キキクルの見方2026|黒・紫・赤は何が違う?千葉豪雨は「朝の予想100ミリ」が実況500ミリ超になった
台風25号が9月21日に関東へ最接近する見込みとなり、気象庁の「キキクル」の検索が急増しています。8月の千葉豪雨では、朝の時点で気象庁が予想した24時間雨量は100ミリでしたが、実際には500ミリを超えました。予想が外れる日に、いま自分のいる場所がどれだけ危ないかを10分ごとに更新して見せてくれる唯一の公式情報がキキクルです。この記事では、5段階の色の意味、2026年5月29日に新設された「大雨キキクル」で何が変わったのか、千葉豪雨と9月8日の名古屋の豪雨で実際にどう推移したのかを、気象庁の一次資料で整理しました。
2026年9月20日作成(台風25号の予想は20日発表の値)
1km四方の格子で判定
「14日6時までの実況」の24時間雨量
出た時刻(千葉市など12市)
通知してくれる気象庁協力アプリ
結論:見るのは「紫」が出たかどうか。黒は「もう始まっている」の合図
キキクルは、気象庁が土砂災害・浸水害・洪水災害の危険度を地図に色で示す情報です。色は黒(災害切迫)・紫(危険)・赤(警戒)・黄(注意)・無色の5段階で、内閣府の警戒レベル5・4・3・2にそのまま対応します。避難の判断に使うのは紫です。気象庁は「遅くとも紫が出現した時点で速やかに避難の判断を」と明記しており、黒は「重大な災害が切迫しているか、すでに発生している可能性が高い」状態を示す色なので、黒を待ってから動くのでは遅いという設計になっています。
・紫=警戒レベル4相当。市町村の避難指示が出ていなくても、キキクルが紫なら自分で避難の判断をしてよいと気象庁が公式に書いている
・2026年5月29日から「大雨キキクル」が新設され、浸水と洪水を重ねた1枚で見られる。洪水警報は廃止され「大雨」の情報に統合された
・千葉豪雨では朝の予想が24時間100ミリ、実況は500ミリ超。特別警報は最初の記録的短時間大雨から2時間以上あとに出た。予想が外れる日に10分ごとに動くのはキキクルだけ
キキクルとは?2026年から4種類になった
キキクルの正式名称は「危険度分布」で、2021年から愛称として「キキクル」が使われています。気象庁のキキクルのページで誰でも見られ、1km四方の格子ごとに危険度を判定し、常時10分ごとに更新されます。雨量そのものではなく、雨が地面にどう溜まり、どう川に集まるかを模した3つの指数(土壌雨量指数・表面雨量指数・流域雨量指数)を使うのが特徴です。
2026年5月29日の防災気象情報の見直しで、従来の土砂・浸水・洪水の3種類に「大雨キキクル」が加わり、4種類になりました。それぞれ見ている災害と、何時間先まで予測しているかが違います。
| 種類 | 対象の災害 | 使う指数 | 何時間先まで見るか |
|---|---|---|---|
| 土砂キキクル | がけ崩れ・土石流 | 土壌雨量指数 | 紫は2時間先、赤は3時間先、黄は6時間先までの予測 |
| 大雨キキクル(新設) | 浸水害と中小河川の洪水をまとめて表示 | 表面雨量指数+流域雨量指数 | 浸水と洪水の危険度を重ねた「高い方」を表示 |
| 浸水キキクル | 短時間強雨による浸水(側溝・下水・アンダーパス・地下) | 表面雨量指数 | 1時間先までの予測 |
| 洪水キキクル | 中小河川の増水・氾濫(約24,000河川) | 流域雨量指数 | 3時間先までの予測 |
浸水キキクルは1時間先、洪水キキクルは3時間先までの予測値で色を決めています。浸水は「いま降っている雨」で、洪水は「上流で降った雨がこれから流れてくる分」で危険度が上がるので、雨がやんだ直後でも洪水キキクルの色は上がり続けることがあります。同じ理由で土砂キキクルも、雨がやんでから紫になる地域が出ます。
色の意味と、色ごとにとる行動
色は内閣府の警戒レベルに対応しています。気象庁の「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」に書かれた行動を、そのまま並べます。
| 色 | 意味 | 警戒レベル | 気象庁が書いている行動 |
|---|---|---|---|
| 黒 | 災害切迫。実況値が特別警報の基準に到達 | 5相当 | 何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高い。命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保 |
| 紫 | 危険。2〜3時間先までに危険警報の基準に到達する予測 | 4相当 | 危険な場所から全員避難。避難指示が出ていなくても、キキクルや河川水位を見て自ら避難の判断を |
| 赤 | 警戒。警報の基準に到達する予測 | 3相当 | 高齢者等は避難。それ以外の人も普段の行動を見合わせ始め、避難の準備を |
| 黄 | 注意。注意報の基準に到達する予測 | 2相当 | ハザードマップで災害が想定される区域・避難先・避難経路を確認 |
| 無色 | 今のところ危険度の高まりなし | — | 最新の情報に留意 |
黒は「特別警報より先に出る」ことがある
浸水キキクルの黒は、表面雨量指数の実況値が特別警報の基準に達した格子に表示されます。一方、レベル5大雨特別警報は「基準に達する格子がおおむね30個以上まとまって出現し、かつ激しい雨がさらに降り続く」と予想される場合に発表されます。つまり自分の家の格子が黒になっていても、特別警報はまだ出ていないという状況が制度上ありえます。気象庁自身が「特別警報の発表状況と浸水キキクルは整合しない場合がある」と説明しているのはこのためです。
色が「戻らない」のは仕様
キキクルは判断がぶれないように、過去30分間の最大危険度を表示します。雨が弱まった直後に色がすぐ下がらないのはそのためで、故障ではありません。逆に言えば、色が下がっても30分前まで危険だった場所ということです。
建物がなく人が住んでいない場所には浸水害の基準が設定されていないので、田畑や河川敷では黒・紫・赤が出ません。川も建物も道路も農地もない山中では黄も出ません。登山やキャンプ中は、キキクルの無色を「安全」と読まず、雨雲の動きで判断する必要があります。
2026年5月29日の変更で何が変わったか
今年の出水期から防災気象情報が「レベル3大雨警報」「レベル4土砂災害危険警報」のように警戒レベルの数字付きに変わりました(詳しくは2026年5月29日からの防災気象情報の変更点)。キキクルもこれに合わせて3つ変わっています。
- 新設大雨キキクルが追加された「大雨に関する情報」が対象にする浸水害と中小河川の洪水を1枚に重ねて表示します。画面のボタンで浸水キキクル・洪水キキクルに切り替えられます。
- 廃止洪水警報・洪水注意報がなくなった内水氾濫と、洪水予報河川以外の外水氾濫は「大雨」の情報で扱うようになりました。洪水キキクルの色はレベル3大雨警報・レベル4大雨危険警報の基準で決まります。
- 変更土砂キキクルの赤が絞り込まれ、黄から紫に飛ぶことが増える赤の判定が「2時間先までに大雨警報(土砂災害)の基準到達」から「3時間先にレベル4土砂災害危険警報の基準到達」に、黄が「2時間先までに注意報基準」から「6時間先までに注意報基準」に変わりました。国土交通省と気象庁の資料は「現行に比べて赤が絞り込まれるとともに、黄から紫になることが多くなる傾向」と注意しています。
赤の条件が厳しくなったため、黄の次に赤を経ずに紫が出る場面が増えます。土砂災害警戒区域に住んでいる人は、黄の段階で避難先と持ち物を決めておき、紫が出たら赤を待たずに動く前提にしておく必要があります。
千葉豪雨で分かったこと:朝の予想100ミリが、実況では500ミリを超えた
8月13日から14日にかけての「令和8年8月千葉豪雨」について、気象庁は9月7日時点の速報として発表状況をまとめた資料を公開しています。そこに書かれている数字を時系列に並べると、「事前の予想が外れた日に、キキクルだけが動いていた」ことが分かります。
| 項目 | 13日朝の時点の予想(多い所) | 実況 |
|---|---|---|
| 1時間雨量(13日18時〜24時) | 50ミリ | 約120ミリ(解析雨量)/千葉市中央区で115.0ミリ(観測史上1位) |
| 24時間雨量(14日6時まで) | 100ミリ | 500ミリ超(解析雨量)/千葉市中央区で367.0ミリ(観測史上1位) |
| 線状降水帯の半日前予測 | 発表なし | 直前予測4回・発生情報3回を発表 |
- 13日朝気象解説情報で「注意・警戒」を呼びかけ予想は1時間50ミリ、24時間100ミリ。半日前予測は出ていない。
- 17:58線状降水帯の発生情報 第1号(北西部・南部)この17時台から14日1時台にかけて、気象防災速報(記録的短時間大雨)が25回発表された。
- 18:48千葉市中央区で1時間115.0ミリ1966年の観測開始以来の1位を更新。船橋も18:43に62.0ミリで観測史上1位。
- 18:58線状降水帯の直前予測 第1号(北西部)以後22:48まで4回発表。
- 19:30レベル5大雨特別警報を12市に発表千葉・市川・船橋・松戸・佐倉・習志野・柏・市原・八千代・鎌ケ谷・四街道・白井。最初の記録的短時間大雨から2時間以上あと、千葉市の115ミリからは42分後。
- 21:55レベル5土砂災害特別警報を千葉市・市原市に発表大雨の特別警報は14日0時30分の九十九里町・山武市まで拡大が続き、最終的に22市町に出た。
- 14日 5:15全市町村をレベル4以下に切り替え気象庁の資料では、この期間に千葉県で土砂・浸水・洪水キキクルのすべてで黒(災害切迫)が出現した。
13日朝の予想と実況の差は、24時間雨量で5倍です。予想が外れた日に「今どこが危ないか」を10分ごとに更新して見せられるのは、実況の雨を指数に落とし込むキキクルだけです。TBSの解説委員は千葉豪雨について「前もって警戒を呼びかける情報が発表されなかった」「予測ができないほど急激に悪化した」ことを検証していますが、警報より先に色が動くという意味では、キキクルは「予想が当たらなかった日のための情報」だと言えます。
名古屋9月8日:ビルの防犯カメラでは「10分で滝」になった
9月8日、名古屋市では16時53分までの1時間に104.5ミリを観測し、2000年の東海豪雨の97.0ミリを上回って観測史上最大となりました。気象庁は16時28分に線状降水帯の発生を発表し、名古屋市などにレベル4大雨危険警報が出ています。名古屋市は18時10分までに100万世帯・198万人に避難指示などを出しました。
中日テレビが報じた中区のビルの防犯カメラ映像では、15時50分ごろはまだ弱い雨で、16時ごろに水が流れ始め、その5分後には滝のような勢いになっています。ビルの担当者は「午後3時半ごろから雨が強くなり始めたが、ただの雨という認識だった」と話しており、止水板の設置に30分近くかかる間も水が流れ込み、地下のテナントとエスカレーターが浸水しました。
気象庁は浸水キキクルの使い方として、黄(注意)が出た段階で「住宅の地下室にいる人は地上に移動することが大変重要」、赤で「浸水が及ばない階に移動できる準備」、紫で「すでに浸水していれば各自の判断で上の階へ」と書いています。地下室やアンダーパスは水が溜まる体積が小さいため、周囲より早く短時間で水位が上がるからです。名古屋のように10分で状況が変わる雨では、紫を待たず黄で地下を離れるのが公式の答えです。
台風25号でどう使うか:通知アプリを入れて「紫」を待つ
台風25号は21日昼前から夜遅くにかけて関東甲信に最も近づく見込みで、日本気象協会は22日6時までの24時間雨量を関東地方と伊豆諸島で400ミリ、東海地方で300ミリ、東北地方で200ミリと予想しています(20日6時30分発表)。千葉県南部では過去の最大雨量の150%以上という予想も出ており、「千葉豪雨に匹敵する大雨」と表現されています。台風の速度が遅く、雨が長く続くことが特徴です。
1. 通知アプリを入れておく(5社)
キキクルは自分で見に行かないと色の変化に気づけません。気象庁の協力のもと、登録した市町村(政令市は区単位)で初めて紫が出たときなどにプッシュ通知するサービスを次の5事業者が提供しています。10分ごとに判定されます。
| 事業者・サービス | 形式 | 開始 |
|---|---|---|
| Yahoo! JAPANアプリ | スマホアプリ | 2019年7月10日 |
| お天気ナビゲータWEB | メール通知 | 2019年7月10日 |
| お天気JAPANアプリ | スマホアプリ | 2019年8月1日 |
| 特務機関NERV防災アプリ | スマホアプリ | 2019年9月1日 |
| PREP(旧ゆれくるコール) | スマホアプリ | 2020年8月25日 |
2. 見るのは「自分の格子」と「上流」
洪水キキクルは河川の流路に沿って色が付きます。自宅が無色でも、上流が紫なら3時間以内に水が来る計算です。土砂キキクルも同じで、雨がやんでから紫になることがあります。雨がやんだ後こそ土砂災害が起きやすい理由は土砂崩れの前兆と避難の判断基準で詳しく書いています。
3. 夜に紫が出たら「上の階」でよい
気象庁は避難について「指定された避難場所へ向かうことにこだわらず、川や崖から少しでも離れた近くの頑丈な建物の上層階に避難するなど、自らの判断でその時点で最善の安全確保行動をとることが重要」と書いています。台風25号の雨のピークは21日午後から夜で、千葉豪雨の特別警報も19時30分でした。暗くなってから紫が出た場合は、外へ出るより屋内の高い階へ移る「屋内安全確保」が選択肢です。
・融雪は計算に入っていない(今回は関係なし)
・レーダーが雨以外のもの(非降水エコー)を拾うと、晴れていても色が上がることがある。このため警報や注意報が出ていないときは通知サービスが「レベル3相当」「レベル4相当」の通知を出さない仕様
・大河川(洪水予報河川)の氾濫は洪水キキクルの対象外。国管理河川は「水害リスクライン」と指定河川洪水予報で確認する
・線状降水帯の「半日前予測」は千葉豪雨では出なかった。半日前予測の的中率については線状降水帯半日前予測とは?的中率14%でも警戒すべき理由を参照
よくある質問
Q. キキクルの紫と黒はどちらで避難すればいいですか?
A. 紫です。紫は警戒レベル4相当で、気象庁は「遅くとも紫が出現した時点で速やかに避難の判断を」と明記しています。黒は実況値が特別警報の基準に達した状態で、重大な災害が切迫しているか、すでに発生している可能性が高いことを示します。黒になってから外に出るのは危険なので、その場合は屋内の高い階へ移る屋内安全確保を優先します。
Q. 大雨キキクルと浸水キキクルの違いは何ですか?
A. 大雨キキクルは2026年5月29日に新設された表示で、浸水キキクル(表面雨量指数・1時間先まで)と洪水キキクル(流域雨量指数・3時間先まで)の危険度を重ねて、高い方の色を1枚で見せるものです。「大雨に関する情報」が対象にする浸水害と中小河川の洪水をまとめて確認できます。どちらの災害かを知りたいときはボタンで浸水・洪水に切り替えます。
Q. 雨がやんだのにキキクルの色が変わらないのはなぜですか?
A. 2つ理由があります。1つはキキクルが過去30分間の最大危険度を表示する仕様であること。もう1つは、土砂キキクルと洪水キキクルが「地中に溜まった雨」「上流から流れてくる雨」を指数で計算しているため、雨がやんだ後も危険度が上がり続けることです。特に土砂災害は雨がやんだ直後に起きやすいので、色が下がるまで崖の近くには戻らないでください。
Q. 特別警報が出ていないのに自分の家が黒になっています。どういう状況ですか?
A. 制度上ありえます。浸水キキクルの黒は1km格子ごとに実況値で判定されますが、レベル5大雨特別警報は基準に達する格子がおおむね30個以上まとまり、かつ激しい雨が続くと予想される場合に発表されます。気象庁も「整合しない場合がある」と説明しています。自分の格子が黒なら、特別警報の有無にかかわらず直ちに身の安全を確保してください。
・気象庁「キキクル」(危険度分布の解説) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/riskmap.html
・気象庁「防災気象情報と警戒レベルとの対応について」(色ごとの行動) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/alertlevel.html
・気象庁「浸水キキクル」(黄・赤・紫・黒の使い方、特別警報との不整合の説明) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/riskmap_inundation.html
・気象庁「『キキクル』の通知サービスについて」(協力5事業者) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/ame_push.html
・国土交通省水管理・国土保全局/気象庁「キキクルの改善について」(令和8年2月更新、大雨キキクル新設・土砂キキクルの判定変更) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/pdf/kikikuru_info2026.pdf
・気象庁大気海洋部「令和8年8月13日に千葉県にレベル5大雨特別警報やレベル5土砂災害特別警報を発表した事例」(速報、令和8年9月7日現在) https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/jirei/sokuhou/R080813.pdf
・毎日新聞「名古屋で1時間104ミリの雨、東海豪雨時上回る 地下街にも水」2026年9月8日 https://news.yahoo.co.jp/articles/7c926c0e3ab102a596a57df99490ab71a6aeffbc
・中京テレビ「防犯カメラが捉えた地下への水の流入 わずか10分で滝のように… 名古屋の豪雨」 https://news.ntv.co.jp/n/ctv/category/society/cte1249120ee00404aa9c61bc0c60c4bcd
・TBS「調査情報デジタル」“想定外”の千葉豪雨を実際の防災気象情報と避難情報から検証 https://topics.smt.docomo.ne.jp/article/tbs/nation/tbs-2956111
・日本気象協会 tenki.jp「大型で強い台風25号は明日21日に関東に最接近 千葉豪雨に匹敵する大雨の恐れ」2026年9月20日 https://tenki.jp/forecaster/y_maki/2026/09/20/40672.html
※千葉豪雨の時刻・雨量・発表回数はすべて気象庁の速報資料の値です。「特別警報まで2時間以上」「115ミリから42分後」は資料の時刻から当サイトが計算しました。


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