政治|簗農相の予算カット発言
簗農相の予算カット発言で道路工事は止まった?2市町の交付金を検証
簗和生農林水産大臣が「大幅にカットした」と語った栃木県の那須烏山市と那珂川町で、今年度予定していた道路の拡幅工事が先送りになったと10月11日に報じられました。国の交付金は本当に減ったのか、なぜ「64%減」「30%減」「26%減」と数字がばらつくのか。国土交通省が毎年公表している工区ごとの配分表を2022〜2026年度の5年分集めて、2市町の路線ごとの金額と、栃木県内の市町の増減を調べました。
この記事の結論
- 那珂川町は町道「上郷須賀川線」の今年度工事の発注を取りやめ、那須烏山市は市道「富士見台工業団地線」の工事を来年度に延期する見通しです。国の交付金の内示額が要望を大きく下回ったためです(読売新聞)。
- 【独自集計】国交省の配分表で見ると、那珂川町の道路2路線への交付金は2022〜2025年度は年4,583万円〜5,488万円で推移していたのに、2026年度は2,262万円と、この5年で初めて前年の半分を下回りました。上郷須賀川線は2,337万円→1,034万円(−55.8%)です。
- 那須烏山市の「64%減」と「26%減」は、比べる範囲の違いです。前年度から続く市道5路線だけなら1億3,679万円→4,920万円で64.0%減(簗氏の発言と一致)、新しい事業を含む市の事業全体では1億4,184万円→1億473万円で26.2%減(国交省の精査と一致)でした。
- 【独自集計】栃木県内で2025・2026年度を比べられる21市町のうち、減ったのは6市町。那珂川町の減少率は3番目、那須烏山市は4番目でした。国交省は、全国でも要望した自治体の約1割が前年度の半分未満だったと説明しています。
- 国交省は、2市町の区域で行う県の事業を含めれば国費は増えている(那須烏山市+20.5%、那珂川町+22.0%)とし、簗氏の問い合わせは配分作業に影響していないと説明しています。一方、那須烏山市長は疑念がむしろ深まったとするコメントを出し、市議会は10月14日に抗議決議を審議します。
道路工事が先送りになったのはどこ?那珂川町と那須烏山市の2路線
読売新聞(10月11日)によると、簗氏が「大幅にカットした」と名前を挙げた2市町では、次の2つの道路で今年度の工事が見送られることになりました。どちらも、狭い道を広げる「拡幅」の工事です。
| 路線 | 場所 | 事業の内容 | 今年度の影響 |
|---|---|---|---|
| 那珂川町道 上郷須賀川線 |
那珂川町大山田上郷 | 2019年度に着工。全長約2kmのうち約4割の拡幅が完了。今年度は約200mの予定で、2032年度に完了する計画 | 交付金の内示が少なく、今年度の工事の発注を取りやめ。工期が遅れる可能性 |
| 那須烏山市道 富士見台工業団地線 |
那須烏山市藤田 | 2013年度に着工。全長約1.3km。今年度は約100mの工事を予定(今年度予定した市道拡幅3路線のうちの1つ) | 来年度に延期される見通し |
出典:読売新聞オンライン(2026年10月11日)。路線の延長・着工年度・今年度の予定は、那珂川町と那須烏山市建設課への同紙の取材による。
上郷須賀川線は、拡幅が終わった区間は片側1車線ですが、まだ手が付いていない区間は道幅が狭く、中央線もありません。車どうしのすれ違いが難しく、拡幅済みの区間で対向車を待つ車も見られるといいます。近くの住民は、大きなトラックも通るので早く広げてほしいと話しています(読売新聞)。
要望に対して国が示した額は3割と7割
工事を見送った理由は、国からの交付金です。那珂川町は道路の「防災・安全交付金」として国に7,208万円を要望しましたが、内示額は2,262万円でした。要望の31.4%にとどまり、前年度より約54%減っています。那須烏山市は「社会資本整備総合交付金」と防災・安全交付金を合わせて約1億5,000万円を要望し、内示は要望の約7割、前年度比で約3割減でした(読売新聞)。
那須烏山市の幹部は読売新聞に、財政規模の小さい自治体で交付金を大幅に削られれば事業が成り立たない、と話しています。
【筆者試算】上郷須賀川線は2032年度に終わるのか
報道の数字で計算すると、上郷須賀川線は2019〜2025年度の7年度で約800m(全長約2kmの約4割)を広げてきました。年平均では約110mです。今年度の工事がなくなると、残る約1.2kmを当初の予定どおり2032年度までに終えるには、2027年度から毎年約200mずつ、これまでの2倍近いペースで進める必要があります。延長や割合は報道の概数で、実際の工程は町の計画しだいです。
【独自集計】止まった路線の交付金はいくら?国交省の配分表で5年分
国交省道路局は毎年度、都道府県ごとに「社会資本整備総合交付金の配分(道路分)」の箇所表を公表し、工区ごとに国が交付を想定している額(想定国費)を載せています。2022〜2026年度の栃木県分を集めて、2市町が事業主体になっている路線を抜き出しました。2026年度の合計は那珂川町が2,262万4千円、那須烏山市が1億472万8千円で、両市町が報道機関に答えた内示額と一致します。
那珂川町:2路線とも4年間ほぼ横ばい→2026年度に半減
| 年度 | 上郷須賀川線大山田上郷工区 | 薬利後沢線東戸田工区 | 町の合計 |
|---|---|---|---|
| 2022年度 | 2,390万円 | 2,390万円 | 4,779万円 |
| 2023年度 | 2,253万円 | 2,330万円 | 4,583万円 |
| 2024年度 | 2,407万円 | 3,081万円 | 5,488万円 |
| 2025年度 | 2,337万円 | 2,597万円 | 4,934万円 |
| 2026年度 | 1,034万円 | 1,229万円 | 2,262万円 |
| 2025→2026年度 | −55.8% | −52.7% | −54.1% |
箇所表に載っている那珂川町の事業は、上郷須賀川線と薬利後沢線の2路線だけです。2022〜2025年度は2路線とも1年あたり2,253万〜3,081万円で、町全体でも4,583万円〜5,488万円の範囲に収まっていました。それが2026年度は2路線とも前年度の半分以下になり、合計は2,262万円。前年の半分を割ったのは、この5年で初めてです。
那珂川町の道路の交付金(想定国費)
那須烏山市:前から続く路線ほど大きく減った
| 路線・計画 | 2025年度 (万円) |
2026年度 (万円) |
増減 |
|---|---|---|---|
| 富士見台工業団地線藤田工区(社総交) | 1,909 | 606 | −68.3% |
| 大金東原線東原工区(社総交) | 2,182 | 1,101 | −49.5% |
| 関下精神場線神長Ⅱ工区(防災・安全) | 2,455 | 786 | −68.0% |
| 大桶白久線白久Ⅱ工区(防災・安全) | 4,688 | 278 | −94.1% |
| 谷浅見平野線谷浅見工区(2026年度に社総交→防災・安全へ) | 2,444 | 2,150 | −12.0% |
| 継続5路線の計 | 1億3,679 | 4,920 | −64.0% |
| 宮原森下線宮原工区(社総交)・2026年度に新規 | ― | 720 | 新規 |
| 浄土入山線下境工区(防災・安全)・2026年度に新規 | ― | 2,611 | 新規 |
| 中心部のまちづくり計画社総交・計画単位の額 | 505 | 2,222 | +340% |
| 那須烏山市の合計 | 1億4,184 | 1億473 | −26.2% |
工事が延期される富士見台工業団地線は、1,909万円から606万円へ−68.3%でした。前年度から続く5路線は合わせて64.0%減った一方、2026年度は新しい2路線と中心部のまちづくり計画に計5,552万円が付き、市全体では26.2%減にとどまっています。
那須烏山市の道路の交付金(想定国費)
長い目で見ると、那須烏山市の交付金は2024年度に5,961万円から1億4,035万円へ大きく増えていて、2026年度の1億473万円も2022〜2023年度(約5,000万〜6,000万円)の2倍近い水準です。那珂川町とは事情が違います。
出典:国土交通省「令和4〜8年度 社会資本整備総合交付金の配分(道路分)」栃木県(令和8年度箇所表・令和7年度箇所表ほか)から、事業実施主体が那珂川町・那須烏山市の工区を筆者が集計。中心部のまちづくり計画は計画単位の額。社総交=社会資本整備総合交付金、防災・安全=防災・安全交付金。
減ったから「カット」とは限りません
交付金の額は、工事の進み具合で毎年変わります。完成が近い工区は必要な額が減りますし、用地買収の段階なら工事費はかかりません。国交省は配分について「要望や事業の進捗状況、重点配分対象の有無等を総合的に勘案」していると説明していますが、路線ごとの減額の理由は公表していません。例えば大桶白久線の94%減が、工事の区切りによるものか、配分を絞られた結果なのかは、この表だけでは分かりません。
「64%減」「30%減」「26%減」…那須烏山市の数字がばらつく理由
那須烏山市の交付金については、報道や当事者の説明でいくつもの減少率が出てきます。どれかが間違っているのではなく、どの事業を比べるかが違います。国交省の箇所表を使うと、それぞれの数字を再現できます。
| 比べ方 | 2025年度 | 2026年度 | 増減 | 使われた場面 |
|---|---|---|---|---|
| 「とちぎの道づくり」計画の分だけ市道3路線(2026年度は顔ぶれが一部入れ替わり) | 6,535万円 | 2,427万円 | −62.9% | 市が朝日新聞・毎日新聞に回答 |
| 前年度から続く市道5路線 | 1億3,679万円 | 4,920万円 | −64.0% | 簗氏の発言「64%減」、国交省が簗氏に伝えた数字 |
| 市の道路の交付金すべて(社総交+防災・安全) | 約1億5,000万円逆算した概数 | 1億472万円 | 約−30% | 市の集計(読売新聞・下野新聞) |
| 市が事業主体の分すべて(国交省の箇所表) | 1億4,184万円 | 1億473万円 | −26.2% | 国交省の精査(10月6日) |
| 市内で行う県の事業も含めた想定国費 | ― | ― | +20.5% | 国交省の精査(10月6日) |
1・2・4行目は国交省の箇所表から筆者が計算(1行目は報道の6,535万1千円→2,426万7千円と一致)。3行目は市の数字で、2025年度は要望額ではなく前年度の内示額を読売新聞の「約3割減」から逆算した概数。5行目は日刊建設工業新聞(10月7日)が報じた国交省の説明。
ポイントは2つあります。1つ目は、谷浅見平野線が2026年度から別の計画(防災・安全交付金)に移ったことです。「とちぎの道づくり」計画だけを見ると、この路線の2,444万円がまるごと消えたように見え、減少率が大きくなります。実際には別の計画で2,150万円が付いています。
2つ目は、新しく始まった事業を含めるかどうかです。国交省によると、2月に簗氏から問い合わせを受けた時点では、2024・2025年度の配分実績をもとに対象の事業を整理しており、その範囲で簗氏に「64%減」と説明していました。10月6日の精査では2026年度の新規3事業を加えて比べたため、26.2%減になったとしています(日刊建設工業新聞)。箇所表では、前年度から続く5路線の合計がちょうど64.0%減になります。
那珂川町は事業が2路線しかなく、どの比べ方でも−54.1%で変わりません。要望に対する割合は、2025年度の74.9%から2026年度は31.4%に下がりました。
【独自集計】栃木県の市町で比べると?減ったのは21市町中6市町
2市町の減り方は特別なのか。同じ箇所表で、栃木県内25市町が事業主体になっている分を2025年度と2026年度で比べました。2025年度の箇所表に町の事業が載っていない4町(市貝町・野木町・塩谷町・那須町)は比べられないため除き、21市町を減少率の大きい順に並べています。
| 市町 | 2025年度 (万円) |
2026年度 (万円) |
増減 | 財政力指数 |
|---|---|---|---|---|
| 芳賀町 | 1,320 | 0 | −100% | 0.98 |
| 上三川町 | 3億5,253 | 8,639 | −75.5% | 0.93 |
| 那珂川町栃木3区 | 4,934 | 2,262 | −54.1% | 0.37 |
| 那須烏山市栃木3区 | 1億4,184 | 1億473 | −26.2% | 0.45 |
| 真岡市 | 3,123 | 2,497 | −20.0% | 0.82 |
| 壬生町 | 3億511 | 2億8,378 | −7.0% | 0.81 |
| 下野市 | 2億7,168 | 2億7,506 | +1.2% | 0.70 |
| 栃木市 | 1億8,391 | 1億9,623 | +6.7% | 0.69 |
| 那須塩原市栃木3区 | 1億2,511 | 1億3,429 | +7.3% | 0.76 |
| 益子町 | 2,920 | 3,143 | +7.6% | 0.55 |
| 佐野市 | 2,444 | 2,700 | +10.5% | 0.69 |
| さくら市 | 1,148 | 1,366 | +19.0% | 0.69 |
| 大田原市栃木3区 | 1億1,538 | 1億4,014 | +21.5% | 0.64 |
| 矢板市栃木3区 | 7,805 | 1億574 | +35.5% | 0.64 |
| 日光市 | 1億559 | 1億4,580 | +38.1% | 0.55 |
| 鹿沼市 | 1億1,945 | 1億7,929 | +50.1% | 0.69 |
| 茂木町 | 6,243 | 1億780 | +72.7% | 0.37 |
| 小山市 | 2,882 | 5,027 | +74.5% | 0.94 |
| 宇都宮市 | 3億3,190 | 7億1,380 | +115% | 0.97 |
| 足利市 | 7,454 | 1億6,300 | +119% | 0.73 |
| 高根沢町 | 4,169 | 9,154 | +120% | 0.72 |
出典:国土交通省「令和7・8年度 社会資本整備総合交付金の配分(道路分)」栃木県の箇所表から、事業実施主体ごとに想定国費を筆者が集計(那珂川町・那須烏山市は国交省の精査結果と一致)。財政力指数は総務省「令和6年度 市町村別決算状況調」。箇所表には工区まで載らない額も一部あり、市町が公表する内示額とずれる場合があります。
減ったのは芳賀町、上三川町、那珂川町、那須烏山市、真岡市、壬生町の6市町でした。前年度の半分を下回ったのは芳賀町(1,320万円→0円)、上三川町(−75.5%)、那珂川町(−54.1%)の3市町で、比べられる市町の14%にあたります。井林辰憲国交相は10月9日の会見で、2026年度は全国でも要望した都道府県・市町村の約1割が前年度の半分未満の配分だったと説明しており、それに近い割合です。
栃木3区のほかの市町は、大田原市+21.5%、矢板市+35.5%、那須塩原市+7.3%と増えています(那須町は2026年度が5,577万円)。下野新聞やTBSなどは、衆院選で首長が簗氏を支援した市町で交付金が増えたと報じています。ただ、栃木3区の外でも上三川町や芳賀町が大きく減っており、増減だけで政治的な関与があったかどうかは判断できません。
同じ「減額」でも、財政力の弱い町ほど重い
表の右端の財政力指数は、自治体が自前の税収でどれだけ行政サービスをまかなえるかを示す数字で、1に近いほど余裕があります。那珂川町は0.37で茂木町と並んで県内で最も低く、那須烏山市は0.45で県内の市では最も低い水準です。一方、ほかに減った芳賀町(0.98)や上三川町(0.93)、真岡市(0.82)、壬生町(0.81)は、県内でも財政に余裕のある自治体です。
那珂川町で減った交付金は2,672万円で、町の1年間の地方税収(2024年度決算で約19億5,000万円)の1.4%にあたります。交付金が減った分を町のお金で埋めるか、工事そのものを見送るか。那珂川町は、上郷須賀川線の工事を見送る判断をしました。
国交省の説明は?県の事業を含めれば国費は増えている
国交省は10月6日、簗氏の発言をめぐる事実関係の精査結果を公表しました。報道によると、主な内容は次のとおりです。
- 2市町の交付金:市町が実施する事業に限ると、那須烏山市は26.2%減、那珂川町は54.1%減。ただし2市町の区域で行う県の事業を含めた想定国費の合計は、那須烏山市が20.5%増、那珂川町が22.0%増だった。
- 簗氏の問い合わせ:衆院選後の2月中旬ごろ、簗氏が当時の官房長と副大臣に2市町の2026年度の配分額を問い合わせた。予算の成立前だったため答えず、4月7日に予算が成立して自治体に内定を通知した後、配分額を説明した。
- 働きかけの有無:当時の官房長は「働きかけや圧力を受けたことはなかったと思う」と説明。問い合わせの記録は残していなかった。
井林国交相は10月9日の会見で、2月中旬の問い合わせは配分を担当する部局に伝わっていなかったとして、「配分作業への影響が一切なかった」と述べました(国土交通省 大臣会見要旨 10月9日)。日刊建設工業新聞によると、国交省は、交付金は自治体がつくる整備計画の単位で配分が決まり、個々の事業への振り分けは自治体の裁量だとも説明しています。
県の事業が増えても、町道の工事費にはならない
国交省が増えているとする数字には、国道や県道など栃木県が行う事業が含まれます。こうした事業は地域にとって必要なものですが、上郷須賀川線や富士見台工業団地線のような市道・町道の工事は、市町に配られる交付金でしかまかなえません。市町の事業が減ったこと自体は国交省も認めており、その結果として2つの路線で工事が止まりました。
那須烏山市の川俣純子市長は、精査結果を受けて、簗氏の問い合わせが配分額の確定前に行われていたことなどから、疑念はむしろ深まったとするコメントを出し、国交省にも明確な説明を求めています。読売新聞によると、市長は「2市町に限定した問い合わせを行った理由は何か」とも問いかけています。記者からは10月9日の会見でも、2市町の要望額や事業の進み具合、重点配分の対象だったかどうかを示す資料を求める質問が相次ぎましたが、国交相は交付金制度全体を事務方から説明する場を設けるとするにとどめました。
確認できていること・いないこと
確認できていること:2市町が事業主体の交付金は2026年度に減った(国交省も認めている)。簗氏は配分が決まる前の2月中旬に2市町に絞って国交省に問い合わせ、5月に「大幅にカットした」と話した。簗氏は10月5日に発言を撤回し謝罪した。
確認できていないこと:問い合わせが配分に影響したかどうか。国交省は「影響はない」としているが、問い合わせの記録はなく、2市町を減額した具体的な理由も示されていない。
これまでの経緯(時系列)
- 2025年10月那珂川町長が国道294号などの整備促進を要望町の事業と県の事業をあわせた要望(国交省の精査による)。
- 2026年1月那須烏山市長も同様の要望
- 2026年2月8日衆院選で簗氏が小選挙区で敗れ、比例で復活当選那須烏山市と那珂川町の首長は、対立候補の渡辺真太朗氏(無所属)を支援していました。
- 2026年2月中旬簗氏が国交省に2市町の配分を問い合わせ官房長と副大臣に照会。予算成立前のため国交省は答えず。
- 2026年4月7日2026年度予算が成立、自治体に内定を通知その後、国交省が簗氏に2市町の配分額を説明しました。
- 2026年5月24日自民党大田原支部の懇親会で「大幅にカット」発言非公開の場での発言。音声を週刊文春と週刊新潮が入手したとしています。
- 2026年9月30日週刊文春・週刊新潮が音声を報道簗氏は9月17日に農林水産大臣に就任していました。
- 2026年10月2日簗氏が発言をおおむね認める、働きかけは否定井林国交相は、報道のような形で道路予算が削減された事実はないとの報告を受けていると説明。
- 2026年10月5日簗氏が発言を撤回し謝罪自分の意向で予算を左右できるかのような発言は極めて不適切だったと述べました(TBS)。
- 2026年10月6日国交省が精査結果を公表那須烏山市長は疑念がむしろ深まったと反発。市には全国から電話が相次ぎ、市長が市のホームページで「静かに見守って」と呼びかけ。
- 2026年10月9日国交相「配分作業への影響は一切ない」高市首相は代表質問で、簗氏を続投させる考えを示しました。
- 2026年10月11日2市町で道路工事の先送りが報じられる那珂川町は上郷須賀川線の発注を取りやめ、那須烏山市は富士見台工業団地線を来年度に延期する見通し(読売新聞)。
日刊建設工業新聞(国交省の精査結果)、国土交通省 大臣会見要旨、那須烏山市、読売新聞、朝日新聞、TBS NEWS DIGなどから作成。
今後どうなる?予算委員会と市議会の抗議決議
- 10月13・14日 衆院予算委員会:首相と全閣僚が出席し、一問一答で簗氏への追及が予想されます。
- 10月14日 那須烏山市議会の臨時会:付議事件は「簗和生衆議院議員の言動に対し強く抗議する決議について」です(那須烏山市 10月8日プレスリリース)。
- 10月16・19日 参院予算委員会と問責決議案:参院の野党は問責決議案の提出を検討しており、国民民主党の玉木雄一郎代表は衆院予算委での答弁を見て判断するとしています(共同通信)。可決されたらどうなるかは問責決議案とは?可決されたらどうなる?で解説しています。
- 2027年度の交付金:2市町が来年度に何を要望し、国がいくら内示するか(例年4月)。延期した工事が予定どおり再開できるかの分かれ目になります。
簗氏をめぐる問題の全体像(発言の内容、選挙区の得票、裏金やLGBTをめぐる発言)は簗和生農水相の問題とは?で、全国の市区町村で交付金と自民党の得票に関係があるかを調べた結果は社会資本整備総合交付金の市町村別一覧で紹介しています。
市への電話は控えて
那須烏山市には全国から励ましや苦情、質問の電話が殺到し、日常業務に支障が出ているとして、川俣市長が10月6日に市のホームページで、職員が市民サービスを滞りなく行えるよう「静かに見守って」ほしいと呼びかけています(那須烏山市「全国の皆様への市長からのお願い」)。
簗農相の予算カット発言と道路工事のよくある質問
Q. 簗農相の予算カット発言で止まった道路はどこですか?
A. 那珂川町の町道「上郷須賀川線」(大山田上郷)は今年度の工事の発注を取りやめ、那須烏山市の市道「富士見台工業団地線」(藤田)は工事を来年度に延期する見通しです。どちらも道幅を広げる拡幅工事で、国の交付金の内示額が要望を大きく下回ったためと報じられています。
Q. 那須烏山市と那珂川町の道路予算は本当にカットされたのですか?
A. 2市町が事業主体の国の交付金は2026年度に減っています。国交省の配分表では那珂川町が4,934万円→2,262万円(−54.1%)、那須烏山市が1億4,184万円→1億473万円(−26.2%)です。ただし国交省は、県の事業を含めれば2市町の区域の国費は増えており、簗氏の問い合わせは配分作業に影響していないと説明しています。
Q. 64%減と26%減、どちらが正しいのですか?
A. どちらも正しく、比べる範囲が違います。那須烏山市で前年度から続く市道5路線だけを比べると64.0%減で、簗氏が挙げた数字と一致します。2026年度に新しく加わった事業を含めた市の事業全体では26.2%減で、国交省の精査結果と一致します。
Q. 交付金が減ると、なぜ工事が止まるのですか?
A. 市道や町道の拡幅は、国の交付金と自治体の財源を組み合わせて行います。交付金が減ると、その分を自治体のお金で埋めるか、工事を見送るしかありません。那珂川町は財政力指数が0.37と栃木県内で最も低い水準で、工事の発注を取りやめました。
Q. 交付金の「内示」とは何ですか?
A. 国が自治体に、その年度に交付する予定の額を前もって示すことです。2026年度は4月7日に予算が成立し、同じ日に国交省が自治体へ内定を通知しました。自治体は内示額をもとに、その年度にどの工事を発注するかを決めます。
Q. 今後はどうなりますか?
A. 10月13・14日の衆院予算委員会で簗氏への追及が予想され、那須烏山市議会は10月14日の臨時会で簗氏に抗議する決議を審議します。参院の野党は問責決議案の提出を検討しています。延期された工事が来年度に再開できるかは、2027年度の交付金の内示(例年4月)しだいです。
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出典・参考資料
- 国土交通省:令和8年度 社会資本整備総合交付金の配分(道路分)栃木県、令和7年度、令和4年度(令和5・6年度も同じ形式の箇所表を使用)
- 国土交通省:井林大臣会見要旨(2026年10月2日)、同(10月6日)、同(10月9日)
- 総務省:令和6年度 市町村別決算状況調(財政力指数・地方税)
- 那須烏山市:全国の皆様への市長からのお願い(10月6日)、那須烏山市議会10月臨時会の招集(10月8日)
- 読売新聞オンライン:簗農相「予算カット」発言、交付金大幅削減に2市町困惑…道路工事発注取りやめも(10月11日)
- 朝日新聞:簗農水相、予算カット発言おおむね認める 国交省への働きかけは否定(10月2日)
- 日刊建設工業新聞:【道路予算】2市町の想定国費は増加/週刊誌報道受け精査(10月7日)
- 下野新聞:簗農相「カット」発言、国の道路交付金 那須烏山と那珂川が減額 首長応援の他市町は増額(10月6日)、国交省が調査結果公表 簗氏から圧力「なかったと思う」
- TBS NEWS DIG:簗農水大臣“予算カット発言” 国交省への働きかけ否定も…(10月11日)/共同通信:簗農相の問責提出、衆院予算委答弁で判断(10月11日)
内容は2026年10月11日時点の情報にもとづきます。路線別・市町別の金額、増減率、試算は、国交省の箇所表などの公表資料から筆者が計算しました。箇所表の金額は国費(想定国費)で、自治体の負担分を含む事業費ではありません。アイキャッチ画像は自作です。


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