秋の味覚・2026年
松茸はなぜ高い?
2026年は国産15トン・輸入97%
林野庁が2026年8月31日に確報を公表した特用林産物生産統計によると、2025年の国産まつたけの生産量はわずか15トン。前年の51トンから70.6%減で、国内で食べられる松茸の97.2%が輸入品になりました。ピークだった1941年の1万2,000トンと比べると800分の1です。2026年は記録的な暑さの夏を越え、長野の直売所では9月13日に初入荷(前年より約3週間早い)。なぜ松茸は高いのか、今年はどうなるのかを一次データで整理します。
この記事でわかること
- 2025年の国産まつたけは15トン。2024年の51トンから7割減り、2023年の19トンも下回った
- 国内消費541トンのうち526トンが輸入(97.2%)。輸入先は中国が7割、次いでカナダ・アメリカ
- 高い理由は①人工栽培ができない ②アカマツ林の減少(IUCNが2020年に絶滅危惧種に指定) ③気象で収穫量が年ごとに2〜3倍動くの3つ
- 東京・大田市場の平均卸値は1kgあたり約1万〜1万6,000円。入荷量のピークは10月で、値段が落ち着くのもこの時期
- 2026年は夏が観測史上5番目の暑さ。西日本は少雨、関東甲信は多雨と産地で明暗が分かれやすい年。長野では9月13日に初入荷
国産松茸は15トン——2025年の生産量は前年比70.6%減
松茸の値段を考えるうえで、まず押さえておきたいのが「国産がどれだけ採れているか」です。林野庁が毎年まとめている特用林産物生産統計の最新版(令和7年=2025年、2026年8月31日に確報公表)では、国産まつたけの生産量は15トンでした。
林野庁の需給表を5年分並べると、国産の少なさと変動の激しさがよく分かります。
| 年 | 国産生産量 | 輸入量 | 消費量 | 輸入割合 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年 | 39トン | 524トン | 563トン | 93.1% |
| 2022年 | 35トン | 408トン | 443トン | 92.1% |
| 2023年 | 19トン | 481トン | 500トン | 96.2% |
| 2024年 | 51トン | 486トン | 500トン | 97.2% |
| 2025年 | 15トン | 526トン | 541トン | 97.2% |
※林野庁「主要な特用林産物の令和7年の需給動向」より当ブログが作成。消費量=生産量+輸入量−輸出量。2024年は輸出37トンを含む。
国産は19トン→51トン→15トンと、わずか2年で3倍近くに増えて、また3分の1以下に減っています。松茸は人工栽培ができず、自然に生えたものを採るしかないため、その年の天候でここまで振れるのです。一方の輸入量は400〜500トン台で安定しており、国産が減った年ほど輸入割合が上がります。
国民1人あたり、年に4.4グラム
2025年の消費量541トンを日本の人口約1億2,300万人で割ると、1人あたり年間わずか4.4グラム。1本30〜50グラムの松茸なら、10人で1本を分け合う計算です。「一生に数回しか食べない」と感じるのは、統計上もそのとおりです。
85年で800分の1——ピーク1941年から現在まで
松茸は昔から高級品だったわけではありません。農林水産省の統計によると、国産の生産量が最も多かったのは1941年の1万2,000トン。1960年でも約3,500トンありました。それが現在は10〜50トン台です。
| 年 | 国産生産量 | 1941年比 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1941年 | 12,000トン | 100% | 統計上のピーク |
| 1960年 | 約3,500トン | 29.2% | 燃料革命の前後。薪を採らなくなり里山が変質 |
| 2010年 | 140トン | 1.2% | 近年では豊作の年 |
| 2017年 | 18トン | 0.15% | 不作 |
| 2018年 | 63トン | 0.53% | 回復 |
| 2024年 | 51トン | 0.43% | 長野県だけで37.1トン(72.3%) |
| 2025年 | 15トン | 0.13% | 前年比70.6%減。ピークの800分の1 |
※農林水産省「特用林産基礎資料」、林野庁「特用林産物の生産動向」、長野県「長野県は日本一」より当ブログが作成。
主な産地は林野庁によると長野県・岩手県・岡山県。ただし年によって顔ぶれが入れ替わり、2023年は岩手県が約11トンで全国の約58%、2024年は長野県が37.1トンで72.3%を占めました。その年にどの地方の天候が松茸向きだったかで、産地の順位まで変わってしまうのが松茸の特徴です。
松茸はなぜ高いのか——3つの構造的な理由
- 理由1人工栽培ができない林野庁は「アカマツ等の根と共生関係を保ちながら生育する菌根性きのこであることから、現在のところ実用的な人工栽培技術がなく、自然発生したものを採取し、市場等へ出荷しています」と説明しています。しいたけやえのきたけのように工場で計画生産できないため、需要が増えても供給を増やせません。えのきたけの生産量は年13万トン、まつたけは15トン。同じ「きのこ」でも桁が4つ違います。
- 理由2アカマツ林そのものが減っている松茸はアカマツの根に共生し、落ち葉の少ない痩せた土を好みます。かつては薪や落ち葉を採るために人が山に入り、それが結果的に松茸向きの環境を保っていました。燃料が石油やガスに替わって里山が放置され、さらに松くい虫による「松枯れ」が広がったことで、松茸の生える場所が減り続けています。国際自然保護連合(IUCN)は2020年7月、マツタケを絶滅危惧種(危急・VU)に指定しました。根拠は「過去および今後の50年間で30%以上の減少がみられ、引き続き減少傾向が見込まれる」ことです。
- 理由3天候しだいで収穫量が2〜3倍動く松茸が生えるには、秋に地温が下がることと適度な雨が必要です。夏の猛暑が長引いたり、秋に雨が少なすぎたり多すぎたりすると発生が遅れ、量も減ります。国産の生産量が19→51→15トンと動いたのはこのためで、不作の年は国産の値段が一気に跳ね上がります。日本経済新聞は2025年9月24日、猛暑と少雨でマツタケが不作となり、市場入荷がほぼ無く前年比6割高で取引されていると報じました。
「輸入が97%」なのに、なぜ国産の値段が問題になるのか
市場全体で見れば松茸の97%は輸入品です。それでも国産の出来が話題になるのは、国産と輸入品は別の商品として値段が付くからです。国産は香りの強さと鮮度で高値が付き、贈答用の需要が集中します。国産が不作の年は、国産の高値がまず立ち、その影響が輸入品の相場にも及びます。
松茸の値段の相場——東京・大田市場の卸値と入荷量
「松茸はいくらなのか」を客観的に見るには、東京都中央卸売市場(大田市場)の統計が役に立ちます。国産・輸入を合わせた平均の卸売価格(1kgあたり)と入荷量を、月別に並べました。
| 月 | 2024年 卸値 | 2025年 卸値 | 2024年 入荷量 | 2025年 入荷量 |
|---|---|---|---|---|
| 7月 | 13,672円 | 9,548円 | 531kg | 1,362kg |
| 8月 | 8,807円 | 9,133円 | 3,957kg | 4,107kg |
| 9月 | 14,465円 | 10,487円 | 9,937kg | 14,212kg |
| 10月 | 13,386円 | 16,151円 | 19,340kg | 15,143kg |
| 11月 | 11,209円 | 8,108円 | 6,617kg | 8,921kg |
| 12月 | 19,160円 | 6,227円 | 230kg | 923kg |
※東京都中央卸売市場「市場統計情報(月報)」を基にGD Freak!が集計した大田市場の月別平均卸売価格(円/kg、税込)と卸売取扱数量より当ブログが作成。国産・輸入の合算。
読み取れるポイントは3つです。
- 入荷量のピークは10月——2024年は1万9,340kg、2025年は1万5,143kgと、年間で最も多く入荷します。国産の旬(9〜10月)と北米産の最盛期が重なる時期です
- 国産が不作だった2025年は10月の卸値が1万6,151円と、前年の1万3,386円より20.7%高くなりました。日経が報じた「国産6割高」が、輸入を含めた平均にも表れています
- 7月や12月は入荷が数百kgしかなく、平均値が大きくぶれます。「1kg2万円」といった数字は端境期の値で、旬の相場ではありません
市場の卸値が1kg1万〜1万6,000円なら、1本40gあたりの卸値は400〜650円です。ただしこれは輸入品が97%を占める平均値で、国産の上物は別格。長野県青木村の道の駅では2026年9月14日時点で1パック7,000〜23,000円で販売されており、有名産地の初競りではキロ換算で数十万〜数百万円の値が付くこともあります。
2026年の松茸はどうなる?——夏の猛暑と9月の初入荷
2026年の松茸の出来を左右する材料を、時系列で並べます。
- 6〜8月夏の平均気温は観測史上5番目の高さ気象庁の統計で2026年夏(6〜8月)の平均気温は平年比+1.02℃、1898年以降で5番目に高い夏でした。最高気温40℃以上の「酷暑日」を記録した地点は延べ36地点と過去最多。ただし暑さは東海以西に偏り、東京都心は+0.3℃にとどまりました。
- 7〜8月西日本は少雨、関東・北陸は記録的大雨7月は全国的に雨が少なく、8月も西日本を中心に少雨が続きました。一方で関東・北陸では記録的な大雨があり、台風15号が8月11日に茨城県へ上陸しています。松茸にとって「暑くて乾いた西日本」と「雨の多い東日本」で条件が分かれた夏です。
- 9月3日1か月予報:9〜17日は「10年に一度」の高温気象庁の1か月予報(日本気象協会の解説)では、9月9日頃から17日頃にかけて10年に一度程度の著しい高温となる可能性が示されました。関東甲信などは降水量が平年より多い見込み。地温が下がらないと松茸は本格的に生え始めないため、本番入りの遅れが心配される予報でした。
- 9月13日長野・青木村の直売所で初入荷(前年より約3週間早い)長野県青木村の道の駅あおきでは、9月13日に今年初めて松茸が入荷しました。初日は30パック(7,500〜21,000円)、翌14日は35パック(7,000〜23,000円)。同店によると2025年は10月2日が初入荷で、最盛期がないまま全体的に少ない年でした。2026年は約3週間早いスタートです。
- 9月下旬〜10月国産の最盛期。市場入荷も10月がピーク大田市場の入荷量は例年10月が最多。国産の旬は9〜10月で、11月に入ると急に減ります。値段が落ち着くのを待つなら10月中旬〜下旬が目安です。
2026年の見立て
2025年が「猛暑・少雨で国産15トン」という極端な不作だっただけに、2026年は反動で増える可能性があります。長野で初入荷が3週間早まったのは前向きな材料です。一方で夏の暑さは5位、9月中旬にも著しい高温が予想されており、西日本の産地は少雨の影響が残るおそれがあります。国産の出来は産地で明暗が分かれ、全国の生産量は「2025年よりは多いが、豊作年の50トン台に届くかは秋の雨しだい」と見るのが現実的です。確定するのは、林野庁の統計が出る2027年夏になります。
松茸を少しでも安く食べるには
1. 買う時期を10月に寄せる
大田市場の入荷量は10月が年間最多です。国産の旬と北米産の最盛期が重なり、供給が最も厚くなる月です。走りの9月上旬や、終わりかけの11月下旬は量が少なく割高になりがちです。
2. 輸入品の産地を知って選ぶ
財務省貿易統計(2024年)によると、輸入松茸の内訳は中国が約343トンで7割超、カナダ約65トン、アメリカ約65トン、ブータン約10トンです。生鮮食品には原産国の表示が義務づけられているので、店頭で確認できます。カナダ・アメリカ産は国産に近い時期(9〜11月)に出回り、香りは国産より穏やかですが、価格は国産の数分の1が目安です。
3. 「開き」や「割れ」を狙う
松茸の値段は、大きさ・重さ・傘の開き具合・傷の有無で決まります。贈答用に向かない「傘が開いたもの」や「軸が短いもの」は香りが同じでも安く、土瓶蒸しや炊き込みご飯なら十分です。直売所では等級の低いパックが早く売れるので、開店直後に行くのが基本です。
4. 冷凍・加工品を使う
松茸ご飯の素や冷凍のカット松茸は、輸入品を原料にして1食あたり数百円で手に入ります。香りを楽しむだけなら、生の国産にこだわらなくても季節感は味わえます。
産地と市場の「今」——Xの投稿から
2026年の松茸の動きは、産地の直売所や報道の投稿からも追えます。長野県青木村の道の駅あおきは9月13日、今年初めての松茸入荷を公式アカウントで報告しました。
🍄9/13(日)入荷状況🍄
✨初入荷✨
【松茸】7,500~21,000円で30(内青木村産8)
【雑茸】3(ハナイグチ・シャカシメジ)今年も青木村で松茸・雑茸の入荷が始まりました!
ご来店お待ちしております🎶▼毎日の入荷状況・Q&Aなどは公式サイト参照▼https://t.co/4e7FWaxxOS pic.twitter.com/jvtpTsW4Jo
— 青木村 道の駅あおき【公式】 (@michinoekiaoki) September 13, 2026
同じ長野県内では、長和町の農産物直売所マルシェ黒燿に8月29日の時点で早くも松茸が並んだと地元紙の東信ジャーナル社が伝えています。記事の見出しは「今年は豊作かも」。長野が国産の7割を占めた2024年に続き、2026年も長野の出足は早いようです。
早くもマツタケ初入荷!
☆29日に長和町の農産物直売所マルシェ黒燿に
★「今年は豊作かも」
🆕⇒https://t.co/nvClIes6UO長野県 長和町#長野県#長和町#農産物直売所#初#マツタケ#マルシェ#入荷#豊作 pic.twitter.com/ufv0v1CY2k
— 東信ジャーナル社 (@tjidem2012) August 31, 2026
一方、輸入の7割を占める中国では8月に収穫がピークを迎え、収穫から36時間で日本に届くとTBS NEWS DIGが報じました。国産の走りより1か月早く、8月の市場に並ぶ松茸の多くはこの中国産です。
秋の味覚「マツタケ」中国で収穫ピーク 収穫から36時間で日本へ https://t.co/G2ymAp8P9H
— TBS NEWS DIG Powered by JNN (@tbsnewsdig) August 19, 2026
よくある質問
Q. 松茸はなぜ高いのですか?
A. 人工栽培ができず自然発生を採るしかないこと、共生相手のアカマツ林が里山の放置や松枯れで減り続けていること、天候しだいで収穫量が年ごとに2〜3倍動くことの3つが重なっているためです。国産の生産量は2025年でわずか15トン、ピークだった1941年の1万2,000トンの800分の1です。
Q. 2026年の松茸の値段はどうなりますか?
A. 2025年は国産が前年比70.6%減の極端な不作で、市場では国産が6割高になりました。2026年は長野で初入荷が前年より3週間早まるなど前向きな材料がある一方、夏の暑さは観測史上5位で西日本は少雨でした。産地で明暗が分かれ、全国的には「2025年よりは多いが、豊作年の50トン台に届くかは秋の雨しだい」と見るのが現実的です。
Q. 松茸の旬はいつですか?
A. 国産は9〜10月が旬です。東京・大田市場の入荷量は例年10月が年間で最も多く、2024年は1万9,340kg、2025年は1万5,143kgでした。11月に入ると急に減り、12月は数百kgしか入荷しません。
Q. 松茸1kgの相場はいくらですか?
A. 大田市場の国産・輸入を合わせた平均卸売価格は、旬の9〜10月で1kgあたり約1万〜1万6,000円です。2025年10月は1万6,151円で、前年の1万3,386円より20.7%高くなりました。国産の上物は別格で、直売所では1パック7,000〜23,000円、有名産地の初競りではキロ換算で数十万円以上の値が付くこともあります。
Q. 国産と輸入品はどのくらいの割合ですか?
A. 林野庁の需給表では、2025年の消費量541トンのうち輸入が526トンで97.2%です。輸入先は財務省貿易統計(2024年)で中国が約343トンと7割超、次いでカナダ約65トン、アメリカ約65トン、ブータン約10トンです。
Q. 松茸は絶滅危惧種と聞きましたが、食べてもいいのですか?
A. 国際自然保護連合(IUCN)は2020年7月、マツタケを危急(VU)に指定しました。根拠は50年間で30%以上の減少が見込まれることで、主因は松枯れや森林の減少です。採取や販売が禁止されたわけではなく、食べること自体に問題はありません。ただし採るときに落ち葉や土を削り取ると菌を傷めるため、産地では採取ルールが設けられています。
Q. 松茸はなぜ人工栽培できないのですか?
A. 松茸は生きたアカマツなどの根と養分をやり取りする菌根菌で、木から離れて育つことができません。しいたけのように倒木や菌床で育つ腐生菌とは仕組みが違うため、林野庁も「現在のところ実用的な人工栽培技術がない」としています。
出典・参考リンク
- 林野庁|特用林産物の生産動向(令和7年の生産量・主な産地)
- 林野庁|主要な特用林産物の令和7年の需給動向(PDF・まつたけの需給表)
- 農林水産省|特用林産物生産統計調査(令和7年確報・2026年8月31日公表)
- GD Freak!|大田市場の松茸の月別平均卸売価格(東京都中央卸売市場統計を基に作成)
- 日本自然保護協会|IUCNレッドリスト2020解説(マツタケが危急種に)
- 道の駅あおき(長野県青木村)|2026年 松茸入荷状況
- 日本気象協会 tenki.jp|9月3日発表の1か月予報の解説
- 日本経済新聞|マツタケ不作で6割高(2025年9月24日)
- nippon.com|秋の味覚マツタケ:国内産は流通量のわずか5%(1941年以降の生産量)
- 野菜ナビ|松茸の輸入先・輸入量(財務省貿易統計2024年)


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