現実的です。
スマホ・パソコンを使う個人
- OS(iOS・Android・Windows・macOS)とブラウザの自動更新を有効にし、更新の通知が来たら先延ばしにしない
- 使っていないアプリは削除する(更新されないまま残るアプリが入口になりうる)
- サポートが終わった古い機器(ルーターなど)は買い替えを検討する
WordPressなどでサイトを運営する人
- WordPress本体・テーマ・プラグインの自動更新を有効にし、使っていないプラグインは削除する
- PHPのバージョンはレンタルサーバー会社が管理する部分が大きいため、契約先のお知らせを確認し、サポートが終わった版(8.1以前)なら新しい版へ切り替える
- 更新で表示が崩れたときに戻せるよう、バックアップを自動で取る設定にしておく
会社のシステム担当者
ダニエル氏は、大企業は修正を本番に当てる前に徹底的にテストしてきたが「今ではそんな時間はない」と述べ、更新で不具合が出るリスクと、攻撃を受けるリスクのどちらを取るかという難しい判断を迫られると指摘しています。すべてを同じ優先度で扱うのではなく、CISAのKEVのように実際に悪用されているものや、インターネットに公開しているシステムから先に直す、という優先順位づけが現実的とみられます。
煽り情報に注意
「AIで脆弱性が見つかった」というニュースが増えると、不安をあおって有料ソフトやサポートに誘導する広告・メッセージも出やすくなります。公的な注意喚起はIPA(情報処理推進機構)などの公式サイトで確かめましょう。
この先どうなる?2〜3年後の見通し
ダニエル氏は2〜3年後について、ソフトを導入する前にAIで脆弱性を検査するのが当たり前になり、最初から欠陥の少ないソフトを選べるようになるとの見方を示しました。古いソフトが一掃され、より安全な新しいソフトが育つ余地が生まれるものの、「サイバーセキュリティーの問題が解決するわけではなく、問題の性質が変わっていく」としています。
OpenAIも、開発の段階で安全なコードを書く支援や、メモリ安全な言語への移行など「最初から安全なソフト」を作る方向を打ち出しています。当面は見つかる脆弱性が増え、修正の頻度も上がるとみられ、利用者にとっては「更新の通知が増える時期」になりそうです。
AIによる脆弱性発見についてよくある質問
Q. AIで脆弱性が見つかるのは良いこと?悪いこと?
A. 両面があります。攻撃者より先に見つかれば、修正版を準備する時間が生まれます(OpenAIはPHPの件をそう説明しています)。一方で、同じ技術は攻撃側も使えるため、修正が出てから悪用されるまでの時間が短くなっています。
Q. CVEとは何ですか?
A. 公開された脆弱性に付ける世界共通の識別番号で、「CVE-2026-109618」のように年と通し番号で表します。米国立標準技術研究所(NIST)のデータベースNVDなどで内容や深刻度を調べられます。
Q. 脆弱性の件数はどれくらい増えていますか?
A. NVDの公開件数(取り下げを除く)は2016年の6,449件から2025年は48,151件に増えました。2026年は10月25日までに86,430件です(当サイト集計)。
Q. 見つかった脆弱性はすべて危険ですか?
A. すべてが攻撃に使われるわけではありません。ダニエル氏は実際に悪用されてきたのは5〜6%程度としており、米CISAが悪用を確認して載せるカタログへの追加も2023〜2025年は年186〜245件にとどまっています。ただし悪用までの時間は短くなっています。
Q. 個人がいちばんにやるべきことは?
A. スマホ・パソコン・ブラウザ・アプリの自動更新を有効にし、更新の通知を先延ばしにしないことです。サイトを運営している場合は、WordPressやプラグインの自動更新と、サーバー会社のお知らせの確認が基本になります。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- AFPBB News「AIによる脆弱性発見が加速、専門家「混乱期の始まり」」(2026年10月25日)
- PHP公式「Security advisory: Critical remote code execution vulnerabilities, update now」(2026年10月21日)、GitHub Security Advisory GHSA-w8hw-w9fx-j79w・GHSA-6wmf-4rv5-p3rp
- OpenAI「Patch the Planet:エージェントによる重大な脆弱性の発見と世界規模の対応連携」(2026年10月21日)
- NIST「NVD Vulnerability API」(公開日別件数を2026年10月25日に取得・集計)
- 米CISA「Known Exploited Vulnerabilities Catalog」(2026年10月23日版)
- FIRST「Vulnerability forecast 2026: The Year Ahead」(2026年2月11日)、「The 2026 Vulnerability Forecast Update」(2026年6月15日)
- Google Project Zero「From Naptime to Big Sleep」(2024年10月)、Google Security Blog「Leveling Up Fuzzing」(2024年11月20日)、Google「A summer of security」(2025年7月15日)
- 写真:Wikimedia Commonsのフリーライセンス画像(本文 Derrick Coetzee, CC0/アイキャッチ PiDatacenters, CC BY-SA 4.0・一部トリミング・明るさ調整と文字の追加あり)


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