国際|事件・健康
カドミウムとは?水筒から基準の350万倍、どれほど危険か数字で検算
米カリフォルニア州の職場で、女性の水筒から「米国の飲料水基準の約350万倍」のカドミウムが検出された事件が、10月に入って改めて報じられています。被害女性は約2年にわたって原因のわからない体調不良に苦しみ、自分で設置した隠しカメラの映像が事件の決め手になりました。この記事では、報道で確認できた経緯を整理したうえで、「350万倍」が何mg/Lにあたるのかを各国・機関の基準値で検算し、カドミウムがどれほど危険な物質なのか、日本の基準やイタイイタイ病の数字とあわせて解説します。
この記事の結論
- 報道によると、水筒の水のサンプルからは米国の連邦飲料水基準の最大約350万倍のカドミウムが検出されました。米国の連邦基準(EPAの水道水基準・FDAのボトル水基準)はどちらも0.005mg/Lなので、計算すると1Lあたり約17,500mg(約17.5g)にあたります。
- 日本の水道水質基準(0.003mg/L)にあてはめると約583万倍、工場などの排水基準(0.03mg/L)と比べても約58万倍です。
- 国際化学物質安全性計画(IPCS)の資料では、15mg/Lを超えるカドミウムを含む飲み物で消化器の症状が出るとされています。350万倍の水はその約1,170倍の濃さです。
- カドミウムは腎臓にたまり、体内での半減期は10〜35年と長い金属です。日本ではイタイイタイ病の原因となり、認定された患者は総数201人、存命の認定患者は2024年12月末に0人になりました(環境白書)。
米国の水筒カドミウム事件とは?報道で確認できる経緯
事件の舞台は、米カリフォルニア州バークレーにある工学系のコンサルティング会社です。被害を受けたのは金属材料の研究者の女性(50)で、同じ職場で働いていた男性エンジニアが、女性の水筒にカドミウムを混ぜていたとして2019年に逮捕・起訴されました。以下は、地元サンフランシスコのニュースサイトSan Francisco Standard(10月10日)、テレビ局ABC7、2019年に裁判所の書類を引用したNBCニュースの報道と、それらを紹介したNEWSポストセブン(10月19日)の記事で確認できた内容です。
- 2017年1月女性が入社、数週間後から体調不良えずきや抜け毛が始まり、同年7月には水筒の水を数口飲んだ直後に激しい体調不良に襲われ、救急外来に運ばれました(SF Standard)。
- 2017〜2018年検査をしても原因がわからない救急外来の受診や専門医での検査を繰り返し、胃カメラでも異常は見つからず、中国まで治療に行ったといいます。2018年には心配した両親が中国から渡米しました。
- 2019年1月母親が水の「妙な酸味」に気づく職場で水筒の水を飲んで再び体調が急変。その夜、同じ水筒の水を飲んだ母親が酸っぱい味に気づき、女性は誰かが水に何かを入れている可能性を疑い始めました。
- 2019年2〜3月隠しカメラが同僚の姿をとらえる女性は通販で小型カメラを買い、2月11日にデスク付近に設置。3月4日の映像には、同僚の男性が小さな白い容器から水筒に何かを注ぎ、約30秒後に戻って水筒を回す様子が映っていたと報じられています。
- 2019年3月逮捕・起訴警察が水筒の水と、女性・両親の血液を検査し、すべてからカドミウムを検出。郡検察は計画的な殺人未遂と毒物混入2件の罪で男性を起訴しました。裁判所の書類では、混入は2017年10月から2019年3月まで続いたとされています(NBCニュース、2019年)。
- 2023〜2024年司法取引で毒物混入1件のみに2023年9月、男性は毒物混入1件について争わない答弁(ノーコンテスト)をし、2024年3月に2年間の保護観察が言い渡されました。判事は司法取引の内容を「この事件のすべてを考えると極めて寛大」と述べ、保護観察を当初の1年から2年に延ばしたと報じられています。
- 2026年10月12日裁判所が有罪判決の取り消しを認める保護観察を終えた男性の申し立てを、検察の反対を押し切って裁判所が認めました(ABC7)。女性はこれを前に、それまで公表していなかった映像を公開しました。
被害は家族にも及んだ
母親は女性が持ち帰った水筒の水を料理にも使っていたため、両親の血液からもカドミウムが検出されました。女性の父親は2025年に心不全で亡くなっています。女性は汚染された水との関連を疑っていますが、因果関係は確認されていないとNEWSポストセブンは伝えています。女性自身も現在まで健康上の問題を抱え、フルタイムでは働けない状態だといいます。
女性は約50万ドルの損害の補償を求めましたが、裁判所が命じたのは7,058ドルでした。SF Standardによると、男性側が提出した毒物学者の報告書が「カドミウム中毒は長期的な健康影響を起こさない」と結論づけており、女性はその科学的な根拠に反論しています。
「有罪判決の取り消し」とは
カリフォルニア州の刑法1203.4条では、保護観察の条件をすべて満たした人は、有罪判決の取り消し(一般に「エクスパンジメント」と呼ばれます)を申し立てることができます。SF Standardによると、州の控訴裁判所の判断で、毒物混入はこれを拒否できる罪の一覧に入っていません。取り消されても記録が完全に消えるわけではなく、警察などには逮捕・有罪の記録が残り、州の資格を申請する際には申告が必要です。女性は、将来の雇用主による身元調査に有罪歴が表れなくなり、別の職場で再び誰かが傷つけられることを恐れて声を上げたと報じられています。
「350万倍」は何の基準?米国の飲料水基準0.005mg/Lで検算
報道では、比べた相手は「連邦の飲料水の基準(federal limit for drinking water)」とされています(SF Standard、ABC7)。米国の連邦レベルでカドミウムの飲料水基準を定めているのは、水道水を所管する環境保護庁(EPA)と、ボトル入りの水を所管する食品医薬品局(FDA)で、どちらも0.005mg/Lです。どちらを基準にしても、計算は同じになります。
検算
0.005mg/L × 350万 = 17,500mg/L(1Lあたり約17.5g)
水筒が500mLなら、満タンで約8.75gのカドミウムが溶けていた計算です。ただし、報道は「最大で(up to)350万倍」としており、これは複数のサンプルのうち最も高い値と読めます。検査報告書そのものは公開されておらず、いつの水がどの濃さだったかの詳細はわかっていません。
各国・機関の基準値で並べると
同じ17,500mg/Lの水を、ほかの国や機関の基準値と比べました。
| 基準(国・機関) | 基準値 | 17,500mg/Lは基準の |
|---|---|---|
| 米国 EPA(水道水の最大許容濃度 MCL)連邦規則 | 0.005mg/L | 350万倍 |
| 米国 FDA(ボトル入り飲料水)連邦規則 | 0.005mg/L | 350万倍 |
| EU(飲料水指令 2020/2184)加盟国共通 | 0.005mg/L | 350万倍 |
| WHO(飲料水水質ガイドライン)国際的な目安 | 0.003mg/L | 583万倍 |
| 日本(水道水質基準)2010年4月に0.01から強化 | 0.003mg/L | 583万倍 |
| オーストラリア(飲料水ガイドライン)子どもの摂取量も考慮 | 0.002mg/L | 875万倍 |
| 日本(工場などの排水基準)川などに流してよい上限 | 0.03mg/L | 58万倍 |
米EPA「National Primary Drinking Water Regulations」、米連邦規則21 CFR 165.110、EU指令2020/2184、WHO「飲料水水質ガイドライン」ケミカルファクトシート、豪NHMRC「Australian Drinking Water Guidelines」、環境省「水質基準項目と基準値」「一律排水基準」をもとに当サイトで計算。
日本の水道水の基準は米国より厳しい0.003mg/Lなので、日本の物差しでは約583万倍になります。工場や事業所が川などに流してよい排水の上限(0.03mg/L)と比べても約58万倍で、飲み水どころか、そのまま排水に出すことも許されない濃さだったことがわかります。
急性の症状が出る濃さと比べると
WHOなどが共同で運営する国際化学物質安全性計画(IPCS)の中毒情報資料は、カドミウムを15mg/Lを超えて含む飲み物で消化器の症状が出ると整理しています。17,500mg/Lはその約1,170倍です。同じ資料では、カドミウムの塩を飲み込むとほぼ直後から嘔吐・下痢・腹痛が始まるとされており、女性が「数口飲んだ直後」に激しい体調不良に襲われたという報道の内容とも合っています。
また、同じ資料は1回に口から取り込んでも影響が出ないとされる量を3mgと見積もっています。17,500mg/Lの水なら、わずか1mL(小さじの5分の1)に17.5mgが含まれます。
ふだんの食事と比べると
農林水産省の推計では、日本人が食品からとるカドミウムは平均で体重1kgあたり1日0.32μg、平均体重55.1kgで計算すると1日約17.6μgです。350万倍の水1mLに含まれる17.5mg(17,500μg)は、その約993日分(約2.7年分)にあたります。
カドミウムとは?どこにあり、体に何が起きるのか
カドミウムは、銀白色の金属元素(元素記号Cd、原子番号48)です。自然界では亜鉛や銅、鉛などの鉱石と一緒に存在し、土や海水にもわずかに含まれています。米国の毒性物質疾病登録局(ATSDR)によると、主な用途はニッケル・カドミウム電池で、プラスチックや陶磁器、ガラスの着色(顔料)、めっき、合金、太陽電池(テルル化カドミウム)などにも使われてきました。
私たちがふだんカドミウムを取り込む主な経路は食べ物です。WHOによると、成人が1日に口からとる量は10〜35μgで、たばこを吸う人は煙からも取り込みます。日本では、米・小麦・大豆の3品目から7割以上をとっていると農林水産省は推計しています。
一度に大量にとった場合(急性中毒)
カドミウムの塩を飲み込むと、ほぼ直後に嘔吐・下痢・腹痛が起こり、重い場合は顔のむくみ、血圧低下、肺水腫などを経て死に至った例も報告されています(IPCS)。今回の事件で、女性が水を飲んだ直後に何度も救急外来に運ばれたのは、こうした急性の症状と考えると説明がつきます。
少しずつ長くとった場合(慢性の影響)
カドミウムは主に腎臓にたまり、WHOによると体内での半減期は10〜35年と非常に長い物質です。長い期間をかけて腎臓の尿細管の働きを損ない、骨がもろくなる原因にもなります(ATSDR)。この慢性の影響が最も重い形で現れたのが、日本のイタイイタイ病です。
発がん性については、国際がん研究機関(IARC)がカドミウムとその化合物を「ヒトに対して発がん性がある」物質に分類しています。米EPAは、吸い込んだ場合について「おそらく発がん性がある」としています(いずれもATSDRによる)。一方でWHOの飲料水ガイドラインは、口から取り込んだ場合に発がん性がある証拠はないと整理しています。
体内のカドミウムは測れる
ATSDRによると、カドミウムは尿・血液・便で測ることができます。尿は体にたまった総量と長期間のばく露、血液は最近のばく露の目安になります。ただし、これらの検査で将来の健康影響まで予測できるわけではなく、一般の医療機関で日常的に行う検査でもありません。今回の事件では、警察が女性と両親の血液を検査し、3人ともからカドミウムが検出されました。
日本のカドミウム基準はどう決まった?水道は0.003mg/L、米は0.4ppm
水道水:2010年に0.01mg/Lから0.003mg/Lへ強化
日本の水道水質基準は現在0.003mg/L以下です。厚生労働省の審議会資料によると、もとは0.01mg/Lでしたが、内閣府食品安全委員会のリスク評価を受けて、水道水からとる量を全体の10%とみなし、0.003mg/Lに強化されました(2010年4月施行)。
WHOのガイドライン値も同じ0.003mg/Lで、根拠は次のような計算です。月あたりの暫定耐容摂取量(体重1kgあたり25μg)を体重60kgの大人に当てはめ、1日分にした量の10%を水に割り当て、1日2Lの水を飲むとして割ると、1Lあたり2.5μg。これを切り上げて0.003mg/L(3μg/L)としています。一生飲み続けても健康に影響が出ないように、食べ物からとる分を差し引いて余裕を持たせた値です。
米:1970年に1.0ppm、2011年から0.4ppm
食品では、米に食品衛生法の規格基準があります。農林水産省によると、1970年10月に「玄米で1.0ppm以上を含んではならない」と定められ、2010年4月の改正(2011年2月施行)で「玄米・精米とも0.4ppmを超えてはならない」と厳しくなりました。基準を超える米は、食品として売ることも加工することもできません。
0.4ppm以上1.0ppm未満の米は、基準が厳しくなる前から、国(当時の食糧庁など)が農家から買い上げ、食用に回さず合板用ののりなどに処理していました。その量の推移が次のとおりです。
農林水産省「コメのカドミウム濃度に基づく流通規制の歴史」の買上数量(トン)から抜粋。2004年産以降は全国米麦改良協会による買上数量。2011年の基準改正の施行で事業は終了。
買い上げ量は1975年産の19,767トンをピークに、2010年産では811トンと約24分の1に減りました。農林水産省は、2009〜2010年産の米のカドミウム濃度が1997〜1998年度の調査より低く、低減対策が有効だったとしています。2025年4月には、秋田県で基準値を超える米が流通していたことがわかり、自主回収の指示が出ました(厚生労働省・秋田県の発表、出荷量85,972kg)。厚生労働省はこの際、0.4ppmは数十年にわたって食べ続けることを想定した値だと説明しています。
ふだんの食事は耐容量の範囲内
食品安全委員会は、カドミウムの耐容週間摂取量を体重1kgあたり7μgとしています。農林水産省の推計では、日本人の食品からの摂取量はこの平均35%、多い人(95パーセンタイル)でも67%で、通常の食生活で健康が損なわれることはないとしています。今回の事件は、こうした「長く食べ続けたら」の世界とは桁がまったく違う、意図的に混ぜられた高濃度の毒物による被害です。
イタイイタイ病の認定患者数の推移|総数201人、存命の患者は0人に
イタイイタイ病は、富山県の神通川流域で大正時代ごろから起きた公害病です。1968年5月、厚生省(当時)は、イタイイタイ病はカドミウムの慢性中毒によってまず腎臓障害が生じ、次いで骨軟化症を来したもので、原因物質のカドミウムは三井金属鉱業神岡鉱業所の排水以外に見当たらない、とする見解を発表しました。上流の鉱山から流れ出たカドミウムが田んぼの土を汚し、住民はその米や川・井戸の水を長い年月にわたってとり続けたことで発症しました。

患者の認定は、公害健康被害補償法にもとづいて富山県が行っています。毎年の環境白書に載っている人数を、2007年末から2025年末まで並べました。
| 時点 | 認定された者の総数 | 存命の被認定者 | 要観察者 |
|---|---|---|---|
| 2007年12月末 | 192人 | 5人 | 2人 |
| 2008年12月末 | 195人 | 6人 | 1人 |
| 2009年12月末 | 195人 | 5人 | 1人 |
| 2011年3月末 | 195人 | 4人 | 0人 |
| 2011年12月末 | 196人 | 4人 | 0人 |
| 2012年12月末 | 196人 | 4人 | 1人 |
| 2014年3月末 | 196人 | 3人 | 1人 |
| 2015年3月末 | 198人 | 5人 | 3人 |
| 2016年3月末 | 200人 | 5人 | 3人 |
| 2017年3月末 | 200人 | 5人 | 4人 |
| 2018年3月末 | 200人 | 5人 | 3人 |
| 2019年3月末 | 200人 | 4人 | 1人 |
| 2020年3月末 | 200人 | 1人 | 1人 |
| 2021年3月末 | 200人 | 1人 | 1人 |
| 2021年12月末 | 200人 | 1人 | 2人 |
| 2022年12月末 | 201人 | 2人 | 0人 |
| 2023年12月末 | 201人 | 1人 | 1人 |
| 2024年12月末 | 201人 | 0人 | 1人 |
| 2025年12月末 | 201人 | 0人 | 0人 |
環境省「環境白書」各年版(平成20年版〜令和8年版)の「イタイイタイ病」の項から当サイトで集計。時点は各白書の記載どおり(年末と3月末が混在)。要観察者は、将来イタイイタイ病に発展する可能性を否定できないとして富山県が経過を観察している人。
1975年3月末の環境白書では、存命の被認定者は70人(ほかに死亡者58人)、要観察者は123人でした。それから半世紀がたち、認定された人の総数は2007年末の192人から201人に増えています。ばく露から何十年もたってから認定される人がいたことになり、カドミウムの健康影響がいかに長く続くかを示しています。
一方で、存命の被認定者は2024年12月末時点で0人となり、2025年12月末には要観察者も0人になりました。富山県は現在も、認定審査会の運営と、神通川流域の住民健康調査を続けています。
イタイイタイ病と今回の事件の違い
イタイイタイ病は、汚染された米や水を低い濃度で何十年もとり続けたことによる慢性中毒です。今回の米国の事件は、基準の数百万倍という極端に高い濃度の水を、1年以上にわたって繰り返し飲まされたとされる事件で、まず急性の症状が出ました。被害女性は長期的な健康影響も訴えており、カドミウムが体に長く残る性質を考えると、今後の経過にも注意が必要と見られます。
職場の飲み物への異物混入を防ぐには
今回の事件は、職場という身近な場所で、手元を離れた水筒が狙われました。公開された映像を見た人からも「飲み物は絶対に放置しないで」という声が上がっています(NEWSポストセブン)。報道から読み取れる教訓を、日常でできる対策として整理しました。
- 飲み物を席に置いたまま離れない:持ち歩くか、ロック付きのボトルや鍵のかかる場所を使う。
- 味・におい・色の違和感を無視しない:今回は家族が「妙な酸味」に気づいたことが突破口になりました。違和感があれば飲むのをやめ、中身を捨てずに保管して相談する。
- 原因不明の体調不良が続くときは、飲食物との関係を医師に伝える:特定の飲み物を飲んだ直後に症状が出るなど、時間の関係をメモしておくと手がかりになります。
- 証拠を確保して警察に相談する:飲み物の現物や容器は検査の対象になります。自分で調べようとせず、早めに専門機関へ。
NEWSポストセブンの報道(X)
NEWSポストセブンは10月19日朝、米国で女性の水筒から「基準の約350万倍のカドミウム」が検出された事件を報じました。「350万倍」が何の基準に対する倍率かと、その濃さの意味は本文で検算しています。
《「誰かが水筒に何かを…」隠しカメラが捉えた衝撃映像》https://t.co/6VMMdx4aw7
2年にわたる原因不明の体調不良、女性の水筒から「基準の約350万倍のカドミウム検出」
【米国】 pic.twitter.com/TKdXxyfV2f
— NEWSポストセブン (@news_postseven) October 18, 2026
カドミウムと水筒事件のよくある質問
Q. カドミウムの「基準の350万倍」とはどれくらいの濃さですか?
A. SF StandardやABC7によると、比べた相手は米国の連邦の飲料水基準です。米国の基準はEPA(水道水)、FDA(ボトル入り飲料水)ともに0.005mg/Lなので、350万倍は1Lあたり約17,500mg(約17.5g)にあたります。日本の水道水質基準(0.003mg/L)にあてはめると約583万倍です。
Q. 水筒の素材からカドミウムが溶け出したのですか?
A. いいえ。報道によると、同僚の男性が水筒に何かを注ぎ入れる様子が隠しカメラに映っており、男性は毒物混入の罪で有罪判決を受けました(2026年10月に取り消し)。水筒の製品そのものが原因とされた事件ではありません。
Q. カドミウムを飲むとどうなりますか?
A. 一度に多く飲み込むと、ほぼ直後から嘔吐・下痢・腹痛などが起こり、重い場合は命にかかわります(IPCS)。少量でも長くとり続けると腎臓にたまり、腎臓の働きの低下や骨がもろくなる原因になります。体内での半減期は10〜35年と長いのが特徴です(WHO)。
Q. 日本の水道水や米のカドミウムは大丈夫ですか?
A. 日本の水道水質基準は0.003mg/L、米は0.4ppmで、いずれも長い期間とり続けることを想定した値です。農林水産省の推計では、日本人の食品からの摂取量は耐容週間摂取量の平均35%、多い人でも67%で、通常の食生活で健康が損なわれることはないとされています。
Q. イタイイタイ病の認定患者は何人ですか?
A. 環境白書によると、イタイイタイ病と認定された人の総数は201人です(2025年12月末時点)。存命の被認定者は2024年12月末時点で0人となりました。
Q. 加害者はなぜ有罪判決が取り消されたのですか?
A. カリフォルニア州の刑法1203.4条では、保護観察の条件をすべて満たした人は有罪判決の取り消しを申し立てることができ、毒物混入は裁判所が拒否できる罪に含まれていないためです。2026年10月12日、検察の反対を押し切って裁判所が認めました。記録が完全に消えるわけではありません。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 米国環境保護庁(EPA):National Primary Drinking Water Regulations
- 米連邦規則:21 CFR 165.110 Bottled water
- WHO:Guidelines for drinking-water quality, Chemical fact sheet: Cadmium
- EU:Directive (EU) 2020/2184/豪NHMRC:Australian Drinking Water Guidelines: Cadmium
- 環境省:水質基準項目と基準値/一律排水基準/令和8年版 環境白書(イタイイタイ病)ほか各年版
- 厚生労働省:水質基準に関する省令等の改正(2010年2月 審議会資料)/カドミウム基準値を超える米の流通(2025年4月4日)
- 農林水産省:コメのカドミウム濃度に基づく流通規制の歴史/我が国における食品からのカドミウムの摂取量
- IPCS INCHEM:Poisons Information Monograph 089: Cadmium/米ATSDR:ToxFAQs: Cadmium
- San Francisco Standard:She nearly died from poisoning. Now she’s releasing spy-cam videos of convicted coworker(2026年10月10日)
- ABC7 News(KGO-TV):「Bay Area woman poisoned by co-worker speaks out after his felony conviction expunged by judge」(2026年10月)
- NBC News:容疑者の逮捕・起訴を報じた2019年の記事(アラメダ郡の裁判所書類を引用)
- NEWSポストセブン:女性の水筒から「基準の約350万倍のカドミウム検出」【米国】(2026年10月19日)
アイキャッチの写真:James St. John「Cadmium (Element – 48)」/Wikimedia Commons(CC BY 2.0、トリミング・明るさ調整・文字入れあり)。本文の写真はWikimedia Commonsのフリーライセンス画像(一部リサイズ)。基準値の倍率は当サイトの計算で、報道の「350万倍」は米国の連邦飲料水基準0.005mg/Lを前提に換算しています。データは2026年10月19日時点のものです。


コメント