FX会社がスプレッドを広告に出すとき、業界のルールで「実際はどうだったか」を毎週ホームページに出すことが義務づけられています。提示率、最大値、配信を止めた秒数まで。ほとんど誰も見ていないこの実績表を、DMM FXの23通貨ペアすべてについて数えました。いちばん宣伝されている米ドル/円が、いちばん広告どおりでなかったという結果になりました。
23ペア中で最低
提示された最大値
(コストは20円→1,590円)
ならなかった時間
結論——99.65%は立派。問題は残りの0.35%がいつ来るか
先に公平な評価を書きます。DMM FXが公表している23通貨ペアの提示率は平均99.65%で、これは十分に高い数字です。広告の数字が嘘だという話ではありません。
ただし残りの数%は、平等にばらまかれているわけではありません。経済指標の発表前後や流動性が落ちる時間帯に集中します。そしてその瞬間に提示されたスプレッドの最大値は、米ドル/円で15.9銭——広告の0.2銭に対して79.5倍でした。取引したい場面ほど、広告の数字から遠いところにいる可能性があります。
この記事では、その数字がどこで公表されているのか、23ペアを全部数えると何が見えるのかを整理します。
スプレッド実績の公表は、義務です
意外と知られていませんが、スプレッドを数値で広告する会社には実績を毎週公表する義務があります。一般社団法人金融先物取引業協会の細則に、こう定められています。
会員は、スプレッド広告を行う場合は、当該広告の対象とする通貨に関し、次の各号に掲げる事項を毎営業日記録するものとする。
(1) 取引時間において、顧客に提示したスプレッドが広告内容と合致し、又は広告内容を下回る時間
(2) 取引時間において、価格の提示を停止した、又は約定を停止した時間
(3) 取引時間において、実際に提示したスプレッドの中で最大であった値
2 会員は、前項の記録を基に、営業日毎の前項各号の時間を集計し、毎週金曜日までに、(略)自社のホームページで公表するものとする。一般社団法人金融先物取引業協会「広告等の表示及び景品類の提供に関する自主規制規則第9条に関する細則(スプレッド広告関係)」第6条(2020年6月17日制定、2022年9月26日一部改正)
公表するのは直近4週分です。しかも同条第3項には、実績が広告と異なっていると認められる場合にはその要因も掲載すると書かれています。
【独自集計】DMM FXの23ペアを全部数えた
DMM FXは通貨ペアごとにPDFで公表しています。公表日2026年9月11日、対象期間は2026年8月10日〜9月4日の4週間。全23ペアを並べました。
| 通貨ペア | 広告 | 提示率 | 最大値 | 広告との倍率 |
|---|---|---|---|---|
| USD/JPY | 0.2銭 | 98.32% | 15.9銭 | 79.5倍 |
| NZD/JPY | 0.7銭 | 98.44% | 29.9銭 | 42.7倍 |
| EUR/JPY | 0.4銭 | 98.85% | 18.9銭 | 47.2倍 |
| GBP/JPY | 0.9銭 | 99.50% | 24.9銭 | 27.7倍 |
| AUD/JPY | 0.5銭 | 99.62% | 19.9銭 | 39.8倍 |
| AUD/USD | 0.4pips | 99.65% | 8.9pips | 22.2倍 |
| EUR/USD | 0.3pips | 99.74% | 9.9pips | 33.0倍 |
| ZAR/JPY | 1.0銭 | 99.77% | 2.9銭 | 2.9倍 |
| AUD/NZD | 0.8pips | 99.78% | 35.7pips | 44.6倍 |
| CHF/JPY | 0.8銭 | 99.79% | 28.9銭 | 36.1倍 |
| CAD/JPY | 0.6銭 | 99.88% | 19.9銭 | 33.2倍 |
| MXN/JPY | 0.2銭 | 99.91% | 2.9銭 | 14.5倍 |
| USD/CAD | 1.8pips | 99.98% | 9.9pips | 5.5倍 |
| TRY/JPY | 1.4銭 | 100.00% | 3.9銭 | 2.8倍 |
※23ペアのうち特徴的な14ペアを抜粋。GBP/USD 99.83%、NZD/USD 99.80%、EUR/NZD 99.79%、GBP/AUD 99.76%、EUR/CHF 99.84%、GBP/CHF 99.93%、USD/CHF 99.96%、EUR/GBP 99.97%、EUR/AUD 99.90%。
23ペアの平均提示率は99.65%、最低が米ドル/円の98.32%、最高がトルコリラ/円の100.00%でした。
いちばん宣伝される通貨ペアが、いちばん広告どおりでない
この表でいちばん目を引くのは、米ドル/円が23ペア中で最下位だったことです。FX会社の広告でいちばん目立つ位置に出るのが「米ドル/円 0.2銭」なのに、その通貨ペアの提示率がいちばん低い。
理由は会社自身が説明しています。DMM FXは公式に、「リーマンショックや東日本大震災のような突発的な事象が発生した場合や、市場の流動性が低下している場合(月曜日の午前7時〜午前8時頃、夏時間の午前6時前後、年末年始、クリスマス時期など)、経済指標の発表前後の時間帯等においては、スプレッドが拡大する場合があります」と記載しています。米ドル/円はこうしたイベントで最も動く通貨ペアなので、広告が目立つ通貨ペアほど、答え合わせでは厳しい数字になるという構図です。
「98.32%」だと十分に見えますが、「4週間で8時間」と言い直すと、印象が変わります。
最大値15.9銭を、コストに直すと
提示率と並んで公表されているのが最大値です。米ドル/円は15.9銭でした。1万通貨の取引に当てはめます。
| 米ドル/円・1万通貨 | スプレッド | 1回のコスト |
|---|---|---|
| 広告表示(コアタイム) | 0.2銭 | 20円 |
| 期間中の最大値 | 15.9銭 | 1,590円 |
同じ1回の取引で1,570円の差です。しかもDMM FXは公式に、カバー先のスプレッドが拡大した場合は配信するレートも拡大し「その上限は一定値に限定されません」と明記しています。15.9銭はこの4週間でたまたま出た最大値であって、上限ではありません。
「原則固定」が効かない時間帯が、そもそもある
実績を見る前に押さえておくべき前提もあります。DMM FXの基準スプレッドはコアタイム(午前9時〜翌午前5時)で原則固定、それ以外の午前5時〜午前9時は最初から幅があると公表されています。
| 通貨ペア | 9時〜翌5時 | 5時〜9時 |
|---|---|---|
| USD/JPY | 0.2銭 | 0.2〜3.9銭 |
| EUR/JPY | 0.4銭 | 0.4〜9.9銭 |
| GBP/JPY | 0.9銭 | 0.9〜14.9銭 |
| CHF/JPY | 0.8銭 | 0.8〜28.9銭 |
朝5時から9時のあいだは、米ドル/円でも最大3.9銭まで広がることが最初から明示されています。「原則固定0.2銭」は、1日のうち20時間の話です。
この数字をどう使うか
実績表の読み方が分かると、会社選びの見方が変わります。
- 広告の数字だけで比べない——同じ「0.2銭」でも提示率が違えば意味が違います。比べるなら提示率と最大値まで見る
- 自分が取引する時間帯を確認する——朝方に取引するなら、コアタイム外の幅のほうが自分にとっての実勢です
- 指標発表の瞬間を避ける——提示率が削れるのはこの瞬間です。どうしても入るなら、広がったスプレッドを織り込んだ数量にする
- 各社の公表ページを見比べる——この公表義務は全社にかかっています。気になる会社があれば「スプレッド 実績」で探せば必ずどこかに出ています
よくある質問
Q. スプレッドの「原則固定」は嘘なのですか?
A. 嘘ではありません。DMM FXの23通貨ペアの提示率は平均99.65%で、広告どおりに提示されている時間が圧倒的です。ただし「原則」という言葉のとおり例外があり、その例外は経済指標の発表時などに集中します。
Q. スプレッドの実績はどこで見られますか?
A. 各社の公式サイトです。金融先物取引業協会の細則第6条で、スプレッドを数値で広告する会社は直近4週分の提示率・最大値・配信停止時間を毎週金曜日までに自社サイトで公表することが義務づけられています。DMM FXは通貨ペアごとのPDFで公開しています。
Q. 提示率98.32%はよくない数字ですか?
A. 単体では高い水準です。ただし23ペアの中では最も低く、時間に直すと4週間で約8時間は広告どおりではなかった計算になります。米ドル/円は取引量が多く指標で最も動くため、構造的に数字が出にくい面があります。
Q. 最大値15.9銭より広がることはありますか?
A. あります。DMM FXは、カバー先から受信するレートのスプレッドが拡大した場合は配信するレートも拡大し「その上限は一定値に限定されません」と公式に明記しています。15.9銭は対象期間の実績値であって上限ではありません。
Q. 1,000通貨のミニ通貨ペアもスプレッドは同じですか?
A. 違います。DMM FXはミニ通貨ペアとラージ通貨ペアについて、基準スプレッド(原則固定)の適用対象外と明記しています。少額で練習する場合は、広告の数字がそのままは当てはまりません。
まとめ
スプレッドの広告には、必ず答え合わせがついています。提示率・最大値・配信停止時間の3つが、毎週公表されている——この事実を知っているだけで、会社選びの解像度が変わります。
DMM FXの数字は全体として良好でした。そのうえで覚えておきたいのは、いちばん宣伝される米ドル/円がいちばん削れていたこと、1.68%は4週間で約8時間にあたること、そして最大値は上限ではないことです。広告の0.2銭は本当ですが、それが全部ではありません。
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【出典】一般社団法人金融先物取引業協会「広告等の表示及び景品類の提供に関する自主規制規則第9条に関する細則(スプレッド広告関係)」第3条・第6条/DMM FX「提示スプレッド等に関する実績情報」各通貨ペアPDF(公表日2026年9月11日、対象期間2026年8月10日〜9月4日)/DMM FX「スプレッドとは?」ページ掲載の基準スプレッド表および注記(掲載日付2026年9月11日現在)。提示率の平均・時間換算・コスト換算は編集部が集計・計算したものです。数値は対象期間の実績であり、今後の水準を約束するものではありません。
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