クマ出没はなぜ秋に増える?
人身被害の3分の2が9〜11月
2025年度(令和7年度)のクマの出没は全国50,801件、人身被害は238人・うち死亡13人でいずれも過去最悪でした。環境省の月別データを自分で集計すると、出没の51.8%が10〜11月の2か月に集中し、人身被害の67.6%は9〜11月、死者13人のうち7人は10月に起きていました。なぜ秋なのか、そして2026年度はどうなっているのかを一次データで確かめます。
この記事でわかること
- 2025年度のクマ出没は50,801件で、前年度20,513件の約2.5倍と記録的だった
- 当ブログの集計では、その51.8%が10〜11月の2か月に集中。10月だけで31.5%
- 人身被害238人のうち9〜11月が161人(67.6%)、死者13人中7人が10月
- 2026年度は4〜7月の出没が17,362件で前年同期の1.37倍と高い水準で推移
- 2025年9月1日から、市町村長の判断で市街地でも「緊急銃猟」ができる制度が始まっている
2025年度は出没5万件、被害238人でいずれも過去最悪
環境省が都道府県から聞き取ってまとめている速報値によると、2025年度(令和7年度)のクマ類の出没は全国で50,801件。前年度の20,513件から約2.5倍に跳ね上がり、記録の残る2009年度以降で最多となりました。
人身被害も238人・死亡13人で過去最多です。それまでの最多は2023年度(令和5年度)の219人・死亡6人でしたから、死者数は一気に倍以上になりました。年度ごとの推移は次のとおりです。
| 年度 | 出没件数 | 被害人数 | 死亡者 |
|---|---|---|---|
| 令和4年度(2022) | 11,136件 | 75人 | 2人 |
| 令和5年度(2023) | 24,348件 | 219人 | 6人 |
| 令和6年度(2024) | 20,513件 | 85人 | 3人 |
| 令和7年度(2025) | 50,801件 | 238人 | 13人 |
| 令和8年度(2026)4〜8月 | 17,362件(4〜7月) | 60人 | 6人 |
※環境省の速報値(2026年9月9日時点)。北海道は出没数を公表していないため出没件数に含まれません。九州・沖縄の8県はクマが生息しないため調査対象外です。
出没の半分は10〜11月に起きている
環境省のデータは月別に出ています。そこで2025年度の12か月ぶんを自分で足し合わせ、どの月に集中しているのかを計算しました。
| 月 | 出没件数 | 年間に占める割合 | 人身被害 | 死亡 |
|---|---|---|---|---|
| 7月 | 5,161件 | 10.2% | 18人 | 3人 |
| 8月 | 4,069件 | 8.0% | 14人 | 1人 |
| 9月 | 4,766件 | 9.4% | 39人 | 0人 |
| 10月 | 15,998件 | 31.5% | 89人 | 7人 |
| 11月 | 10,338件 | 20.3% | 33人 | 1人 |
| 12月 | 1,851件 | 3.6% | 6人 | 0人 |
| 1月 | 484件 | 1.0% | 0人 | 0人 |
※当ブログの集計。環境省の令和7年度データより。
結果ははっきりしていました。
- 出没の51.8%が10〜11月の2か月に集中。10月だけで年間の31.5%
- 人身被害は9〜11月の3か月で161人=全体の67.6%
- 死者13人のうち7人(53.8%)が10月に集中
被害のピークは出没のピークより1か月早い9月から立ち上がるのも特徴です。9月は出没件数が年間の9.4%にすぎないのに、被害は39人と7月・8月の倍以上になっています。山でのきのこ採り・栗拾いなど、人が山に入る用事が9月から増えることと無関係ではないでしょう。
令和4〜7年度の4年ぶんを合算すると、10〜11月が占める割合は38.5%でした。年ごとに見ると令和6年度は17.1%と低く、逆に出没が爆発した令和7年度は51.8%。ドングリが凶作の年ほど、秋への偏りが極端になるという関係が読み取れます。
なぜ秋に集中するのか——3つの理由
- 理由1冬眠前の「過食期」に入るクマは冬眠中いっさい食べずに過ごすため、秋のあいだに大量の脂肪を蓄えなければなりません。この時期は1日に必要なカロリーが平常時より大幅に増え、食べることに強く動機づけられた状態になります。行動時間が長くなり、行動範囲も広がるため、人と出会う確率がはね上がります。
- 理由2ブナ・ミズナラの実が凶作になる年がある主食となるブナやミズナラの堅果(ドングリ)は、豊作の年と凶作の年が数年周期で入れかわります。凶作の年は山に食べ物がないため、クマが里へ下りてくる。2025年度の爆発的な出没は、この凶作が背景にあるとみられています。各県は例年9〜10月に堅果類の豊凶調査を公表しているので、地元の予測を確認しておくと備えになります。
- 理由3里に「安全でおいしい餌場」ができている収穫されないまま残った柿や栗、生ゴミ、放置された果樹園。人里には秋になると山より高カロリーで採りやすい餌が並びます。人を恐れず市街地に居つく個体は「アーバンベア」と呼ばれ、いったん味を覚えると繰り返し現れるようになります。柿の実をもぎ取るだけでも出没を減らす効果があるとされるのはこのためです。
2026年度はどうなっているか
2026年度は4月から7月までの出没が17,362件。前年同期(12,716件)の1.37倍という高い水準です。人身被害は4〜8月で60人と前年同期の69人をやや下回っていますが、死者はすでに6人で前年同期の5人を上回っています。出没の勢いが衰えていない以上、これから迎える10〜11月がヤマ場になります。
2025年9月から市街地でも「緊急銃猟」ができるようになった
被害の急増を受けて鳥獣保護管理法が改正され、2025年9月1日に「緊急銃猟」の制度が施行されました。それまで、市街地など人の住む場所での発砲は原則としてできませんでしたが、市町村長の判断で猟銃を使った捕獲ができるようになっています。
市町村長は、次の4つをすべて満たすと判断した場合に緊急銃猟を実施できます。
①ヒグマ・ツキノワグマが住居や広場などに侵入した、またはその恐れがある
②危害の防止が緊急に必要である
③銃猟以外の方法では的確かつ迅速な捕獲が困難である
④住民らに弾丸が当たる恐れがない
あわせて市町村長は、住民の安全確保のため通行制限や避難の指示ができ、建物などに損害が出た場合は自治体が補償する規定も置かれました。
対象となる「危険鳥獣」にはヒグマ・ツキノワグマのほかイノシシも指定されています。環境省は運用のための緊急銃猟ガイドラインを作成し、2026年4月に改訂しました。制度が動き出した2025年度以降の実施状況も、環境省が都道府県別に公表しています。
出会わないために/出会ってしまったら
- 音を出しながら歩く——クマ鈴やラジオで、こちらの存在を早めに知らせる。クマの側も人を避けたがっています
- 早朝・夕方の単独行動を避ける——活動が活発になる時間帯です
- 家のまわりの誘引物を片づける——収穫しない柿・栗は落とす、生ゴミは前夜から出さない
- 出会ったら走って逃げない——背を向けて走ると追う習性を刺激します。クマの方を向いたまま、ゆっくり後ずさりして距離をとります
- クマ撃退スプレーは風向きと射程を確認して携行する——環境省は2026年8月にスプレーの性能に関する推奨要件を公表しています
よくある質問
Q. クマの出没はなぜ秋に増えるのですか?
A. 冬眠に備えて大量に食べる「過食期」に入り、行動範囲が広がるためです。加えて主食のブナ・ミズナラの実が凶作の年は山に食べ物がなく、里へ下りてきます。実際、環境省のデータでは2025年度の出没の51.8%が10〜11月の2か月に集中していました。
Q. いちばん危ないのは何月ですか?
A. 10月です。2025年度は出没15,998件(年間の31.5%)、人身被害89人(37.4%)、死者7人(13人中の53.8%)がすべて10月に集中していました。ただし人身被害は9月から立ち上がるため、9月から11月までを警戒期間と考えるのが実態に合います。
Q. 2026年のクマ出没は多いのですか?
A. 高い水準です。2026年度の4〜7月の出没は17,362件で、前年同期12,716件の1.37倍にあたります。人身被害は4〜8月で60人と前年同期をやや下回りますが、死者はすでに6人で前年同期の5人を上回っています。
Q. 市街地でクマを撃てるようになったというのは本当ですか?
A. 本当です。改正鳥獣保護管理法が2025年9月1日に施行され、市町村長が4つの条件(住居等への侵入またはその恐れ、緊急の必要性、他の方法では困難、弾丸が人に当たる恐れがない)をすべて満たすと判断した場合に限り、市街地でも「緊急銃猟」ができるようになりました。
Q. クマに出会ったらどうすればいいですか?
A. 走って逃げないことが基本です。背を向けて走ると追いかける習性を刺激します。クマの方を向いたまま、声を出さずにゆっくり後ずさりして距離をとってください。子グマを見かけたら近くに必ず母グマがいるので、写真を撮ろうとせず、すぐにその場を離れます。
Q. 家の周りでできる対策はありますか?
A. 誘引物をなくすことが最も効果的です。収穫しない柿や栗はすべてもぎ取って落とす、生ゴミは収集当日の朝に出す、ペットフードを屋外に置かない、といった対応です。クマは一度おいしい餌場を覚えると繰り返し訪れるため、最初から寄せつけないことが重要になります。
出典・参考リンク
あわせて読みたい
あわせて読みたい
動物の雑学・生態まとめ60選|犬猫の飼い方から珍獣まで一気読み

コメント