「この仕事、本当に意味があるのだろうか」——そう感じながら働いている人は少なくありません。そうした「無意味だと感じる仕事」を指す言葉が、「ブルシット・ジョブ(bullshit jobs)」です。人類学者デヴィッド・グレーバーが提唱し、世界的に大きな反響を呼びました。
この記事では、ブルシット・ジョブとは何か、その意味と、グレーバーが分類した5つの類型、そしてなぜこうした仕事が生まれるのかを、わかりやすく解説します。自分の仕事や働き方を見つめ直すきっかけになるかもしれません。
ブルシット・ジョブとは?
ブルシット・ジョブとは、直訳すると「クソどうでもいい仕事」。人類学者のデヴィッド・グレーバーが2018年の著書で提唱した概念で、「その仕事をしている本人でさえ、意味がない・不要だと感じているのに、あるふりをしなければならない仕事」を指します。
重要なのは、これは「きつい仕事」や「給料の低い仕事」のことではないという点です。むしろ、給料が高く、体裁の整ったオフィスワークにこそ多いとされます。介護や清掃、配送など、社会に不可欠でありながら軽視されがちな仕事(グレーバーはこれを別に論じています)とは、正反対の概念です。ポイントは「本人が無意味だと感じているかどうか」にあります。

ブルシット・ジョブの5つの類型
グレーバーは、ブルシット・ジョブを大きく5つのタイプに分類しました。
①取り巻き(flunkies)
誰かを偉く見せる、重要に感じさせるためだけに存在する仕事です。実質的な役割はなく、上司や組織の「格」を演出するために置かれている受付や秘書的なポジションなどが例として挙げられます。
②脅し屋(goons)
他者を攻撃したり、欺いたりする要素を持つ仕事で、その仕事が存在するのは、競合もそれをやっているからという性質のものです。攻撃的なテレアポや、一部の広告・ロビイングなどが例とされます。誰かが得をすれば誰かが損をする、ゼロサム的な仕事です。
③尻ぬぐい(duct tapers)
組織の本来直すべき欠陥を、その場しのぎで取り繕うための仕事です。根本原因を放置したまま、生じた問題に対応し続ける役回り。システムの不具合を手作業でカバーし続ける、といった仕事が当てはまります。
④書類穴埋め人(box tickers)
組織が「ちゃんとやっているように見せる」ためだけの、実態を伴わない書類や手続きを作る仕事です。誰も読まない報告書の作成や、形だけのアンケート・評価業務などが例です。
⑤タスクマスター(taskmasters)
2種類あります。一つは不要な管理職(部下に任せておけばよいのに監督するだけの人)、もう一つは他人にブルシット・ジョブを作り出して割り振る仕事です。無意味な仕事を生み出す側にまわるタイプです。

なぜブルシット・ジョブは生まれるのか
技術が進歩し、効率化が進んだはずの現代で、なぜ無意味な仕事がむしろ増えているのでしょうか。グレーバーはいくつかの理由を挙げています。
- 組織の肥大化と官僚化:組織が大きくなるほど、管理や調整、体裁を整えるための仕事が増えていきます。
- 「働いていること」自体が評価される文化:成果より「忙しそうにしている」ことが重視されると、意味のない仕事でも正当化されます。
- 雇用の維持:本当は不要でも、人を雇い続けること自体が目的化することがあります。
グレーバーは、こうした無意味さが働く人の精神的な苦痛(スピリチュアルな暴力)を生んでいると指摘しました。「役に立っていない」という感覚は、人の尊厳を静かに蝕むのです。

ブルシット・ジョブとどう向き合うか
もし自分の仕事に無意味さを感じるなら、それは自分が悪いのではなく、仕事の構造の問題かもしれないと捉え直すことができます。仕事の意味を自分なりに見出す、働き方や環境を見直す、本当にやりがいを感じられる方向を模索する——ブルシット・ジョブという概念は、そうした問いを立てるための道具になります。
もちろん、生活のために働くこと自体は尊いものです。大切なのは、「意味がない」と感じるモヤモヤを言葉にして、自分の働き方を客観的に見つめ直すきっかけにすることです。

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まとめ|「無意味な仕事」を問い直す概念
ブルシット・ジョブとは、本人でさえ無意味だと感じているのに、意味があるふりをしなければならない仕事のことです。グレーバーは、取り巻き・脅し屋・尻ぬぐい・書類穴埋め人・タスクマスターの5類型に分類しました。組織の肥大化や「忙しさ」を評価する文化が、こうした仕事を生み出しているとされます。
この概念は、私たちに「働くとは何か」「意味のある仕事とは何か」を問い直させてくれます。自分の仕事にモヤモヤを感じたとき、その正体を見つめ直すヒントになるでしょう。

よくある質問(FAQ)
Q. ブルシット・ジョブとは何ですか?
人類学者デヴィッド・グレーバーが提唱した概念で、「その仕事をしている本人でさえ、意味がない・不要だと感じているのに、意味があるふりをしなければならない仕事」を指します。きつい仕事や低賃金の仕事のことではなく、本人が無意味だと感じているかがポイントです。
Q. ブルシット・ジョブの5つの類型とは何ですか?
①取り巻き(誰かを偉く見せる)、②脅し屋(他者を攻撃・欺く)、③尻ぬぐい(欠陥をその場しのぎで取り繕う)、④書類穴埋め人(やっているように見せる書類作り)、⑤タスクマスター(不要な管理職や無意味な仕事を割り振る人)の5つです。
Q. きつい仕事や低賃金の仕事がブルシット・ジョブなのですか?
いいえ、違います。むしろ介護や清掃、配送など社会に不可欠な仕事とは正反対の概念です。ブルシット・ジョブは給料が高く体裁の整ったオフィスワークに多いとされ、「本人が無意味だと感じているか」が判断の基準になります。
Q. なぜブルシット・ジョブは生まれるのですか?
組織が大きくなるほど管理や体裁を整える仕事が増える「肥大化・官僚化」、成果より忙しそうにすることが評価される文化、人を雇い続けること自体が目的化することなどが理由とされます。グレーバーは、この無意味さが働く人の精神的苦痛を生むと指摘しています。


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