山やキャンプ場、あるいは奈良公園などで鹿と出会ったとき、その鳴き声を聞いて「思っていた声と違う」と驚いた人は少なくありません。鹿はもっと動物らしい低い声で鳴くイメージがありますが、実際の鹿の鳴き声は「ピー」「フィーヨー」と高く伸びる、どこか切ない笛のような音です。この記事では、鹿の鳴き声の種類と意味、よく鳴く時期、奈良公園や宮島の鹿の様子、さらに古くから和歌に詠まれてきた文化的な背景まで、鹿の鳴き声にまつわる話をまるごと解説します。
鹿の鳴き声はどんな音?「ピー」と高く響く切ない声
日本でもっとも身近なニホンジカの鳴き声は、低いうなり声ではなく、「ピー」「ピョー」「フィーヨー」と表現される高く澄んだ声です。夜の山中や早朝に響くと、笛の音のようにも、人の口笛のようにも聞こえます。初めて聞いた人が「切ない」「もの悲しい」と感じるのは、この高く尾を引く音色によるものです。
体の大きな動物ほど低い声で鳴くと思われがちですが、鹿はその見た目に反して高音を出します。声帯や喉の構造、そして遠くまで音を届かせる必要性が、この独特の高い鳴き声を生み出していると考えられています。広い山林の中で仲間や相手に自分の存在を知らせるには、低い音よりも高く通る音のほうが適しているのです。
鹿の鳴き声の種類と意味|シーンで変わる3つの声
鹿はいつも同じように鳴くわけではありません。鳴き声には警戒・発情・親子のコミュニケーションといった目的があり、それぞれ音の高さや長さ、鳴く回数が異なります。代表的な3つのパターンを見ていきましょう。
危険を知らせる「警戒・威嚇」の鳴き声
天敵や人の気配を感じたとき、鹿は短く鋭い「ピャッ」「ピッ」といった声を発します。これは群れの仲間に危険を知らせる警戒音で、この声を合図に周囲の鹿が一斉に顔を上げ、身構えたり逃げ出したりします。同時に足を踏み鳴らして地面から振動を伝える「フットスタンプ」という行動をとることもあり、音と振動の両方で危険を共有しているのです。
メスを呼び他のオスを牽制する「発情期」の鳴き声
秋の繁殖期になると、オスの鹿は縄張りを主張し、メスを引き寄せるために長く大きな声で鳴きます。私たちが「切ない」と感じる、あの尾を引く高い鳴き声の多くはこの発情期のものです。声には「ここに強いオスがいる」というアピールと、ライバルのオスへの牽制という二重の意味が込められています。声の大きさや長さが、そのオスの強さを示すサインにもなります。
親子の絆を深める「コミュニケーション」の鳴き声
母鹿は子鹿とやりとりするために、やわらかく低めの声を使います。子鹿もまた、母親を呼ぶときや不安なときに小さな声で鳴きます。この親子の鳴き交わしは、はぐれないようにするためであると同時に、子鹿を安心させる役割も果たしています。人が聞き取れないほど小さな声でやりとりすることも多く、警戒音や発情期の声とはまったく印象が異なります。
鹿が鳴く時期はいつ?よく鳴くのは秋の繁殖期
鹿がもっともよく鳴くのは、繁殖期にあたる秋(おおむね9〜11月ごろ)です。この時期はオスの発情期と重なり、夜間から早朝にかけて山にあの高い声が響き渡ります。昔から「鹿の声」といえば秋の風物詩とされてきたのは、この繁殖期の鳴き声が人々の耳に強く残ってきたためです。
もちろん、警戒の声や親子の声は季節を問わず聞かれます。しかし「切なく尾を引く鳴き声」という、多くの人がイメージする鹿の声が最も頻繁に聞けるのは、やはり秋の夜長というわけです。
奈良公園・宮島の鹿は鳴く?観光地で聞ける鹿の声
奈良公園や広島・宮島の鹿は人に慣れており、日中は穏やかに過ごしているため、大きく鳴く場面はそれほど多くありません。しかしまったく鳴かないわけではなく、繁殖期の夜や早朝、あるいは仲間との間で、あの高い声を聞くことができます。観光客が少ない時間帯のほうが、鹿本来の鳴き声に出会いやすいでしょう。
なお、餌をねだるときやじゃれ合うときにも小さな声を出すことがあります。人に慣れた観光地の鹿と、山奥で暮らす野生の鹿とでは、鳴く頻度や声のトーンにも違いが見られるのは興味深い点です。
鹿の鳴き声は昔から「もののあはれ」の象徴だった
鹿の切ない鳴き声は、現代人だけでなく古代の人々の心も動かしてきました。百人一首に収められた猿丸大夫の歌「奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞く時ぞ秋は悲しき」は、まさに秋に鳴く鹿の声を通して季節のもの悲しさを詠んだ一首として有名です。
紅葉の山に響く鹿の声は、日本人にとって秋の情緒そのものでした。鹿の鳴き声を「切ない」と感じる感性は、実は千年以上も昔から受け継がれてきたものなのです。実際の音を聞いて意外に思うと同時に、その声が昔から人の心をとらえてきたことを知ると、鹿の鳴き声がいっそう味わい深く感じられます。
鹿の鳴き声に関するよくある質問
Q. 鹿はなぜ鳴くのですか?
主な理由は「危険を仲間に知らせる警戒」「繁殖期にメスを呼び他のオスを牽制する」「親子で連絡を取り合う」の3つです。目的によって声の高さや長さが変わります。
Q. 鹿の鳴き声はどんな音ですか?
「ピー」「フィーヨー」と表現される、高く尾を引くような笛のような声です。体が大きいわりに高音で、初めて聞くと「切ない」「もの悲しい」と感じる人が多くいます。
Q. 鹿がよく鳴くのはいつですか?
繁殖期にあたる秋(およそ9〜11月)に、夜から早朝にかけてよく鳴きます。オスの発情期と重なるため、この時期にあの独特な高い声が山に響きます。
Q. 奈良公園の鹿も鳴きますか?
鳴きます。人に慣れているため日中に大きく鳴くことは少ないですが、繁殖期の夜や早朝、仲間とのやりとりの中で高い声を聞くことができます。
Q. 子鹿の鳴き声は大人の鹿と違いますか?
子鹿は母親を呼ぶときなどに、小さくやわらかい声で鳴きます。発情期のオスの大きく高い声とは印象が異なり、聞き取れないほど控えめなこともあります。
まとめ|鹿の鳴き声はイメージを超えて奥深い
実際の鹿の鳴き声は「ピー」と高く伸びる切ない声で、想像していた音とのギャップに驚く人が多いのも納得です。その声には警戒・発情・親子のコミュニケーションといった意味があり、とくに秋の繁殖期には夜の山に印象的に響きます。古くは和歌に詠まれ、秋のもの悲しさの象徴とされてきた鹿の声。次に山や公園で耳にしたときは、その音がどんな気持ちを伝えているのか、少し想像しながら聞いてみてはいかがでしょうか。
あわせて読みたい
身近な動物の意外な生態をもっと知りたい方は、こちらの記事もおすすめです。
- ウミネコはなぜ都会で増えた?理由と鳴き声・糞害の対策を解説
- 動物の面白い雑学25選【保存版】思わず誰かに話したくなる豆知識まとめ
- 動物の雑学・生態まとめ|おもしろ記事の一覧はこちら
- ヒアリの危険性とは?刺されたときの対処法と見分け方を解説
あわせて読みたい
動物の雑学・生態まとめ60選|犬猫の飼い方から珍獣まで一気読み

コメント