4人家族・1週間で 最低5本
湯を毎日沸かすなら 15本以上
カセットボンベの必要本数は、公表されている試算どうしでも大きく違います。理由は「何を作るか」と「気温」で消費量が何倍にも変わるからです。この記事では、東京ガス都市生活研究所と岩谷産業という2つの公式データを突き合わせて、あなたの家庭に必要な本数を使い方別・人数別に計算します。
カセットコンロは「最後まで効く」備えである
災害でライフラインが止まったとき、復旧が最も遅いのはガスです。内閣府の阪神・淡路大震災の教訓資料には、当時の復旧経過がこう記録されています。
1995年1月17日の発災から4月11日まで、実に85日。同じ資料には、ガス復旧の遅れに対処するため「避難所などへのカセットコンロの配布」が行われたことも記されています。つまりカセットコンロは、行政が実際に配って回るほど、ガスが止まった生活の生命線でした。
一方で、内閣府の「防災に関する世論調査」(令和7年8月調査)によると、3日分以上を備蓄している家庭の割合は飲料水69.8%、食料品59.8%に対し、食品加熱用熱源は27.7%。食料はあっても温める手段がない家庭が7割を超えている計算です。
必要本数の公式データは2つある
「カセットボンベは何本必要か」を調べると、答えが食い違って出てきます。どちらも根拠のある数字で、前提が違うだけです。
①東京ガス都市生活研究所の試算(4人家族・1週間)
2022年2月2日に発表された調査では、4人家族が1日3食を1週間ぶん、カセットコンロだけで調理した場合のガス使用量を実測しています。結果は合計1,139.6g。カセットボンベ1本の内容量は250gなので、約4.6本、つまり最低5本という結論になります。
②岩谷産業の試算(気温別・2人分)
カセットコンロ最大手の岩谷産業は、用途ごとの必要本数を気温別に公表しています。発熱量2,800kcal/hのこんろ、薄手アルミ鍋(フタなし)、無風という条件での試算です。
| 用途(2人分・1日あたり) | 25℃のとき | 10℃のとき |
|---|---|---|
| レトルト惣菜・パックご飯 | 0.6本 | 0.7本 |
| カップ麺(大) | 0.2本 | 0.4本 |
| 温かい飲み物 | 0.1本 | 0.2本 |
| お湯を沸かす | 0.2本 | 0.4本 |
| すべて行った場合の合計 | 1.1本 | 1.7本 |
注目すべきは気温による差です。カップ麺とお湯沸かしはどちらも10℃で2倍に増え、合計では約1.5倍になります。「4人家族で5本」という数字は、あくまで調理だけを、暖かい季節に行った場合の下限だとわかります。
使い方で3倍変わる 人数・日数別の早見表
2つの公式データを1人1日あたりに直し、人数と日数で掛けたのが次の表です。自分の生活がどのタイプに近いかで選んでください。
| 使い方のタイプ | 1人1日 | 4人×3日 | 4人×7日 |
|---|---|---|---|
| 調理のみ(東京ガス試算ベース) | 約0.17本 | 約2本 | 約5本 |
| 調理+湯沸かし+温かい飲み物(25℃) | 約0.55本 | 約7本 | 約16本 |
| 同上・寒い時期(10℃) | 約0.85本 | 約11本 | 約24本 |
※東京ガス都市生活研究所と岩谷産業の公表値をもとに当サイトが算出。岩谷の値は「2人分」の表を1人あたりに換算しています。
この幅の広さが、ネット上で「5本でいい」「10本は要る」と情報が割れる理由です。現実的な落としどころとしては、4人家族なら9〜12本(3本組を3〜4パック)を目安にすると、冬でも1週間をしのげる計算になります。カップ麺や温かい飲み物を我慢できるなら5本でも足りますが、断水と停電が重なった状況では、温かいものが食べられるかどうかが体調と気力を大きく左右します。
なぜ寒いと本数が増えるのか
カセットボンベの中身は液体のブタンで、気化して初めてガスとして燃えます。この気化には熱が必要で、気温が低いとうまく気化せず、火力が落ちます。さらにボンベ自身も、ガスが出ることで冷えていきます。
結果として、冬は同じ量のお湯を沸かすのに時間がかかり、そのぶんガスを多く使うことになります。岩谷の表で10℃の数値が軒並み増えているのはこのためです。災害は季節を選びません。備蓄量は冬を基準に決めておくのが安全側の判断になります。
ボンベの期限・保管とNITEの事故データ
製品評価技術基盤機構(NITE)は2024年12月26日、カセットこんろの事故について注意を呼びかけています。2014年度から2023年度までの10年間で報告された事故は91件。調査が終わった86件のうち約4割が誤使用や不注意によるものでした。
NITEが挙げる、事故を防ぐ3つのポイントは次のとおりです。
あわせて、岩谷産業はボンベの使用期限を製造から約7年としています。ガス漏れを防ぐゴム部品が、使用の有無にかかわらず経年で劣化するためです。ボンベの底には製造年月が印字されているので、備蓄している分は年に一度確認しておくと安心です。
もうひとつ大切なのが、コンロとボンベは同じメーカーでそろえるという点です。各社とも自社製品の組み合わせでしか安全確認をしておらず、他社製ボンベを使った場合の不具合は保証の対象外になります。安さでバラバラに買うのは避けてください。
買うときの現実的な目安
ここまでの計算をまとめると、備えとして買うべきものははっきりします。
コンロ本体は、防災用途なら薄型で収納しやすいモデルが扱いやすく、普段使いにも困りません。ボンベは同じメーカーのものをまとめ買いしておきます。
よくある質問
Q. カセットボンベは何本備蓄すればいいですか?
A. 東京ガス都市生活研究所の試算では、4人家族が1日3食を1週間調理して約4.6本、つまり最低5本です。ただしこれは調理のみの場合で、お湯や温かい飲み物を毎日用意するなら15本前後、気温10℃の時期ならさらに増えます。4人家族なら9〜12本を目安にすると現実的です。
Q. なぜ冬は必要本数が増えるのですか?
A. ボンベの中身は液体のブタンで、気化して初めて燃えます。気温が低いと気化しにくく火力が落ちるため、同じ調理でも時間とガスを多く使います。岩谷産業の試算では、カップ麺やお湯沸かしは10℃のとき25℃の2倍のガスを使う結果になっています。
Q. カセットボンベに使用期限はありますか?
A. 岩谷産業は製造から約7年を目安としています。ガス漏れを防ぐゴム部品が、使用の有無にかかわらず経年劣化するためです。ボンベの底に製造年月が印字されています。
Q. 他社製のカセットボンベを使ってもいいですか?
A. 避けてください。各メーカーは自社製のこんろとボンベの組み合わせでのみ安全性を確認しており、他社製を使った場合の事故や不具合は保証の対象外になります。コンロとボンベは同じメーカーでそろえるのが原則です。
Q. ボンベはどこに保管すればいいですか?
A. NITEは、使用後はこんろから外し、室内の40℃未満の場所で保管するよう呼びかけています。ガスこんろや暖房機の近く、直射日光の当たる場所、真夏の車内は40℃を超えるため避けてください。
Q. カセットこんろを2台並べて使ってもいいですか?
A. いけません。NITEが挙げる事故防止の3つのポイントのひとつが「カセットこんろを2台以上並べて使用しない」です。隣のこんろの熱でボンベが異常に加熱され、破裂につながる危険があります。大きな鉄板や鍋でこんろ全体を覆う使い方も同じ理由で危険です。
まとめ
カセットボンベの必要本数は「4人家族で5本」が下限、温かい飲み物やお湯を日常的に使うなら15本前後、寒い時期はさらに1.5倍というのが公式データから導ける答えです。4人家族なら9〜12本を目安にしておけば、冬の1週間にも耐えられます。
ガスは復旧が最も遅いライフラインで、阪神・淡路大震災では完全復旧まで85日かかりました。熱源の備蓄率はまだ27.7%。食料と水をそろえた次の一手として、コンロ1台とボンベ数パックは費用対効果の高い備えです。
参考にした一次情報
・内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集【04】ガスの復旧」
・内閣府「防災に関する世論調査(令和7年8月調査)」
・東京ガス都市生活研究所「4人家族が1週間の食事に必要なカセットボンベは約5本」(2022年2月2日)
・岩谷産業「ご存じですか?カセットボンベの備蓄目安」/「カセットボンベの使用期限と処理方法」
・製品評価技術基盤機構(NITE)「NO MORE ボンベ破裂 カセットこんろの事故を防ぐ3つのポイント」(2024年12月26日)


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