FX・アノマリー検証
ドル円が上がりやすい月はどこ?10年の月足を全部数えた
ドル円の季節性は語られる割に、元データが示されることがありません。そこで2016年9月から2026年9月までの121か月を、月の初日の始値から最終日の終値まで1回ずつ計算しました。最もはっきりしたのは6月で、10年のうち9年が円安(勝率90%・平均+1.63%)。逆に7月は勝率30%・平均-1.10%と、隣り合う2か月がきれいに反転していました。方向だけでなく「どの月が最も振れるか」も実測しています。
この記事の結論
- 6月は10年で9年が円安(勝率90%、平均+1.63%)。唯一のマイナスも-0.01%で、実質的に全勝に近い並びでした。
- 7月は10年で7年が円高(勝率30%、平均-1.10%)。6月と7月で方向がきれいに反転しています。
- 平均騰落率が最大なのは10月の+1.79%(勝率70%)。円高寄りは7月・1月・12月・11月です。
- 値幅が最大なのは3月の5.82円、最小は8月の4.25円。方向の傾きと振れ幅は別の指標です。
- ただしサンプルは各月10回前後。売買の根拠ではなく、通説を照合するための表として使うのが実用的です。
結論:6月は10年で9回が円安。7月は10年で7回が円高
ドル円の「季節性」は語られる割に、元データが示されることがほとんどありません。そこで10年分の日足から月ごとの騰落率を計算しました。各月の最初の営業日の始値から、最終営業日の終値までの変化率です。期間は2016年9月から2026年9月まで、121か月ぶんです。
最もはっきりした傾向は6月でした。10年のうち9年が円安で、唯一のマイナスも-0.01%とほぼ横ばい。平均は+1.63%です。逆に最も円高に傾いたのが7月で勝率30%、平均-1.10%。6月と7月が隣り合ってきれいに反転しているのが、この10年のドル円の形でした。
サンプルは各月10回前後です。10回のうち9回という結果は、偶然でも十分に起こり得る水準であり、統計的に強い証拠とは言えません。本記事は「そういう並びだった」という事実の提示であって、来年の6月に買えばいいという話ではありません。使い道は最後にまとめます。
【実測】月別の騰落率と値幅
| 月 | 回数 | 平均騰落率 | 円安になった割合 | 最大 | 最小 | 平均値幅 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月 | 10回 | -0.58% | 40.0% | +4.55% | -3.50% | 5.12円 |
| 2月 | 10回 | +0.77% | 70.0% | +4.77% | -3.44% | 4.58円 |
| 3月 | 10回 | +0.72% | 40.0% | +5.80% | -2.31% | 5.82円 |
| 4月 | 10回 | +0.86% | 40.0% | +6.69% | -4.52% | 5.56円 |
| 5月 | 10回 | -0.13% | 50.0% | +1.56% | -1.88% | 4.31円 |
| 6月 | 10回 | +1.63% | 90.0% | +4.35% | -0.01% | 4.38円 |
| 7月 | 10回 | -1.10% | 30.0% | +5.14% | -7.29% | 5.76円 |
| 8月 | 10回 | +0.46% | 50.0% | +5.87% | -2.89% | 4.25円 |
| 9月 | 11回 | +0.65% | 63.6% | +3.11% | -3.19% | 4.44円 |
| 10月 | 10回 | +1.79% | 70.0% | +6.59% | -0.96% | 4.85円 |
| 11月 | 10回 | -0.18% | 40.0% | +7.29% | -6.72% | 5.43円 |
| 12月 | 10回 | -0.40% | 50.0% | +4.79% | -4.44% | 4.76円 |
※2016年9月〜2026年9月のドル円日足より筆者が集計。騰落率は各月の初日の始値から最終日の終値まで。プラスが円安(ドル高)。平均値幅は月内の最高値と最安値の差。9月のみ11回。
読み取れること
①円安に傾きやすいのは6月・10月・4月。平均で+0.86%〜+1.79%です。10月は平均騰落率が最大(+1.79%)で勝率も70%と、6月に次ぐ安定感があります。
②円高に傾きやすいのは7月・1月。7月は平均-1.10%で勝率30%、1月は平均-0.58%で勝率40%。ともに10年で最小値が-3.5%を超える下落を記録しています。
③2月は勝率70%だが平均は+0.77%。勝率と平均の大きさは一致しません。勝率が高くても1回の負けが大きければ平均は伸びません。両方を見る必要があります。
「動く月」と「動かない月」は別の指標
方向とは別に、どれだけ振れるかも月によって違います。月内の最高値と最安値の差を平均すると、次のようになりました。
| 区分 | 月 | 平均値幅 |
|---|---|---|
| 最も振れる | 3月 | 5.82円 |
| 7月 | 5.76円 | |
| 4月 | 5.56円 | |
| 11月 | 5.43円 | |
| 最も静か | 8月 | 4.25円 |
| 5月 | 4.31円 | |
| 6月 | 4.38円 |
最も振れるのは3月(5.82円)で、最も静かなのは8月(4.25円)。3月は日本の年度末で本邦勢の実需が動き、4月にかけて新年度の資金フローが入ります。8月は欧米の夏休みで参加者が減る時期です。
6月は平均騰落率+1.63%で最も円安に傾く一方、平均値幅は4.38円で下から3番目です。大きく振り回されずに、じわじわ上がるという形。逆に3月と7月は値幅が大きく、7月は方向も円高寄り。値幅の大きさと方向の傾きは、別々に見る必要があります。
なぜそう並ぶのか(ただし後づけである)
6月に挙げられる説明
よく挙げられるのは、日本企業の海外子会社からの配当金の送金が6月に集中し、その一部が円転されずにドルのまま残るという話や、6月に外貨建て資産への投資が増えるという話です。ただしこれらが平均+1.63%を説明できるだけの規模かどうかは検証されていません。
7月に挙げられる説明
7月は逆に、配当の円転や、夏場のポジション調整が指摘されます。実際、この10年で最も大きな7月の下落は-7.29%でした。ただしこの回は特定の年の相場イベントによるもので、季節性で説明できる範囲を超えています。
1月に挙げられる説明
年初は「新年のポジションを取りにいく」ため方向が出やすいとされますが、実測では勝率40%・平均-0.58%で、最大+4.55%と最小-3.50%が同居しています。方向が出るが、どちらに出るかは決まっていないというのが数字の姿です。
相場の季節性の説明は、結果を見てから作られたものがほとんどです。先に「6月は配当送金で円安」という理屈があって、あとから数字が一致したわけではありません。理屈の説得力ではなく、サンプル数と外れ値の大きさで判断してください。
この表の正しい使い方
- やらないこと6月に買って7月に売る10回中9回という結果は偶然でも起こり得ます。しかも1回の外れ値(7月の-7.29%)は、9回ぶんの平均利益を吹き飛ばす大きさです。
- 使えること3月と7月は値幅が大きい月として建玉を軽くする3月5.82円、7月5.76円、4月5.56円。方向を当てるのではなく、振れ幅の見積もりに使うのが実用的です。8月(4.25円)と3月では3割以上違います。
- 使えること相場観の逆張り材料にする「7月は季節的に円安になりやすい」といった説明を見かけたとき、この表があれば実測では勝率30%だと確認できます。通説を鵜呑みにしないための照合表として持っておく使い方です。
- 前提この10年が円安局面だったことを差し引く全月の平均は+0.38%、円安になった月の割合は52.9%。そもそも全体が円安に偏った10年です。各月の数字はこの下駄を履いた状態の値だと理解してください。
よくある質問
Q. ドル円が最も上がりやすい月はいつですか?
A. 2016年9月から2026年9月までの10年で見ると6月です。10年のうち9年が円安で、唯一のマイナスも-0.01%とほぼ横ばい、平均騰落率は+1.63%でした。平均騰落率の大きさだけなら10月の+1.79%が最大で、勝率も70%です。ただしサンプルは各月10回前後しかなく、統計的に強い証拠とは言えません。
Q. 逆に円高になりやすい月はありますか?
A. 7月です。10年で円安になったのは3回だけ(勝率30%)、平均騰落率は-1.10%でした。次いで1月が勝率40%・平均-0.58%です。7月は最小値が-7.29%と、10年で最も大きな月間下落も記録しています。
Q. 一番値動きが激しい月はいつですか?
A. 3月で、月内の最高値と最安値の差は平均5.82円でした。次いで7月5.76円、4月5.56円、11月5.43円と続きます。最も静かなのは8月の4.25円で、3月とは3割以上の差があります。日本の年度末と欧米の夏休みという季節要因が形に表れています。
Q. この季節性に従って売買すれば勝てますか?
A. おすすめしません。各月のサンプルは10回前後で、10回中9回という結果は偶然でも十分に起こり得ます。加えて7月の-7.29%のような外れ値が1回あるだけで、平常時の利益は簡単に吹き飛びます。方向の予測ではなく、月ごとの振れ幅の見積もりに使うほうが実用的です。
Q. 集計期間が円安局面だったのでは?
A. そのとおりです。12か月すべての平均は+0.38%、円安になった月の割合は52.9%で、全体が円安方向に偏った10年でした。各月の数字はこの下駄を履いた状態の値になります。月ごとの比較には使えますが、絶対値をそのまま将来に当てはめることはできません。
Q. 6月に円安になる理由は何ですか?
A. 日本企業の海外子会社からの配当送金が6月に集中し、その一部が円に転換されないまま残るという説明がよく挙げられます。ただしこの規模が平均+1.63%を説明できるかは検証されていません。相場の季節性の説明は結果を見てから作られたものが多く、理屈の説得力ではなくサンプル数で判断すべきです。
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出典・参考資料
- ドル円日足(2016年9月14日〜2026年9月15日/Yahoo Finance チャートAPI、JPY=X)を筆者が集計。各月の初日の始値から最終日の終値までの騰落率、および月内の最高値と最安値の差を算出
- お盆相場のFXは危険?ドル円10年データで検証する夏枯れの実像
- ゴトー日は本当に円安?仲値199回を数えたら通説と逆だった
本記事の数値は筆者が日足データから独自に集計したものです。サンプル数は各月10回前後であり、統計的な有意性を主張するものではありません。過去のデータは将来の値動きを保証しません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
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