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地震でFXはどうなる?「円高神話」はもう通用しない
阪神・東日本・熊本・能登、そして2026年7月の令和8年熊本地震。過去30年の大地震5つでドル円が実際にどう動いたかを一覧で検証し、被災したときにポジションをどう守るかまでを実務目線でまとめました。
2026年7月28日、熊本県で最大震度7を観測する令和8年熊本地震(M7.1)が発生しました。トレーダーの間で必ず話題になるのが「大地震が起きると円高になる」という経験則です。東日本大震災の直後にドル円が史上最高値の76円台まで急騰(円高)した記憶から、この「地震=円高」神話は長く語り継がれてきました。
しかし結論から言うと、この経験則はすでに崩壊しています。2024年の能登半島地震では円安が進み、2026年の令和8年熊本地震にいたっては、震度7の一報が流れた当日の東京市場でドル円はほぼ無反応でした。本記事では、過去30年の大地震5つのドル円反応を独自に整理した比較表と、「そもそもなぜ円高神話が生まれたのか」「被災した瞬間、自分のポジションはどうなるのか」を、FX初心者にもわかるように解説します。
過去30年の大地震でドル円はどう動いたか【比較表】
まずは事実の確認からです。1995年以降に国内で震度7を観測した主な地震(+能登半島地震)について、直後のドル円の反応を一覧にしました。この5事例を並べた比較は、意外なことにほとんど見かけません。
| 地震(発生日) | 規模 | 直後のドル円の反応 | その後の展開 |
|---|---|---|---|
| 阪神・淡路大震災 1995年1月17日 |
M7.3 震度7 |
じわじわ円高 | 約3か月後の4月19日に当時の史上最高値79.75円。ただし貿易摩擦や米利下げ観測など複合要因で、地震単独の影響とは言い切れない |
| 東日本大震災 2011年3月11日 |
M9.0 震度7 |
急激な円高 | 6日後の3月17日に76.25円と当時の史上最高値を更新。翌18日にG7協調介入が実施され、4月には85円台まで戻す |
| 熊本地震 2016年4月14日 |
M7.3 震度7 |
小幅な円買い | 地震単独の値動きは限定的。4月末にかけての106円台への円高は、日銀が追加緩和を見送った影響が主因とされる |
| 能登半島地震 2024年1月1日 |
M7.6 震度7 |
むしろ円安 | 年明けから円安が進行し1月5日には145円台へ。「大地震=円高」の経験則が明確に否定された事例として注目された |
| 令和8年熊本地震 2026年7月28日 |
M7.1 震度7 |
ほぼ無反応 | 発生は16時27分。当日17時時点の東京市場は1ドル=163.78円と前日比26銭の円安・ドル高で、震度7の一報を消化してもドル円はほぼ動かなかった |
なぜ「地震=円高」神話が生まれたのか
教科書的な説明は「レパトリ(資金還流)」
大地震で円高になるとされてきた根拠は、レパトリエーション(資金還流)です。日本の保険会社や企業が、保険金の支払いや復興資金のために海外資産を売って円に換えるので、円買い需要が発生する――という理屈です。日本は世界最大級の対外純資産国なので、「戻ってくるお金」の規模も大きいと考えられました。
実際に円を買ったのは日本企業ではなく投機筋
ところが、東日本大震災のときに実際に起きたことは少し違います。76.25円の史上最高値を付けた3月17日早朝の急騰は、「これからレパトリで円高になるはずだ」と先回りした海外投機筋の円買いが主導したとされています。実需の還流を待たずに思惑だけで相場が動いた、つまり「神話が神話を呼んだ」構図でした。この急激な円高に対しては、翌3月18日にG7(先進7か国)による協調介入が実施され、相場は反転しています。協調介入がどれほど異例の対応かは、歴代の為替介入まとめで詳しく解説しています。
円高神話が崩壊した3つの構造変化
では、なぜ2024年の能登半島地震や2026年の令和8年熊本地震では円高にならなかったのでしょうか。日本経済の構造が、2011年当時とは別物になっているからです。
- 貿易黒字国から貿易赤字国へ2011年頃までの日本は輸出で稼ぐ貿易黒字国で、「円は最終的に買われる通貨」でした。現在はエネルギー輸入やデジタル関連の支払い(いわゆるデジタル赤字)で恒常的に円を売る構造に変わっています。
- 日米金利差という重し2024年以降のドル円は日米の金利差が最大のテーマです。地震のような一時的なリスク要因より、金利差を狙った円売りの流れの方が圧倒的に強く、突発ニュースの影響が相対的に小さくなりました。
- 対外資産が「戻らないお金」になった日本企業の海外資産は、かつての証券投資中心から海外工場・海外子会社といった直接投資中心に変わりました。工場は災害が起きても売って円に戻せません。レパトリ神話の前提そのものが細っています。
被災したらポジションはどうなる?【実務編】
ここからが本題です。値動きの予想以上に大事なのに誰も書いていないのが、「自分が被災者になったとき、保有ポジションはどうなるのか」という実務の話です。停電・通信障害でスマホが使えない間も、為替市場は24時間動き続けます。
「いざとなったら電話注文」は幻想
もっとも危険な思い込みがこれです。実は大手ネットFX会社の多くは、災害・システム障害時でも電話での注文を受け付けていません。たとえばDMM FXは公式FAQで「電話注文は受け付けておりません」と明言しています。障害時は会社側でも顧客情報へのアクセスが困難になる恐れがあり、その状況で受注するとかえって事故につながるため、というのが理由です(DMM FX公式FAQ)。証券会社によっては電話対応があっても「株式の取消注文のみ」など範囲が限定されており、FXの決済を電話で滑り込ませることは基本的にできないと考えるべきです。
ロスカットは被災中も自動で執行される
一方で、証拠金維持率が基準を下回った場合の強制ロスカットは、あなたがログインできない間もシステムが自動で執行します。これは恐ろしい話に聞こえますが、見方を変えれば「連絡が取れない間に損失が無限に膨らむことを防ぐ最後の安全装置」でもあります。ロスカットを「発動させない」のではなく、「発動しても生活資金に影響しない証拠金管理」をしておくことが本質です。
発災直後の優先順位
- 命と安全の確保が最優先ポジションのことは忘れて避難してください。相場で失うのは最大でも証拠金ですが、命は取り返せません。強い揺れの直後の数分をチャート確認に使うのは本末転倒です。
- 安全確保後、通信が生きていれば建玉を確認スマホの回線は輻輳(ふくそう)で音声通話が繋がりにくくても、データ通信は生きていることが多いです。取引アプリにログインできたら、含み損益より先に証拠金維持率を確認します。
- 迷ったら「減らす」先行きが読めない状況で両建てなどの小細工は不要です。ポジションを縮小または決済して現金比率を上げるのが、避難生活とメンタルの両面でいちばん合理的です。
平時にやっておく災害防衛5か条
- すべてのポジションに逆指値を置く新規注文と同時に損切りラインを入れておけば、通信が途絶しても損失は限定されます。災害対策としてはこれが9割です。注文の種類に不安がある方は当ブログの注文方法まとめで復習してください。
- 実効レバレッジは3倍以内に維持率に余裕があれば、数円の急変動でもロスカットまで到達しません。「1週間ログインできなくても死なない口座」が目安です。
- 回線と電源を二重化するモバイルバッテリーの常備と、キャリア回線+Wi-Fi(可能なら別キャリアのサブ回線)の2系統を確保。災害時はデータ通信の方が生き残りやすいことも覚えておきましょう。
- 別端末からログインできる状態にしておくスマホの紛失・破損に備え、家族のタブレットや避難先のPCなど第2の端末でログインできるか平時にテストしておきます。二段階認証の受信手段も要確認です。
- 口座のある会社の「障害時ルール」を読んでおく電話注文の可否、ロスカット基準、メンテナンス時間。この3点だけでも把握しておくと、いざというときの判断が段違いに速くなります。
南海トラフ級の巨大地震が来たら円はどうなる?
最後に、多くの人が気になる「次の巨大地震」です。結論として、円高・円安のどちらに動くかを事前に断定することはできません。2011年型の「思惑先行の円買い」が再現される可能性と、「日本経済の毀損を嫌気した円売り」が勝つ可能性の両方があり、構造変化後の日本では後者のリスクが以前より高まっているというのが実情です。
ただし、方向は読めなくても「乱高下と流動性の低下がセットで来る」ことはほぼ確実です。スプレッドの拡大や約定の滑り(スリッページ)が平時の比ではなくなるため、直後に飛び乗る売買はプロでも危険です。また、急激な円高に振れた場合は、東日本大震災時のG7協調介入のように政府・日銀が動く可能性が高いことも頭に入れておきましょう。過去の介入実績は財務省の外国為替平衡操作の実施状況で誰でも確認できます。
地震とFXに関するよくある質問
Q. 地震が起きたら円高になるって本当ですか?
A. かつての経験則ですが、現在は通用しません。東日本大震災(2011年)では6日後に76.25円まで円高が進みましたが、能登半島地震(2024年)では逆に円安が進行し、令和8年熊本地震(2026年)では震度7の当日でもドル円はほぼ無反応でした。貿易赤字化や日米金利差など日本経済の構造変化が背景にあります。
Q. 被災してスマホが使えないとき、電話でFXの決済はできますか?
A. 大手ネットFX会社の多くは、システム障害時・災害時でも電話注文を受け付けていません。DMM FXは公式FAQで受け付けない方針と理由を明言しています。通信が使えなくなる前提で、ポジションには常に逆指値(損切り注文)を置いておくことが唯一の実効的な備えです。
Q. 避難中にロスカットされてしまうことはありますか?
A. あります。強制ロスカットは証拠金維持率が基準を下回れば、本人がログインできない間もシステムが自動執行します。ただしこれは損失の無限拡大を防ぐ安全装置でもあります。実効レバレッジを3倍以内に抑えておけば、数円規模の急変動でもロスカットに至る可能性は大きく下がります。
Q. 南海トラフ地震が起きたらドル円はどちらに動きますか?
A. 事前に断定はできません。投機筋の思惑による円買い(2011年型)と、日本経済の毀損を嫌気した円売り(2024年型)の両シナリオがあります。確実性が高いのは「乱高下」「スプレッド拡大」「流動性低下」がセットで起きることで、直後の飛び乗り売買を避け、事前の逆指値と低レバレッジで備えるのが現実解です。
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本記事の地震情報は気象庁「令和8年熊本地震ポータルサイト」の発表に基づいています。相場データは報道各社の市況報道をもとに構成しており、投資判断はご自身の責任でお願いします。
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