歴代データ完全版
日本の為替介入は、いつ・いくら・どんな結果だったのか。財務省の公表データをもとに、1985年のプラザ合意から2026年8月の日米協調介入まで、歴代の為替介入を年表・ランキング・時代別の5期に整理しました。
単一局面で過去最大
の円売り介入
史上最長の円売り局面
「為替介入って、過去にいつ・いくら行われたの?」——2026年は4〜5月に過去最大の11.7兆円、7月30日にも推計8兆円超の円買い介入が実施され、歴代の為替介入への関心が一気に高まっています。
この記事では、財務省が公表する「外国為替平衡操作の実施状況」のデータをもとに、歴代の為替介入を1985年から2026年まで完全網羅します。年表と規模ランキングで全体像をつかみ、時代別の5期に分けて「なぜ介入したのか」「結果はどうだったのか」まで解説します。為替介入そのものの仕組み(お金の出どころ・実行の流れ)は、姉妹記事「為替介入とは?仕組み・効果・過去の実施一覧をわかりやすく解説」をご覧ください。
歴代の為替介入 完全年表【1985〜2026年】
まずは歴代の為替介入の全体像を1枚の年表で確認しましょう。「円買い」は円安を止める介入、「円売り」は円高を止める介入です。日本の介入史は「円高と戦った時代(円売り)」が長く、2022年以降に「円安と戦う時代(円買い)」へ大転換した、という流れが一目で分かります。
| 時期 | 局面 | 方向 | 規模 | 結果 |
|---|---|---|---|---|
| 1985年9月 | プラザ合意(G5協調) | ドル売り協調 | 各国協調 | 1ドル235円→約1年で150円台へ。歴史上最も有名な協調介入 |
| 1991〜92年 | バブル崩壊後の円安 | 円買い | 断続的 | 財務省の公表データが残るのはこの1991年4月以降 |
| 1995年 | 超円高79.75円 | 円売り | 断続的+日米協調 | 7月の「七夕介入」と8月の日米協調で流れが反転。9月に100円台回復 |
| 1997〜98年 | 金融危機の円安147円 | 円買い | 1998年4月に約2.8兆円 | 6月17日には日米協調の円買いも実施。年後半に円高へ大反転 |
| 1999〜2000年 | ゼロ金利下の円高 | 円売り | 断続的 | 101円台の防衛ラインを意識した円売りが続く |
| 2003〜04年 | デフレ下の円高(溝口介入) | 円売り | 約35兆円 | 史上最長・最大の円売り局面。覆面介入を多用し、以後6年半介入なしに |
| 2010年9月 | 15年ぶり円高82円台 | 円売り | 約2.1兆円 | 6年半ぶりの介入。効果は短期間で剥落 |
| 2011年 | 震災後・史上最高値75.32円 | 円売り | 年間計約14兆円 | 3月にG7協調、10月31日に単日最大の8兆722億円 |
| 2022年9〜10月 | 32年ぶり円安151円 | 円買い | 計約9.2兆円 | 24年ぶりの円買い介入。151円台から一時130円台への反転の起点に |
| 2024年4〜7月 | 34年ぶり円安160円 | 円買い | 計約15.3兆円 | GWの9.8兆円と7月の5.5兆円。「不意打ち介入」が定着 |
| 2026年4〜8月 | 39年ぶり円安163円 | 円買い | 11.7兆円+推計8兆円超 | 単一局面で過去最大を更新。7月末には28年ぶりの日米協調へ発展 |
ポイント:介入の「方向」が2022年に大転換した
1991年以降の介入累計は約80兆円が円売り(円高対策)で、円買い(円安対策)は少数派でした。ところが2022年以降は円買い一色になり、しかも1回あたりの規模が過去の円売り介入を上回っています。歴代の介入史のなかで、いまは「円安と戦う特異な時代」だと言えます。
為替介入の規模ランキング【単日・局面別】
歴代の為替介入を「金額」で並べると、規模のインフレぶりがよく分かります。まずは単日の介入額ランキングです。
- 18兆722億円 — 2011年10月31日(円売り)史上最高値75.32円を受けた単独介入。単日として公表史上最大です。
- 25兆9,185億円 — 2024年4月29日(円買い)160.24円を付けた直後、祝日の薄商いを突いた「不意打ち介入」。円買いでは単日最大です。
- 35兆6,202億円 — 2022年10月21日(円買い)151.94円から一時146円台まで押し下げた深夜の介入。当時の円買い記録でした。
- 44兆5,129億円 — 2011年8月4日(円売り)震災後の円高進行に対する単独介入です。
- 53兆8,700億円 — 2024年5月1日(円買い)FOMC直後の流動性が薄い時間帯を狙った追撃の介入です。
メモ:2026年7月30日の介入は「歴代1位」になる可能性
2026年7月30日の円買い介入は、日銀当座預金の増減要因からの市場推計で約8.4兆円とみられています。財務省の月次公表で確定すれば、2011年10月31日の8兆722億円を上回る単日として歴代最大の介入になる可能性があります(確定は8月末の公表待ち)。詳しくは「ドル円はなぜ5円急落した?7月30日の為替介入の規模と今後の見通し」で解説しています。
次に局面別(ひとまとまりの介入期間)の総額ランキングです。こちらは2026年が既にトップに立っています。
| 順位 | 局面 | 総額 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 2026年4月28日〜5月27日 | 11兆7,349億円 | 円買い |
| 2位 | 2024年4月29日〜5月1日 | 約9兆7,885億円 | 円買い |
| 3位 | 2022年9月22日〜10月24日 | 約9兆2,000億円 | 円買い |
| 4位 | 2024年7月11日〜12日 | 約5兆5,000億円 | 円買い |
| 参考 | 2003年1月〜2004年3月(溝口介入) | 約35兆円(15カ月累計) | 円売り |
【第1期】プラザ合意とバブル期:協調介入の原点(1985〜1990年)
歴代の為替介入を語るうえで出発点になるのが、1985年9月22日のプラザ合意です。ニューヨークのプラザホテルに日米英独仏のG5が集まり、行き過ぎたドル高を是正するための協調ドル売りに合意しました。
効果は劇的でした。合意前に1ドル235円前後だったドル円は、わずか1年ほどで150円台まで急落。輸出企業を直撃した円高不況への対策として日銀が低金利を続けたことが、のちのバブル経済の一因になったとも言われます。「介入が経済の歴史そのものを動かした」最大の事例です。
【第2期】超円高との戦い:79円と七夕介入(1991〜1998年)
財務省が介入データを公表しているのは1991年4月以降です。この時代の主戦場は「円高」でした。
- 1995年4月19日:1ドル=79.75円の史上最高値(当時)阪神・淡路大震災後の資本還流思惑などで超円高が進行。輸出企業の想定レートを大きく超え、日本経済は悲鳴を上げました。
- 1995年7月7日:「七夕介入」で反撃開始大規模な円売り・ドル買い介入を実施。8月2日には日米協調介入に発展し、市場の流れが変わりました。
- 1995年9月:100円台を回復協調介入と日米の政策協力が奏功し、円高は収束。歴代の介入で「最も成功した」と評価される局面です。
- 1997〜98年:今度は円安に急転換アジア通貨危機と国内金融危機で円は147円台まで下落。1998年4月9〜10日に約2.8兆円の円買い介入、6月17日には日米協調の円買い介入が行われました。2026年8月の日米連携は、実にこれ以来28年ぶりです。
【第3期】溝口介入:史上最長・35兆円の円売り(1999〜2004年)
デフレが深刻化した2000年代前半、円高は「デフレを輸入する」要因として警戒されました。そこで行われたのが、歴代で最も長く・最も大きい円売り介入、通称「溝口介入」です。
2003年1月に就任した溝口善兵衛財務官のもと、2004年3月までの15カ月間で総額約35兆円という空前の円売り・ドル買いが実施されました。これは1991年以降の介入累計額の4割以上に相当します。介入の事実を公表せずに行う「覆面介入」を多用した点も特徴で、市場に「いつ介入が入るか分からない」という警戒感を植え付けました。
注意:規模の割に「劇的な円安」にはなっていない
35兆円を投じても、ドル円は110円前後から120円程度への緩やかな推移にとどまりました。溝口介入は相場を大きく動かすというより、101円台の防衛ラインを守り抜く「持久戦」でした。「介入額の大きさ=相場が動く幅」ではないことを示す代表例です。
この局面を最後に、日本は6年半にわたって介入を封印します。
【第4期】リーマン・震災後の円高:単日最大8兆円(2010〜2011年)
リーマンショック後の世界的な金融緩和で、円は再び独歩高に。2010年9月15日、政府・日銀は6年半ぶりとなる約2.1兆円の円売り介入を82円台で実施しました。
そして2011年は、歴代の介入史でも屈指の激動の年になります。
- 2011年3月18日:G7協調介入東日本大震災直後の投機的な円買いで一時76円台へ。G7が声明とともに協調介入に踏み切り、急激な円高を止めました。
- 2011年8月4日:4兆5,129億円の単独介入米国債格下げ懸念で再び円高が進み、当時最大規模の単独介入を実施しました。
- 2011年10月31日:史上最高値75.32円→単日最大8兆722億円ドル円が75.32円の史上最高値を付けた直後、現在も単日最大記録として残る8兆722億円の円売り介入を敢行。11月上旬には覆面介入も続けました。
それでも円高の根本原因(日米金利差の消滅)は変わらず、円が本格的に反転したのは2012年末のアベノミクス開始後でした。「介入は時間稼ぎ、トレンドを決めるのは金融政策」という教訓を残した局面です。
【第5期】歴史的円安と円買いの時代:9.2兆→15.3兆→20兆円超(2022〜2026年)
2022年、日米の金利差拡大で円は一転して歴史的な下落局面に入ります。ここから現在まで続くのが「円買い介入の時代」です。
- 2022年9月22日:24年ぶりの円買い介入(2兆8,382億円)145.90円で発動し、一時140円台まで約5円押し下げました。円買いは1998年6月以来です。
- 2022年10月21日・24日:深夜の覆面介入(計約6.3兆円)151.94円から146円台へ急落させた深夜介入は市場の語り草に。2022年の総額は約9.2兆円に達しました。
- 2024年4月29日・5月1日:GWの不意打ち(計約9.8兆円)160.24円を付けた直後、祝日とFOMC直後という「薄い時間帯」を狙い撃ち。7月11〜12日にも約5.5兆円を投入しました。
- 2026年4月28日〜5月27日:過去最大の11兆7,349億円160円台に乗せた円安に対し、単一局面として歴代最大の円買い介入を実施。ただし約1カ月で押し下げた幅は正味1円程度にとどまり、「勝てない介入」との評価も出ました。
- 2026年7月30日:163円台からの5円急落(推計8.4兆円)39年ぶりの円安水準に対する大規模介入で、確定すれば単日の歴代記録を更新する可能性があります。
- 2026年7月31日:28年ぶりの日米協調介入日本と米国が同時に円買い介入を実施。円買いでの日米連携は1998年6月以来28年ぶりで、片山財務相が連携を表明しました。詳細は「日米協調介入はなぜ実現?28年ぶり円買い連携の全貌と今後のドル円」で解説しています。
歴代の為替介入から見える3つの法則
41年分の介入史を並べると、共通するパターンが見えてきます。
法則①:単独介入は「時間稼ぎ」、協調介入は「流れを変える」
プラザ合意(1985年)、七夕介入後の日米協調(1995年)、震災後のG7協調(2011年)は、いずれも相場の転換点になりました。一方、単独介入の効果は多くの検証で1〜2カ月(32〜42営業日程度)で剥落するとされます。歴代の介入で「勝った」のはほぼ協調介入です。2026年7月31日の日米協調介入が注目されるのはこのためです。
法則②:介入額は時代とともに桁が上がる
市場規模の拡大とともに、1回あたりの介入額は2.1兆円(2010年)→8兆円(2011年)→5.9兆円(2024年)→11.7兆円/局面(2026年)と膨張してきました。外国為替市場の1日の取引量は数兆ドル規模に達しており、相場を動かすのに必要な「弾」はインフレし続けています。
法則③:トレンドを最終的に決めるのは金利差
2011年の円高は8兆円の介入ではなくアベノミクスで、1995年の円高は協調介入+日米の政策転換で終わりました。介入は「スピード違反の取り締まり」であって、道路の傾き(金利差)そのものは変えられません。だからこそ介入と同時に、FOMCや日銀会合などの経済指標を見ることが重要になります。
2026年8月現在:歴代最大級の攻防が進行中
2026年の円買い介入は、4〜5月の11.7兆円と7月30日の推計8.4兆円を合わせると累計20兆円規模に達し、単年として歴代最大がほぼ確実な情勢です。舞台は「単独介入」から「日米連携」のフェーズに移っており、155円ラインの攻防が続いています。
8月末には財務省から7月分の介入実績が公表され、7月30日の介入額が確定します。最新のドル円の見通しは「2026年8月 ドル円相場の見通し|介入ラインとジャクソンホールが焦点」で随時更新しています。
まとめ:歴代の為替介入は「円高との戦い」から「円安との戦い」へ
歴代の為替介入を振り返ると、日本の通貨史そのものが見えてきます。
- 1985〜2011年:主戦場は円高。プラザ合意・七夕介入・溝口介入・震災後のG7協調と、円売り介入が介入史の大半(累計約80兆円)を占めた
- 2022年〜現在:24年ぶりの円買い介入を境に「円安と戦う時代」へ大転換。介入規模は9.2兆円→15.3兆円→単年20兆円規模と過去最大を更新中
- 歴史の教訓:単独介入は時間稼ぎに終わり、流れを変えたのは協調介入と金融政策の転換。2026年の日米連携はまさに歴史の必勝パターンをなぞる動き
介入の一次データは財務省が四半期・月次で公表しており、誰でも無料で確認できます。ニュースで「介入か?」と話題になったら、本記事の年表と照らし合わせてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 歴代で過去最大の為替介入はいくらですか?
A. 単一局面では2026年4月28日〜5月27日の円買い介入11兆7,349億円が過去最大です。単日では2011年10月31日の円売り介入8兆722億円が最大ですが、2026年7月30日の介入(推計約8.4兆円)が確定すれば更新される可能性があります。
Q. 円買い介入と円売り介入、歴代ではどちらが多いですか?
A. 圧倒的に円売り介入(円高対策)です。1991年以降の介入累計のうち約80兆円が円売りで、円買いは1997〜98年と2022年以降に限られます。日本は長らく「円高と戦う国」であり、円安と戦う現在はむしろ歴史的に特異な局面です。
Q. 日米の協調介入は過去に何回ありましたか?
A. 主な協調介入は、1985年のプラザ合意(G5)、1995年の円高阻止(日米)、1998年の円安阻止(日米)、2011年の震災後円高阻止(G7)、そして2026年7月31日の円買い協調です。円買い方向での日米連携は1998年6月以来28年ぶりです。
Q. 歴代の為替介入で最も成功したのはどれですか?
A. 1995年の円高阻止が代表例です。79.75円の史上最高値(当時)から、七夕介入と日米協調介入を経て9月には100円台まで戻し、トレンド転換に成功しました。逆に2003〜04年の溝口介入は約35兆円を投じても相場は緩やかにしか動かず、「介入額と効果は比例しない」教訓になっています。
Q. 為替介入の記録はどこで確認できますか?
A. 財務省が「外国為替平衡操作の実施状況」として、1991年4月以降の全介入の日付・金額・通貨ペアを公表しています。日次ベースの実績は四半期ごと、月間総額は毎月末に財務省ウェブサイトで公開され、誰でも無料で閲覧できます。
Q. 2026年の為替介入は合計いくらになりますか?
A. 確定分だけで4〜5月の11兆7,349億円があり、7月30日の推計約8.4兆円を合わせると累計20兆円規模です。これまで年間最大だった2024年の約15.3兆円を上回り、単年として歴代最大となる公算が大きい状況です。
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