法務省の手続き2026|相続登記・住所変更・共同親権の期限を解説
「法務省」と聞くと遠い役所に思えますが、実は不動産の登記・戸籍・相続・離婚など、生活に直結する制度を所管しています。2026年は義務化された手続きの期限が次々に迫る年。放置すると過料(罰金に似た金銭負担)が発生するものもあります。
2026年8月15日 公開/出典:法務省・法務局の公表資料
3月31日過去の相続の登記期限
3月31日過去の住所変更の登記期限
- 不動産の名義は相続も住所変更も登記が義務になり、放置すると過料の対象になる。
- 離婚後の共同親権が選べるようになり、養育費や財産分与のルールも同時に変わった。
- 戸籍のフリガナは職権で記載済み。誤りは1回だけ簡単に直せる救済期間が残っている。
期限が決まっている手続きカレンダー
まず「いつまでに何をするか」だけを先に押さえておきましょう。以下は期限が明確に決まっているものです。
- 2027年3月31日過去に発生した相続の登記制度開始前(2024年4月1日より前)に相続した不動産が対象。世代をまたいでいる場合は戸籍集めに数か月かかります。
- 2028年3月31日過去の住所・氏名変更の登記2026年4月1日より前に引っ越し・結婚などで登記簿と現況がずれている人が対象。
- 変更から2年これからの住所・氏名変更の登記スマート変更登記を申し出ておけば、この義務自体を負わずに済みます。
- 知った日から3年これから発生する相続の登記まとまらないときは相続人申告登記で期限内の義務を果たせます。
法務省とは?暮らしに直結する4つの分野
法務省は「法秩序の維持」と「国民の権利擁護」を担う省庁です。検察や刑務所のイメージが強いものの、私たちが窓口で関わるのは、全国の法務局(登記所)と市区町村の戸籍窓口を通じた民事系の手続きです。整理すると次の4分野になります。
| 分野 | 主な内容 | 窓口 |
|---|---|---|
| 登記 | 不動産の相続登記・住所変更登記、会社の商業登記 | 法務局 |
| 戸籍・国籍 | 戸籍制度の企画、氏名のフリガナ、帰化許可 | 市区町村+法務局 |
| 民事法制 | 民法・不動産登記法などのルール作り(共同親権もここ) | ― |
| 人権・支援 | 人権相談、法テラス(日本司法支援センター)の所管 | 法務局・法テラス |
2024年以降に義務化・新設された制度のうち、期限があるものと知らないと損をするものを、費用と窓口までセットで整理します。専門用語は都度かみ砕いて説明します。
1. 相続登記の義務化|期限は2027年3月31日
2024年4月1日から、不動産を相続したら登記の名義変更が義務になりました。「相続で不動産を取得したことを知った日から3年以内」に申請しなければならず、正当な理由なく怠ると10万円以下の過料の対象になります。
ここで見落とされがちなのが、制度開始前に起きた相続もさかのぼって対象になるという点です。祖父母や親の代で名義が止まったままの土地・建物は、2027年3月31日が一律の期限になります。残り時間は多くありません。
遺産分割がまとまらないときは「相続人申告登記」
相続人同士で話がつかないケースは珍しくありません。そのために新設されたのが相続人申告登記です。「自分は登記名義人の相続人である」と法務局に申し出るだけの簡易な手続きで、これを期限内に行えば義務を果たしたことになり過料を回避できます。他の相続人の同意は不要で、1人でも申し出られます。
相続人申告登記はあくまで義務を履行するための暫定措置です。売却や担保設定をするには、最終的に遺産分割を経た正式な相続登記が必要になります。分割協議がまとまったら、その日から3年以内に改めて登記します。
2. 住所・氏名の変更登記も義務に|2026年4月スタート
2026年4月1日からは、不動産の所有者が引っ越したり氏名が変わったりした場合の変更登記も義務になりました。期限は変更があった日から2年以内、正当な理由なく怠ると5万円以下の過料の対象です。
こちらも施行前の変更が対象に含まれ、その場合の期限は2028年3月31日。マイホームを買った後に転勤や結婚で住所・氏名が変わり、登記簿だけ昔のままという人はかなり多いはずです。
一度の申出で終わる「スマート変更登記」
毎回の登記は負担が大きいため、あわせてスマート変更登記という仕組みが用意されました。所有者が最初に一度だけ「検索用情報」(氏名・生年月日など)を法務局に申し出ておくと、法務局が住民基本台帳ネットワークで住所等の変更を定期的に確認し、本人の了解を得たうえで職権で登記してくれる制度です。申出自体は無料で、これを済ませておけば以後の申請義務を負いません。
| 比較項目 | 相続登記の義務化 | 住所等変更登記の義務化 |
|---|---|---|
| 施行日 | 2024年4月1日 | 2026年4月1日 |
| 原則の期限 | 取得を知った日から3年 | 変更の日から2年 |
| 施行前の分 | 2027年3月31日まで | 2028年3月31日まで |
| 過料の上限 | 10万円以下 | 5万円以下 |
| 負担軽減策 | 相続人申告登記 | スマート変更登記 |
法務省は、登記官が義務違反を把握しても直ちに過料を通知するのではなく、相当の期間を定めて履行を促し(催告)、それでも応じない場合に裁判所へ通知する運用を示しています。とはいえ催告に気づかないリスクもあるため、期限内の対応が安全です。
3. 共同親権がスタート|2026年4月1日施行
民法改正により、2026年4月1日から離婚後も父母双方が親権者になれるようになりました。これまでは離婚時にどちらか一方を親権者に決める単独親権のみでしたが、協議で共同親権か単独親権かを選べます。話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所が子の利益を基準に判断します。
- 協議離婚のとき父母の話し合いで共同親権か単独親権かを決め、離婚届に記載します。
- 合意できないとき家庭裁判所が、子の利益の観点から親権者を定めます。DVや虐待のおそれがある場合は単独親権とされます。
- すでに離婚している人施行日以降に家庭裁判所へ申し立てれば、共同親権への変更を求めることができます。自動的に共同親権になることはありません。
養育費・財産分与のルールも同時に変わった
今回の改正は親権だけではありません。取り決めがないまま離婚した場合に一定額を請求できる法定養育費、養育費債権に先取特権(他の債権者より優先して回収できる権利)を与える仕組み、そして財産分与の請求期間が離婚から2年→5年に延長されたことも実務的に大きな変更点です。
進学先や転居といった子の将来に関わる重要事項は父母の協議で決めますが、食事や習い事の送迎など日常的な監護は同居している親が単独で判断できます。すべてを二人で決めなければならない制度ではありません。
4. 戸籍のフリガナ|通知を放置した人がやるべきこと
2025年5月26日の改正戸籍法施行により、戸籍に氏名のフリガナが記載されることになりました。各自治体から通知が届き、1年以内に届出をしなければ、2026年5月26日以降、通知どおりのフリガナが職権で戸籍に記載されています。
問題は、通知のフリガナが本来の読みと違っていたのに気づかず放置してしまったケースです。この場合でも救済策があります。
職権で記載されたフリガナに限り、1回に限って届出だけで正しい読みに変更できます。それ以降(または自分で届け出た読みを変える場合)は、家庭裁判所の許可を得たうえで氏(名)の振り仮名の変更届を出す必要があり、ハードルが一段上がります。心当たりがある人は早めに本籍地の市区町村へ確認しましょう。
なお、年金や銀行の登録カナと戸籍のフリガナが食い違っても、直ちに手続きが止まるわけではありません。ただし今後はマイナンバーカードにもフリガナが記載されるため、読みは統一しておくほうが無難です。
5. 所有不動産記録証明制度|「隠れた不動産」を全国一括で調べる
2026年2月2日に始まったばかりの新制度です。ある人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を、全国まとめて一覧化した証明書を法務局が発行します。請求できるのは本人と、その相続人などの一般承継人です。
相続で最も困るのが「亡くなった親がどこに不動産を持っていたか分からない」という状況でした。従来は市区町村ごとの名寄帳を取り寄せる必要がありましたが、この制度で調査が1回で済むようになります。手数料は窓口での書面請求が1通1,600円、オンライン請求はやや安く設定されています。
証明書は請求書に書いた氏名・住所と一致する登記記録を拾う仕組みです。登記簿の住所が古いままの不動産や、旧姓で登記された不動産は抽出されないことがあります。心当たりのある住所は複数条件で請求するのが確実です。
6. 自筆証書遺言書保管制度|3,900円で家裁の検認が不要に
自分で書いた遺言書(自筆証書遺言)を法務局が原本として保管してくれる制度です。自宅保管でありがちな「紛失・改ざん・発見されない」というリスクを避けられます。手数料は次のとおりで、いずれも収入印紙で納めます。
| 手続き | 手数料 |
|---|---|
| 遺言書の保管申請 | 1件 3,900円 |
| 閲覧(モニター) | 1回 1,400円 |
| 閲覧(原本) | 1回 1,700円 |
| 遺言書情報証明書の交付 | 1通 1,400円 |
| 遺言書保管事実証明書の交付 | 1通 800円 |
最大のメリットは、保管された遺言書について家庭裁判所の検認手続きが不要になることです。相続開始後の手続きが目に見えて軽くなります。申請は遺言者本人が予約のうえ法務局へ出向く必要があり、代理申請はできません。撤回や住所変更の届出は無料です。
7. 困ったときの相談窓口|まず無料で使える2つ
人権相談(法務局)
いじめ、ハラスメント、DV、差別、インターネット上の誹謗中傷などは、法務省の人権擁護機関が無料で相談を受け付けています。電話は全国共通で、平日8時30分〜17時15分です。
- みんなの人権110番:0570-003-110
- こどもの人権110番:0120-007-110(無料)
- 女性の人権ホットライン:0570-070-810
- 職場や学校でのハラスメント・いじめ
- 家庭内の暴力、高齢者・障害者への虐待
- ネット上の書き込みによる被害(削除の助言も)
法テラス(日本司法支援センター)
法務省が所管する公的な法律相談窓口です。サポートダイヤル0570-078374(平日9〜21時、土曜9〜17時)で、問題に応じた制度や窓口を無料で案内してもらえます。収入・資産が一定基準以下の人は、弁護士・司法書士による無料法律相談(同一問題につき原則3回まで)や、弁護士費用の立替え(民事法律扶助)も利用できます。
手続き別・どこに行けばいい?早見表
| やりたいこと | 窓口 | 費用の目安 |
|---|---|---|
| 相続した不動産の名義変更 | 不動産の所在地を管轄する法務局 | 登録免許税(固定資産評価額の0.4%)ほか |
| 引っ越し後の住所変更登記 | 同上(スマート変更登記の申出も可) | 不動産1個につき1,000円ほか |
| 親の不動産をすべて調べる | 最寄りの法務局 | 書面請求1,600円 |
| 遺言書を安全に残す | 遺言書保管所(予約制) | 3,900円 |
| 戸籍のフリガナを直す | 本籍地または住所地の市区町村 | 無料(家裁の許可が必要な場合あり) |
| 離婚後の親権を変更したい | 家庭裁判所 | 申立手数料1,200円ほか |
登記の手続きは、多くの法務局で予約制の無料相談を受け付けています。書類の書き方レベルなら自力で進められることも多く、争いがある場合や不動産の数が多い場合に司法書士へ依頼する、という切り分けが現実的です。
よくある質問
Q. 相続登記をしないと、本当に過料を取られますか?
A. 正当な理由なく3年の期限を過ぎると10万円以下の過料の対象になります。ただし登記官がいきなり裁判所に通知するのではなく、期間を定めて登記を促す催告が先に行われる運用です。分割協議が長引いている場合は、まず相続人申告登記で義務を果たしておけば安全です。
Q. 昔の相続で名義が祖父のままです。期限はいつですか?
A. 制度開始前に発生した相続も対象で、期限は2027年3月31日です。世代をまたいで相続人が増えているケースほど調査に時間がかかるため、早めに戸籍の収集を始めることをおすすめします。
Q. すでに離婚していますが、自動的に共同親権になりますか?
A. なりません。2026年4月1日より前に離婚した場合、親権はそのままです。共同親権に変更したいときは、施行日以降に家庭裁判所へ親権者変更の申立てを行い、子の利益にかなうと判断される必要があります。
Q. 戸籍のフリガナの通知を見落としました。もう直せませんか?
A. 職権で記載された場合に限り、1回だけ届出のみで正しいフリガナに変更できます。この特例を使った後や、自分で届け出た読みを変える場合は家庭裁判所の許可が必要です。まず本籍地の市区町村に、記載されたフリガナを確認してください。
Q. 住所変更登記はスマート変更登記だけで済みますか?
A. 検索用情報の申出を済ませておけば、以後の住所・氏名変更について申請義務を負わず、法務局が職権で登記します。ただし申出前にすでに生じている変更は対象外になり得るため、過去の変更分は2028年3月31日までに登記しておくのが確実です。
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00565.html
- 法務省「住所等変更登記の義務化について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00693.html
- 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html
- 法務省「戸籍にフリガナが記載されます」https://www.moj.go.jp/MINJI/furigana/index.html
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji03_00051.html

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