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ペットショップ無資格注射はなぜ?立入検査13万件で業務停止1件
ペットショップで売られていた子犬や子猫に、獣医師の資格がない店員が注射をしていたとして、大阪府警は10月14日、全国にペットショップを展開する運営会社「Aペット」(堺市)の代表ら4人を獣医師法違反の疑いで逮捕しました。注射された9匹のうち7匹は、その後死んでいます。なぜこうしたことが起き、行政のチェックはどこまで届いていたのか。環境省の統計を6年分数えて整理します。
この記事の結論
- 容疑は、2025年1月〜2026年1月に大阪府内の4店舗で、販売用のロングコートチワワやマンチカン、ラグドールなど犬猫9匹に、資格のない店員が動物用医薬品「インターキャット」を注射させた疑いです。7匹が死に、店からは「投薬マニュアル」が見つかったと報じられています。
- 注射は法律上の「診療」にあたり、獣医師法17条で獣医師にしか認められていません。違反すると2年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金(両方もあり)です。薬を売ったとされる茨城県の獣医師2人は、医薬品医療機器等法違反(無許可販売)の疑いで逮捕されました。
- 環境省の統計を当サイトで足し上げると、2019〜2024年度の6年間に自治体が動物取扱業者へ行った立入検査は130,717件。一方で業務停止命令は1件、登録取消は12件でした。立入検査は飼い方や施設のチェックが中心で、店の中で誰が注射しているかまでは見えにくい仕組みです。
- 犬猫を買う人には、店が病歴やワクチンの接種状況を対面で説明する義務があります。「誰が打ったか(獣医師名・動物病院名)」まで書面で確かめるのが、いちばん現実的な自衛策です。
立入検査と業務停止命令の件数は、環境省の動物取扱業等に対する行政処分の集計(令和6年度)など6年度分の「合計」の行を、当サイトが足し上げたものです。
ペットショップの無資格注射事件、何があった?
時事通信やMBS、読売テレビの報道をもとに、10月15日時点で分かっていることをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 逮捕 | 2026年10月14日、大阪府警生活環境課 |
| 容疑 | 獣医師法違反(獣医師でないのに飼育動物の診療を業務とした疑い) |
| 逮捕者 | 運営会社「Aペット」(堺市)の代表取締役(42)ら同社幹部4人。認否は明らかにされていない |
| 会社 | 関東や関西を中心に、ホームセンターなどにペットショップを一時最大44店舗展開(報道) |
| 期間・場所 | 2025年1月〜2026年1月、大阪府内の傘下4店舗。各店の責任者と共謀したとされる |
| 対象の動物 | 販売用のロングコートチワワ、マンチカン、ラグドールなど犬・猫計9匹 |
| 使われた薬 | 動物用医薬品「インターキャット」(ネコインターフェロン製剤)。犬や猫の感染症に使われる |
| その後 | 9匹のうちチワワなど7匹が死んだ(注射との因果関係は捜査中) |
| 発覚 | 2026年1月、店舗関係者が「資格のない者がウイルスに感染した犬に注射し、翌日に死んだ」と府警に相談 |
| 薬の入手先 | 茨城県の獣医師2人(78歳、79歳)から購入したとみられる。2人はインターキャット以外の医薬品77点を2月にAペットへ無許可で販売した疑いで、同日、医薬品医療機器等法違反の疑いで逮捕 |
「投薬マニュアル」と経費削減
報道によると、店舗からは投薬マニュアルが見つかり、府警は会社の指示で組織的に注射が繰り返されていたとみています。読売テレビは、府警が経費削減のためだったとみて調べていると伝えました。Aペットはホームページで、ペットクリニックの併設や徹底した感染予防をうたっていたといいます。
逮捕されたのは会社の幹部4人と獣医師2人の計6人です。報道によって「4人逮捕」「6人逮捕」と見出しが分かれていますが、獣医師法違反の4人と、医薬品医療機器等法違反の2人を合わせたかどうかの違いです。
なぜ店員の注射は違法?獣医師法17条のしくみ
獣医師法17条は、「獣医師でなければ、飼育動物(中略)の診療を業務としてはならない」と定めています。対象の飼育動物には、牛や豚などの家畜と並んで犬と猫がはっきり書かれています。
MBSの報道によると、ワクチン接種などの注射は法律上の診療行為とされ、国家資格である獣医師の資格が必要です。取材に応じた獣医師は、皮下・筋肉・静脈のどこに打つか、どの部位に打つべきかも動物ごとに判断が要るとして、無資格の人が打つのは「言語道断」と話しています。
| 法律 | 今回問われている行為 | 罰則 |
|---|---|---|
| 獣医師法17条・27条 | 獣医師でない店員に犬猫の注射(診療)をさせた | 2年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、または両方 |
| 医薬品医療機器等法24条・84条 | 販売業の許可なく医薬品を業として売った(獣医師2人) | 3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、または両方 |
条文は獣医師法・医薬品医療機器等法(e-Gov法令検索)で確認。動物専用の医薬品も同じ法律で規制され、所管は農林水産大臣に読み替えられます(83条)。罰則は法律上の上限で、実際の量刑ではありません。
店員ができること、できないこと
読売テレビが取材した別のペットショップでは、スタッフは毎日の様子を見て「いつもと違う」に早く気づくことが役目で、薬の処方やワクチン接種は獣医師が担当していると話していました。この店には注射器や針を一切置いていないそうです。
- 店員にできる:毎日の健康チェック、食事・排せつの記録、体調の変化を獣医師に伝えること
- 獣医師しかできない:診察、薬の処方、注射(ワクチン・治療薬)、病気の診断
インターキャットはどんな薬?副作用の報告は5件
インターキャットは東レのネコインターフェロン製剤です。農林水産省の動物医薬品検査所の副作用情報には、この薬について5件の報告が載っていて、そのうち4件の転帰は「死亡」でした。
| 報告 | 動物 | 投与前の診断 | 投与法 | 副作用 | 転帰 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1996年7月 | 猫・5歳 | 猫免疫不全ウイルス感染症による口内炎、発熱 | 皮下注 | 呼吸が速くなる、よだれ | 治癒 |
| 1998年6月 | 犬・2か月 | パルボテスト陽性(食欲がない、嘔吐、下痢) | 静脈注射 | 虚脱、血圧低下、瞳孔散大 | 死亡 |
| 1999年4月 | 猫・2歳 | 猫ウイルス性鼻気管炎 | 皮下注 | よだれ、心停止 | 死亡 |
| 1999年12月 | 猫・2歳 | 猫白血病ウイルス陽性、黄疸 | 筋肉内注射 | 翌日死亡 | 死亡 |
| 2002年3月 | 猫・7歳 | 発熱する猫風邪 | 皮下投与(他の薬と併用) | よだれ、起立不能、不随意運動など | 死亡 |
読み違えないための注意点があります。これは獣医師が使って起きた報告で、もともと重い感染症の動物に使われており、薬が原因と言い切れないもの(2002年の報告は「因果関係は不明」と判定)も含まれます。報告件数は「どれくらいの割合で起きるか」も示しません。それでも、1998年の子犬の例では、虚脱や血圧低下に対してエピネフリンの注射と人工呼吸で処置しています。MBSの取材に応じた獣医師が「一番怖いのは、副反応が出たときの対処がおそらくできないこと」と話したのは、まさにこの部分です。
行政のチェックは届いていた?立入検査6年分を数えた
ペットショップは、動物愛護管理法にもとづいて都道府県などに登録する「第一種動物取扱業者」です。自治体は立入検査をし、問題があれば勧告・命令、さらに業務停止や登録取消ができます。環境省が毎年まとめている集計の「合計」の行を、2019〜2024年度の6年分並べました。グラフは立入検査の件数です。
| 年度 | 立入検査 | 勧告 | 措置命令 | 業務停止 | 登録取消 | 無登録営業などの告発 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2019年度 | 22,270件 | 9 | 0 | 0 | 0 | 0 |
| 2020年度 | 18,778件 | 6 | 2 | 0 | 3 | 1 |
| 2021年度 | 20,701件 | 11 | 0 | 0 | 2 | 0 |
| 2022年度 | 25,919件 | 19 | 1 | 0 | 1 | 1 |
| 2023年度 | 19,135件 | 15 | 31 | 1 | 4 | 1 |
| 2024年度 | 23,914件 | 14 | 0 | 0 | 2 | 1 |
| 6年間の合計 | 130,717件 | 74 | 34 | 1 | 12 | 4 |
集計方法:環境省「動物取扱業等に対する行政による勧告、命令、立入検査、業務停止、登録取消、告発件数」(令和元年度〜令和6年度)の第一種動物取扱業者の列。表の列の並びは年度によって違うため、各年度の見出しを確認して拾いました。勧告は法23条1項・2項、措置命令は23条4項によるもの。2023年度の措置命令31件のうち28件は高知県、同年度の業務停止命令1件は福島県です。
立入検査1万件に1件しか「止める処分」はない
6年間の立入検査は130,717件。これに対して、営業を止める業務停止命令は1件、登録取消は12件でした。両方合わせても13件で、立入検査およそ1万件に1件の割合です。登録している第一種動物取扱業者は50,335事業所、うち犬猫を売る「犬猫等販売業者」は16,886事業所(2024年4月1日時点、環境省)あります。なお、2024年度の登録取消2件はどちらも大阪府によるものでしたが、今回の事件と関係があるかどうかは分かっていません。
ただし、これは自治体が怠けているという意味ではありません。立入検査で見るのは、主にケージの広さや清潔さ、従業員1人あたりの頭数、帳簿といった動物愛護管理法の基準です。今回問われた獣医師法は、別の法律です。検査の日にバックヤードで誰が注射しているかは、外からはまず見えません。今回の事件も、行政の検査ではなく店舗関係者の相談から発覚しました。
「死亡率が高い店」に死亡診断書を出させる命令は2年間0件
動物愛護管理法22条の6は、犬猫の死亡が多い販売業者に対して、一定の期間に死んだ犬猫すべての検案書か死亡診断書を出すよう命じられると定めています。環境省の集計にこの「検案命令」の列ができたのは2023年度分からで、2023年度も2024年度も全国で0件でした。
| 平均死亡率(2014年度) | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 繁殖を行う業者 | 5.6% | 6.4% |
| 繁殖を行わない業者 | 0.8% | 1.3% |
| 全体 | 2.9% | 3.4% |
物差しになる数字は、環境省が2016年1月の通知で示した、販売業者の定期報告から計算した平均死亡率(2014年度)くらいしか公表されていません。繁殖をしない販売業者(ショップなど)では、犬0.8%、猫1.3%です。今回の「9匹中7匹」は、もともとウイルスに感染していた動物が多いとみられ、この数字と単純には比べられません。それでも通知は、死亡率が高い業者に検案書の提出を命じることや、系列店がほかの自治体にもある場合は情報を共有することまで求めていました。44店舗を持つチェーンは、まさにその想定にあてはまります。
動物の事件の立件は増えている
環境省がまとめた検察統計によると、動物愛護管理法違反で検察が受理した人数は、2014年の71人から、2021年は285人、2024年は212人(起訴62人)になりました。今回は動物愛護管理法ではなく獣医師法での立件ですが、ペットをめぐる刑事事件そのものは10年前の約3倍の水準です。
ペットショップで犬猫を買う人が確かめたいこと
動物愛護管理法21条の4は、犬猫などを売る店に、買う人へ動物を直接見せ、対面で書面を使って説明することを義務づけています。施行規則8条の2が定める説明項目は18あり、その16番目が「当該動物の病歴、ワクチンの接種状況等」です。
1. ワクチンや治療は「誰が打ったか」まで聞く
- 接種日と薬の名前だけでなく、打った獣医師の名前か動物病院名が書かれた証明書をもらえるか確かめます。
- 「店で打ちました」とだけ言われたら、その店に獣医師が常駐しているのか、連携している病院はどこかを聞きましょう。
2. 病歴と、売り場に出る前の治療歴を確認する
今回の9匹には、ウイルスに感染していた犬が含まれていたと報じられています。感染症の治療歴があるかどうかは、買ったあとの体調管理に直結します。説明書面の病歴欄が空欄なら、空欄の理由を聞くのが目安です。
3. 買ったら早めに自分のかかりつけ医へ
迎えた直後は、環境の変化で体調を崩しやすい時期です。早めに動物病院で健康診断を受け、店でもらった書面を見せておくと、それまでに打った薬との重なりも確認できます。犬の場合は、狂犬病予防注射と登録も飼い主の義務です。
すでにAペットで買った人は
10月15日時点で、会社から購入者向けの案内は報じられていません。気になる場合は、購入時の書面(ワクチン接種や治療の記録)を持って、かかりつけの動物病院に相談するのが確実です。店舗のある地域の動物愛護センターや保健所も、動物取扱業者についての相談を受け付けています。
ペットショップの無資格注射のよくある質問
Q. ペットショップの無資格注射事件とは何ですか?
A. 大阪府警が2026年10月14日、ペットショップ運営会社「Aペット」(堺市)の代表ら幹部4人を獣医師法違反の疑いで逮捕した事件です。2025年1月〜2026年1月に大阪府内の4店舗で、資格のない店員に販売用の犬猫9匹へ動物用医薬品「インターキャット」を注射させた疑いが持たれています。
Q. 注射された犬や猫はどうなりましたか?
A. 報道によると、9匹のうちチワワなど7匹がその後死にました。注射と死亡の因果関係は捜査中です。事件は、2026年1月に店舗関係者が「資格のない者がウイルスに感染した犬に注射し、翌日に死んだ」と府警に相談したことで発覚しました。
Q. ペットショップの店員が犬猫に注射するのはなぜ違法ですか?
A. 注射は診療行為にあたり、獣医師法17条で、犬や猫などの飼育動物の診療を業務としてできるのは獣医師だけと定められているためです。違反すると2年以下の拘禁刑か100万円以下の罰金、またはその両方が科されることがあります(27条)。
Q. 薬を売った獣医師はなぜ逮捕されたのですか?
A. 医薬品を業として販売するには、医薬品医療機器等法24条にもとづく販売業の許可が必要です。茨城県の獣医師2人は、許可なくインターキャット以外の医薬品77点をAペットに販売した疑いで逮捕されました。罰則は3年以下の拘禁刑か300万円以下の罰金、またはその両方です(84条)。
Q. 行政はペットショップをどれくらい検査していますか?
A. 環境省の集計を足し上げると、2019〜2024年度の6年間に自治体が動物取扱業者へ行った立入検査は130,717件です。同じ期間の業務停止命令は1件、登録取消は12件でした。立入検査は動物愛護管理法の飼養管理基準を見るもので、獣医師法違反のような店内の医療行為は見つけにくいのが実情です。
Q. ペットショップで犬猫を買うとき、何を確認すればいいですか?
A. 店には、病歴やワクチンの接種状況などを対面で書面を使って説明する義務があります(動物愛護管理法21条の4、施行規則8条の2)。接種日や薬の名前に加えて、打った獣医師の名前か動物病院名が書かれた証明書をもらえるかを確かめ、迎えたあとは早めにかかりつけの動物病院で健康診断を受けると安心です。
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出典・参考資料
- 報道:時事通信「販売ペットに無資格注射か チワワなど7匹死ぬ、4人逮捕」(2026年10月14日)、MBSニュース(TBS NEWS DIG、2026年10月14日)、読売テレビ(2026年10月14日)
- 環境省:動物取扱業等に対する行政による勧告、命令、立入検査、業務停止、登録取消、告発件数(令和6年度)(令和元〜5年度分も同じ統計)、動物取扱業者の登録・届出状況(令和6年4月1日)、動物愛護管理法違反人員(検察統計年報より)、第一種動物取扱業者に対する監視、指導等の徹底について(2016年1月5日)
- 農林水産省 動物医薬品検査所:副作用情報「ネコインターフェロン」
- e-Gov法令検索:獣医師法、医薬品医療機器等法、動物の愛護及び管理に関する法律、同施行規則
行政処分・立入検査の合計や割合は当サイトの集計で、環境省の公式統計ではありません。事件は捜査中で、逮捕された人の認否は明らかにされていません。写真:Michael Day/Wikimedia Commons(CC BY 2.0)。アイキャッチは文字入れ・構図の調整をしています(事件のお店とは関係ありません)。
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