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マイクロソフト希望退職6万人はなぜ?従業員の27%、日本は対象外
米マイクロソフトは2026年10月26日(米国時間)、米国・カナダ・英国・インドの一部の従業員を対象に、希望退職の制度「Voluntary Exit Offer(自主退職オファー)」を始めると公式ブログで発表しました。報道によると対象は約6万人で、全従業員の4分の1を超えます。なぜ今なのか。同社が米証券取引委員会(SEC)に出している年次報告書(10-K)の数字を8年分並べて読み解きます。
この記事の結論
- マイクロソフトは10月26日、4カ国の職位レベル70以下の従業員のうち、参加する部門の人を対象に希望退職を募ると発表しました。報道によると対象は約6万人で、12月上旬までに応じるか決め、応じた人は12月31日付で退社します。
- 6万人は、2026年6月末の従業員数223,000人(10-K)の約27%にあたります。日本経済新聞によると、日本は対象外です。
- 背景はAI向けの巨額投資です。10-Kの数字で、設備投資(有形固定資産の取得)は2019年度の139億ドルから、2026年度は1,159億ドル(約8.3倍)に増えました。一方、従業員数は2024年度の228,000人をピークに減っています。
- 応募するかは本人の自由で、何人辞めるかは決まっていません。4月の早期退職と同じ「3割」が応じれば、約1万8,000人(全従業員の約8%)になる計算です。

マイクロソフトの希望退職とは?発表された中身
マイクロソフトの最高人事責任者(CPO)エイミー・コールマン氏は10月26日、従業員向けのメッセージを公式ブログに掲載し、新しい希望退職の制度「Voluntary Exit Offer」を始めると明らかにしました。ブログでは、対象はカナダ・インド・英国・米国の、制度に参加する部門で働く職位レベル70以下の対象従業員で、期間限定の任意の制度だと説明しています。参加するかどうかは部門ごとに違い、「事業の優先順位や顧客との約束、人員のニーズによって異なる」としています。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 名称 | Voluntary Exit Offer(自主退職オファー) | 公式ブログ |
| 対象の国 | カナダ・インド・英国・米国の4カ国 | 公式ブログ |
| 対象者 | 制度に参加する部門の、社内の職位レベル70以下の対象従業員。部門によっては参加しない | 公式ブログ |
| 対象人数 | 約6万人(全従業員の約27%) | 日本経済新聞・CNBC・CRN |
| 対象の部門(例) | 「AIエクスペリエンス」、AIアシスタント「Copilot(コパイロット)」、財務、人事、ゲーム部門「Xbox」など | ロイター(関係筋) |
| 対象外の部門(例) | マーケティング、商業部門、セキュリティーなど | ロイター(関係筋) |
| 期限と退社日 | 12月上旬までに応じるかを判断し、応じた人は12月31日付で退社 | 共同通信・CNBC |
| 条件 | 財務的な支援とキャリア計画の支援つき。条件は同社の通常の退職手当(severance)に近い | 公式ブログ・Business Insider |
| 日本 | 対象外 | 日本経済新聞 |
公式ブログには対象人数は書かれていません。約6万人という数字は、日本経済新聞が「同社によると」、CRNが「マイクロソフトが確認した」として伝えています。部門の例は関係筋の話として報じたロイターによる。
「将来社外でのキャリアを考えている人への新しい選択肢」
コールマン氏はこの制度について、ロイターの訳によると「将来的に社外でのキャリアを検討している対象従業員に対し、支援を受けながら今すぐ転身するための新たな選択肢を提供するもの」であり、対象の部門にとっては「変化するニーズに合わせて人員体制を調整するための新たな手段」にもなると説明しました。また、ブログでは「今年初めの早期退職プログラム(Voluntary Retirement Program)で学んだことを土台にしている」とも書いています。
4月の早期退職より対象が広い
CNBCによると、4月に発表した早期退職プログラムはシニアディレクター以下が対象でしたが、今回はそれより上のバイスプレジデント級まで広がります。4月の制度は米国だけで、年齢と勤続年数の合計が70以上の人が条件でしたが、今回は年齢の条件がなく、国も4カ国に広がりました。
条件について、Business Insiderは同社の広報担当者の話として「通常の退職手当(severance)に近い内容になる」と伝えています。同誌によると、今年の米国での人員削減のときの退職手当は、最低60日分の基本給(その間は在籍扱い)に加え、多くの人は勤続年数などに応じて最大39週分の基本給でした。今回の対象者には、詳しい条件がメールで届くとされています。
なぜ希望退職?AI投資で膨らむ設備投資
ロイターや共同通信は、今回の希望退職の背景に人工知能(AI)関連の巨額投資があると伝えています。マイクロソフトは他の大手IT企業と同じように、AI向けのデータセンターや半導体に巨額の資金を投じており、そのコストに見合う収益が得られるのか、投資家の厳しい目が注がれています。
実際の数字を、同社の年次報告書(10-K)のキャッシュフロー計算書にある「有形固定資産の取得(Additions to property and equipment)」で確かめました。マイクロソフトの会計年度は7月から翌年6月までです。
| 会計年度 | 売上高 | 設備投資 | 売上高に対する割合 |
|---|---|---|---|
| 2019年度 | 1,258億ドル | 139億ドル | 11.1% |
| 2020年度 | 1,430億ドル | 154億ドル | 10.8% |
| 2021年度 | 1,681億ドル | 206億ドル | 12.3% |
| 2022年度 | 1,983億ドル | 239億ドル | 12.0% |
| 2023年度 | 2,119億ドル | 281億ドル | 13.3% |
| 2024年度 | 2,451億ドル | 445億ドル | 18.1% |
| 2025年度 | 2,817億ドル | 646億ドル | 22.9% |
| 2026年度 | 3,318億ドル | 1,159億ドル | 34.9% |
SEC EDGARの10-K(XBRLデータ)から当ブログが集計。設備投資はファイナンス・リースを含まない「有形固定資産の取得」の額。1億ドル未満は四捨五入。
2019年度に139億ドルだった設備投資は、2026年度には1,159億ドルと約8.3倍になりました。2023年度(281億ドル)からの3年間だけでも約4.1倍です。2026年度は売上高が前年度比17.8%増えたのに対し、設備投資は79.6%増で、売上高の約35%を設備投資に回した計算です。2019年度は約11%でした。
投資はさらに増える見通しです。CNBCによると、マイクロソフトは7月の時点で、7〜9月期の設備投資が500億ドルを超えると説明していました(前年同期はファイナンス・リースを含めて349億ドル)。ロイターは、同社が2026暦年の設備投資額を1750億ドルと見込んでいると伝えています。
「AIに置き換える」とは書いていない
コールマン氏は7月の人員削減の際、公式ブログで「今日なくなる仕事はAIに置き換えられるわけではない」と書いたうえで、AIが仕事の進め方を変えていることも認めていました。10月26日のブログにはAIという言葉は出てきません。今回の希望退職は、AIそのものによる置き換えというより、AIへの投資にお金を回すための費用の見直しと報じられています。
独自集計:マイクロソフトの従業員数は2024年がピーク
マイクロソフトは毎年の10-Kに、6月30日時点のフルタイム従業員数を書いています。2019年から2026年までの8年分を並べました。
| 年度末(6月30日) | 従業員数(米国/米国外) | 前年比 | 1人あたり売上高 |
|---|---|---|---|
| 2019年6月 | 144,000人 (85,000/59,000) |
— | 87.4万ドル |
| 2020年6月 | 163,000人 (96,000/67,000) |
+19,000人 | 87.7万ドル |
| 2021年6月 | 181,000人 (103,000/78,000) |
+18,000人 | 92.9万ドル |
| 2022年6月 | 221,000人 (122,000/99,000) |
+40,000人 | 89.7万ドル |
| 2023年6月 | 221,000人 (120,000/101,000) |
±0人 | 95.9万ドル |
| 2024年6月 | 228,000人 (126,000/102,000) |
+7,000人 | 107.5万ドル |
| 2025年6月 | 228,000人 (125,000/103,000) |
±0人 | 123.6万ドル |
| 2026年6月 | 223,000人 (121,000/102,000) |
−5,000人 | 148.8万ドル |
従業員数は各年の10-K(Item 1「Human Capital Resources」)の記載。1人あたり売上高は、その年度の売上高を年度末の従業員数で割った当ブログの計算。
従業員数は2019年の144,000人から2024年・2025年の228,000人まで増え、2026年6月末は223,000人と5,000人(2.2%)減りました。その間も売上高は伸び続け、従業員1人あたりの売上高は2019年度の約87.4万ドルから2026年度は約148.8万ドルに増えています。同じ計算で、1人あたりの設備投資は約9.7万ドルから約52.0万ドルになりました。
6万人は全従業員の26.9%
今回の対象とされる約6万人は、2026年6月末の従業員223,000人の26.9%です。日本経済新聞やCNBCの「約27%」、共同通信やロイターの「4分の1超」と一致します。ただし、これは「応募できる人」の数で、実際に辞める人の数ではありません。
職種別では「運用」と「研究開発」が増えた
| 職種 | 2019年6月 | 2026年6月 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 運用(サポート・コンサル・データセンターなど) | 47,000人 | 89,000人 | +42,000人 |
| 研究開発 | 47,000人 | 77,000人 | +30,000人 |
| 営業・マーケティング | 38,000人 | 43,000人 | +5,000人 |
| 管理部門(一般管理) | 12,000人 | 14,000人 | +2,000人 |
10-Kの職種区分による。2024年以降の10-Kでは「運用」にデータセンター運用が含まれると明記されています。
2019年からの7年間で最も増えたのは、データセンターの運用などを含む「運用」で4万2,000人増、次が「研究開発」の3万人増でした。営業・マーケティングは5,000人増にとどまります。研究開発は2024年の81,000人から2026年は77,000人に減っており、ここ2年は人を増やすより設備にお金を回す姿が数字に表れています。
マイクロソフトの人員削減はいつから?2023年からの流れ
マイクロソフトはここ数年、人員の見直しを続けています。公式発表と報道で確認できた主な動きをまとめました。
- 2023年1月約1万人を削減サティア・ナデラCEOが公式ブログで発表。従業員全体の5%未満で、10-Kによると、この削減に伴う従業員の退職手当として8億ドルを計上しました。
- 2025年5月約6,000人を削減CNBCによると、全従業員の約3%。階層・部門・地域を問わない削減でした。
- 2025年7月約9,000人を削減CNBCによると、全従業員の4%未満。新しい会計年度が始まった直後の発表でした。
- 2026年4月初めての早期退職制度CNBCによると、米国の従業員の約7%が対象。年齢と勤続年数の合計が70以上の、シニアディレクター以下の人が条件でした。
- 2026年7月約4,800人を削減公式ブログで発表。全従業員の約2.1%で、主に商業部門とXboxが対象。早期退職には対象者の30%超が参加しました。
- 2026年10月希望退職「Voluntary Exit Offer」4カ国・職位レベル70以下が対象。報道によると約6万人が応募でき、12月31日付で退社します。
2023年1月・2026年7月は公式ブログ、2025年5月・7月と2026年4月はCNBCの報道による。
これまでの削減は会社が人数を決めて職をなくす形でしたが、2026年に入ってからは本人が選ぶ「早期退職」「希望退職」を組み合わせる形に変わってきました。コールマン氏は7月のブログで、過去1年に4,000人超を社内の別の仕事に配置転換したとも書いています。なお、今回の6万人は「応募できる人数」なので、2023年の1万人(2022年6月末の従業員の約4.5%)などの削減人数と単純には比べられません。
希望退職で何人辞める?応募率ごとの試算
実際に何人が辞めるかは、対象者がどれだけ応じるかで決まります。CNBCによると、関係者は「今回は目標の人数を決めていない」と話しています。参考になるのが4月の早期退職です。公式ブログによると対象者の30%超が参加し、Business Insiderは対象が約9,000人で約3分の1が応じたと伝えています(10-Kの米国従業員125,000人の7%は約8,750人で、ほぼ一致します)。同じ応募率を6万人に当てはめて試算しました。
| 応募率 | 退職する人数 | 全従業員に対する割合 |
|---|---|---|
| 10%(低め) | 約6,000人 | 2.7% |
| 20%(中間) | 約12,000人 | 5.4% |
| 30%(4月の早期退職と同程度(30%超)) | 約18,000人 | 8.1% |
| 33%(Business Insiderが伝えた「約3分の1」) | 約20,000人 | 9.0% |
当ブログの試算。全従業員は2026年6月末の223,000人。対象者の年齢構成などが4月とは違うため、同じ応募率になるとは限りません。
4月と同じ30%なら約1万8,000人(全従業員の約8%)で、2023年1月の1万人を上回ります。ただし4月の制度は年齢と勤続年数の条件があり、退職を考えやすい人が対象でした。今回は年齢の条件がないため、応募率がどうなるかは分かりません。Business Insiderによると、同社の広報担当者は「現時点で次の希望退職の予定はない」と話しています。
日本マイクロソフトへの影響は?日本は対象外
日本経済新聞によると、同社は日本は対象外だと説明しています。公式ブログでも、対象の国はカナダ・インド・英国・米国の4カ国だけです。10-Kには国別の従業員数はなく、米国外の従業員は合わせて10万2,000人と書かれているだけなので、4カ国のうち米国以外で何人が対象かは分かりません。
WindowsやMicrosoft 365、Xboxなど、日本の利用者が使うサービスへの影響について、10月26日の公式ブログは何も触れていません。対象部門にはCopilotやXboxが含まれると報じられていますが、どの開発チームから何人が辞めるかは12月にならないと分からず、現時点でサービスへの影響を判断する材料はありません。
日本企業の「希望退職」との違い
日本でも企業が希望退職を募ることはありますが、今回のマイクロソフトは業績が悪いからではなく、売上高・利益とも過去最高の水準のなかで募集している点が特徴です。10-Kによると2026年度の純利益は1,337億ドルでした。人を減らした分のお金を、AIのデータセンターに回す動きと受け止められています。
今後の注目点は?10月28日の決算と12月の締め切り
| 日付 | 予定 | 確認した資料 |
|---|---|---|
| 10月28日(米国時間) | 2027年度第1四半期(7〜9月期)の決算発表。ロイターによると市場の取引終了後で、日本時間では29日の朝になる見込み | 同社IRサイト・ロイター |
| 12月上旬 | 対象者が希望退職に応じるかを決める期限 | 共同通信・CNBC |
| 12月31日 | 応じた人の退社日 | 共同通信・CNBC |
まず注目されるのは、10月28日の決算発表で、設備投資の額や今後の見通し、希望退職にかかる費用について説明があるかどうかです。CRNによると、同社は7月の決算資料で、4月の早期退職の費用が想定より少なかったと説明していました。今回も、応募の人数によって退職手当の費用が変わるとみられます。
株の売買をすすめるものではありません
この記事は、発表と公表データから今回の希望退職の意味を整理したものです。マイクロソフト株の今後の値動きを予想したり、売買をすすめたりするものではありません。
マイクロソフトの希望退職についてよくある質問
Q. マイクロソフトの希望退職の対象は何人?
A. 報道によると約6万人で、日本経済新聞によると全従業員の約27%です。2026年6月末の従業員数223,000人(10-K)で割ると26.9%になります。公式ブログには人数は書かれていません。
Q. どの国・どんな人が対象?
A. カナダ・インド・英国・米国の4カ国で、制度に参加する部門の職位レベル70以下の対象従業員です。ロイターによると、Copilotや財務、人事、Xboxなどが対象で、マーケティングや商業部門、セキュリティーなどは対象外とされています。
Q. 日本マイクロソフトの社員も対象?
A. 日本経済新聞によると、日本は対象外です。公式ブログでも対象の国は4カ国だけです。
Q. なぜ希望退職を募集するの?
A. AI向けのデータセンターや半導体への巨額投資でコストが膨らみ、費用を抑えるためと報じられています。10-Kによると、2026年度の設備投資は1,159億ドルで、2019年度の約8.3倍です。
Q. いつまでに決めて、いつ辞めるの?
A. 共同通信やCNBCによると、対象者は12月上旬までに応じるかを決め、応じた人は12月31日付で退社します。
Q. 実際に何人辞めそう?
A. 目標の人数は決めていないと報じられています。4月の早期退職と同じく30%が応じた場合、当ブログの試算では約1万8,000人(全従業員の約8%)です。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- Microsoft公式ブログ「Introducing a Voluntary Exit Offer」(2026年10月26日)、「The latest in our company transformation」(2026年7月6日)、「Subject: Focusing on our short- and long-term opportunity」(2023年1月18日)
- Microsoft 年次報告書 Form 10-K(2026年6月期ほか2019〜2025年6月期、SEC EDGAR)。売上高・設備投資はXBRLデータから当ブログが集計(2026年10月27日取得)
- Microsoft Investor Relations(FY27 Q1決算発表日)
- ロイター「米マイクロソフト、約6万人対象に希望退職を募集 コスト抑制へ」(2026年10月26日、Yahoo!ニュース転載)
- 日本経済新聞「Microsoftが再び希望退職を募集、6万人対象 AI投資に注力」(2026年10月27日)
- 共同通信「マイクロソフト希望退職6万人募集 全従業員の25%超対象、巨額「AI投資」重荷」(2026年10月27日、産経ニュース掲載)
- CNBC「Microsoft offers voluntary buyouts to 60,000 employees as AI leads to efficiency push」(2026年10月26日)、「Microsoft plans first-ever voluntary employee buyout for up to 7% of U.S. workforce」(2026年4月23日)、「Microsoft laying off about 6,000 people, or 3% of its workforce」(2025年5月13日)、「Microsoft laying off about 9,000 employees in latest round of cuts」(2025年7月2日)
- Business Insider「Microsoft is offering buyouts to around 60,000 employees. Read the memo.」(2026年10月26日)、CRN「Microsoft Confirms About 60,000 Employees Eligible For Voluntary Exit Offer」(2026年10月26日)
- 写真:Wikimedia Commonsのフリーライセンス画像(Building 92 of Microsoft Redmond Campus/Jiaqian AirplaneFan・CC BY 3.0、一部リサイズ。アイキャッチはBuilding92microsoft.jpg(Coolcaesar・CC BY-SA 4.0)を明るさ調整し文字を追加)
本記事の数値は公表資料を当ブログが独自に集計・試算したものです。報道は2026年10月27日朝までに確認できた内容によります。


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