マネー|金(ゴールド)
金価格はなぜ下落?最高値から2割安、実質金利は18年ぶり高水準
金の値段が下がっています。田中貴金属の店頭小売価格は、3月3日の1g=29,969円(過去最高)から、10月9日は23,311円まで下がりました。下落率は22.2%です。同じ時期、米国の「実質金利」は2008年以来の高さに上がっています。1973年からの日次価格54年分と米国債の利回りから、下落の理由と今後を確かめました。
この記事の結論
- 田中貴金属の金の店頭小売価格(税込)は、2026年3月3日の29,969円が過去最高。10月9日は23,311円で、22.2%(約2割)下がりました。それでも2025年初め(14,787円)と比べると、まだ58%高い水準です。
- 下落はほぼ全部が「ドル建ての金の値下がり」です。ニューヨークの金先物は3月2日の5,312ドルから10月8日の4,157ドルへ21.7%下がり、ドル円は+0.9%でほぼ横ばいでした。
- 背景は米国の実質金利の上昇です。物価の上昇分を差し引いた10年国債の利回りは、2月27日の1.72%から10月5日に2.95%へ上がり、2008年11月以来の高さになりました(10月9日は2.91%)。利息のつかない金は、金利が上がると相対的に不利になります。2026年は週ごとの値動きで、金と実質金利の逆相関(-0.50)が2010年代(-0.38)より強く出ています。
- 1973年以降、金が直近の高値から2割以上下がった局面は今回を除いて11回。元の高値を取り戻すまでの期間は中央値で7年で、2年以内に戻ったのは3回だけでした。1980年1月の高値は、取り戻すまで40年かかっています。
- 今後は10月29日(日本時間)のFOMCと、米国の金利の行方が最大の材料です。
金価格はいくら?過去最高の3万円目前から2割下落
田中貴金属が毎朝9時30分に公表している金の店頭小売価格(1gあたり、税込)を、1973年1月から2026年10月9日まで13,136営業日分集めました。金は2025年の初めから上がり続け、2026年3月3日に29,969円をつけました。1年2か月でおよそ2倍です。
そこから流れが変わります。6月には2万3千円台まで下がり、8月3日に22,624円まで落ち込みました。8月下旬にいったん2万6千円台まで戻したものの、9月に再び下げ、10月9日は23,311円です。
2026年の月ごとの高値・安値(1gあたり・税込)
| 月 | 月中の高値 | 月中の安値 | 月末 |
|---|---|---|---|
| 1月 | 29,815円1月29日 | 24,491円1月5日 | 29,628円 |
| 2月 | 28,788円2月24日 | 26,527円2月6日 | 28,734円 |
| 3月 | 29,969円3月3日 | 24,777円3月24日 | 25,732円 |
| 4月 | 27,321円4月15日 | 26,017円4月30日 | 26,017円 |
| 5月 | 26,667円5月12日 | 25,294円5月28日 | 25,489円 |
| 6月 | 25,758円6月1日 | 23,094円6月25日 | 23,125円 |
| 7月 | 24,046円7月23日 | 23,098円7月14日 | 23,395円 |
| 8月 | 26,525円8月25日 | 22,624円8月3日 | 25,417円 |
| 9月 | 25,366円9月1日 | 23,085円9月29日 | 23,435円 |
| 10月(10月9日まで) | 23,503円10月7日 | 23,105円10月8日 | 23,311円 |
10月9日夕方(17時公表)の価格は小売23,741円、買取23,192円でした。金を手放す人が受け取るのは、小売価格ではなく買取価格のほうです。
※田中貴金属の店頭小売価格(税込、9時30分公表)。日中に価格が変わる日があります。売買の別途手数料は含みません。
金価格はなぜ下落した?下げのほぼ全部が「ドル建ての金安」
日本の金価格は「ドル建ての金の値段」×「ドル円」で決まります。円安になれば、海外の金の値段が同じでも日本の金価格は上がります。そこで、田中貴金属が最高値をつけた3月3日の朝と、10月9日の朝に反映されていた、ニューヨークの前日の終値で分けてみました。
ドル円は3月も10月も1ドル=156〜158円台で、ほとんど動いていません。日本の金価格の下落は、海外の金の値下がりがほぼそのまま出たもので、わずかな円安がほんの少し下支えしただけです。ドル建ての金は1月29日に5,318ドルの最高値をつけ、10月9日は4,216ドルでした。
では、なぜ世界で金が売られているのか。いちばん目立つのが、米国の金利の上昇です。
理由は米国の金利|実質金利2.95%は2008年以来
金は、持っていても利息や配当が生まれません。そのため、国債などの利回りが上がると「利息のつく資産のほうが得」と考える人が増え、金は売られやすくなります。特に注目されるのが、名目の利回りから予想物価上昇率を差し引いた「実質金利」です。米財務省は、物価連動国債から計算した実質利回りを毎日公表しています。
| 日付 | 金(ドル/オンス) | 田中貴金属(円/g) | 米10年 実質金利 | 米10年 名目金利 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年12月31日2025年末 | 4,341ドル | ―(年末休業) | 1.93% | 4.18% |
| 2026年1月29日ドル建ての最高値 | 5,318ドル | 29,815円 | 1.89% | 4.24% |
| 2026年2月27日実質金利が2026年の最低 | 5,248ドル | 28,734円 | 1.72% | 3.97% |
| 2026年3月3日円建て(田中貴金属)の最高値 | 5,124ドル | 29,969円 | 1.77% | 4.06% |
| 2026年8月3日円建ての安値 | 4,090ドル | 22,624円 | 2.43% | 4.70% |
| 2026年10月5日実質金利が2026年の最高 | 4,157ドル | 23,381円 | 2.95% | 5.31% |
| 2026年10月9日最新 | 4,216ドル | 23,311円 | 2.91% | 5.24% |
米国10年の実質金利は、金が高かった2月27日の1.72%から、10月5日には2.95%まで1.2ポイント上がりました。これを上回るのは2008年11月以来です。名目の10年国債利回りも10月5日に5.31%をつけ、2002年以来の水準にあります(米10年債利回り上昇はなぜ?)。9月にはFRBが3年ぶりに利上げしました(FRBが3年ぶり利上げ)。
金と実質金利の関係をデータで確かめる
ニューヨークの金先物と米国10年の実質金利で、週ごとの変化の関係を計算しました。マイナスの数字が大きいほど「金利が上がると金が下がる」関係が強いことを表します。
| 期間 | 相関係数 | 実質金利が上がった週に金が下がった割合 |
|---|---|---|
| 2010〜2019年 | -0.38 | 143週/232週(62%) |
| 2022〜2024年 | -0.37 | 47週/83週(57%) |
| 2025年 | +0.28 | 6週/20週(30%) |
| 2026年(10月9日まで) | -0.50 | 14週/24週(58%) |
2010年代は-0.38で、「金利が上がると金が下がる」というよく知られた関係が出ていました。ところが2025年は+0.28とプラスで、金利が上がっても金は上がり続けていました。2026年は-0.50に戻り、金利の上昇がそのまま金の重しになる相場になっています。
金利だけで決まるわけではない
金の値段は、各国の中央銀行の買い、地政学リスク、ドルの強さ、投資家の資金の出入りなど多くの要因で動きます。この記事で確かめたのは「2026年は金利との逆の関係が強い」という事実までで、下落のすべてが金利で説明できるわけではありません。
※実質金利は米財務省「Daily Treasury Par Real Yield Curve Rates」の10年、名目金利は「Daily Treasury Par Yield Curve Rates」の10年。金はYahoo Financeの金先物(GC=F)の終値。相関は週の最終営業日どうしの変化(金は%、実質金利はポイント)で計算しました。
金が2割下がったあと、元に戻るまで何年?過去11回を数えた
田中貴金属の54年分の日次価格(消費税の影響を除くため税抜きに換算)で、直近の高値から20%以上下がった局面を数えました。今回を除くと11回あります。
| 高値 | 底 | 下落率 | 高値を取り戻した時期 |
|---|---|---|---|
| 1973年7月1,160円 | 1973年8月860円 | -25.9% | 1974年1月高値から0.5年 |
| 1974年2月1,715円 | 1974年7月1,275円 | -25.7% | 1974年10月高値から0.7年 |
| 1974年11月1,960円 | 1976年8月1,015円 | -48.2% | 1979年5月高値から4.5年 |
| 1980年1月6,495円 | 1980年5月3,645円 | -43.9% | 2020年7月高値から40.5年 |
| 1980年9月4,980円 | 1982年3月2,475円 | -50.3% | 2013年2月高値から32.4年 |
| 1982年9月4,220円 | 1986年7月1,810円 | -57.1% | 2011年8月高値から28.9年 |
| 1987年8月2,390円 | 1989年2月1,568円 | -34.4% | 2006年4月高値から18.7年 |
| 1990年3月2,008円 | 1995年5月1,070円 | -46.7% | 2005年12月高値から15.7年 |
| 1996年2月1,471円 | 1999年9月916円 | -37.7% | 2003年2月高値から7.0年 |
| 2008年7月3,338円 | 2008年11月2,240円 | -32.9% | 2009年11月高値から1.4年 |
| 2013年4月5,084円 | 2013年6月3,868円 | -23.9% | 2019年8月高値から6.3年 |
| 2026年3月27,245円 | 2026年8月20,567円 | -24.5% | まだ戻っていない |
元の高値を取り戻すまでの期間は中央値で7年でした。2年以内に戻ったのは、1973〜74年の2回とリーマン・ショック後の2008〜09年の1回、計3回だけです。1980年1月の高値は40年後の2020年7月まで戻らず、その間の1999年9月には、1973年11月以来の安値(税抜916円)まで下がっています。
今回の下げは8月3日の底で-24.5%でした。過去の例が示すのは「金は長期的に必ず戻る」でも「もう戻らない」でもなく、戻るまでの時間には数か月から数十年までの大きなばらつきがあるということです。
※税抜きの店頭小売価格で計算(消費税率3%・5%・8%・10%の時期を割り戻し)。高値から20%以上下がり、その後の安値から25%以上戻った時点で1つの局面としました。1980〜90年代は長い下げ相場の途中で何度も2割下落が起きており、回復年数の長い局面が重なっています。円建てのため、為替の影響も含みます。
金価格の今後の見通し|3つのシナリオと10月の日程
- 続落米国の金利がさらに上がるFRBが追加の利上げに前向きな姿勢を示したり、インフレ指標が強く出たりして実質金利が3%を超えていけば、金にはさらに逆風です。8月3日の安値(22,624円)が次の目安になります。
- 円安ドル建ての金は下がっても、円安で相殺日本の金価格はドル円の影響も受けます。7月に163円台をつけたような円安が再び進めば、海外の金が下がっても日本の価格は下げにくくなります。
- 反発米国の金利が下がり始める景気の減速などで利上げ観測が後退し、実質金利が下がれば、金は戻りやすくなります。8月下旬に実質金利がやや下がった場面では、金も2万6千円台まで戻していました。
| 日付(日本時間) | イベント |
|---|---|
| 10月14日(水)21時30分 | 米国の9月の消費者物価指数(CPI)。物価が強ければ利上げ観測と実質金利の上昇につながる(米CPIでドル円はどう動く?) |
| 10月29日(木)午前3時 | 米FOMCの結果発表(10月27〜28日開催)。続けて議長会見(FOMCとは?) |
| 10月30日(金) | 日銀の金融政策決定会合の結果(29〜30日開催)。円相場を通じて日本の金価格に影響(日銀10月利上げはある?) |
※シナリオは考え方の整理で、相場の先行きを予想・保証するものではありません。
金を買う・売るならどの方法?4つの違い
| 方法 | 特徴 |
|---|---|
| 金地金・金貨 | 現物を買って持つ。田中貴金属の10月9日夕方の価格は小売23,741円・買取23,192円で、1gあたり549円(約2.3%)の差がある。別途の手数料がかかる重さもある |
| 純金積立 | 毎月決まった金額で少しずつ買う。値下がりした月は多くの量を買える(ドルコスト平均法)。年会費や購入手数料は会社で違う |
| 金ETF・投資信託 | 証券口座で株と同じように売買できる。NISAで買える商品もある。保管の手間がなく、信託報酬などのコストがかかる |
| CFD(差金決済取引) | 金の値動きの差額だけをやりとりする。DMM CFDの「金スポット」は1Lot=1トロイオンス(約31.1g)、レバレッジは最大20倍で、約3.3万円の証拠金から取引できる計算。売りから入れるので下落局面でも取引できるが、損失も同じ倍率でふくらむ |
CFDは金の現物を持たず、値動きの差額だけを取引する方法です。DMM CFDの金スポットは1Lotが1トロイオンス(約31.1g)で、いまの価格(約4,216ドル、1ドル158.25円)だと取引額は約66.7万円、レバレッジ20倍の必要証拠金は約3.3万円です。金が1ドル動くと、1Lotで約158円の損益になります。証拠金取引の仕組みとロスカットの考え方はFXとは?でも数字で解説しています。
レバレッジ取引は「下がったら買い」が通用しにくい
現物の金なら、値下がりしても持ち続けて回復を待てます。CFDなどの証拠金取引では、値下がりが続くとロスカット(強制決済)で損失が確定します。過去の2割下落からの回復に中央値で7年かかったことを考えると、長く持つつもりなら現物や積立、短い期間で値動きを取引するならCFD、と分けて考えるのが基本です。
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金価格の下落についてよくある質問
Q. 金価格はなぜ下がっているのですか?
A. 米国の金利の上昇が大きな理由です。物価上昇分を差し引いた米10年国債の実質金利は、2月27日の1.72%から10月5日に2.95%へ上がり、2008年11月以来の高さになりました。利息のつかない金は、金利が上がると売られやすくなります。日本の金価格の下落は、ほぼ全部がドル建ての金の値下がりによるもので、ドル円はほとんど動いていません。
Q. 金価格の過去最高値はいくらですか?
A. 田中貴金属の店頭小売価格(1g・税込)では、2026年3月3日の29,969円が過去最高です。ドル建ての金先物は1月29日の5,318ドルが最高でした。
Q. 金価格は今どれくらい下がっていますか?
A. 10月9日の店頭小売価格は23,311円で、最高値から22.2%下がっています。ただし2025年初め(14,787円)と比べると、まだ58%高い水準です。
Q. 金価格はまた最高値に戻りますか?
A. わかりません。1973年以降、金が直近の高値から2割以上下がった11回では、元の高値に戻るまで中央値で7年かかりました。2年以内に戻ったのは3回だけで、1980年の高値は戻るまで40年かかっています。
Q. 金を売るなら今がいいですか?
A. 売り時は人によって違い、この記事では判断できません。手放すときは小売価格ではなく買取価格で受け取る点、取引先によって手数料が違う点を確認してください。10月9日夕方の田中貴金属の価格は、小売23,741円・買取23,192円でした。
Q. CFDで金を取引するにはいくら必要ですか?
A. DMM CFDの金スポットは1Lot=1トロイオンス(約31.1g)で、レバレッジ20倍の場合、1ドル158.25円・金4,216ドルなら必要証拠金は約3.3万円です。必要証拠金ぴったりではわずかな値動きでロスカットになるため、余裕を持った入金が必要です。
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出典・参考資料
- 田中貴金属工業:貴金属価格情報/日次金価格推移・過去の金価格(1973〜2026年の各年)/月次金価格推移
- 米財務省(U.S. Department of the Treasury):Daily Treasury Par Real Yield Curve Rates(2003〜2026年)/Daily Treasury Par Yield Curve Rates
- Yahoo Finance:Gold (GC=F) Historical Data/USD/JPY Historical Data
- DMM CFD:DMM CFDの取扱銘柄/証拠金シミュレーション
- アイキャッチ背景:Stevebidmead「Gold bullion bars」(Wikimedia Commons、CC0)をトリミング・文字入れ
金価格は田中貴金属の公表値(税込)、ドル建ての金はニューヨーク金先物の終値で、田中貴金属の価格は毎朝9時30分に前日の海外市場を反映して決まります。下落局面の集計、相関、要因分解は筆者が公表データから計算したもので、将来の値動きを示すものではありません。本記事は情報提供を目的としたもので、特定の商品の売買を勧めるものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。


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