錦織圭、最後の四大大会は予選敗退。破ったのは「錦織に憧れた20歳」だった
現地8月28日、全米オープン予選決勝で錦織圭選手が20歳の坂本怜選手に敗れ、現役最後の四大大会は本戦に届きませんでした。勝った坂本選手は、幼い頃に錦織選手を見てラケットを握り、同じ奨学金制度で同じアカデミーに渡った後輩です。試合の中身と、坂本怜選手とは何者なのか、そして引退試合はいつなのかを整理します。
2026年8月29日時点の情報です
何が起きたのか|全米オープン予選決勝、8月28日
2026年8月28日(現地時間)、ニューヨークで行われた全米オープン男子シングルス予選の最終ラウンドで、坂本怜選手が錦織圭選手を6-4、7-6(7-3)のストレートで下しました。この一戦は当初27日に予定されていましたが、雨天のため順延され、28日に決着しています。
坂本選手にとっては、これが全米オープン本戦への初出場。一方の錦織選手は今季限りでの引退を表明しており、この予選敗退によって四大大会でのキャリアに幕が下りました。2014年に準優勝を果たした思い出の舞台で、本戦のコートに立つことはかないませんでした。
一方の坂本選手は、錦織選手の四大大会最後の対戦相手になったことについて「悪くない響きっす」と表現し、「圭君と並べる名前になっていきたい」と語っています。憧れの選手を破った直後のコメントとしては、驚くほど前を向いた言葉でした。
坂本怜とは?錦織圭を破った20歳の経歴
「坂本怜」という名前を今回初めて知った方も多いはずです。基本プロフィールを整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 生年月日 | 2006年6月24日(20歳) |
| 出身地 | 愛知県名古屋市 |
| 身長・体重 | 195cm・80kg(右利き/バックハンドは両手打ち) |
| 世界ランク | 157位(自己最高148位) |
| 拠点 | 米フロリダ州のIMGアカデミー |
| 主な実績 | 2024年1月 全豪オープンジュニア男子シングルス優勝/2024年5月 ITFジュニア世界ランキング1位 |
| プロ転向 | 2024年9月 |
最大の特徴は195cmという日本人離れした体格です。長身から打ち下ろすサーブは大きな武器で、身長178cmの錦織選手とは対照的なタイプと言えます。
経歴で目を引くのが、2024年1月の全豪オープンジュニア優勝です。四大大会ジュニアの男子シングルスを日本男子が制したのは、2019年ウィンブルドンの望月慎太郎選手に次いで史上2人目でした。同年5月にはITFジュニア世界ランキングで1位に立ち、9月にプロへ転向しています。
2人をつないでいた「盛田正明テニス・ファンド」というバトン
今回の対戦が単なる「若手が大ベテランを破った試合」で終わらないのは、2人がまったく同じ道を通ってきたからです。
その道とは、盛田正明テニス・ファンド。ソニーの元副会長・盛田正明氏が2003年4月に私財を投じて設立した奨学金制度で、日本の有望ジュニアを選考し、米フロリダ州のIMGアカデミーへ送り出す仕組みです。渡航費・滞在費・トレーニング費・語学教育までを負担し、返済義務はありません。
- 2003盛田正明テニス・ファンド発足「世界で勝てる日本選手を育てる」ため、10代のジュニアを米国へ送る制度としてスタート
- 2000年代錦織圭が奨学生に選ばれ、13歳で渡米中学生でIMGアカデミーへ。2007年、17歳でプロ転向
- 2014錦織が全米オープン準優勝四大大会でアジア男子初の決勝進出。ファンド最大の成功例に
- 2022坂本怜が奨学生に選ばれ、15歳で渡米同じIMGアカデミーへ。錦織と練習する機会もあった
- 2026同じ制度の先輩と後輩が、四大大会の予選で対戦後輩が勝ち、先輩の四大大会キャリアが終わった
このファンドからは錦織選手のほか、西岡良仁選手、内山靖崇選手、望月慎太郎選手らが世界へ出ています。今回の予選決勝は、日本テニス界が20年以上かけて築いてきた育成の仕組みが、その第一号と最新世代を同じコートに立たせた試合でもありました。
錦織圭が残した記録を振り返る
あらためて、錦織選手が19年の現役生活で積み上げたものを数字で確認します。
| 項目 | 記録 |
|---|---|
| 自己最高ランク | 世界4位(2015年3月2日付)=アジア男子史上最高位 |
| 四大大会最高成績 | 2014年 全米オープン準優勝(アジア男子で初の四大大会決勝進出) |
| 五輪 | 2016年リオデジャネイロ 銅メダル(3位決定戦でナダルに勝利) |
| ATPツアー優勝 | シングルス12勝 |
| ATPファイナルズ | 4回出場(アジア男子で唯一)。2014年の初出場で準決勝進出 |
| 通算成績 | 452勝232敗(2026年8月28日時点・スポーツナビ集計) |
| 生涯獲得賞金 | 約2,616万ドル(1ドル159円換算で約41億円) |
特筆すべきは2016年リオ五輪の銅メダルです。3位決定戦でラファエル・ナダル選手を6-2、6-7(1)、6-3で破って獲得したもので、日本テニス界にとっては1920年アントワープ五輪の熊谷一弥選手・柏尾誠一郎選手の銀メダル以来、96年ぶりのメダルでした。
錦織圭の引退試合はいつ?ラストはジャパンオープン
四大大会は終わりましたが、錦織選手の現役生活はまだ終わっていません。ラストマッチの舞台は、地元・東京です。
- 8/30全米オープン本戦が開幕(現地)坂本怜が本戦初出場。男子シングルス決勝は9月13日
- 9/30木下グループ ジャパンオープン開幕東京・有明コロシアム。錦織は主催者推薦(ワイルドカード)で本戦出場予定
- 10/6大会最終日に引退セレモニー有明コロシアムで、これまでの活躍をたたえるセレモニーを実施。本人も参加予定
大会公式サイトによると、ジャパンオープンの男子大会は9月30日から10月6日(予選は9月28〜29日)に有明コロシアムなどで開催され、最終日の10月6日に錦織選手のセレモニーが予定されています(出典:木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス公式、時事通信)。
よくある質問
Q. 錦織圭選手はいつ引退を発表したのですか?
A. 2026年5月1日、自身のSNSで「今シーズンをもって現役を引退する決断をいたしました」と表明しました。当時36歳、プロ19年目でのシーズン中の発表でした。
Q. 坂本怜選手はどんな選手ですか?
A. 2006年6月24日生まれ、名古屋市出身の20歳です。身長195cmの長身から放つサーブが武器で、現在の世界ランクは157位。2024年の全豪オープンジュニアを制し、同年9月にプロ転向しました。錦織選手に憧れてテニスを始めた世代にあたります。
Q. なぜ錦織選手は予選から出場したのですか?
A. 四大大会の本戦にランキングで直接入れるのは、おおむね世界100位前後までです。ケガによる長期離脱でランキングが477位(8月24日時点)まで下がっていたため、予選を勝ち上がる必要がありました。
Q. 坂本選手はこのあとどうなりますか?
A. 全米オープン本戦は現地8月30日に開幕します。予選を勝ち上がった選手として本戦初出場を果たすことになり、勝ち進めば世界ランクも大きく上昇します。
まとめ|終わりの試合が、始まりの試合でもあった
錦織圭選手の最後の四大大会は、本戦のコートに立てないまま幕を閉じました。数字だけを見れば36歳・世界477位の予選敗退ですが、その相手が「錦織に憧れてラケットを握り、錦織と同じ奨学金で同じアカデミーへ渡った20歳」だったことに、この試合の意味があります。
錦織選手は10月6日、有明でのセレモニーで19年の現役生活に区切りをつけます。同じ8月30日、坂本選手は初の四大大会本戦のコートに立ちます。一つのキャリアが終わる週に、もう一つのキャリアが始まる——日本テニス界にとって、そういう夏の終わりになりました。
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