ニュースやビジネスの場面で目にする機会が増えた「DEI(ディー・イー・アイ)」という言葉。「ダイバーシティのことかな?」となんとなく理解していても、3つの文字がそれぞれ何を意味し、なぜ世界的に推進と見直しの両方の動きがあるのか、正確に説明できる人は多くありません。
この記事では、DEIの意味と3要素、企業が取り組む理由、米国を中心とした見直しの動き、そして日本での状況まで、特定の立場に偏らず中立的にわかりやすく解説します。

DEIとは?3つの要素の意味
DEIとは、Diversity(ダイバーシティ:多様性)、Equity(エクイティ:公平性)、Inclusion(インクルージョン:包摂性)の頭文字を取った言葉で、組織づくりや人事の分野で使われる考え方です。
- Diversity(多様性):性別・年齢・国籍・障がいの有無・価値観など、さまざまな背景を持つ人が組織にいる状態を指します。
- Equity(公平性):一人ひとりの状況の違いに応じてサポートを調整し、実質的に公平な機会を提供することです。全員に同じものを与える「平等(Equality)」と区別されます。
- Inclusion(包摂性):多様な人材が「自分はこの組織の一員だ」と感じ、能力を発揮できる環境をつくることです。
「多様な人を集める(D)だけでなく、公平な土台を整え(E)、活躍できる環境をつくる(I)ところまでがワンセット」というのがDEIの考え方です。
なぜ企業はDEIに取り組むのか

DEIは単なる社会貢献ではなく、経営戦略として位置付けられてきました。主な理由は次のとおりです。
- 人材確保:労働力人口が減少するなか、多様な人材に選ばれる組織であることが採用競争力につながります。
- イノベーション:同質的な集団より、多様な視点を持つチームのほうが新しい発想が生まれやすいとする調査・研究が数多く報告されています。
- 市場対応:顧客層が多様化するなかで、社内の多様性が商品・サービスの改善に活きるという考え方です。
- 投資家からの評価:ESG投資の広がりとともに、人的資本や多様性に関する情報開示が企業評価の項目になっています。
米国で起きたDEI見直しの動き
一方で、DEIをめぐっては近年、大きな揺り戻しも起きています。米国では2025年に発足した第2次トランプ政権が、連邦政府機関のDEIプログラムを撤廃する大統領令に署名し、民間企業にも見直しの圧力が広がりました。これを受けて、DEI関連の部署や目標を縮小・廃止する米国企業が相次いだ一方、方針を維持すると表明した企業もあり、対応は分かれています。
見直し派の主な主張は「属性を考慮した採用・登用は能力主義に反し、逆差別になり得る」というものです。推進派は「構造的な格差がある以上、公平な土台づくりは必要であり、DEIは長期的な競争力に資する」と反論しています。どちらの立場にも一定の論拠があり、米国社会でも評価が割れているのが実情です。今後の政策や企業の対応は流動的なため、最新の動向はニュースでご確認ください。
日本におけるDEIの現在地

日本では、女性活躍推進法や障害者雇用促進法などの法制度を背景に、大企業を中心にDEI推進室の設置や人的資本開示が進んできました。米国の揺り戻しの影響を受けて表現を見直す企業も一部にありますが、人手不足という構造的な事情から、多様な人材の活躍支援そのものは引き続き重要な経営課題とされています。
また、近年は「B(Belonging:帰属意識)」を加えたDEIBという言葉や、「アクセシビリティ」を含める考え方など、概念自体も進化を続けています。
DEIのニュースを読み解くときの注意点
DEIは政治的な立場によって評価が大きく分かれるテーマです。ニュースやSNSの議論に触れるときは、次の点を意識すると冷静に判断しやすくなります。
- 「DEI廃止」と報じられていても、廃止されたのが専門部署なのか、施策全体なのかで意味が大きく異なります。
- 推進・見直しのどちらの主張にも、根拠となるデータと反論があります。一方の情報だけで判断しないことが大切です。
- 米国の動きがそのまま日本に当てはまるとは限りません。労働市場や法制度の違いを踏まえて読む必要があります。
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よくある質問
Q. DEIとダイバーシティは何が違うのですか?
A. ダイバーシティ(多様性)はDEIの一要素です。多様な人材がいる状態(D)に加えて、状況に応じた公平なサポート(E)と、誰もが活躍できる環境づくり(I)までを含めたのがDEIで、より実践に踏み込んだ概念といえます。
Q. EquityとEqualityはどう違うのですか?
A. Equality(平等)は全員に同じものを与えることで、Equity(公平)は一人ひとりの状況の違いに合わせてサポートを調整し、実質的な機会を揃えることです。たとえば身長差のある人たちに同じ高さの台を配るのが平等、それぞれに合った高さの台を用意するのが公平、と例えられます。
Q. なぜ米国でDEIへの反発が強まったのですか?
A. 「属性を考慮した採用や登用は能力主義に反し、逆差別になり得る」という批判が保守層を中心に強まったためです。2025年には連邦政府のDEIプログラム撤廃が大統領令で指示され、民間にも見直しが波及しました。一方で維持を表明した企業も多く、評価は分かれています。
Q. 日本の企業もDEIをやめる方向に向かうのですか?
A. 現時点で、日本では米国ほどの大きな撤退は起きていません。人手不足を背景に、多様な人材の活躍支援は経営課題であり続けているためです。ただし海外動向の影響を受ける可能性はあり、表現や施策の見直しを行う企業は出てきています。


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