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機内でモバイルバッテリー発火、なぜ増える?米国は今年すでに過去最多
インドの格安航空会社インディゴの旅客機で10月11日、機内の手荷物から火が出て、デリー発チェンナイ行きの便がハイデラバードに目的地を変えて着陸しました。報道では、座席上の収納棚に入れたモバイルバッテリーが燃えたとされています。けが人はいませんでした。機内でのバッテリーの発煙・発火は世界で相次いでおり、米連邦航空局(FAA)の記録では、モバイルバッテリーなどが原因の事例は今年1〜8月だけで42件と、すでに年間の過去最多を超えました。何が起きたのかと、データから見える傾向、日本の新ルールを整理します。
この記事の結論
- 10月11日(日)、インディゴのデリー発チェンナイ行き6E6115便(エアバスA321)で、乗客の電子機器から煙が出ました。乗務員が消火器で火を消し、ハイデラバードに着陸。けが人はいませんでした。
- インド各紙は、座席上の収納棚に入れたモバイルバッテリーから火が出たと伝えています。インディゴの声明は「乗客の電子機器から煙」とし、モバイルバッテリーとは確認していません。
- 米連邦航空局(FAA)の記録では、モバイルバッテリー・予備電池による発煙・発火は2026年1〜8月で42件。これまで最多だった2025年の34件を、8か月で超えました。
- 機内の電池トラブル全体に占める割合も、2020〜2025年は3割台でしたが、2026年は約52%と半分を超えています。
- 日本では2026年4月24日から、機内に持ち込めるモバイルバッテリーは2個までになり、機内での充電・給電も禁止されました。収納棚に入れず、手元で管理するのが基本です。
米国の件数はFAAのリチウム電池事故の記録(10月1日更新)から当サイトが集計。FAAが確認できた事例だけで、すべての事例を網羅したものではありません。
インディゴ機のモバイルバッテリー発火、何が起きた?
インドのBusiness Today(10月11日)やSunday Guardian、Brutなどの報道をもとに、10月13日時点で分かっていることをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生 | 2026年10月11日(日)、デリーを出発して間もない飛行中 |
| 便 | インディゴ 6E6115便(デリー発チェンナイ行き)、エアバスA321 |
| 搭乗者 | 乗客180人超、乗務員7人(Sunday Guardian) |
| 出火場所 | 座席上の収納棚(報道)。乗客がかばんで火をたたき、乗務員が機内の消火器で消し止めた |
| 着陸 | ハイデラバードのラジブ・ガンジー国際空港に目的地を変更して着陸 |
| けが人 | なし |
| 航空会社の説明 | 「乗客の電子機器から煙が出たため、安全手順に従って目的地を変えた。乗務員がすぐに対応し、着陸前に事態を収めた」。モバイルバッテリーが原因かどうかは確認していない |
| その後 | 別の機体を用意し、乗客をチェンナイへ運んだ |
機内で撮られた動画がSNSで広まり、米国でも「indigo power bank fire flight」が検索の急上昇ワードになりました。報道によると、収納棚の中で煙と炎が上がり、近くの乗客がかばんで繰り返し火をたたいたあと、客室乗務員が消火器で消し止めています。
インドでは「収納棚に入れない」がすでにルール
Brutによると、インドの航空当局(DGCA)は2025年11月、機内でモバイルバッテリーを使って機器を充電することと、座席上の収納棚に入れることをやめるよう求める通達を出しています。インディゴの規定も、モバイルバッテリーは手元に置き、収納棚には入れないとしています。今回のバッテリーがなぜ収納棚にあったのかは、まだ明らかになっていません。
インディゴでは1年で3回目
インディゴの機内でモバイルバッテリーが燃えたのは、報道で確認できるだけでもこの1年で3回目です。
- 2025年10月19日デリー発ディマプル行き(6E2107便)地上走行中に座席の背もたれのポケットに入れた機器から出火。すぐに消し止め、駐機場に戻りました(Tribune)。
- 2026年5月5日ハイデラバード発チャンディーガル行き(6E108便)着陸後、乗客のかばんから煙。乗客198人と乗務員6人が脱出用スライドで避難しました。バッテリーは座席ポケットにあり、規則どおりだったため早く消せたと報じられています(AirlineRatings)。
- 2026年10月11日デリー発チェンナイ行き(6E6115便)飛行中に収納棚から出火(報道)。ハイデラバードに着陸しました。
なぜ収納棚のモバイルバッテリーが危ないのか
モバイルバッテリーの中のリチウムイオン電池は、落としたりつぶれたりして内部でショートすると、熱が熱を呼ぶ「熱暴走」を起こし、煙や炎を出すことがあります。熱暴走の仕組みは蓄電池の火災はなぜ水で消せない?でも解説しています。
機内で特に問題になるのが、座席上の収納棚です。棚の扉が閉まっていると、煙が出始めても乗客も乗務員も気づきにくく、気づいたときには炎が大きくなっています。火元を探すために他の荷物を下ろす必要もあり、消火までに時間がかかります。手元にあれば、異常な熱や煙にすぐ気づけます。
きっかけになった2025年1月の釜山の火災
収納棚が注目されたきっかけは、2025年1月28日に韓国・釜山の金海空港で起きたエアプサン391便の火災です。香港行きのエアバスA321が出発前に後方の収納棚付近から燃え、乗客乗員176人は脱出用スライドで避難しましたが、機体は全焼しました。韓国当局は中間報告で、収納棚にあった予備のモバイルバッテリーが原因の可能性があるとしています。
この火災を受けて、韓国やアジアの航空会社が相次いで収納棚への収納を禁止し、日本でも2025年7月8日から、国土交通省と国内の航空会社が「収納棚に入れず手元に」と呼びかけるようになりました。

機内のモバイルバッテリー発火は増えている?米FAAの記録で集計
米連邦航空局(FAA)は、米国の航空会社などから報告を受けたリチウム電池の発煙・発火・異常発熱を、2006年から1件ずつ公開しています(10月1日更新)。2006年3月から2026年10月1日までに確認された事例は798件。そのうち旅客便が624件、貨物便が147件です。
原因の機器:モバイルバッテリー・予備電池が最多
2006年3月〜2026年10月1日の累計。1件に複数の機器が関わる場合などがあるため、合計は798件と一致しません。「モバイルバッテリー・予備電池」はFAAの分類「Battery Pack/Battery」で、ほとんどがモバイルバッテリーですが、電動車いすの電池なども含みます。
年別:2026年は8か月で過去最多を更新
FAAの「Battery Pack/Battery」の年別件数。2026年は1〜8月(9月以降の事例は確認作業中で、まだ載っていません)。
モバイルバッテリー・予備電池の事例は、2016年まで年10件未満でしたが、2017年に26件へ急増し、その後は年20件台で推移しました。2025年に34件と最多を更新し、2026年は8月末までで42件。月あたりにすると2025年の約2.8件から約5.2件へ、およそ1.9倍のペースです。
| 年 | 機内の電池トラブル全体 | うちモバイルバッテリー・予備電池 |
|---|---|---|
| 2020年 | 39件 | 13件(33%) |
| 2021年 | 63件 | 20件(32%) |
| 2022年 | 85件 | 28件(33%) |
| 2023年 | 79件 | 25件(32%) |
| 2024年 | 90件 | 28件(31%) |
| 2025年 | 97件 | 34件(35%) |
| 2026年 (1〜8月) |
81件 | 42件(52%) |
全体の件数は2025年の97件が最多で、2026年は8月末までで81件です。目立つのは中身の変化で、モバイルバッテリー・予備電池の割合が2020〜2025年の3割台から、2026年は52%に上がりました。電子たばこ(2026年は17件)、スマートフォン(9件)、ノートパソコン(5件)は、例年並みかそれ以下です。
2026年の月別:国際ルールが変わった後も月5件前後
FAAの明細から、2026年の「Battery Pack/Battery」42件を発生日で数えたもの。うち3件は貨物便(地上の荷扱い中)で、39件は旅客便。
国際民間航空機関(ICAO)は3月27日、モバイルバッテリーの機内持ち込みを2個までとし、機内での充電を禁止する国際基準の緊急改訂を承認しました。ところがFAAの記録では、1〜3月は月平均5.0件、4〜8月は月平均5.4件と、改訂後もペースは落ちていません。
ただし、この数字だけで「ルールに効果がない」とは言えません。ICAOの基準は主に国際線のルールで、米国の国内線にどう適用されるかは別の問題です。また、持ち込み個数や充電を制限しても、バッテリーそのものが熱暴走を起こすリスクは残ります。FAAの記録の多くは「乗客のモバイルバッテリーが過熱し、乗務員が耐火バッグに入れた」という内容で、手元にあったから早く対処できた事例が並んでいます。
3月26日には、羽田発ニューヨーク(JFK)行きのアメリカン航空機で、出発のための地上走行中に乗客のモバイルバッテリーが異常を起こした事例も記録されています。日本を発着する便も例外ではありません。
日本の飛行機のモバイルバッテリーのルールは?2026年4月から2個まで
国土交通省は、ICAOの緊急改訂を受けて基準を改め、2026年4月24日から新しいルールを適用しています。国内線・国際線とも対象です。
| 項目 | 〜2026年4月23日 | 2026年4月24日〜 |
|---|---|---|
| 預け入れ荷物 | 入れてはいけない(必ず機内に持ち込む) | 同じ |
| 容量 | 160Whを超えるものは持ち込み禁止 | 同じ |
| ショート対策 | 端子に絶縁テープを貼る・袋に分けて入れる | 同じ |
| 収納棚 | 入れずに座席ポケットなど手元で保管(2025年7月〜の呼びかけ) | 同じ |
| 個数 | 100Wh以下は個数制限なし | 2個まで(160Wh以下) |
| 機内での充電 | 常に様子が見える場所で | 禁止(機内電源からバッテリーへの充電) |
| 機内での給電 | 常に様子が見える場所で | しないこと(バッテリーからスマホなどへの充電) |
国土交通省の旅客向け案内(別紙1)より作成。100Whを超え160Wh以下の予備の電池(カメラのバッテリーなど)は、モバイルバッテリーと合わせて個数の上限があります。航空会社によってはさらに厳しいルールがあります。
容量(Wh)の計算方法
モバイルバッテリーの容量はふつう「mAh」で書かれています。ワット時定格量(Wh)は定格容量(mAh)×定格電圧(V)÷1,000で計算します。電圧は多くの製品で3.6〜3.7Vです。
- 10,000mAh・3.7V → 37Wh
- 20,000mAh・3.7V → 74Wh
- 27,000mAh・3.7V → 99.9Wh(国交省の案内の例)
スマホの充電に使う一般的なモバイルバッテリーは、ほとんどが100Wh以下に収まります。ただし個数は容量に関係なく2個までなので、3個以上持っている人は注意が必要です。
違反すると罰則の可能性も
国交省の案内では、預け入れ荷物に入れる、160Wh超を持ち込む、ショート対策をしない、3個以上持ち込む、機内でバッテリーを充電する、の5つに違反した場合、航空法により罰則が科される可能性があるとしています。持ち込めなかったバッテリーは、宅配便でも航空輸送できない場合があります。
海外でも対応が進んでいます。たとえばシンガポール民間航空庁は4月15日から、シンガポール発の便でモバイルバッテリーを2個までとし、機内での充電を禁止しました。シンガポール航空とスクートは、機内でのモバイルバッテリーの使用自体を認めていません。
機内でモバイルバッテリーが熱くなったら?乗る前と機内でできること
乗る前に
- PSEマークのある製品を選ぶ:日本で売られるモバイルバッテリーは電気用品安全法の対象です。極端に安い製品や、膨らんだ・落として変形した製品は持ち込まないのが安全です。
- 2個までに減らす:個数制限は容量に関係ありません。予備のカメラ用電池なども含めて数を確かめます。
- 端子を保護する:鍵や小銭と同じポケットに入れず、ケースや袋に1個ずつ入れます。
- スマホは搭乗前に充電しておく:機内ではモバイルバッテリーからの充電ができないため、座席の電源(USB・コンセント)がない機材では、空港で充電しておくのが確実です。
機内で
- 収納棚に入れない:座席の前のポケットや足元のかばんなど、目の届く場所に置きます。
- 熱い・膨らむ・煙・異臭に気づいたら、すぐ客室乗務員へ:自分で水をかけたり、かばんでたたいたりしないでください。客室乗務員は消火器や耐火バッグなどで対処する訓練を受けています。
- 座席に挟まったら動かさない:リクライニングの機構に挟まったスマホやバッテリーがつぶれて発火した例があります。無理に引き抜かず、乗務員を呼びます。
機内のモバイルバッテリーのよくある質問
Q. インディゴ機のモバイルバッテリー発火はいつ起きましたか?
A. 2026年10月11日(日)です。インドの格安航空会社インディゴのデリー発チェンナイ行き6E6115便で飛行中に煙と火が出て、ハイデラバードに目的地を変えて着陸しました。けが人はいませんでした。
Q. 出火の原因はモバイルバッテリーですか?
A. インドの各紙は、座席上の収納棚に入れたモバイルバッテリーから火が出たと伝えています。ただ、インディゴの声明は「乗客の電子機器から煙が出た」としており、モバイルバッテリーが原因だとは確認していません(10月13日時点)。
Q. 機内でのモバイルバッテリーの発火は増えていますか?
A. 増えています。米連邦航空局(FAA)の記録では、モバイルバッテリー・予備電池による発煙・発火は2025年が34件で過去最多でしたが、2026年は1〜8月だけで42件と、すでにそれを超えました。機内の電池トラブル全体に占める割合も約52%に上がっています。
Q. 飛行機にモバイルバッテリーは何個まで持ち込めますか?
A. 日本では2026年4月24日から、160Wh以下のものを2個までです。預け入れ荷物に入れることはできず、160Whを超えるものは持ち込みもできません。航空会社によってはさらに厳しいルールがあります。
Q. 機内でモバイルバッテリーを使ってスマホを充電できますか?
A. できません。2026年4月24日から、機内でモバイルバッテリーからスマホなどへ充電することと、機内の電源からモバイルバッテリーを充電することが、どちらも禁止されました。スマホは座席の電源を使うか、搭乗前に充電しておきます。
Q. なぜモバイルバッテリーを収納棚に入れてはいけないのですか?
A. 収納棚の中で発煙・発火すると、扉が閉まっているため気づくのが遅れ、消火にも時間がかかるからです。2025年1月の釜山・エアプサン機の火災では、収納棚付近から出た火で機体が全焼しました。手元にあれば、熱や煙にすぐ気づいて乗務員に知らせることができます。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- 米連邦航空局(FAA):Lithium Battery Incidents(2026年10月1日更新、10月13日閲覧)
- 国土交通省:モバイルバッテリーの機内持込みの新たなルールについて(2026年4月14日)、同 報道発表資料・別紙(PDF)
- シンガポール民間航空庁「New Power Bank Safety Restrictions to be Implemented on Flights Departing Singapore」
- Business Today「Passenger’s power bank catches fire onboard, IndiGo flight to Chennai diverted to Hyderabad」(10月11日)
- Sunday Guardian、Brut「An IndiGo Flight’s Power Bank Fire Raises a Bigger Safety Question」(10月12日)
- AirlineRatings「IndiGo A321 evacuated after power bank fire」、The Tribune(2025年10月)
- Wikipedia「Air Busan Flight 391」
米国の件数の集計(年別・月別・割合)は当サイトによるもので、FAAの公式統計ではありません。写真:アイキャッチ=Mattes/Wikimedia Commons(パブリックドメイン)、本文=Mk2010/Wikimedia Commons(CC BY-SA 4.0)。アイキャッチはトリミング・文字入れあり。


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