米国株・AI
ナスダックが10月に急落、AI設備投資への不安が重荷に
米国のハイテク株指数ナスダックが、2026年10月に大きく値下がりしました。ナスダック総合指数の月間騰落率は−5.30%、主力100銘柄のNASDAQ100は−6.65%。ロイターはNASDAQ100の時価総額が10月だけで2兆ドル超失われる見通しだと報じました。背景にあるのが巨大IT企業のAI(人工知能)への設備投資です。指数の月足を1985年までさかのぼって今回の下げの大きさを順位づけし、マイクロソフト・アルファベット・アマゾン・メタの4社の設備投資を四半期報告書(10-Q)から集計しました。
この記事のポイント
- ナスダック総合指数は9月末の26,861.06から10月30日の25,437.00へ−5.30%。10月としては1987年・2008年・2018年・2000年・1997年に次ぐ下げでした。
- マイクロソフト・アルファベット・アマゾン・メタの4社が7〜9月期に使った設備投資(有形固定資産の取得による支出)は合計2,019億ドル。1年前の973億ドルから約2.1倍、2年前の約3.4倍になりました。
- ロイターの「2兆ドル」は30日の取引時間中の見通しです。終値ベースの下げは、報道時点の「5.8%超」よりさらに大きくなりました。
- 円で見たNASDAQ100は、為替(三菱UFJ銀行の公表仲値)がほぼ横ばいだったため、ドル建てとほぼ同じ約−6.5%と試算されます。
ナスダックの10月に何が起きたのか
ナスダック総合指数は10月6日に27,599.79で取引を終え、終値として最高値をつけました。NASDAQ100も同じ日に31,224.47の最高値でした。ところがその後は下げる日が増え、10月の22営業日のうち11日が前日比マイナスでした。30日(金)の終値は総合指数が25,437.00、NASDAQ100が28,384.85です。
最高値からの下落率は、総合指数が−7.84%、NASDAQ100が−9.09%です。高値から10%下げると「調整局面」と呼ばれることが多いですが、30日時点ではその手前にとどまっています。
大きく動いた日(前日比)
| 日付 | ナスダック総合 | NASDAQ100 | できごと |
|---|---|---|---|
| 10月6日 | +0.45% | +0.48% | ナスダック総合・NASDAQ100とも終値で最高値 |
| 10月14日 | −1.88% | −2.02% | 下げ幅が広がる |
| 10月16日 | −2.15% | −2.50% | AI関連の債務への懸念で下落(記事10024) |
| 10月22日 | −2.60% | −2.90% | 10月で2番目に大きな下げ |
| 10月29日 | −1.38% | −1.38% | アルファベットが上場来最大の下落率(記事11422) |
| 10月30日 | −2.86% | −3.46% | インテル株の急落など(記事11449)。月間の下げが確定 |
騰落率はYahoo Financeの終値から当サイトが計算。できごとは当サイトの関連記事とロイターの報道によります。
30日のNASDAQ100は−3.46%と、2026年6月5日(−4.77%)以来の大きな下げでした。取得した2024年1月以降の日次では9番目の大きさです。
ナスダック総合とNASDAQ100の違い
ナスダック総合指数は、米ナスダック市場に上場するほぼすべての銘柄でつくる指数です。NASDAQ100は、そのうち金融を除く時価総額の大きい100銘柄でつくる指数で、日本の投資信託やETFの多くはこちらに連動します。大型ハイテク株の比重が高いため、今回はNASDAQ100のほうが下げが大きくなりました。
「2兆ドルが消えた」はどこから出た数字か
「ナスダックで2兆ドル」という数字は、ロイター通信が米国時間10月30日に配信した記事によるものです。記事は、NASDAQ100の時価総額が10月だけで2兆ドルを超えて失われる見通しだと伝えました。ロイターは、その規模をスペースXの時価総額をわずかに上回る大きさと例えています。
この記事の配信は日本時間10月31日0時11分(米東部時間30日午前11時11分)で、市場が開いている途中でした。記事の中でも、NASDAQ100の10月の下げは「5.8%超」と書かれています。その後も下げが続き、終値で計算すると10月の下げは−6.65%でした。つまり、終値で見た時価総額の減少は、報道の時点より大きかったとみられます。
なお、当サイトでは指数の構成銘柄すべての時価総額を集計できていないため、「2兆ドル」という金額そのものは検証していません。ここではロイターの報道として紹介し、指数の騰落率だけを自分で計算しています。
なぜAI投資が売りの理由になったのか
ロイターは、大手IT企業の決算をきっかけに、AIに投じている巨額の資金が十分な速さで利益を生むのかを投資家が疑い始めた、と説明しています。記事によると、メタ・アルファベット・アマゾンは設備投資の見通しをさらに引き上げました。ほかにも次の点が挙げられています。
- アルファベットは29日(木)、主力の検索広告の結果が期待に届かず、現金の流出も大きく増えたことで、1日の下落率が上場来最大になった
- メタは過去最大となる975億ドルの資金調達を計画し、株式の価値が薄まることへの懸念が出た
- マイクロソフトは約250億ドルの社債発行を計画していると報じられた。大手IT企業が借金でAI投資をまかなうことへの警戒もある
一方でロイターは、マイクロソフトとスペースXの決算は、AI投資が利益に結びつき始めたことを示したとも書いています。売られ方は一様ではなかったといえます。
10月の下げは過去何番目?1985年からの月足で順位づけ
Yahoo Financeで取得できたナスダック総合指数の月末終値(1985年1月〜)から、毎月の騰落率を計算しました。1985年2月から2026年10月までの501か月のうち、2026年10月の−5.30%は下げの大きいほうから64番目です。全体の上位13%ほどに入る大きさですが、歴史的な暴落と比べると規模は小さめです。
| 順位 | 年月 | 騰落率 | 当時のできごと |
|---|---|---|---|
| 1位 | 1987年10月 | −27.23% | ブラックマンデー |
| 2位 | 2000年11月 | −22.90% | ITバブル崩壊 |
| 3位 | 2001年2月 | −22.39% | ITバブル崩壊 |
| 4位 | 1998年8月 | −19.93% | ロシア危機・LTCM |
| 5位 | 2008年10月 | −17.73% | リーマン・ショック |
| 6位 | 2001年9月 | −16.98% | 米同時多発テロ |
| 7位 | 2000年4月 | −15.57% | ITバブル崩壊 |
| 8位 | 2001年3月 | −14.48% | ITバブル崩壊 |
| 9位 | 2022年4月 | −13.26% | 米利上げ・インフレ |
| 10位 | 1990年8月 | −13.01% | イラクのクウェート侵攻 |
| 64位 | 2026年10月 | −5.30% | AI設備投資への不安 |
ナスダック総合指数の月末終値から当サイトが計算(1985年2月〜2026年10月の501か月)。「当時のできごと」は一般によく知られた背景で、当サイトの要約です。
10月に限ると6番目、2023年以降では3番目
10月だけを比べると、2026年は1985年以降で6番目に大きな下げでした。また、生成AIブームが本格化した2023年以降の46か月に限ると、総合指数では2025年3月(−8.21%)、2023年9月に次ぐ3番目、NASDAQ100では2025年3月(−7.69%)に次ぐ2番目の下げです。NASDAQ100は2026年7月にも−6.61%と、ほぼ同じ大きさで下げていました。
| 順位 | 年 | ナスダック総合 | NASDAQ100 |
|---|---|---|---|
| 1位 | 1987年10月 | −27.23% | −26.98% |
| 2位 | 2008年10月 | −17.73% | −16.30% |
| 3位 | 2018年10月 | −9.20% | −8.66% |
| 4位 | 2000年10月 | −8.25% | −8.07% |
| 5位 | 1997年10月 | −5.46% | −7.07% |
| 6位 | 2026年10月 | −5.30% | −6.65% |
一方で、年初からの成績はなおプラスです。2025年末と比べると、総合指数は+9.4%、NASDAQ100は+12.4%です。2026年4月には総合指数が1か月で+15.3%上がっており、今回の下げはその後の大きな上昇の一部を返した形です。
AI設備投資は1年で2倍、4社の四半期データを集計
投資家が気にしている「AI投資」の大きさを、4社が米証券取引委員会(SEC)に出した四半期報告書(10-Q)・年次報告書で確かめました。キャッシュ・フロー計算書の「有形固定資産の取得による支出」(データセンターの建物やサーバーなどへの支出)を、四半期ごとに並べたものです。
| 四半期 | マイクロソフト | アルファベット | アマゾン | メタ | 4社合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024年1〜3月 | 11.0 | 12.0 | 14.9 | 6.4 | 44.3 |
| 4〜6月 | 13.9 | 13.2 | 17.6 | 8.2 | 52.9 |
| 7〜9月 | 14.9 | 13.1 | 22.6 | 8.3 | 58.9 |
| 10〜12月 | 15.8 | 14.3 | 27.8 | 14.4 | 72.3 |
| 2025年1〜3月 | 16.7 | 17.2 | 25.0 | 12.9 | 71.9 |
| 4〜6月 | 17.1 | 22.4 | 32.2 | 16.5 | 88.2 |
| 7〜9月 | 19.4 | 24.0 | 35.1 | 18.8 | 97.3 |
| 10〜12月 | 29.9 | 27.9 | 39.5 | 21.4 | 118.6 |
| 2026年1〜3月 | 30.9 | 35.7 | 44.2 | 19.0 | 129.8 |
| 4〜6月 | 35.8 | 44.9 | 54.2 | 30.1 | 165.1 |
| 7〜9月 | 39.4 | 51.4 | 77.3 | 33.9 | 201.9 |
単位:十億ドル。各社のXBRL(SECの財務データ)から四半期の値を取り出し、累計値から差し引いて計算。2026年7〜9月期は各社の10-Q本文の数字と一致を確認。マイクロソフトは決算期が6月までのため、暦年の四半期に並べ替えています。ファイナンス・リースによる取得は含みません。
4社合計は、2024年7〜9月期の589億ドルから、2025年7〜9月期に973億ドル、2026年7〜9月期には2,019億ドルまで増えました。1年で約2.1倍、2年で約3.4倍です。2026年1〜9月の合計は4,967億ドルで、前年同期の2,574億ドルのおよそ1.9倍、直近4四半期の合計は6,154億ドルになります。
前年同期と比べた伸びは、マイクロソフト2.03倍、アルファベット2.14倍、アマゾン2.20倍、メタ1.80倍で、4社ともほぼ2倍前後です。
各社は来年もさらに増やす方針
四半期報告書には今後の方針も書かれています。メタは2026年の設備投資を約1,350億〜1,450億ドルと見込んでいます(メタの10-Q。メタの設備投資の定義にはファイナンス・リースの元本返済も含まれます)。アマゾンは、2027年の設備投資は主に技術インフラへの投資で大きく増えると見込んでいます。マイクロソフトも、クラウドとAIの学習などのインフラへの投資を続けるとしています。
業界全体の見通しについて、ロイターは次の予測を紹介しています。
- モルガン・スタンレー:AIインフラへの設備投資は、来年(2027年)に全体で1兆ドルを超える
- JPモルガン:2026年だけで9,000億ドルが使われ、2030年には世界のAI設備投資が5.5兆ドルに達する
「AI投資が1兆ドルに迫る」という言い方は、こうした予測を指しています。4社だけで直近1年に6,000億ドルを超えているため、業界全体で1兆ドル規模という見方は、各社の実際の支出とも矛盾しません。
設備投資が増えると何が心配なのか
設備投資は、使ったお金がすぐに費用になるわけではなく、数年かけて減価償却費として利益を押し下げます。投資の回収が遅れると、利益の伸びが鈍ったり、借入や増資で資金を集める必要が出たりします。今回の下げは、AIの需要そのものへの疑いというより「投資に見合う利益がいつ出るのか」への不安が強まった、という見方が報道の中心です。
円で見るとどうなる?NASDAQ100連動の投資信託への影響
新NISAなどでNASDAQ100に連動する投資信託を持っている人にとっては、円で見た値動きが気になるところです。投資信託の基準価額の計算によく使われる三菱UFJ銀行の公表仲値(TTM)で、NASDAQ100を円に換算してみました。
| 項目 | 9月30日 | 10月30日 | 変化率 |
|---|---|---|---|
| NASDAQ100(ドル建て) | 30,408.50 | 28,384.85 | −6.65% |
| ドル円(三菱UFJ銀行 公表仲値) | 157.35円 | 157.54円 | +0.12% |
| NASDAQ100(円換算の試算) | — | — | −6.54% |
NASDAQ100はYahoo Financeの終値、ドル円は三菱UFJ銀行の公表仲値(TTSとTTBの中間)。円換算は「指数×同じ日のTTM」で当サイトが計算した概算です。
10月はドル円がほぼ動かなかった(+0.12%)ため、円で見ても約−6.5%と、ドル建てとほとんど変わらない下げになります。円安が下げを和らげる、という形にはなりませんでした。
実際の基準価額とずれる理由
海外の株式に投資する投資信託の多くは、国内の営業日ごとに、前日の海外市場の終値とその日の為替レートで基準価額を計算します。そのため、米国30日(金)の下げは、多くのファンドで国内の翌営業日である11月2日(月)の基準価額に反映されるとみられます。信託報酬や配当、為替を計算する時点の違いもあるため、実際の基準価額の動きは上の試算とは少しずれます。
投資判断はご自身で
この記事は、公表されたデータと報道を整理したもので、特定の銘柄や投資信託の売買をすすめるものではありません。過去の下げの順位は、今後の値動きを示すものではありません。
ナスダックの10月の下落についてよくある質問
Q. ナスダックは10月にどれくらい下がった?
A. ナスダック総合指数は9月末から10月30日までに−5.30%、NASDAQ100は−6.65%でした。どちらも10月6日に最高値をつけたあとの下げで、最高値からは総合指数が−7.8%、NASDAQ100が−9.1%です。
Q. 2兆ドルの下落は本当?
A. ロイターが10月30日の取引時間中に、NASDAQ100の時価総額が10月に2兆ドル超失われる見通しだと報じた数字です。その時点の下げは5.8%超で、終値では6.65%まで広がりました。当サイトでは時価総額の金額そのものは検証していません。
Q. なぜAI投資で株価が下がるの?
A. 大手IT企業がデータセンターなどに巨額の設備投資を続けており、その投資が十分な速さで利益を生むのかが疑われたためと報じられています。4社の7〜9月期の設備投資は合計約2,019億ドルで、1年前の約2.08倍でした。
Q. 今回の下げは過去と比べて大きい?
A. 1985年以降の501か月の中では64番目の下げで、1987年のブラックマンデー(−27.23%)やITバブル崩壊、リーマン・ショックのような暴落よりは小さい規模です。10月に限ると6番目、2023年以降では総合指数で3番目の下げでした。
Q. NASDAQ100の投資信託はどれくらい下がった?
A. 為替がほぼ横ばいだったため、円換算でも約−6.5%と試算されます。ただし基準価額の反映には1営業日のずれがあり、信託報酬なども引かれるため、実際の値動きはファンドごとに少し異なります。
あわせて読みたい
出典・参考資料
- Yahoo Finance「NASDAQ Composite (^IXIC) Historical Data」「NASDAQ 100 (^NDX) Historical Data」(月末・日々の終値。2026年10月31日取得)
- Nasdaq Global Indexes「NASDAQ-100 Index Overview」
- Microsoft「Form 10-Q(2026年9月30日終了四半期)」(SEC EDGAR、2026年10月28日提出)
- Alphabet「Form 10-Q(2026年9月30日終了四半期)」(SEC EDGAR、2026年10月29日提出)
- Amazon.com「Form 10-Q(2026年9月30日終了四半期)」(SEC EDGAR、2026年10月30日提出)
- Meta Platforms「Form 10-Q(2026年9月30日終了四半期)」(SEC EDGAR、2026年10月22日提出)
- ロイター「Nasdaq faces $2 trillion wipeout in October as AI spending fears deepen」(Investing.com掲載、2026年10月30日、同日更新)
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国為替相場(三菱UFJ銀行公表相場)」(2026年9月30日・10月30日)
- アイキャッチ写真:米アイオワ州カウンシルブラフスのグーグルのデータセンター/Chad Davis(CC BY 2.0、トリミング・明るさ調整し文字を追加)


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